暗くなった街の裏通りを、1人の少女が歩いている。服に多少の汚れはあるものの、全体的に見て、彼女は可愛いと言っても構わないだろう。
そんな少女が夜のそれも人通りの少ない裏通りを、歩いているのだ。声をかける男が居たとして、不思議では無い。
「どうしたの君。こんな時間にこんな所で?」
「もしかして、家出して来たとか? だったら俺たちと遊ばない?」
声をかけた男は2人だが、少し下がったところにもう1人の姿も見える。3人組に声をかけれた少女は、まったく反応する事無く男たちの間を通り抜けようとした。
「っちょ、待てよ。話しかけてんのに無視ってのは酷いじゃないか」
少女の肩に手を置いて呼びとめる男。ようやく自分に声をかけている事を、いや、男たちが居る事を認識したようだ。
「あぁ。私(あたし、あたい、僕、俺、ワシ、妾)、に声をかけてたのか、悪いけど断るよ」
そう言った彼女の声は1つ、だと言うのに男たちは同時に複数の一人称を聞いた。
普通なら不気味がるだろうが、男たちには不可思議な出来事には耐性があった。なぜなら、
「断っても構わないぜ? 力ずくに変えるだけだからな。《注射男》!」
「ふむ、新しい薬が完成した所だ。ちょうど良いだろう。動きを抑えてくれ」
「オーケー、任せときな。にしても契約者だったとはな」
声をかけた男たちは、都市伝説との契約者。そして、後ろにいた男は《注射男》、白衣を羽織って眼鏡を掛けた青年の姿をした都市伝説で、見た目からは真面目な印象を受ける。
しかし、注射男の手には明らかに人体に悪そうな色をした液体入りの注射があった。表情をほとんど変えずに少女に近づく注射男。
「んん。逃げたほうがいいかな? 何かやばそうだし……ってあれ?」
動こうとした少女は、異変に気が付く少しも体が動かないのだ。まるで、何かに押さえつけられたように。
「逃げ様としても無駄だぜ。もう、《金縛り》にあってんだからよあんたは」
もう1人の男が、少女に手を向けながらそう言った。その顔にはニヤニヤと笑みを浮かべている。
「声は出せるみたいだし聞いておきます。その注射は何でしょうか? 私は、どうなるんでしょうか?」
今度は、単体の一人称。しかし動きを止めてあることで優越感を持った男はその事を気にせずに自分たちの目的を話し始める。
「聞きたいか? とりあえず、こいつであんたを発情させて楽しませてもらうとするぜ。どんな都市伝説かは知らねぇがあんたも動けなきゃきついだろ?」
「契約者を相手にしたのも初めてじゃないからな」
下卑たな笑みを浮かべて答える男たち、その間にも注射男は少女に注射(おそらく媚薬だろう)を打とうとしている。
そんな男たちに少女は今までぼんやりとしていた目に闇を抱えて口を開いた。
「そうですか。あなた達もあいつ等と同じですか。だったら死ぬべきですね」
「それにしても。動きを止めた程度で何を、勝ち誇ってるんです。〝口裂け女〟に〝赤マント〟出番ですよ」
その声とともに少女の後ろから2人分の影が浮かび上がった、女性と男性のポピュラーな都市伝説。
「多重契約者かよ。ま、どっちでも良いさ。獲物が1人増えたようなもんだしな。《注射男》、《金縛り》」
「契約者の動きを封じたとしても、都市伝説に邪魔されては意味がないな」
「女の方は抑えておくぜ。俺の限界は2人までだからな野郎は任せたぞ」
少女に打とうとした注射を白衣にしまい男たちの方に戻る《注射男》、もう一方の手を〝口裂け女〟に向ける《金縛り》の男。
自分の都市伝説が戻ったのを確認した《注射男》の契約者は袖をまくり、そこに《注射男》が注射を打った。
すると、男の体が膨れ上がるといった変化が表れ、2倍近くに膨らんでから元に戻った。
「クハハハ! キたぜ、キたぜ、とりあえず〝赤マント〟は殺す!」
ドガン、とブロック塀に拳で穴をあけ、人外と言うべき瞬発力で〝赤マント〟に向かう《注射男》の契約者。
とっさに反応しガードをするが、殴り飛ばされ後方に吹き飛んでいく。それを《注射男》の契約者が追う。
それを迎え撃とうと、体勢を整えナイフを構え切りつける〝赤マント〟。
「しゃらくせぇ!」
《注射男》の契約者を切り裂くはずのナイフは、その体に弾かれてしまった。
「何なんだ。その体は、俺のナイフが効かないとか有り得ないだろう」
「今の俺は、鋼鉄クラスの硬さだ。ナイフ程度で切れる訳ねぇだろ!!」
「ちっ、スピードもパワーも、都市伝説並みに高くなっていやがる」
攻撃手段であるナイフが効かないとなった〝赤マント〟は守勢になるしかなく。《注射男》の契約者の攻撃をかわしたり、ナイフで受け止めるしかない。
「どうする。あたしも動けないし、赤っちもヤバいんじゃない?」
「そうですね。〝口裂け女〟、この場合は誰を呼べば良いと思います」
「そうね。刃物が効かないんじゃ、テケちゃんは駄目だろうし……さと坊でも呼んでみる?」
そんな2人の様子を見ていた少女と〝口裂け女〟は慌てる様子も無く話し合う。まるで、他に仲間がいる様なそんな内容だ。
「そうしましょうか。〝さとるくん〟お願いします」
♪~~~♪~~~
その小さな声と同時に、《金縛り》の男から携帯の着信音が鳴り響く。
少女と〝口裂け女〟に能力を使っているために出る事が出来ない《金縛り》は、隣に立っている《注射男》に代わりに出るように言う。
無視すれば良いだけなのだが、出なければならないという思いが《金縛り》の契約者に生まれたのだ。
「どちら様かな? 立て込んでいるのだが」
「さとるだよ。今、……君の後ろにいるけど」
その声に《注射男》は、反射的に振り向いてしまった。
シュゴーーーーーー、ガシィッ!!
そこに居たのは、中学生程度の少年だった。そして、その後ろに現れた門から出てきた巨大な手が《注射男》掴んで引き込もうとする。
「な、なぁ! し、しまった。ぐ、ぐぁぁぁぁっ」
一瞬で《注射男》は門の内側、魔界へと引きずり込まれてしまった。
それにより、〝赤マント〟と男の戦いにも変化が起こった。
今まで通らなかった〝赤マント〟のナイフが男に傷を負わせた。都市伝説の本体がこの世界から消された事により《注射男》の薬の効果が消えたのだ。
「ガァ、ってぇな。畜生が……」
「ふう。体が、元に戻ったんなら、後れは取らねえぞ!」
「グアァァァァァァ!」
「な、な、なぁ?!」
消えた《注射男》と倒された契約者に驚いた《金縛り》の契約者は、その能力を発動している両手をそれでも逸らす事無くうろたえている。
しかし、彼が止められるのは2人が限界である。少女と〝口裂け女〟、〝赤マント〟そして、先程現れた〝さとるくん〟一度に4人も止める事は出来ないのだ。
「さてと、状況は分かってますね。あなたに勝ち目はありません?」
「くそ! くそ! くそ! どーすりゃいいんだ」
「………聞いてないですね。それにしても、さと坊。この《金縛り》、何とかならない?」
「簡単だよ、口裂けのお姉さん。ちょっと待ってて」
そう言って、《金縛り》の契約者の腕を後ろで縛る〝さとるくん〟。
その途端、少女と〝口裂け女〟を縛っていた見えない拘束は消え去り2人は体の自由を取り戻した。
「無事か?」
血に染まった《注射男》の契約者を放置して、〝赤マント〟がやって来る。
「心配はいりませんよ〝赤マント〟。さて、終わりにしましょうか〝口裂け女〟頼みますね。」
「分かってますよ。呼ばれたのに何もしないなんて、あたしも嫌ですしね」
「そうだな。少しぐらいは、働いて貰わねぇと」
両手に出した鎌を《金縛り》の契約者の口に刃を外向きにして入れる〝口裂け女〟。
「は、はひほふふひは?!」(な、何をする気だ?!)
