かつん
かつん、かつん、と足音を響かせて、一人の女が診療所に向かっていた
…女は、口裂け女
彼女は、俗にこう呼ばれる
かつん、かつん、と足音を響かせて、一人の女が診療所に向かっていた
…女は、口裂け女
彼女は、俗にこう呼ばれる
----同族殺し、と
かつん、かつん
ゆっくり、ゆっくりと、彼女はそこに向かっていた
感じる、わかる
あそこに……以前、殺し損ねた
吸収しそこねた、同族がいる
ゆっくり、ゆっくりと、彼女はそこに向かっていた
感じる、わかる
あそこに……以前、殺し損ねた
吸収しそこねた、同族がいる
今度こそ
今度こそ、殺してやろう
今度こそ、己の中に取り込んでやろう
ニタリ、正気を失った思考の中、それでも楽しみで仕方なくて、彼女は笑い
今度こそ、殺してやろう
今度こそ、己の中に取り込んでやろう
ニタリ、正気を失った思考の中、それでも楽しみで仕方なくて、彼女は笑い
…ゆっくりと、
その入り口に手をかけ、勢いよく、扉を開いた
このまま一気に中になだれ込み、同族を探そうとして
その入り口に手をかけ、勢いよく、扉を開いた
このまま一気に中になだれ込み、同族を探そうとして
---っとん、と
彼女の体に触れてきたのは、一本の棒
それで、ぐい!と押される
まるで、どこかに押し込められるように
彼女の体に触れてきたのは、一本の棒
それで、ぐい!と押される
まるで、どこかに押し込められるように
「-----っ!?」
どぷんっ、と
次の瞬間、彼女は全く違う場所に居て
ホルマリンプールに落とされたのだ、と理解する暇もなく……無数の人影に、棒でプールの中に落とされ続けた
次の瞬間、彼女は全く違う場所に居て
ホルマリンプールに落とされたのだ、と理解する暇もなく……無数の人影に、棒でプールの中に落とされ続けた
「やったか!?」
棒を構えているのは、ようやく男に戻れたバイト君
白衣姿のまま、油断なく構えて…
白衣姿のまま、油断なく構えて…
「----っと!?」
ひゅん!!と
目の前を通り過ぎたのは、大きな鎌
ホルマリンプールに沈めたはずの同族殺しが、そこにはいた
ギラギラと瞳を輝かせ、目の前の障害…バイト君を駆逐しようと、襲い掛かる
目の前を通り過ぎたのは、大きな鎌
ホルマリンプールに沈めたはずの同族殺しが、そこにはいた
ギラギラと瞳を輝かせ、目の前の障害…バイト君を駆逐しようと、襲い掛かる
「このっ!?」
っが!と棒でその攻撃を防いだバイト君だったが
………にぃ、と
同族殺しが……笑った
………にぃ、と
同族殺しが……笑った
「…私、綺麗?」
その言葉の、直後
同族殺しを中心に、爆発が発生した
爆発の煙がおさまる中、爆発の直撃を受けたはずのバイト君の姿は、ない
同族殺しを中心に、爆発が発生した
爆発の煙がおさまる中、爆発の直撃を受けたはずのバイト君の姿は、ない
「生きてるか?」
「あ、あぁ」
「あ、あぁ」
しゅるり
伸びた髪が、爆発の直前、バイト君をつかんで引き寄せていた
黒服Hは、以前も遭遇したその同族殺しを見つめ、小さく舌打ちする
伸びた髪が、爆発の直前、バイト君をつかんで引き寄せていた
黒服Hは、以前も遭遇したその同族殺しを見つめ、小さく舌打ちする
「…Gの野郎から聞いてる報告より、よっぽど強いじゃねぇか。追加情報はまだか、あの野郎」
「「組織」の奴からの電話は着信拒否してるとかほざいたのは誰だ!?」
「あぁ、大丈夫だよ。あいつはそれ知ってるから、メールで連絡してくるし」
「「組織」の奴からの電話は着信拒否してるとかほざいたのは誰だ!?」
「あぁ、大丈夫だよ。あいつはそれ知ってるから、メールで連絡してくるし」
っとん、とバイト君を降ろし、さて、どうしたものか、と黒服Hは考える
まぁ、襲撃を予想できていたのは幸いなのだが…どうやって、倒す?
