「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-54q

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だれでも歓迎! 編集
 約束の日が近い
 それを知りながら、その日を待ち望み続けるか
 お前の心は、あの頃から変わっちゃいないのか?
 もし、そうならば容赦はしない
 お前が望む通りに
 無慈悲に、残酷に、容赦なく
 何度でも何度でも、殺し続けてやろう



                      Black Suit H









「----ふぅ」

 街中を歩きながら…彼、黒服Hは、小さくため息をついた
 …残り、三人
 あと残り三人仕留めれば、自分達の復讐は終わる
 喜ばしい事のはずである
 ……自分達は、その為に生きてきていたのだから

 だが
 血塗れで立ち尽くしていた辰也の姿が、脳裏に浮かぶ
 …H-No.9が、辰也に何を言ったのか…ドクターから、話は聞いた
 よりによって、辰也を逆上させる事ばかり、口にしやがって
 物心ついた時には「組織」の実験体として生活してきていた辰也には、家族と呼べるような存在は、いない
 一応、戸籍上は自分が辰也の兄という事になっているし、父親か兄の代わりのように振舞ってきたつもりではある
 だが、実際の所、辰也にとって、今まで「家族」と呼べる存在は、いなかった
 その辰也にとって…今、共に生活している仲間は家族同然の存在だ
 その存在に危害を加えるようなことを口にしては、辰也の殺意が膨らむのも当然だ
 ………だとしても、しばらく使っていなかった「身体能力強化剤」の力を、引き出したか
 久方ぶりにその力を引き出した反動で体中に激痛を感じていたようだが、ドクターから薬を受け取っていたし、1日ゆっくり休めば治るはずだ
 「組織」に実験され続けた証拠であるその力を嫌って、使いたがっていなかったと言うのに…一定ラインを超えた殺意が、それを使う事を躊躇させなかった
 あの時、一瞬見せた暗い笑い
 自分もまた、復讐に心を静めた存在だからこそ、わかる
 復讐の為ならば、手段を選ばない
 そのために、自分自身を犠牲にしても構わないという覚悟

「…そこまでする必要、ないってのに」

 確かに、連中に対する恨み、憎しみは、自分よりも辰也の方が深いだろう
 ……復讐と言う牙を教えたのは自分だ
 己の置かれた境遇を、諦めて受け入れようとしていた辰也に、それ以外の世界を教え、復讐と言う感情を芽生えさせたのは、他でもない自分
 だが、その牙を教えておきながら、Hは自分の復讐を辰也に譲るつもりは、これっぽっちもなかった
 復讐と言う牙を剥くのなら、それは止めない
 自分の牙と辰也の牙、どちらが先に相手を仕留めることができるか
 その程度にしか考えていなかった

 既に、自分は四人仕留めた
 辰也は、H-No.9を仕留めた事で、三人仕留めた事になる
 …残り、三人
 それも、早いもの勝ちだ
 どちらが先に相手を見つけて殺すか、ただそれだけ
 ……しかし
 その残り三人を、何が何でも自分が先に見つけ、殺すべきでは、とHは考える
 今のままでは、辰也は復讐に囚われすぎて…自分自身を、見失う
 復讐をやり遂げた瞬間に、生きている目的を見失ってしまう

 復讐以外のことも、教えたつもりだった
 自分が教えられる事は、伝えられる事は…全て、伝えたつもりだった
 だが、辰也の心に一番強く根付いたのは、結局、復讐と言う暗い感情だった、と言う事か
 今、共に生活している仲間達との生活で、その心は少しは軽くなっているはずだが
 ……それでも、まだなお、復讐と言う感情は、強く強く、辰也を引きずり続けている

 残り、三人
 それを、自分が全て仕留めてしまえば…辰也に手を下させなければ
 少しは、マシだろうか
 そうして、あのお姫様辺りにでも、頑張って辰也を引き止めさせれば、何とか…

 ………他人任せの、その現状に
 Hは小さく、自嘲気味に笑った

 残り三人
 全員殺せば復讐は終わる
 そして、復讐が終われば


 次は、ヘンリエッタとの約束を、果たす番だ


「…………お?」

 ぼんやり考え込みつつ、街中を悪魔の囁きの捜索という理由にかこつけてぶらつき続けていて
 …見覚えの在る姿に、立ち止まる
 あちらさんも、Hに気づいたようで、立ち止まってきた

「よぉ、Tさん
「仕事中か?黒服さん」
「あぁ。悪魔の囁きの捜索を、な」

 悪魔の囁き
 …その単語に、Tさんが反応を見せてくる
 なるほど、今回も巻き込まれている、か

「お互い、厄介な事に巻き込まれやすいなぁ?」
「まったくだ」

 小さく、ため息をついているTさん
 まぁ、仕方あるまい
 ここは、学校町だ
 都市伝説である以上、厄介な騒ぎに巻き込まれやすいのだから

「…あぁ、そうだ、黒服さん」
「何だ?」
「お嬢さんと、顔を合わせてな」

 ……ほぅ?と
 Hは、窺うようにTさんを見る

「まさか、あの時モンスの天使をとめた存在が、あんなに幼い少女だとは、思わなかった」

 ……見た目通りの年齢だったら、な
 こっそりと、心の中で付け足してやった

「そうか、お嬢さん、許可を得て出たのか、それともまた勝手に出たのか……ま、もし顔を合わせたんなら、仲良くしてやってくれや。世間知らずで尊大だが、まぁ、悪人じゃあないからな」
「…許可、か。制御の難しい都市伝説と契約しているが故に、軟禁状態だったのだな?」

