「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-09

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 貴方は自覚していますか
 貴方は理解していますか

 貴方が契約した相手が、どんな存在なのか
 貴方が契約した相手が、この世にどんな影響をもたらすのか

 自覚していないのならば
 理解していないのならば

 それは余りにも愚かで、憐れな事です





                     Black Suit D




「…さて、どうしましょうか」

 黒服の男は、小さくため息をついた
 その口元からは、一筋、赤い血が流れている
 彼が抑えている脇腹には大きな傷があり、そこから耐えることなく出血が続いていた
 出来る限り、早く治療すべきである
 そして、彼はその治療の手段を持っている
 彼の持つジェラルミンの鞄を開ければ、中には蝦蟇の油や河童の妙薬、その他もろもろの治療薬が入っているのだから
 …しかし、今は悠長に治療行為を行っている場合ではないのだ
 今、自分が戦っている相手は…こちらを探している最中だ
 治療中に発見されては危険である

「…隠れている場合でも、ないのですがね」

 早く、相手を止めるべきだ
 幸い、普通の人間にはまだ発見されていない
 しかし…あれが、いつ人間に見付かるか、わかったものではないし
 人間に見付かれば、その人間は確実に被害にあう

「………っ!!」

 聞こえてきた、足音
 彼は、油断なく銃を構えた

 うもぉおおおおおおお!!!!!
 深夜の住宅街に、不気味な鳴き声が響き渡る!!
 彼に向かって、それは突進してきた

「っく!」

 威嚇するように、銃を放つ
 音もなく発射された光線は、迫ってくるそれの足元を狙い打った
 びくりっ!と驚いたそれのスピードが一瞬緩まる

「……全く」

 ぽたり、ぽたり
 脇腹の出血は止まらない
 彼の脇腹を貫いたそれの角は、血にぬれて不気味に月光に照らされ光る

「…教えてくださいよ。あなたは、どんな都市伝説なのですか?」

 ウモォオオオオオオオオオオ!!!
 黒服の問いかけに、巨大な漆黒の牛は、その雄叫びで返事を返してきた


 …遭遇したのは、恐らくは、ほんの偶然だったのだ
 その偶然に、彼は感謝する
 他の人間に遭遇して、人間が襲われていたら大変だ
 …いや、もしかしたら、すでに被害は出ているかもしれないが
 彼が把握している限り、牛に突き殺された人間の報告はない
 だから、恐らく、この都市伝説に遭遇したのは、自分がはじめてなのだろう

 …そう、この牛は、都市伝説だ
 住宅街に、こんな漆黒の巨大な牛が、都市伝説でもないのに現れてたまるか

 牛は、雄叫びを上げながら、黒服に突進してくる!

「っち…!」

 再び光線銃を放つが、今度は止まらない
 突進してくるその攻撃を避けるように、彼は脇道へと退避した
 真っ直ぐ突進する事しかできないのか、牛は一瞬前まで彼がいた位置を通り過ぎていく

「牛、牛……牛絡みで、何か都市伝説はありましたかね…」

 一瞬、脳裏に浮かんだのは、最近、都市伝説契約者たちと協力して倒した『ドナドナ』
 だが、あれとは違う
 アレに、あんな能力はなかったはずだ
 では、こいつは何者だ?

 …出血が、多すぎる
 早く、決着をつけるべきだ
 思い出せ
 何か、該当する都市伝説はないか?

「………!」

 …一つ
 思い当たる物があった
 それがあっているならば…

「…コレが、効くといいんですがね…」

 スーツのポケットから、彼は小さな石ころを取り出した
 キラリ、輝くそれを握り緊め、道に飛び出す
 漆黒の牛は、彼の姿を見つけるなり、突進してくる!!

「当たってくださいよ…!」

 ぶん、と
 黒服は、その石を、向かってくる牛に向かって投げつけた!
 びたん!と、その石……水晶は、牛の額に命中した
 キラリ
 牛の額に当たった水晶が、輝く

 …ッウモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!??

 苦しげにうめく漆黒の牛 
 その体が…じゅうじゅうと煙を発しながら、縮んでいっている
 ぐにゃぐにゃと縮んでいったその姿は…牛ではなく、人間の姿となって
 ぺたん、とその場に座り込む

「ん~………あれ……?」

 ぼんやりした表情の、その人間
 彼は傷口を抑えながら、その人間に近づいていく

「…お怪我はありませんか?自分の名前は、言えますか?」
「…?あ~…あれ…?部屋で寝てたような……あれ?」

 ……やれやれ
 彼は、小さくため息をついた


 …自覚なし、か

『食べてすぐ寝ると牛になる』

 恐らく、それの契約者だ
 しかし、自覚がない

 時折、いるのだ
 都市伝説と契約してしまったと言うのに、その自覚がないものが
 こう言う人物が危険なのである
 能力をコントロールできないのだから
 とりあえず、この人間をどうにかしなければ

「…あなたは、何も見ていません」
「へ?」

 じ、と
 サングラスごしに、その人間の目を見つめる

「あなたは何も見ていない、聞いていない、知らない、わからない」

 黒服は、ゆっくりと、そう語る
 その言葉は、まるで催眠術のように、その人間の脳に染み込んで行く

「だから、もう帰りなさい。あなたは何も知らないままだ」
「ん~……」

 ふらりっ
 立ち上がった人間
 フラフラと、この場を立ち去っていく
 …ふぅ、と、黒服はため息をついた
 同時に、がくり、と膝をつく

「く……出血しすぎましたか…」

 都市伝説だから、生きていられるようなものだ
 ごほごほと咳き込みながら、彼はジェラルミンの鞄からがまの油を取り出した
 それを、おのれの傷口に塗りこんでいく
 激痛を伴いながらも、その傷口は一瞬で再生した
 …全く、便利なものだ

「…に、しても。水晶を使ってしまいましたか…」

 とある契約者から受け取っていた水晶
 …水晶は、パワーストーン的に見れば、「全ての浄化・万能の強運石」という力がある
 全ての浄化の力といっても、強引に都市伝説を人間から浄化することなど、普通は不可能なのだが…
 恐らく、自覚がなかったから、どうにかなったのだ
 自覚があったならば…恐らく、あの人間から、都市伝説を引き剥がす事などできずに
 …自分は、そのまま突き殺されていただろう
 賭けのようなものだったのだ

 そして、その賭けに自分は勝った
 賭けで、生き延びた

 …どうやら、自分はまだ、生きることが許されているらしい

「やれやれ…また、運良く彼女に遭遇できたら受け取るとしましょうか」

 …できれば、あの契約者とはあまり顔を合わせたくないのだが
 パワーストーンの契約者
 あまり…彼女を、組織に巻き込みたくはないのだが

 ため息をつきながら、黒服は若干ふらつきながら、この場を後にしたのだった







  恐れずともいいのです 怖くなどありません
  恐れる必要などありません 理解しているならば

  無駄に恐れても意味などないのです
  どうか私たちを理解して、存在を自覚して欲しいのです





                         Red Cape





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー