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単発 - 劇場版Q&A 口裂けおねーさんと契約解除

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劇場版Q&A 口裂けおねーさんと契約解除

ご新規さん向けガイドライン-Q&Aからのスピンオフ作品ですが、取りあえず、単発作品として編集しておきます)

*



『私は、彼との契約を解除した方が良いのではないだろうか?』

最近の自分はこの事ばかりを考えている。
いつからだろう……こんな風に思う様になったのは……。

15年
共に過ごした時間は、気付くと15年にもなっていた。

思い返す……
私があの男と契約したのは、男がまだ子供の頃で……
小学生、それも低学年の頃の男はとても可愛らしく、同時にひどく弱々しかった。

都市伝説に狙われていたところに、たまたま通りがかり、何となく助けに入り

『ねぇ、君……私と契約してみない? そしたら、助けてあげられると思うのよね。』

契約を結び、相手を撃退した。

テンプレートの様な出会い。

以降、私は自然と彼を守る様になる。

私に力を与えてくれる契約者であるという事も守る理由のひとつではあったが
彼自身には何の力も付与はされなかったというのが、その主な要因だったのだろう。

契約者は、契約により身体能力が高まるという例があるらしいのだが
私たちはその例から漏れてしまったという事だ。

特別、どうという事もない。
私が守れば良いというだけの事……
私には、彼を守るに十分な程の力が与えられているのだから。



小さな頃の彼はオドオドしていて、イジメの対象になる様な子だった。
ひどくイジメられた次の日は、登校を拒否する事も度々あった。

都市伝説たちに狙われる事もあった。
私は、ただ守っていた。

その後も色んな事があった。
数え切れない程の出来事……それでも、確かに思い出せる。

少しずつ、彼は成長し……
徐々にだが、守る必要もなくなって行った様に思う。



そんな彼も、今では普通の社会人だ。
朝から晩まで普通に仕事をして……本当に、普通の大人になった。
社会人になって3年目、仕事にも慣れて充実した日々を送っている。

最近ではあまり会話もしない。
最後に話をしたのは、いつだっただろうか。

普通の生活を送る彼に……
果たして、私という非日常は必要なのだろうか?
もう、契約を解除すべきなのではないだろうか?

そんな風に思う様になっていた。
この15年という歳月が、自分を変えたのかもしれない。

今日こそは、今日こそは……そう思い、ずるずるとここまで来た。
でも……
今日こそは本当に、契約解除の話を切り出そうと心に決めている。

以前、ある仕事で知り合った都市伝説に……
ソイツは本当に、胡散臭くて変態な都市伝説なのだが……

『全く……何を悩んでいるのか知らんが……キミらしくもない
 ガツンと言ってやれ、その方がお互いの為になるのだろう?』

悔しい事に、アイツの言葉に背を押され、心を決めた。

アイツにまともな事を言われると、何故か腹が立つ。
これ以上、言わせておくワケにもいかないと思ったのも要因ではある。



世間はゴールデン・ウィーク

天気は晴れ、快晴だ。
この寂しい気持ちには似つかわしくない天気の様にも感じる。

彼は今日、休みで家にいる。
すぐ目の前のソファーに座り、一人でテレビを見ている。

「ねぇ、少し……話があるんだけど……いいかしら?」

振り向く彼。
私の表情を見て、首をかしげ、その後、すぐにテレビの電源を切る。

「いいよ。」

大事な話だと分かってくれた様だった。

「外で話しましょうか……いい天気だし……」
「そうだね。」
「じゃあ、少し歩いて公園まで行きましょう。」

歩いて15分くらいはあったはずなのに、公園へはすぐに着いてしまった。
時間の感覚が麻痺しているのかもしれない。



公園にあるベンチに並んで腰を掛け、お互いに前を見る。

「私、アンタとの契約を解除しようと思うの。」

キッパリと言う。

彼がどんな反応をするのか、興味があった。
驚いたという表情をするのだろうか?
寂しいという表情をするのだろうか?
どんな表情をするのだろうか?

