私たちを手なずけたつもりですか
それは、間違いです
それは、間違いです
私たちを支配したつもりですか
それは、間違いです
それは、間違いです
私たちは、どんな事があろうとも
決して、何者にも支配される存在ではないのです
決して、何者にも支配される存在ではないのです
Red Cape
「はい……はい、わかりました。やはり、あの件には手出しすべきではないかと…………あぁ、いえ、わかっていますよ。どうにかすべきであると。しかし、明らかに、彼に対して我々は力不足です。絶対に有効な対抗手段が見付かるまでは、手を出すべきではありません。無駄に犠牲者を増やすだけでしょう」
…やれやれと、ため息をつきながら、彼は電話切った
まったく…あの件は、ヘタに手を出しては危ないのでは、と前にも言ったはずなのだが
確かに、早く何とかしたくなる気持ちはわからないでもないが…
まったく…あの件は、ヘタに手を出しては危ないのでは、と前にも言ったはずなのだが
確かに、早く何とかしたくなる気持ちはわからないでもないが…
「どうかしたの?」
黒服の様子に、青年は小さく首を傾げてきた
どろり、どろり
青年によって、口からコーラを流し込まれた存在が、どろどろと溶けていっている
…毎度毎度思うが、何ともグロテスクである
間違っても、子供には見せるべきではない
どろり、どろり
青年によって、口からコーラを流し込まれた存在が、どろどろと溶けていっている
…毎度毎度思うが、何ともグロテスクである
間違っても、子供には見せるべきではない
「…いえ、こちらの話ですので」
「何か、厄介な相手でもいるの?」
「何か、厄介な相手でもいるの?」
…厄介な相手
確かにそうだろう
はっきり言って…あれは、伝説級なのだから
……まぁ、話すだけなら、いいか
確かにそうだろう
はっきり言って…あれは、伝説級なのだから
……まぁ、話すだけなら、いいか
「…決して、手を出そうと考えてはいけませんよ」
「うん」
「うん」
にっこり、青年は微笑んでくる
信用できるか?
……微妙である
が、青年の兄がそれに関わらない限りは、大丈夫だろう
そう、判断しておく
信用できるか?
……微妙である
が、青年の兄がそれに関わらない限りは、大丈夫だろう
そう、判断しておく
「…はるか昔。時の権力者たちにはむかい、謀反を起こした者たちがいました。その中でも、彼は権力者たちにとって、非常に脅威となりうる存在でした……しかし、結局彼は敗北し、切られた首は晒し首となりました」
よくある伝説
はっきり言って、これを都市伝説に含んでいいものかどうか、判断に迷うところではある
…しかし
それは、確かに現代において、都市伝説となってしまったのだ
間違いなく…己が所属する組織の管轄に、入ってしまったのだ
はっきり言って、これを都市伝説に含んでいいものかどうか、判断に迷うところではある
…しかし
それは、確かに現代において、都市伝説となってしまったのだ
間違いなく…己が所属する組織の管轄に、入ってしまったのだ
「しかし、その首は己の体を求めて飛び上がりました。決して腐敗する事無く、目を見開いたまま、飛び上がったのです」
「…あ、もしかして」
「…あ、もしかして」
あぁ、気付いたか
有名な伝説だから、当たり前か
有名な伝説だから、当たり前か
「…平将門、だね?」
「えぇ、そうです…その、首塚ですね。問題となっているのは」
「えぇ、そうです…その、首塚ですね。問題となっているのは」
首塚
関東大震災の直後、時の大蔵省はそれを取り壊して仮の庁舎を建てようとした
しかし、その直後より、職員や工事関係者たちは次々と謎の死を遂げ、犠牲者は14人にも登った
それよって、仮庁舎を建てる計画は中止されたものの、将門没後1000年目に当たる年、大蔵省を含む官庁街は大火事に見舞われ、全焼した…
関東大震災の直後、時の大蔵省はそれを取り壊して仮の庁舎を建てようとした
しかし、その直後より、職員や工事関係者たちは次々と謎の死を遂げ、犠牲者は14人にも登った
それよって、仮庁舎を建てる計画は中止されたものの、将門没後1000年目に当たる年、大蔵省を含む官庁街は大火事に見舞われ、全焼した…
日本史上、最強クラスの呪いの力を誇る都市伝説である
戦後のGHQですら、その呪いを前に工事を断念した事がある
首塚を見下ろす位置にあった某銀行すらも、破綻の憂き目にあい…それも、呪いでは、と言われる
戦後のGHQですら、その呪いを前に工事を断念した事がある