 そう、話したか
 あの過労死候補生の同僚にもそう説明したのだし、表向きはそれで通しきればいいだろう

「そうさ。ヘタに暴走して、周りを危険に巻き込んでも困るだろ?」
「つまり、黒服さんは、その危険を冒してまで、あの時、お嬢さんに助けを求めたと?」

 ………おぉっと
 そう来たか
 Hはくっく、と小さく笑う

「…あー、そうだよな。今年から自由を得た、って事になってるんじゃ、矛盾するわな……まぁ、あのお人好しの同僚は気づいてないし、いいか」
「騙しているのか、あの人を」
「ま、そう言うなや。何せ、お嬢さんは特殊な立場だからな。表向き、そう言う事にしておかないと厄介なんだよ」

 やや責めるような視線を向けてきたTさんに、そう答えるH
 Tさんとて、元は「組織」に所属していた身だ
 ある程度は、察してくれるだろう

「…特殊な立場、か」
「あぁ……お嬢さんも、辰也と同じ実験体でな。一応人体実験関連はもう全て中止されているんだが、その後の経過を今でも検査され続けてるんだよ。その時間も少しずつ減ってきて、自由が時間が増えてるって訳さ」
「なるほど」

 ふむ、と
 Tさんは、頷いて

「嘘だな」

 と、そう言って来た

「あぁ、嘘だ」

 さらっ、と
 Hもあっさりと、それを認める
 さすがTさん、騙されてはくれない
 まぁ、無理だろうな、とわかっていて言ったのは自分だが

「Hナンバーの実験体の生き残りは、俺と辰也だけだからな。まぁ、お嬢さんがHナンバー絡みの存在で、特殊な立場ってのは嘘じゃあないが」
「Hナンバーか…そう言えば、H-No.9とやらが、悪魔の囁きの騒動に、加担しているらしいな?」
「あぁ。禁止された人体実験関連に関わってた研究者の1人な。人体実験禁止された腹いせで裏切ったらしいな」
「……なんとも、身勝手な理由だな」
「ま、Hナンバーの研究者達なんざ、全員そんなもんさ。その研究者達も、もう半分以上生きちゃいないが」

 残り三人だ
 自分が復讐を開始してから、今年で6年目
 やっと、ここまで追い詰めた
 後は、厄介な相手しか残っていないが……今年で、全て蹴りをつけるつもりだ

「…その、お嬢さんが。H-No.9に関しては、自分「達」がどうにかする、という趣旨の発言をしていた」
「……そう言う風に言ったか、お嬢さんは」

 感づかれているだろうな
 そう考えながら、話す

「俺と辰也にとっちゃ、そのH-No.9は復讐対象でねぇ?その息の根止めるのを、他の連中にゃあ、絶対に譲りたくはないのさ」
「……復讐、か」
「あぁ。特に、辰也はあいつを酷く恨んでたからな。まぁ、人体実験、特に薬物投与の実験を三度の飯より好むような奴で、辰也も色々されたからだろうが」

 …だから、余計に
 殺意が膨らんだのだろうから

「……ま、安心しとけや。厄介な能力の使い手だが、もう心配いらねぇよ」
「酷く断定して言うな?」
「あぁ。もう、死んだから。H-No.9は」

 あっさりと、事実を伝える
 酷くあっさりとしたその言葉に、Tさんは眉をひそめた

「…それは、確かか?」
「あぁ。死んで、消滅する瞬間を見た」

 都市伝説として、死を向かえ
 消滅するその瞬間を、確かに見たのだから
 …もう、生きているはずも、ない

「お嬢さんにも、今朝、それは伝えた。Dの奴にも、すぐに伝わるだろ」
「そうか……」

 考え込んでいる様子のTさん
 それに、くっく、とHは笑う

「警戒すべき事が一つ減って、良かっただろ?」
「…まぁ、その通りではあるな」
「もう、朝比奈 秀雄に「都市伝説の契約書」は渡らない。コーク・ロアの契約者がこれ以上増える事もないだろうよ。今いるのを全て何とかすりゃあ、相手の牙を一つもげる」

 ……もっとも
 相手がそう簡単に牙をもがせてくれるとは、思えないが

「ま、Tさんもこの件に関わるんだったら、気をつけとけや。特に、朝比奈 秀雄にはな……洒落になんねぇほど強いぞ、あのおっさん」
「戦ったのか?」
「俺は弱いから、逃げるので精一杯だったけどな」

 自分では朝比奈 秀雄には「勝てない」
 Hは、それを強く自覚していた
 再びメンテナンスを開始し、体調が整っている今でも、その考えは変わらない

「じゃ、俺はこれで。一応仕事中なんでね」
「あぁ…………黒服さん」
「うん?」

 立ち去る、その直前、振り返ると…Tさんは、一瞬視線を彷徨わせてから、問い掛けてくる

「…H-No.9を殺したのは、あなたか?」

 …その、問い掛けに

「そうだよ」

 と、Hは嘘をついて、この場を立ち去ったのだった



 …ヘンリエッタが、ある程度自由に外に出るようになって
 彼女が、誰かと関わりを持つ事が多くなった

 ……さて
 ヘンリエッタは、生きることに「未練」を持つようになるか?

 死ぬ事を、殺される事を望み続ける死にたがり


 殺してやる、と言う約束を
 自分は、果たす時が来るだろうか?




to be … ?



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