「喋らない、喋らない。スパッといくわよ」
「へ? ヒギャッ……」ブシャーーーー
鎌をスライドさせ口を裂いた、勢いのままに《金縛り》の男の体を切り刻んでいく。一瞬の痛みを感じるか、如何かという間に男の意識は沈んでいく。
それでも、鎌の動きは止まることなく。男の体が、バラバラになって漸く止まった。
「ふう、終りっと。行きましょうか」
「ご苦労様、お姉さん。それにしても、あそこまでする必要ある?」
「何言ってるんですか? さと坊、あんな窮屈な思いをさせられたんですよ。当然の報いです」
「ふぅん。まぁ、敵がどうなろうと僕には関係ないけどね」
鎌を消し、出てもいない汗を拭う振りをする〝口裂け女〟。〝さとるくん〟の呆れの混じった労いの言葉に返事をし、彼の隣りに移動した。
「《注射男》と《金縛り》ですか。中々、良い拾いモノでしたね」
「取り込むのか? お嬢」
「使えそうですしね。あと、何度も言いますがお嬢は止めて下さい。私の名前は美咲ですからそう呼んでください」
「へいへい、分かったよ。美咲嬢……これなら良いだろ」
「ええ。此処でふざけたら、貴方の自我を一週間ほど消そうかと思ってましたよ」
「怖い事、言うんじゃねえよ。我らが支配者」
苦笑を浮かべて答える〝赤マント〟、少女こと美咲がそれを本当に出来て実行することを理解しているからだ。
自分の自我が消えたとしてもストックの中から代わりを持ってこれば良いだけなのだから。
「行きましょうか。3人とも戻ってください」
しばらくして、人魂のようなものを仕舞った美咲は都市伝説達にそう話しかける。
了解の意を返して、〝赤マント〟〝口裂け女〟〝さとるくん〟の3人は体を消していく。
「あぁ、それと。彼らは私が契約した都市伝説ではありませんよ。取り込んだモノでしかありません」
思い出したように、命を失い聞いている筈も無い男たちに話しかける美咲。
「さ~て、何処に行こうかな?」
先程までの戦いや2人の男の死体を、何でも無いかのようにのんびりと呟いて美咲はその場を去って行った。
END
そんな少女が夜のそれも人通りの少ない裏通りを、歩いているのだ。声をかける男が居たとして、不思議では無い。
「どうしたの君。こんな時間にこんな所で?」
「もしかして、家出して来たとか? だったら俺たちと遊ばない?」
声をかけた男は2人だが、少し下がったところにもう1人の姿も見える。3人組に声をかけれた少女は、まったく反応する事無く男たちの間を通り抜けようとした。
「っちょ、待てよ。話しかけてんのに無視ってのは酷いじゃないか」
少女の肩に手を置いて呼びとめる男。ようやく自分に声をかけている事を、いや、男たちが居る事を認識したようだ。
「あぁ。私(あたし、あたい、僕、俺、ワシ、妾)、に声をかけてたのか、悪いけど断るよ」
そう言った彼女の声は1つ、だと言うのに男たちは同時に複数の一人称を聞いた。
普通なら不気味がるだろうが、男たちには不可思議な出来事には耐性があった。なぜなら、
「断っても構わないぜ? 力ずくに変えるだけだからな。《注射男》!」
「ふむ、新しい薬が完成した所だ。ちょうど良いだろう。動きを抑えてくれ」
「オーケー、任せときな。にしても契約者だったとはな」
声をかけた男たちは、都市伝説との契約者。そして、後ろにいた男は《注射男》、白衣を羽織って眼鏡を掛けた青年の姿をした都市伝説で、見た目からは真面目な印象を受ける。
しかし、注射男の手には明らかに人体に悪そうな色をした液体入りの注射があった。表情をほとんど変えずに少女に近づく注射男。
「んん。逃げたほうがいいかな? 何かやばそうだし……ってあれ?」
動こうとした少女は、異変に気が付く少しも体が動かないのだ。まるで、何かに押さえつけられたように。
