殺した
この同族を、吸収する事ができた
この同族を、吸収する事ができた
同族殺しの口裂け女は、狂った思考の中でそう判断した
……しかし
その判断は間違っていた、
その判断は間違っていた、
ぐるり、腕に巻きついてきていたのは黒い糸…否、髪の毛
「ったく、嫌な場面に出くわしたな、おい」
聞こえて来たのは、男の声
見ると、前方にまるで触手のように髪を伸ばした黒服の男が立っていて…その男はぐったりとした女を抱えていた
彼女が殺したはずの、同族を…口裂け女を
見ると、前方にまるで触手のように髪を伸ばした黒服の男が立っていて…その男はぐったりとした女を抱えていた
彼女が殺したはずの、同族を…口裂け女を
男が何者なのか、この同族殺しにはわからない
ただ、敵だ、とだけ判断する
自分の邪魔をしてきたのだ
敵に、決まっている
ただ、敵だ、とだけ判断する
自分の邪魔をしてきたのだ
敵に、決まっている
「っち!?」
腕に巻きついた髪を、鎌で切り裂く
即座に髪が襲い掛かってきたが、それも切り落とした
即座に髪が襲い掛かってきたが、それも切り落とした
「私、綺麗?」
「-----っは」
「-----っは」
ぐったりとした口裂け女を抱えた男
同族殺しを見下ろし………冷たく、冷たく
こう、言い切ってきた
同族殺しを見下ろし………冷たく、冷たく
こう、言い切ってきた
「……綺麗、とでも言われたいか?化け物」
その、声に
同族殺しは、狂った思考の中、しかし、本能に従って、男を睨みつけた
同族殺しは、狂った思考の中、しかし、本能に従って、男を睨みつけた
…混濁する思考の中、ミツキは困惑していた
自分は、助けられたようだ
以前、ちらりとだけ、顔を合わせた事がある男性……確か、Hさん、とか呼ばれていた黒服だ
「組織」の黒服が、自分を助けている?
それも困惑したが、それよりも困惑した原因は、彼の声だった
自分は、助けられたようだ
以前、ちらりとだけ、顔を合わせた事がある男性……確か、Hさん、とか呼ばれていた黒服だ
「組織」の黒服が、自分を助けている?
それも困惑したが、それよりも困惑した原因は、彼の声だった
自分を殺そうとしてきた、同族の口裂け女に、黒服Hがかけた言葉
それを発した冷たい声には……一切の感情が、ともなっていなかった
その癖して、鋭い殺意を滲ませた声
以前、顔を合わせた時のどこか軽い印象と、その声の印象は一致しない
それを発した冷たい声には……一切の感情が、ともなっていなかった
その癖して、鋭い殺意を滲ませた声
以前、顔を合わせた時のどこか軽い印象と、その声の印象は一致しない
「本能だけで動いて、理性を捨てた化け物が……綺麗、と言われる資格でもあると思ったか?」
どこまでも、どこまでも、冷たく冷酷な声
同族殺しは、雄叫びを上げて、黒服Hに襲い掛かる
同族殺しは、雄叫びを上げて、黒服Hに襲い掛かる
「あぁ、めんどくせぇなぁ、おい!!」
しゅるり、伸びる髪
蜘蛛の巣のように伸びた髪が、同族殺しの動きを封じようとする
しかし、口裂け女だとしても、その限界を超えたかのような動きに、捕らえる事ができない
蜘蛛の巣のように伸びた髪が、同族殺しの動きを封じようとする
しかし、口裂け女だとしても、その限界を超えたかのような動きに、捕らえる事ができない
「ったく、報告にあった同族殺しの口裂け女かよ!?」
叫ぶようにぼやくその声は、元の黒服Hの調子に戻っている
荒れ狂う暴風のように髪を暴れさせながら、黒服Hはミツキを抱え、撤退しようとしていた
しかし、同族殺しは二人を……否、何よりも、ミツキを逃がそうとしない
荒れ狂う暴風のように髪を暴れさせながら、黒服Hはミツキを抱え、撤退しようとしていた
しかし、同族殺しは二人を……否、何よりも、ミツキを逃がそうとしない
「…だめ、です……逃げて」
「流石に、知り合いを見殺しにするのは気がひけてねぇ?」
「流石に、知り合いを見殺しにするのは気がひけてねぇ?」
後退しながら、どこか軽い調子で黒服Hはミツキに告げる
しかし、明らかにその顔には焦りが出始めていた
しかし、明らかにその顔には焦りが出始めていた
…戦闘力が、違いすぎる
黒服Hとて、暗殺を任せられる程度の戦闘力はある
しかし、目の前の相手とは、相性その他の関係が悪すぎる
自分では……今の自分では、勝てない
彼は、そう判断していた
何よりも、彼は瀕死のミツキを抱えた状態なのだ
分が悪すぎる
黒服Hとて、暗殺を任せられる程度の戦闘力はある
しかし、目の前の相手とは、相性その他の関係が悪すぎる
自分では……今の自分では、勝てない
彼は、そう判断していた
何よりも、彼は瀕死のミツキを抱えた状態なのだ
分が悪すぎる
「増援呼ぶのも面倒だしな…」
「第三帝国」の関係者を助ける為に増援を呼ぶ、と言うのはまずい
…なら、どうするか?