まぁ、襲撃を予想できていたのは幸いなのだが…どうやって、倒す?
「お前さんがホルマリンプールに沈めたのは、多分、あいつの分身だろうな」
「分身能力まであるのか…それに、さっきの爆発」
「ふむ、口裂け女の派生話で「原爆少女」と言う物があったな、それか」
「---って、ドクター!隠れていてくださいよ!」
「診療所に踏み込まれては、隠れていようがいまいが、現状は変わるまい」
「分身能力まであるのか…それに、さっきの爆発」
「ふむ、口裂け女の派生話で「原爆少女」と言う物があったな、それか」
「---って、ドクター!隠れていてくださいよ!」
「診療所に踏み込まれては、隠れていようがいまいが、現状は変わるまい」
黒服Hとバイト君の背後に立ち、同族殺しを睨みつけるドクター
そのさらに背後では、メアリーがミツキを護るように、きつく抱きしめていた
そのさらに背後では、メアリーがミツキを護るように、きつく抱きしめていた
「…彼女が、ミツキを傷つけた犯人か」
「その通り。同族を殺し吸収し、強くなり続けてる厄介な奴さ」
「その通り。同族を殺し吸収し、強くなり続けてる厄介な奴さ」
しゅるしゅると、髪を伸ばし続ける黒服H
同族殺しが近づかないよう、通路に髪を張り巡らせて行く
同族殺しが近づかないよう、通路に髪を張り巡らせて行く
「お前、能力を使って大丈夫なのか?」
「こっちの能力なら、問題ねぇよ」
「こっちの能力なら、問題ねぇよ」
…「組織」の黒服の能力さえ使わなければ、あの状態にはならない
だが、その事実がこの状態ではプラスにならない事を、黒服Hは理解していた
今、あの同族殺しに有効な「組織」の黒服能力は、ない
光線銃があればそれなりに対応できるのかもしれないが……射撃能力が、「組織」の黒服としてはありえないほど低い黒服Hは、銃を携帯していない
当然、今も手元にはない
だが、その事実がこの状態ではプラスにならない事を、黒服Hは理解していた
今、あの同族殺しに有効な「組織」の黒服能力は、ない
光線銃があればそれなりに対応できるのかもしれないが……射撃能力が、「組織」の黒服としてはありえないほど低い黒服Hは、銃を携帯していない
当然、今も手元にはない
「…私、綺麗?」
ニタリ、笑う同族殺し
突如、聞こえて来たのは車のエンジン音
黒服Hは舌打ちし、壁を突き破って現れたその車に髪を巻きつけた
刹那、現れた車はバラバラに引き裂かれ、本来の用途をなす事無く破壊された
突如、聞こえて来たのは車のエンジン音
黒服Hは舌打ちし、壁を突き破って現れたその車に髪を巻きつけた
刹那、現れた車はバラバラに引き裂かれ、本来の用途をなす事無く破壊された
「今度は交通事故説か。本当に厄介だな」
「ドクター、とにかく下がって!」
「ドクター、とにかく下がって!」
通路に張り巡らせた髪を切り裂きながら接近してくる同族殺し
バイト君が繰り出す棒を、平均的な口裂け女の身体能力を超えた身体能力でさけ、刀を振り上げてくる
後ろに跳んでそれを避けるが、刀は即座にバイト君を追いかけてきて
バイト君が繰り出す棒を、平均的な口裂け女の身体能力を超えた身体能力でさけ、刀を振り上げてくる
後ろに跳んでそれを避けるが、刀は即座にバイト君を追いかけてきて
「--っ!?」
すぱんっ!!