「逃げ様としても無駄だぜ。もう、《金縛り》にあってんだからよあんたは」
もう1人の男が、少女に手を向けながらそう言った。その顔にはニヤニヤと笑みを浮かべている。
「声は出せるみたいだし聞いておきます。その注射は何でしょうか? 私は、どうなるんでしょうか?」
今度は、単体の一人称。しかし動きを止めてあることで優越感を持った男はその事を気にせずに自分たちの目的を話し始める。
「聞きたいか? とりあえず、こいつであんたを発情させて楽しませてもらうとするぜ。どんな都市伝説かは知らねぇがあんたも動けなきゃきついだろ?」
「契約者を相手にしたのも初めてじゃないからな」
下卑たな笑みを浮かべて答える男たち、その間にも注射男は少女に注射(おそらく媚薬だろう)を打とうとしている。
そんな男たちに少女は今までぼんやりとしていた目に闇を抱えて口を開いた。
「そうですか。あなた達もあいつ等と同じですか。だったら死ぬべきですね」
「それにしても。動きを止めた程度で何を、勝ち誇ってるんです。〝口裂け女〟に〝赤マント〟出番ですよ」
その声とともに少女の後ろから2人分の影が浮かび上がった、女性と男性のポピュラーな都市伝説。
「多重契約者かよ。ま、どっちでも良いさ。獲物が1人増えたようなもんだしな。《注射男》、《金縛り》」
「契約者の動きを封じたとしても、都市伝説に邪魔されては意味がないな」
「女の方は抑えておくぜ。俺の限界は2人までだからな野郎は任せたぞ」
少女に打とうとした注射を白衣にしまい男たちの方に戻る《注射男》、もう一方の手を〝口裂け女〟に向ける《金縛り》の男。
自分の都市伝説が戻ったのを確認した《注射男》の契約者は袖をまくり、そこに《注射男》が注射を打った。
すると、男の体が膨れ上がるといった変化が表れ、2倍近くに膨らんでから元に戻った。
「クハハハ! キたぜ、キたぜ、とりあえず〝赤マント〟は殺す!」
ドガン、とブロック塀に拳で穴をあけ、人外と言うべき瞬発力で〝赤マント〟に向かう《注射男》の契約者。
とっさに反応しガードをするが、殴り飛ばされ後方に吹き飛んでいく。それを《注射男》の契約者が追う。
それを迎え撃とうと、体勢を整えナイフを構え切りつける〝赤マント〟。
「しゃらくせぇ!」
《注射男》の契約者を切り裂くはずのナイフは、その体に弾かれてしまった。
「何なんだ。その体は、俺のナイフが効かないとか有り得ないだろう」
「今の俺は、鋼鉄クラスの硬さだ。ナイフ程度で切れる訳ねぇだろ!!」
「ちっ、スピードもパワーも、都市伝説並みに高くなっていやがる」
攻撃手段であるナイフが効かないとなった〝赤マント〟は守勢になるしかなく。《注射男》の契約者の攻撃をかわしたり、ナイフで受け止めるしかない。
「どうする。あたしも動けないし、赤っちもヤバいんじゃない?」
「そうですね。〝口裂け女〟、この場合は誰を呼べば良いと思います」
「そうね。刃物が効かないんじゃ、テケちゃんは駄目だろうし……さと坊でも呼んでみる?」
そんな2人の様子を見ていた少女と〝口裂け女〟は慌てる様子も無く話し合う。まるで、他に仲間がいる様なそんな内容だ。
「そうしましょうか。〝さとるくん〟お願いします」
♪~~~♪~~~
その小さな声と同時に、《金縛り》の男から携帯の着信音が鳴り響く。
少女と〝口裂け女〟に能力を使っているために出る事が出来ない《金縛り》は、隣に立っている《注射男》に代わりに出るように言う。
無視すれば良いだけなのだが、出なければならないという思いが《金縛り》の契約者に生まれたのだ。
「どちら様かな? 立て込んでいるのだが」
「さとるだよ。今、……君の後ろにいるけど」
その声に《注射男》は、反射的に振り向いてしまった。
シュゴーーーーーー、ガシィッ!!
