「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-43

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 それは、少し昔の話




 しゅるり
 黒い髪が、伸びる、伸びる
 契約者の意志にしたがい、伸びて伸びて
 それは対象に絡みつき、捕え、放さない


 さながら、獲物を捕らえた蜘蛛の巣のように
 さながら、獲物を捕らえた獣のように
 それは、決して獲物を逃がしはしない


「ぐ、ぁ……」
「…H-No.8…で、間違いねぇな?」

 くっく、と、H-No.8と呼ばれた男を髪で捕えた黒服が笑う
 H-No.8は、もがきながらその黒服を睨んだ

「---っH-No.360……!貴様、こんな事をして……ただですむと思っているのか……!?」

 白衣に包まれたその体に、ゆっくりと黒い髪が食い込んでいく
 どろり、白衣がゆっくりと、赤く染まっていっていた

「なぁに、バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ」

 H-No.360と呼ばれた黒服は、そう言って、笑いながら肩をすくめた
 その笑顔は、どこか暗い

「…これは、お嬢さん公認なんで、ねぇ?」
「……!貴様……H-No.0様に、何をした!?」
「なぁんもしてねぇよ?あのお嬢さんが、俺の行いを許してくれてるってだけさ」

 嘘だ
 これは、取引
 彼女との取引の結果だ

 自分の復讐を成し遂げたら、彼女を殺す
 その為に、彼女に自分の復讐を手伝わせる

 それすらも、復讐の一環
 彼女の部下を、彼女からの情報で自分は殺し続けてやるのだ
 自分の行いのせいで部下が死んでいく様を、彼女は味わい続けるのだ

「この、化け物めが……!力を与えてやった恩も忘れて……!」
「……恩、ねぇ?」

 ぶちっ
 ぶちっぶちっぶちっぶちっ

 手が、うでが、脚が
 そして、首が、一瞬で引きちぎられる
 H-No.8と呼ばれた、その研究者は、一瞬で肉片へと変わっていく
 びちゃり、飛び散った血が、H-No.360を汚した

「…恩?…………っは、人を勝手に化け物にしておいて…恩も何も、あるかよ」

 くっくっく、と暗く暗く、彼は笑う


 そうだ
 自分は、化け物だ
 化け物にされてしまったのだ

 自分は、人間だったというのに
 人間のままでいたかったというのに
 他人の勝手な思惑で、勝手な願いの犠牲の為に、化け物にされてしまった

 人間に戻る手段は、きっとある、とそう言われた
 だが、彼はそれを、とっくの昔に諦めていた

 希望など、ない
 化け物になってしまった以上、待っているのは絶望だけだ
 希望など抱いても、所詮無駄

 化け物は化け物でしかない
 都市伝説など、化け物にすぎない
 人間ではない
 もう、人間には戻れない


「…嫌な所、見られちまったなぁ?」

 その気配に、彼はくるりと振り返る
 …そこには、一人の少女が立っていた

「俺に、何か用か?お前の家族が、都市伝説とか「組織」にでも狙われたか?」
「いえ、そうではありませんが」

 日傘を差した、その少女
 返り血塗れの彼に、怯えた様子も見せない
 そんな様子に、彼は肩をすくめる

「怖がりもしねぇんだな。化け物相手に」
「あなたは、化け物ではないでしょう?」

 …何を言っているんだ、こいつは
 暗く、暗く笑う彼
 先ほど、人一人を殺したその髪は、今も蠢き続けている

 もっと血を吸いたい、と言わんばかりに
 まだまだ殺したりない、と言わんばかりに

「俺は、化け物だぜ?何せ、都市伝説なんだからなぁ?」
「…化け物だと、そう呼ばれたいのですか?」


 違う
 違う、違う、違う


 壊れたはずの心が悲鳴をあげる
 しかし、彼はそれを表には出そうとしない

「いいやぁ?ただ、俺はもう人間じゃなくなっちまったからな。都市伝説に飲み込まれた馬鹿な人間。化け物さ」
「……違いますよ」

 少女は、じっと彼を見詰めて
 そして、こう告げてきた

「あなたは、化け物なんかじゃあ、ありませんよ」

 …やめろ
 やめてくれ
 そんな、同情のような、言葉

「どこがだ?立派な化け物だろ?」

 髪を蠢かせながら、彼は笑う
 それは、ゆっくりと、少女に迫っていた

 それでも、少女は怯えた様子など、決して見せない
 ただ、まっすぐに彼を見つめ、告げるのだ

「あなたは、化け物ではありません。あなたは、まだ、人間の心が残っているではありませんか」
「-------っ」


 やめろ
 やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ

 頼む、やめてくれ
 それを、認めないでくれ

 俺は、化け物だ
 化け物になってしまったのだ
 俺自身が、それを認めてしまっているのだ

 化け物になんか、なりたくなかった
 俺は、化け物なんかじゃない
 認めたくなどない
 いつかは人間に戻れると信じたい

 信じても所詮裏切られる
 俺はもう化け物だ
 もうもどれない

 にんげんじゃなくなってしまった
 ばけものでしかない
 いやだ、おれはにんげんだ
 ばけものになんかなりたくなかった
 にんげんにもどりたい
 でも、もうもどれない

 いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ……………


 タスケテ


「………っぐ!?」

 体の内部が、崩壊する感覚
 都市伝説としての彼の体が、少し、内部から崩れた
 げほげほと咳き込み、彼は口から血を吐き出した

「……大丈夫ですか?」
「…大丈夫じゃねぇよ、くそ」

 吐血した彼の様子に、小さく首を傾げてきた少女に、彼はぼやいた
 …崩壊はすぐに止まった
 定期的に投与されている薬が効いている証拠だろう
 あぁ、腹が立つ

「…誰にも言うなよ?」
「わかっています」

 くすり、微笑む少女
 その代わり…と、続けてこようとした少女の言葉を、彼は制す

「こっちも、わかってる。お前さんが「組織」の目を盗んで色々やってる事は黙ってるからよ」
「お願いしますね?」

 ……あぁ、畜生が
 そんな顔で、笑うな


 責任をとりやがれ
 これで、俺は未練ができてしまった
 これで、俺は今まで以上にギリギリになってしまう

 ……責任をとりやがれ
 俺はこれで、お前に縛られ続けることになるのだから


to be … ?





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