でも、返ってきたのは……

「そうか……やっと……やっと、契約を解除してくれるんだ。」

予想していたものとは大分違う言葉
期待していたものとは大分違う言葉

浮かんだ表情は、安堵……
私との契約が解除されるのを待ち望んでいたという事だろう。



そうか……やはり、私は……
彼の日常に影を落とす存在だったのだ。

でも、これが当然の結果だとも思う。
普通に考えたら、都市伝説なんてものは邪魔にしかならない。
だからこそ、契約解除について考え続けていたのだ。

「ええ、解除しましょう。私はもうアンタには必要ないと思うの。」
「必要ない……そうだよね……俺にはもう、貴女は必要ないんだ。」
「分かってくれるのね……」
「ああ、分かってると思うよ。」
「そう……良かったわ……」
「あれ?ひょっとして嫌がると思ってた?」
「え?……そんな事……ないわよ……」
「だよね……俺だって、もう子供じゃないんだからさ。嫌がったりしないよ。」
「そうね、随分……成長したわよね……もう、大人なのよね……」
「そうだよ……だから、もう必要ないんだ。」
「ええ、そうね……必要ないわね。」

人間の言葉がこんなに重く感じるとは
私は、随分と弱くなったものだと思う。



明るい表情で彼は続ける。

「ねぇ、口裂けお姉さん……」
「何?」
「俺ね、ずっと考えていたんだ……」
「何を?」
「口裂け女の都市伝説ってさ……子供達を怖がらせる話だよね……」
「そうね……」
「でも、それってさ……怖がらせる事によって……
 寄り道せずに、遅くならない内に、家に帰すのが目的だっていう話があるよね?」
「そうね……そんな話もあったわね。」
「俺さ……この話、信じてるんだよ。」
「そう……」

何でこんな話をするのか、この時の私には理解できなかった。

「それで、思ったんだ。」
「……」
「俺が信じたこの話……口裂けお姉さんにも影響を与えているかもしれないって……」

私はただ、無言で、彼の言葉を待つ。



「もし、影響を与えているとしたら……
 俺みたいな役立たずの契約者と……何で、ずっと一緒にいてくれるのか……
 それはきっと……俺が役立たずで弱い子供のままだからなんだと思う。
 だから……
 小さい頃、苛められてた俺が、それに耐えられる様な心を持って
 もっと、もっと、成長して、成長して……
 他人に迷惑をかけない様な、ちゃんとした男にならないと……
 そうやって……俺がしっかりしていかないと……
 口裂けお姉さんが、安心して俺との契約を解除できないんじゃないかってさ。
 じゃないと、他の子供達の事を見てあげられないんじゃないかって。
 だから俺……そう考えてから、ずっと頑張って来たんだ。
 もう大丈夫だねって、契約を解除しようって言ってくれる日を……
 ずっと、待ってたんだ。」



だから、契約解除をあんなにも喜んでいたのか……
と、そう理解した。

今度は理解できた。

そして、私は思う。
彼の言っている事が、正しい様な気がする……と。

私はこの時をずっと待っていたのだと、そう思う。

人間の言葉がこんなに重く感じるとは
彼は、随分と強くなったものだと思う。

「大人に……なったわね……本当に……見違えるくらい……本当に……」

「うん、ありがとう……俺さ……昔、月曜日が怖かったよ……情けない話だけどね。
 でも、そういう時に、お姉さんが言ってくれた言葉があるんだ。
 憶えてるかな?俺も正確に憶えてるわけじゃないけどさ。」

*



『確かに、月曜日は憂鬱ね。
 嫌な事があるかもしれない。
 そう思うと、脚も、胃も、重くなる。
 でも、今までの人生を振り返って見て、楽しい事もあったでしょ?
 月曜日は、そういう事が起こる日かもしれないし
 少なくとも、楽しい事が出来るチャンスがある日なのよ。
 これはね、言うなれば、宝くじみたいなものよ。
 だから当選発表があるまでドキドキしていればいいの。
 はずれたっていい、気にする事ないわ。
 また、次があるもの。また、チャンスがあるもの。
 ほら、月曜日って何だかワクワクしてこない?
 家に引き篭もってるだけじゃ、絶対、そのチャンスは巡って来ないの。
 分かるでしょ?
 さあ、行ってらっしゃい。
 嫌な事からは、私が助けてあげるわ。』