バイト君の持っていた棒が、真っ二つにされてしまった
これでは、とてもじゃないが、攻撃にはつかえない
バイト君の持っていた棒が、真っ二つにされてしまった
これでは、とてもじゃないが、攻撃にはつかえない
…近くに、掃除用具入れがある
そこから、モップか何かを…
そこから、モップか何かを…
「私、綺麗?」
同族殺しが笑う
ゾクリ、全身を駆け抜ける悪寒
ゾクリ、全身を駆け抜ける悪寒
しゅる、と黒服Hは周囲の味方全員を髪で掴み上げ、後方に跳んだ
直後、辺りは炎に包まれ、壁が、床が、天井が焼かれていく
直後、辺りは炎に包まれ、壁が、床が、天井が焼かれていく
「火傷説か……ったく。中に何人、いやがるんだ」
どんどんと、診療所の奥に追い詰められていっている状態
これは、まずい
このままでは、完全に追い詰められる
これは、まずい
このままでは、完全に追い詰められる
「ド、ドクター…」
「そんな声を出すな、ミツキ」
「そんな声を出すな、ミツキ」
ドクターは、自分のせいで、とでも言うような表情のミツキに…優しく、微笑みかけた
少しでも、彼女の不安を払拭させるように、優しく、優しく
少しでも、彼女の不安を払拭させるように、優しく、優しく
「この場にいる全員、君を死なせるつもりはない……必ず、護る」
じり、じり、と
診療所奥の、階段の前へと追い詰められていく一行
…二階にあがっては、それこそ逃げ場がなくなる
診療所奥の、階段の前へと追い詰められていく一行
…二階にあがっては、それこそ逃げ場がなくなる
どうする?
思考をめぐらせ………黒服Hは、同族殺しの背後……診療所の入り口に見えた影に、気づいた
思考をめぐらせ………黒服Hは、同族殺しの背後……診療所の入り口に見えた影に、気づいた
「…走れ、階段を登れ」
「む?だが…」
「いいから!」
「む?だが…」
「いいから!」
行け、という黒服Hの言葉に…ドクターも、気づいた
ミツキとメアリーを伴い、階段を駆け上がる
ミツキとメアリーを伴い、階段を駆け上がる
「逃がすかぁっ!!」
叫ぶ、同族殺し
ドクター達の後を追い、階段を駆け上がろうとしている黒服Hとバイト君に迫る
ドクター達の後を追い、階段を駆け上がろうとしている黒服Hとバイト君に迫る
「私、綺麗?」
無数の
無数の刃が、同族殺しの周囲に現れる
自傷説により手に入れた力
刃は、彼らに迫りきり刻もうとして…
無数の刃が、同族殺しの周囲に現れる
自傷説により手に入れた力
刃は、彼らに迫りきり刻もうとして…
……こつんっ
その、刃の一つに
同族殺しの後方から投げつけられた……携帯電話が、当たった
異様な光を放つそれは、直後、爆発する
その、刃の一つに
同族殺しの後方から投げつけられた……携帯電話が、当たった
異様な光を放つそれは、直後、爆発する
一瞬、視界をさえぎられ、同族殺しは目標を見失った
そんな同族殺しの元に………こつん、こつん、こつん
背後から、携帯電話がいくつも、投げつけられて
その全てが異様な光を放っていて…………彼女が「原爆少女派生説」の力で発生させるような爆発が、彼女に襲い掛かった
そんな同族殺しの元に………こつん、こつん、こつん
背後から、携帯電話がいくつも、投げつけられて
その全てが異様な光を放っていて…………彼女が「原爆少女派生説」の力で発生させるような爆発が、彼女に襲い掛かった
「がぁっ………!?」
苦痛に悶える同族殺し
ぎろり、己を攻撃してきたものを探そうと背後に視線をやったが…そこでは、彼女自身が発生させた炎がめらめらと燃えているだけで、敵の姿は見えない
…横の病室などに入り込んでいる可能性もあったのだが、正常な思考を失っている彼女は、そこまでは考えなかった
背後に敵が居ないならば、目の前の敵に集中するまでだ
見れば、敵は…目標は、階段の上にいた
そこから、こちらを見下ろしてきている
ならば、追いかけるだけだ