小さく舌打ちして、黒服Hは懐からそれを取り出す
…なら、どうするか?
小さく舌打ちして、黒服Hは懐からそれを取り出す
「…どうして、使いたくない時にばかり、これの出番が来るかね、畜生が!!」
その、小さな棒状の物を同族殺しに向けて…黒服Hは、スイッチを入れた
「組織」の黒服の、記憶消去装置
それが発動し、赤い光が放たれる
赤い光は、サングラスをかけている黒服Hと、彼に抱えられている状態で、彼の背中が視線に入っているミツキを除いた存在
----すなわち、同族殺しだけが、見ることとなって
「組織」の黒服の、記憶消去装置
それが発動し、赤い光が放たれる
赤い光は、サングラスをかけている黒服Hと、彼に抱えられている状態で、彼の背中が視線に入っているミツキを除いた存在
----すなわち、同族殺しだけが、見ることとなって
「------!?」
その記憶を
赤い光を見る「直前の」記憶のみを、消去した
赤い光を見る「直前の」記憶のみを、消去した
本来、人間相手に使う装置だ
都市伝説相手には、本来の力は発しない
だが、一瞬だけ、ほんの少しだけの記憶を消去する事で……相手を混乱させる事くらいは、できる
都市伝説相手には、本来の力は発しない
だが、一瞬だけ、ほんの少しだけの記憶を消去する事で……相手を混乱させる事くらいは、できる
しゅるしゅると、その瞬間、黒服Hは同族殺しの傍にあった電信柱に、己の髪を巻きつけて
-----すぱぁんっ!!
電信柱を、一瞬でバラバラに引き裂く
それによって、電線が引きちぎられて………一瞬の記憶の混濁に固まっていた、同族殺しに向かって、その先端が落下して
それによって、電線が引きちぎられて………一瞬の記憶の混濁に固まっていた、同族殺しに向かって、その先端が落下して
「----ぎゃああああああああああ!!!???」
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ………!!!
高圧電流が、同族殺しに襲い掛かる
高圧電流が、同族殺しに襲い掛かる
それを見届ける事なく、黒服Hはミツキを抱えたまま、走り去っていた
あれでは、足止め程度にしかならないだろう
とにかく、距離をとらなければならない
逃げ延びなければ、自分もミツキも、死ぬ
あれでは、足止め程度にしかならないだろう
とにかく、距離をとらなければならない
逃げ延びなければ、自分もミツキも、死ぬ
「……っぐ」
体の内部に感じた痛み
口元を伝う血をぬぐう余裕すらなく、彼は走り続けた
口元を伝う血をぬぐう余裕すらなく、彼は走り続けた
………どすんっ、と
診療所の入り口から…鈍い音が、聞こえてきた
診療所の入り口から…鈍い音が、聞こえてきた
「…?」
バイトちゃんが、首をかしげて入り口に向かう
一応、武器を手に警戒しながら、入り口を開けて…
一応、武器を手に警戒しながら、入り口を開けて…
「………な!?」
…そこには、二人の人間が
否、都市伝説が倒れていた
一人は、ミツキ
もう一人は……黒服H
ミツキはぐったりとして、意識を失っているようで
否、都市伝説が倒れていた
一人は、ミツキ
もう一人は……黒服H
ミツキはぐったりとして、意識を失っているようで
「ぁ……く、そ……」
げほげほと
黒服Hは、激しく咳き込みながら、その口から大量の血を吐き出し続けていた
黒服Hは、激しく咳き込みながら、その口から大量の血を吐き出し続けていた
「…ち、くしょうが……こんな、時に……」
その手に握られていたのは…小さな、ピルケース
中身は、空っぽだった
入っていた錠剤は、ほんの2,3錠だけだった
それでは……今の彼の状態を改善する事は、できず
中身は、空っぽだった
入っていた錠剤は、ほんの2,3錠だけだった
それでは……今の彼の状態を改善する事は、できず
「おい、何があったんだ!?」
「……よぉ……可愛いメイドさん、よ……」
「……よぉ……可愛いメイドさん、よ……」
体の内部が崩れていく感覚に、苦しみながらも
その苦しみを隠すように、黒服Hはバイトちゃんを見あげ……笑って、みせた
その苦しみを隠すように、黒服Hはバイトちゃんを見あげ……笑って、みせた
「詳しい、話はあとだ……まずは、こっちの看護婦さん、治してやらなきゃ駄目、だろ………ドクターを、呼んで…………っ!?」
がふ……っ、と、さらに大量の血を吐き出す黒服H
意識が、遠のいていく
記憶消去装置を…「組織」の黒服の力を使った、それが原因で
体の内部が崩れ、崩れ、崩れ
それを、体の内部に仕込んだ「切り札」が治し、治し、治し
気が狂いそうな痛みの中……意識を、保つ事ができなくなって
意識が、遠のいていく
記憶消去装置を…「組織」の黒服の力を使った、それが原因で
体の内部が崩れ、崩れ、崩れ
それを、体の内部に仕込んだ「切り札」が治し、治し、治し
気が狂いそうな痛みの中……意識を、保つ事ができなくなって
黒服Hは、激痛の中、意識を手放した
to be … ?