*



「憶えてるわ……でも……」

学校を休まれると、一日中、相手をしなくてはならないから……
面倒だなって思って、考え出した言葉だった。

でも、そんなこと……今更、言えないか……

「良い言葉だと思うんだ……今でも、これを支えにして乗り越えてる。」

まぁ、私らしい言葉だった様にも思う。

「私、アンタが嫌がる様な事があっても……」
「そうだね……一度も助けてくれなかったんだよね。」
「ふふ……そうね。」
「でも当時は、騙されたって思いながらも、同じ事を言われると今度こそって思ってた。」
「まぁ、いいじゃない……そのお陰で今のアンタがあるのよ。」
「認めたくない様な気もするけどね。」

そう言って、笑い合う。
快晴には、こんな笑顔が似合う。

けれど、やらなければいけない事がある。

「じゃあ、そろそろ……解除しましょうか……」
「分かった……やろう……俺は、どうすればいい?」
「私の言う事、する事をそのまま受け入れてくれればそれでいいの」
「分かった、契約の時と同じだよね……」
「ええ」



私は、右手で彼の頬を撫でながら、見つめ……爪先立ちになり、軽く抱擁する。
そして、彼の耳元でそっと囁く。

「両者の同意をもって、我、汝との契約を解除する。」

彼も静かに、後を追う。

「我、汝との契約を解除する。」

ふつ、と何かが切れる音が聞こえた様な気がした。

「これで、おしまい……」
「うん……今まで、確かに繋がってたんだって感じたよ。」

繋がりが切れた事よりも、繋がっていた事を改めて意識した。

「そうね……私も、そう感じたわ。」

もう一度、彼の頬を撫でながら見つめる。

「背……高くなったわね……」
「うん……」

「体つきも逞しくなった……」
「うん……」

「私がいなくても、もう大丈夫ね……」

「……うん」



すっ、と爪先立ちになり
マスク越しに、口づけする。

ほんの僅かな時間
一瞬だけ、時間が止まった気がした。
でも、一瞬だ。

「じゃあね、さよなら。」
「……あ……ああ……元気で……」
「寄り道しないで、帰るのよ?」
「……分かってる……遅くならない様に帰るから大丈夫。」

私は全てを振り切って踵を返し
振り向かず
彼の家とは反対へと歩を進める。

彼の歩き出す気配が感じられた。
遠のいて行く。
追っては来ない。

さよなら。

こんな形の契約解除もあるのだな……
と、この時……何となく思った。

*



行く当てもなく歩き続けると、前方には見知った顔。
アイツだ。
知り合いの都市伝説。

「ひょっとして、見てた?」
「見てたねー、全部見てたねー。」
「死にたいの?」
「……すまんすま……いや……すみませんでした。」
「まぁ、いいわ……今日のところは許してあげる。」
「ぶたれたり、なぶられたりするのは、むしろ歓迎だったんだが……死ぬのはちょっと。」
「やっぱ、死んどく?」
「……本当に、すみませんでした。」

これでも、心配してくれているのだろう。
でも、そう思うと無性に腹が立つ。

まぁ、いいわ
今日は、気分が良い……。

「ねぇ……私、綺麗だった?」

確かな声で、力強く

「ああ、綺麗だった! 最高にイイ女だったと思うぞ!」

知り合いの都市伝説は、そのどこか人懐こい顔を私に向けて返答した。

*



世間はゴールデン・ウィーク

天気は晴れ、快晴だ。
この寂しい気持ちには似つかわしくない天気の様にも感じる。

だけど、こんなに胸いっぱいに寂しさを詰め込むと
なんだか、満たされた様な気にもなるから不思議だ。

「さて、私には……これからも子供達を導く仕事が待ってるのよね。」
「そうだな」
「さしあたって、まずは……何をすれば良かったのかしら……」
「Q&Aの続きだろうな」
「ああ、そうね……wikiのご新規さん向けガイドライン……完成させないといけないわよね」
「うむ」

人面犬と私は、花ちゃんの待つ学校へと向かう。
次はどんな話が待っているのだろうか。

少なくとも、楽しい話が出来あがる可能性が、ゼロではないのは間違いない。
書かずに待っているだけじゃ、絶対、その可能性はゼロのままだ。

「さあ、今日もやるわよ!」

私は口裂け女

15年という歳月が、契約者の想いが、私の都市伝説としての存在意義を変えた。

どうやら今は、子供達を導く存在らしい。

【END】





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