殺すだけだ
叫びながら、同族殺しは一気に階段の5,6段目までジャンプし、そのまま駆け上がっていく
ぎろり、己を攻撃してきたものを探そうと背後に視線をやったが…そこでは、彼女自身が発生させた炎がめらめらと燃えているだけで、敵の姿は見えない
…横の病室などに入り込んでいる可能性もあったのだが、正常な思考を失っている彼女は、そこまでは考えなかった
背後に敵が居ないならば、目の前の敵に集中するまでだ
見れば、敵は…目標は、階段の上にいた
そこから、こちらを見下ろしてきている
ならば、追いかけるだけだ
殺すだけだ
叫びながら、同族殺しは一気に階段の5,6段目までジャンプし、そのまま駆け上がっていく
彼女の足が、13段目に触れた、その瞬間
「引きずり込め、「13階段」」
階段の下から、そんな声が、聞こえてきて
ずるり、13段目から……手が、腕が、伸びてきた
青白い手が、血で染まった腕が、腐り落ちた手が、白骨と化した腕が
同族殺しを捕まえ、絡み、引きずり込もうとしてくる
ずるり、13段目から……手が、腕が、伸びてきた
青白い手が、血で染まった腕が、腐り落ちた手が、白骨と化した腕が
同族殺しを捕まえ、絡み、引きずり込もうとしてくる
「よぉ、辰也。いいタイミングでお姫様と一緒に来てくれた」
「最悪のタイミングだよ、はっきり言って」
「最悪のタイミングだよ、はっきり言って」
階段の上で、黒服Hは笑った
横の病室から出てきたのは辰也と、ジャッカロープを抱えた恵だ
黒服Hの状態を心配して、ジャッカロープの乳を与えるつもりできたらしい
最悪のタイミングといえば最悪のタイミングだが、彼らからしてみれば大変とありがたい援軍だ
横の病室から出てきたのは辰也と、ジャッカロープを抱えた恵だ
黒服Hの状態を心配して、ジャッカロープの乳を与えるつもりできたらしい
最悪のタイミングといえば最悪のタイミングだが、彼らからしてみれば大変とありがたい援軍だ
「ぐ……こ、の……!?」
ずる、ずる、と
引きずり込もうとしてくる腕に、必死に抵抗する同族殺し
しかし、「13階段」の引きずり込む力の方が、同族殺しより強かった
「13階段」
それは、発動すれば、容赦なく相手を引きずり込む能力
その引きずり込む力の方が、強いのだ
引きずり込もうとしてくる腕に、必死に抵抗する同族殺し
しかし、「13階段」の引きずり込む力の方が、同族殺しより強かった
「13階段」
それは、発動すれば、容赦なく相手を引きずり込む能力
その引きずり込む力の方が、強いのだ
ぎろ、と
同族殺しは、メアリーに抱きしめられているミツキを睨み上げた
同族殺しは、メアリーに抱きしめられているミツキを睨み上げた
憎い
憎い、憎い、憎い
どうして、大人しく殺されない?
どうして、大人しく吸収されない!?
憎い、憎い、憎い
どうして、大人しく殺されない?
どうして、大人しく吸収されない!?
たっぷりの、たっぷりの、憎しみを込めて
同族殺しは、手にしていた刀を………ミツキに向かって、投げつけた
同族殺しは、手にしていた刀を………ミツキに向かって、投げつけた
「ミツキさんっ!?」
投げつけられた刀
バイト君の位置では、それを撃ち落す事ができない
メアリーとミツキは、それに対応しきれず、避ける事ができない
ドクターが間に入ろうとしているが…間に合ったとして、今度はドクターが致命傷を負ってしまう
バイト君の位置では、それを撃ち落す事ができない
メアリーとミツキは、それに対応しきれず、避ける事ができない
ドクターが間に入ろうとしているが…間に合ったとして、今度はドクターが致命傷を負ってしまう
ドクターが、ミツキを庇うように間に入ったのが……間に合ってしまって
しかし
しかし
「…まったく」
それと、同時に
ドクターの前に……黒服Hが割り込んだのも、間に合って
ドクターの前に……黒服Hが割り込んだのも、間に合って
