「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-54p

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 賑やかな繁華街の一角
 そこで、一人の少女がむぅ、と思案顔になっていた
 小学校低学年程度、と想われる外見の、黒いゴスロリ衣装を纏った少女だ
 黒いレース生地の傘を差し…むむむぅ
 それを前に、思案している

「……これは、どうやったら手に入るのじゃ?」

 少女…ヘンリエッタの前にあるのは、クレーンゲーム機
 ゲームセンターの店先に置かれた、可愛らしいヌイグルミの入ったクレーンゲーム機だ
 ででん!と、人気のだれだれ熊のヌイグルミが一つ、その中にある訳だが
 …ヘンリエッタは、どうすればこのヌイグルミが手に入るのか、わからない
 まだまだ、今のご時世の一般常識などが欠落しているヘンリエッタ
 まだ、クレーンゲーム機、と言う物がよくわからないのだ
 だが、欲しい
 この世間を舐めきった表情をした、だらけた熊のヌイグルミが欲しい!!
 何とか、手に入れる方法はないものか
 ヘンリエッタが、思案を続けていると

「…嬢ちゃん、どうしたんだ?」
「む?」

 突如、背後から声をかけられ、振り返る
 そこには、高校生ほどの、ヘンリエッタとしてはなんだか親近感を覚える胸をした少女が、立っていた



 そして、数分後

「おぉ~!」

 ヘンリエッタは、無事、熊のヌイグルミをゲットしていた
 声をかけてきた少女が、ゲットしてくれたのだ

「ありがとうなのじゃ!」
「ん、どういたしまして」

 礼を述べるヘンリエッタに、笑ってそう言ってくる少女
 ヘンリエッタの能力が、少女は都市伝説契約者であると告げてきているのだが、特に悪意や敵意、危険性は感じない
 気にしなくても良いだろう、とヘンリエッタは考える

「何か、お礼がしたいのじゃ」
「いや、いいよ、礼なんて」
「そう言うでない。親切にされたからには、お礼をするのじゃ!」

 断固、そう主張するヘンリエッタ
 どんなお礼をしたら良いか、考える
 そんなヘンリエッタの様子に、少女は参ったなぁ、と言った表情をして

 …と、その時
 ピピピピピピピピピピピピピピ………、と
 周囲に、電子音が響いた

 ヘンリエッタが肩から下げている、黒いレースのついたゴスロリ仕様のポシェットからだ

 ……その、音に
 ヘンリエッタは、かすかに表情を強張らせた

「む、すまぬ。少々待っておくれ」

 ごそごそ、ポシェットから、ポケベル…に、見えるそれを取り出した
 …「悪魔の囁き」が、一定範囲内にいるかどうか、それを調べるための機械だ
 Gから、「今の時期外を出歩かれるのでしたら、その装置を必ず持ち歩き、作動させておいてください」と煩く言われていたので、仕方なく持ち歩き、作動させていたのだが
 ……これが、悪魔の囁きの気配を、告げている
 目の前の少女からではない
 だが…………近い
 このゲームセンターのすぐ傍の、路地裏辺りに反応があるようだ

 ヘンリエッタが、そちらに視線を向け、路地裏に入ろうとしたせいか

「ん?何かあるのか?」

 と、少女も、そちらに視線を向けた

「あ、い、いや、何でもないのじゃ」

 慌てて誤魔化そうとするヘンリエッタ
 自分に親切にしてくれた少女を、都市伝説絡みの事に巻きこむ訳にはいかない
 そう考えたのだが……しかし、遅かった

 その、路地裏から
 何者かが、飛び出してきて


「また会えましたね、麗しきレディ!!是非、膝枕をばっ!!??」


 ごっすーーーーん
 飛び出してきた、それは…純白の白馬に、あっさりと、蹴り飛ばされた

「…何事じゃ?」
「うわ、なんかすっげぇデジャヴ」

 思わず呆然とするヘンリエッタと…何やら、大変と覚えのある光景を見たらしい少女

 …ひひん、と
 純白の、額から角を生やした白馬が、少女の前に跪いた
 ユニコーンだ……何故、こんな貴重な都市伝説が、日本に?
 ヘンリエッタは、先ほどユニコーンに蹴り飛ばされた人物が、その発言からユニコーンの契約者であろうと当たりをつけ、蹴り飛ばされた先に視線をやる
 …後頭部に馬の蹄の跡などつけて、気絶していたようなのだが