そこに居たのは、中学生程度の少年だった。そして、その後ろに現れた門から出てきた巨大な手が《注射男》掴んで引き込もうとする。
「な、なぁ! し、しまった。ぐ、ぐぁぁぁぁっ」
一瞬で《注射男》は門の内側、魔界へと引きずり込まれてしまった。
それにより、〝赤マント〟と男の戦いにも変化が起こった。
今まで通らなかった〝赤マント〟のナイフが男に傷を負わせた。都市伝説の本体がこの世界から消された事により《注射男》の薬の効果が消えたのだ。
「ガァ、ってぇな。畜生が……」
「ふう。体が、元に戻ったんなら、後れは取らねえぞ!」
「グアァァァァァァ!」
「な、な、なぁ?!」
消えた《注射男》と倒された契約者に驚いた《金縛り》の契約者は、その能力を発動している両手をそれでも逸らす事無くうろたえている。
しかし、彼が止められるのは2人が限界である。少女と〝口裂け女〟、〝赤マント〟そして、先程現れた〝さとるくん〟一度に4人も止める事は出来ないのだ。
「さてと、状況は分かってますね。あなたに勝ち目はありません?」
「くそ! くそ! くそ! どーすりゃいいんだ」
「………聞いてないですね。それにしても、さと坊。この《金縛り》、何とかならない?」
「簡単だよ、口裂けのお姉さん。ちょっと待ってて」
そう言って、《金縛り》の契約者の腕を後ろで縛る〝さとるくん〟。
その途端、少女と〝口裂け女〟を縛っていた見えない拘束は消え去り2人は体の自由を取り戻した。
「無事か?」
血に染まった《注射男》の契約者を放置して、〝赤マント〟がやって来る。
「心配はいりませんよ〝赤マント〟。さて、終わりにしましょうか〝口裂け女〟頼みますね。」
「分かってますよ。呼ばれたのに何もしないなんて、あたしも嫌ですしね」
「そうだな。少しぐらいは、働いて貰わねぇと」
両手に出した鎌を《金縛り》の契約者の口に刃を外向きにして入れる〝口裂け女〟。
「は、はひほふふひは?!」(な、何をする気だ?!)
「喋らない、喋らない。スパッといくわよ」
「へ? ヒギャッ……」ブシャーーーー
鎌をスライドさせ口を裂いた、勢いのままに《金縛り》の男の体を切り刻んでいく。一瞬の痛みを感じるか、如何かという間に男の意識は沈んでいく。
それでも、鎌の動きは止まることなく。男の体が、バラバラになって漸く止まった。
「ふう、終りっと。行きましょうか」
「ご苦労様、お姉さん。それにしても、あそこまでする必要ある?」
「何言ってるんですか? さと坊、あんな窮屈な思いをさせられたんですよ。当然の報いです」
「ふぅん。まぁ、敵がどうなろうと僕には関係ないけどね」
鎌を消し、出てもいない汗を拭う振りをする〝口裂け女〟。〝さとるくん〟の呆れの混じった労いの言葉に返事をし、彼の隣りに移動した。
「《注射男》と《金縛り》ですか。中々、良い拾いモノでしたね」
「取り込むのか? お嬢」
「使えそうですしね。あと、何度も言いますがお嬢は止めて下さい。私の名前は美咲ですからそう呼んでください」
「へいへい、分かったよ。美咲嬢……これなら良いだろ」
「ええ。此処でふざけたら、貴方の自我を一週間ほど消そうかと思ってましたよ」
「怖い事、言うんじゃねえよ。我らが支配者」
苦笑を浮かべて答える〝赤マント〟、少女こと美咲がそれを本当に出来て実行することを理解しているからだ。
自分の自我が消えたとしてもストックの中から代わりを持ってこれば良いだけなのだから。
「行きましょうか。3人とも戻ってください」
しばらくして、人魂のようなものを仕舞った美咲は都市伝説達にそう話しかける。
了解の意を返して、〝赤マント〟〝口裂け女〟〝さとるくん〟の3人は体を消していく。
「あぁ、それと。彼らは私が契約した都市伝説ではありませんよ。取り込んだモノでしかありません」
思い出したように、命を失い聞いている筈も無い男たちに話しかける美咲。
「さ~て、何処に行こうかな?」
先程までの戦いや2人の男の死体を、何でも無いかのようにのんびりと呟いて美咲はその場を去って行った。
END