「あんた達に死なれちゃあ、こっちが困るんだがな」
ずぷりっ
同族殺しが投げつけた、刀が
黒服Hの脇腹に………深々と、突き刺さった
同族殺しが投げつけた、刀が
黒服Hの脇腹に………深々と、突き刺さった
「---くろ、ふくぅうううううう!!!!!」
同族殺しの憎悪の声が、叫び渡り
-----ずるり
同族殺しは、「13階段」に…完全に、引きずり込まれた
-----ずるり
同族殺しは、「13階段」に…完全に、引きずり込まれた
「宏也!」
刀に貫かれ、膝をついた黒服H
辰也は、恵を伴って急いで駆け寄ろうとした
だが
辰也は、恵を伴って急いで駆け寄ろうとした
だが
「無茶な事を……!」
「お前さんが盾になるよりは、マシだったと思う、がねぇ……?」
「お前さんが盾になるよりは、マシだったと思う、がねぇ……?」
ごぽ、と血を吐き出す黒服H
ドクターの言葉に、笑う
ドクターの言葉に、笑う
「…あぁ、辰也…大丈夫、だ、気にすんな」
「嘘つけ!どう見ても致命傷だ!ジャッカロープ、内臓系統の治癒もできるように合成を…」
「……薬もいらねぇよ」
「嘘つけ!どう見ても致命傷だ!ジャッカロープ、内臓系統の治癒もできるように合成を…」
「……薬もいらねぇよ」
にぃ、と
黒服Hは笑って…しゅるり、髪を、己の脇腹に刺さっている刀に、巻きつける
黒服Hは笑って…しゅるり、髪を、己の脇腹に刺さっている刀に、巻きつける
「ただ、ちょいとばかし、お姫様にはショッキングな光景になるから……お姫様の目、塞いでおけ
「……くけっ?」
「……くけっ?」
黒服Hの言葉に、首を傾げた恵
…彼の言葉の意味に、気づいたのだろう
辰也が、慌てて恵の目を塞ぐ
…彼の言葉の意味に、気づいたのだろう
辰也が、慌てて恵の目を塞ぐ
直後
黒服Hは、己の脇腹に刺さっていた刀を、無造作に引き抜いた
黒服Hは、己の脇腹に刺さっていた刀を、無造作に引き抜いた
「っ何を…!?」
引き抜けば、当然、出血が始まる
それ相応の処置をしてから引き抜くべきだと言うのに、黒服Hは無造作に刀を引き抜いて、ぺい、と投げ捨てた
それ相応の処置をしてから引き抜くべきだと言うのに、黒服Hは無造作に刀を引き抜いて、ぺい、と投げ捨てた
ドクターが、すぐに応急処置を施そうとして
…しかし、その動きが……止まった
目の前の光景に、意識を奪われる
…しかし、その動きが……止まった
目の前の光景に、意識を奪われる
激しく出血し始めるはずだった、その傷口
そこが……高速としか言いようのないスピードで、再生していっているのだ
かすかに赤い光を放ちながら、まるで、録画映像の逆再生のように、傷つけられた箇所が再生していっている
そこが……高速としか言いようのないスピードで、再生していっているのだ
かすかに赤い光を放ちながら、まるで、録画映像の逆再生のように、傷つけられた箇所が再生していっている
…ほんの、数秒間で……黒服Hの傷口は、完全に再生した
「この現象は……まさか、君は」
「…宏也、てめぇ、やっぱり」
「…宏也、てめぇ、やっぱり」
ドクターと、辰也が、その現象を見た故に、気づく
黒服Hが、体内に仕込んでいるという…「切り札」の、正体に
黒服Hが、体内に仕込んでいるという…「切り札」の、正体に
「…誰にも言うなよ?」
にぃ、と悪戯っぽく笑い、周囲にそう、口止めする黒服H
---どくんっ、と、体内で切り札が脈動する
---どくんっ、と、体内で切り札が脈動する
黒服Hが、体内に仕込んだ切り札
それは、「賢者の石」
未完成でありながら、かつて、黒服Hの体内に仕込まれた物よりも一回りも二回りも大きいそれは…黒服Hの中で静かに、赤い光を放ち続けていた
それは、「賢者の石」
未完成でありながら、かつて、黒服Hの体内に仕込まれた物よりも一回りも二回りも大きいそれは…黒服Hの中で静かに、赤い光を放ち続けていた
to be … ?