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連載 - 同族殺しの口裂け女-03

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uranaishi

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同族殺しの口裂け女 03



 ――――暗く、赤い闇。
 それが、同族殺しが血の池に沈んだ時の、最初の感想だった。
 ゆっくりと、少しずつ、少しずつ沈んでいく身体。
 彼女の腕に、首に、腰に、無数の屍がまとわりつき、彼女を下へ下へと引きずり込んでいく。

「………………」

 同族殺しは、動かない。
 彼女が少し力を使えば、自身の周囲の亡者を血の池の一部ごと蒸発させる事も出来る。
 しかし彼女は、何も抵抗しなかった。

「…………何故」

 同族殺しは、思考に耽っていた。
 それは、彼女が「同族殺し」と呼ばれるようになってから、初めてのまともな思考。
 ただ口裂け女を探し、本能の命ずるままに殺していた彼女が失っていたそれを、今彼女は取り戻していた。
 それは、口裂け女の存在しない空間に放りこまれた弊害か。

「…………何故、貴女の周囲には人がいる?」

 深くなっていく周囲の闇を気にすることなく、口裂け女は思考を続ける。
 思い出すのは、彼女が引きずり込まれる前の、あの光景。
 たった一人の口裂け女を助けるために、何人もの人間が自身の前に立ちふさがった、あの光景。

「私たちは、忌むべき存在でしょう……?」

 刻々と、明確になっていく思考。
 しかしそれとは対照的に、その考えは複雑に絡み合い、難解になっていく。
 同族殺しには、「仲間」と言う概念がなかった。
 そもそも、人を殺すためだけに生まれた自分が、それを求める事すら間違っているとすら、同族殺しは思っていた。
 生まれた時から、周囲にいる存在は全て敵。
 それは当然の状況であり、決して覆らない状況でもあるとしか、彼女の眼には映らなかった。

 ――――では、何故。
 彼女の周囲には、あんなにも人がいたのか。
 同族殺しには、分からない。
 分からないから、考える。

 周囲の闇と同化するように、深く、深く沈んでいく同族殺しの身体。
 このままでは死ぬかもしれない、と同族殺しは本能で自らの死を感じ取る。
 しかし不思議と、抵抗する気は起らなかった。
 この世界でなら、誰も彼女を拒絶しない、この世界なら――――

「………………」

 発した言葉は泡となり、血の池を上へと進んでいく。
 その小さな泡が水面へと到達するのを見届け
 ……彼女は静かに、目を閉じた。

【終】









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