首塚を見下ろす位置にあった某銀行すらも、破綻の憂き目にあい…それも、呪いでは、と言われる
…呪いは今でも続いている
そう、皆が噂する
だから、平将門の呪い、首塚は力を増し続ける
そう、皆が噂する
だから、平将門の呪い、首塚は力を増し続ける
「君たち組織としては、どうしても手に入れたい力なんだね?」
「…らしい、ですね。私としては、触らぬ神に祟りなしで、関わるべきではないと思うのですが」
「…らしい、ですね。私としては、触らぬ神に祟りなしで、関わるべきではないと思うのですが」
だが、組織の中には、そう考えない者もいた
平将門の呪いを、組織に組み込もうとした者たちがいた
平将門の呪いを、組織に組み込もうとした者たちがいた
…しかし
首塚が、人間などに…自分たちのような存在の下に、ついてくれる訳がない
結果として、組織は首塚を敵に回した
首塚が、人間などに…自分たちのような存在の下に、ついてくれる訳がない
結果として、組織は首塚を敵に回した
「現在、首塚は部下を集めている最中だそうで。どうやら、我々組織と敵対関係を貫くつもりのようです」
「へぇ、嫌な敵を作ったんだね」
「はい、全く」
「へぇ、嫌な敵を作ったんだね」
「はい、全く」
あぁ、胃がいたい
今現在、首塚という存在があまりにも大きすぎ、恐ろしすぎるせいか、部下はさほど集まっていないようだが
…もし、部下が充分な数に達したら
その時は、首塚と組織が全面戦争にでもなるのだろうか
…正直、関わりあいたくない
あの威圧感の前に立つのは、もう御免だ
今現在、首塚という存在があまりにも大きすぎ、恐ろしすぎるせいか、部下はさほど集まっていないようだが
…もし、部下が充分な数に達したら
その時は、首塚と組織が全面戦争にでもなるのだろうか
…正直、関わりあいたくない
あの威圧感の前に立つのは、もう御免だ
「首塚の呪いは、組織にも向けられたのかな?」
…ぐしゃり
溶け切ったそれの残骸を踏みにじり、青年は小さく首をかしげる
…相変わらずの、鬼畜どSめ
溶け切ったそれの残骸を踏みにじり、青年は小さく首をかしげる
…相変わらずの、鬼畜どSめ
「幸い、今のところはまだ…だと、思いますがね」
「あぁ、良かった」
「あぁ、良かった」
にっこり
青年は、心のそこからほっとしたように、微笑む
青年は、心のそこからほっとしたように、微笑む
「だって、僕、その呪いのとばっちりなんて受けたくないしね。兄さんにも、何かあったら大変だよ」
「…一瞬でも、何かを期待した私が馬鹿だったようです」
「…一瞬でも、何かを期待した私が馬鹿だったようです」
そうだ、こいつに何かを期待するな
…互いに、利用しあっている身だ
期待など、するだけ無駄なのである
…互いに、利用しあっている身だ
期待など、するだけ無駄なのである
「それじゃあ、仕事も終わったし、僕、帰っていい?」
そろそろアルバイトの時間なんだ、と青年は笑う
そう言えばこの青年、最近、アルバイトをはじめたのだった
確か、あの店は………
……忘れよう
何か、ふっと、嫌なものを思い出したような思いださなかったような
そう言えばこの青年、最近、アルバイトをはじめたのだった
確か、あの店は………
……忘れよう
何か、ふっと、嫌なものを思い出したような思いださなかったような
背を向ける青年を見送る
…首塚
それと、戦う事になったら
あの青年も、巻き込むのか?
それと、戦う事になったら
あの青年も、巻き込むのか?
その日がこなければいいと思う
あんな存在と戦って…無事でいられる人間がいるとは、彼には思えなかったから
いや、都市伝説とて…どれだけの存在が、あの伝説相手に無事でいられる?
あんな存在と戦って…無事でいられる人間がいるとは、彼には思えなかったから
いや、都市伝説とて…どれだけの存在が、あの伝説相手に無事でいられる?
「…触らぬ神に祟りなし。組織の標語にでもしてほしいところですよ」
小さく、小さく、ため息をついて
彼は、青年が溶かしすぎた道路の補修などを行うべく、ジェラルミンの鞄を開け始めたのだった
彼は、青年が溶かしすぎた道路の補修などを行うべく、ジェラルミンの鞄を開け始めたのだった
私たちは、ただ在り続けるだけです
私たちは、ただ生まれた本能のまま在るだけです
私たちは、ただ生まれた本能のまま在るだけです
それが、あなたたちにとって何らかの不利益をこうむろうと
私たちは、ただ自分の身を護っているだけなのです
私たちは、ただ自分の身を護っているだけなのです
Red Cape