「……っの、エロホース!毎度毎度不意打ちはやめろっ!?」

 ずんずんずん、と
 物の数秒で復活して、ユニコーンに文句を言っている
 なんと言う回復力だ

「…嬢ちゃん、ちょっと、下がってた方がいい」
「む?」

 す、と
 少女が、ヘンリエッタを庇うような位置に立った
 ごそごそと、少女が持っていた鞄から、人形が出て来て顔を出す

 ……なるほど
 ヘンリエッタが都市伝説であると気づいていないようだ
 いや、都市伝説の気配を感じる能力でも持っていない限り、そう簡単には気づかないだろうが

「あぁ、警戒しないでくれ、レディ。俺達は、ただレディに膝枕してもらいたいだけだ」

 警戒態勢を示す少女に、そう告げる男
 人形のように端整な顔立ちではあるが……やや、変態よりの性格のようである

「こないだ、人を襲ってたじゃねぇか」
「それは相手がビッチだったから。俺は全世界の乙女(処女)の味方!!乙女は決して襲わない!!!」

 少女の警戒心たっぷりの言葉に、堂々とそう告げた男
 ひひん、とユニコーンも同調している
 駄目だ、この処女厨共
 早く何とかしないと

「…と、言う訳で、膝枕してくださいお願いします」
「土下座っ!?」

 っば!!と
 目の前で土下座してきた男に、少女はむしろますます警戒するように後ずさった
 …ここは、自分が何とかしなければ

 ずい、と
 ヘンリエッタは、今度は自分が、少女を庇うように前に出た

「あ、嬢ちゃ…」
「お前が何者かはわからぬ。だが、この者は困っておろう。膝枕なら、妾がしてやる」

 少女にとってもらったヌイグルミを抱きかかえたまま、そう宣言したヘンリエッタ
 ……じ、と
 男とユニコーンはヘンリエッタを見つめて

「………駄目だっ!?乙女である事に変わりはないが、俺はロリコンではないっ!?」

 ひっひひん
 男もユニコーンも、悩むように項垂れた!!

「む!?失礼な。妾がお子様だとでも言うかっ!?」
「…あー、うん、世間一般では、嬢ちゃんはお子様の範疇だと思うぞ?」

 少女にも、そう告げられてしまったヘンリエッタ
 …実際は、明らかにこの中で一番年上なのだが、誰もわかるまい

 ……に、しても
 この失礼な男、ちょっと血でも吸ってやろうか
 ヘンリエッタが物騒な事を考え出した、その時……「悪魔の囁き」の気配を探る機械が、再び作動した
 機械は告げてくる
 …目の前の相手は、「悪魔の囁き」にとり憑かれている、と

 まずい
 ヘンリエッタは考える
 この男が、悪魔の囁きによってどんな願望を増幅されたり、歪められてしまっているかはわからない
 …だが、危険な存在である事に変わりはない
 駆除剤を持っているのだ、それを注射してやれば良いとは思うが…悪魔の囁きにとり憑かれている期間が長ければ、駆除剤を一度注射しただけでは、引き剥がす事はできない
 ヘタに駆除剤を打とうとすることで、敵と認識されて戦闘状態になったら…自分は平気だが、自分に親切にしてくれたこの少女を巻き込んでしまう

 ならば、どうするか?

「…お前、逃げるのじゃ」
「へ?」
「こやつ、少々厄介なものにとり憑かれておる。妾が何とかするから、お前は逃げるのじゃ」

 せめて、この少女を逃がすべきだ
 そう考えて、逃げるよう告げながら…ヘンリエッタは、ポシェットから、駆除剤を入れた注射器を出そうとして

「とり憑かれて…?え、やっぱ、あの兄ちゃん、悪魔の囁きにとり憑かれてんのか?」

 少女が口にした、その言葉に
 思わず、ヘンリエッタは、動きを止めた

 …悪魔の囁きのことを、この少女は知っている?

「……ん?囁き?何の事だ?」

 首を傾げてくる男
 …が、どろ、と
 その胸元に…黒い染みが、浮き出始めている
 どろ、どろ…………と
 それはやがて、黒い双頭の蛇となって、ヘンリエッタと少女の目の前で、実体化した!!


『ドウシタァアアアアアア?欲シンダロォ?膝枕。ダッタラ、無理矢理手ニ入レチマエヨォオオオオ!!??』


 双頭の蛇が囁く
 ユニコーンの契約者である男に、悪への誘いを囁きかける

 男の全身に絡みつくほど大きな姿で実体化した双頭の蛇
 これは…相当、長い間とり憑かれていたようだ
 駆除剤では、駆除しきれない
 ヘンリエッタは小さく舌打ちし、駆除剤をポシェットに戻す
 相手を実力行使で気絶させるか…ここは一度、撤退するしかない
 この男と遭遇経験があるようで、さらに、悪魔の囁きの存在も知っているこの少女を逃がす事を優先するとなると…逃げた方が良いか

 悪魔の囁きに囁かれる男
 …ゆらり
 少女とヘンリエッタに、視線を向けて…

「---っいや!!!乙女に乱暴を働く訳にはっ!!膝枕は同意の上で!!!!」
『コノ野郎ォオオオオオッ!!!???ココダケハ譲ラネェノカッ!?変ナトコロデ常識固持シテンジャネェゾコラァアアアアアアアアッ!!??』

 よし、よくわからないがチャンス
 ヘンリエッタは、少女を見上げて、告げる

「…何故、お前が悪魔の囁きの事を知っているのかは、わからぬ。だが、ここは危険じゃ…逃げるぞ」
「へ?」

 ばさ、と
 ヘンリエッタの背中から、蝙蝠のような羽が生えて
 そのまま飛び上がり…ヘンリエッタは、少女の体を持ち上げた

「う、わ!?」

 ばっさばっさばっさ
 少女の体を軽々持ち上げ、ヘンリエッタは空中へと跳び上がる!

「ユニコーン契約者ならば、空まではついてこれんじゃろう」
「いや、そうだけど……うわ、飛んでる!?」
「おそらとんでるの?」

 ひょこり
 少女の鞄から顔を出していた人形が、地面を見下ろしてそう呟く
 そのまま落っこちそうになった人形を、慌てて少女は抱きかかえた

「嬢ちゃん、都市伝説契約者だったのか?」
「うむ、まぁ、そんな所じゃ。ひとまず、安全な所まで逃げ………っ!?」

 …この時
 ヘンリエッタ達は……信じられないものを見た

 だんっ、と
 ユニコーン契約者の男が……そのジャンプ力だけで、ヘンリエッタ達と同じ高さまで、跳んで来たのだ
 …何と言う、身体能力だろう
 ユニコーンとの契約の影響に加えて、悪魔の囁きのせいで強化されているのか?

「待ってくれレディ達!怖がらずに逃げないで…」

 ばっさばっさばっさ
 飛ぶ高度をあげたヘンリエッタ
 そして、相手は飛んでいるのではなく、「跳んでいる」のであって

「あ」

 ひゅぅうううううう………
 そのまま、自然落下していった

 ぐしゃ

「うわ、リカちゃん、見ない方がいいぞ」
「みちゃだめなの?」
「うむ、あれはちょっと見ない方が良いな」

 うん
 見なかった事にして、ヘンリエッタは少女を抱えたまま、空を飛び移動する
 …自分よりも大きな少女を抱えて空を飛ぶ幼女など目立ちそうなものだが、意外と気づかれぬまま飛んでいく
 と、言うか、目撃されても見なかった事にされるだけだろう

「さて、どこで降ろそうかの?」
「あ…それじゃあ、ルーモア、って言う喫茶店、行ってくれるか?待ち合わせしてるんだよ」
「ルーモア、か?では、場所を教えてくれるかの?」

 OK、とヘンリエッタに、そのルーモアと言う店の場所を教えてくれた少女
 ヘンリエッタは少女を抱え、その店へ向かって飛んでいくのだった





続く




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