はらり、はらり
桜が、静かに舞い落ちる
花見客が多数いる喧騒の中においても、その光景はどこか幻想的だ
桜が、静かに舞い落ちる
花見客が多数いる喧騒の中においても、その光景はどこか幻想的だ
「………ん?」
…そんな、中
上司と、担当契約者と共に花見を楽しんでいた、S-No.560…坂原 想軌は、すぐ傍の桜の木の下で、ぼんやりとしている人影に、気付いた
その、後ろ姿に
彼は、見覚えがあった
上司と、担当契約者と共に花見を楽しんでいた、S-No.560…坂原 想軌は、すぐ傍の桜の木の下で、ぼんやりとしている人影に、気付いた
その、後ろ姿に
彼は、見覚えがあった
「…天地?」
門条 天地
学校町に来た想軌と紗江良の護衛(ガイド)を受け持ってくれた「組織」所属の契約者だ
確か、彼は悪魔の囁きの騒動の際、命令なしに動いただか、それはまだ良いとしてもうっかり目立つ行為をしただかで謹慎を喰らっていたような…?
学校町に来た想軌と紗江良の護衛(ガイド)を受け持ってくれた「組織」所属の契約者だ
確か、彼は悪魔の囁きの騒動の際、命令なしに動いただか、それはまだ良いとしてもうっかり目立つ行為をしただかで謹慎を喰らっていたような…?
そう考え、その人影に、思わず声をかける
………返事は、ない
「天地?」
もう一度、声をかける
すると
すると
「…………?」
ゆっくりと、人影が振り返る
…振り返ったその顔に、想軌は違和感を覚えた
…振り返ったその顔に、想軌は違和感を覚えた
天地、だと思ったその青年は、天地ではなかった
まだ、青年と言うよりは、少年と呼んだ方が正しいような印象
しかし、その顔立ちは、天地によく似ていた
天地を少し幼くすれば、こんな顔立ちなのではないか、とそう感じる
まだ、青年と言うよりは、少年と呼んだ方が正しいような印象
しかし、その顔立ちは、天地によく似ていた
天地を少し幼くすれば、こんな顔立ちなのではないか、とそう感じる
「…誰だ?」
想軌に声をかけられたその少年は、やや警戒した様子で、そう返事を返してきた
少年からしてみれば、見知らぬ相手から、知らない名前で呼ばれたのだ
やや、怪訝そうな表情を浮かべている
少年からしてみれば、見知らぬ相手から、知らない名前で呼ばれたのだ
やや、怪訝そうな表情を浮かべている
「あー……すまない。人違いだった。知り合いによく似ていたもので」
「………そうか」
「………そうか」
想軌の謝罪の言葉に、少年はそう、短く返して
また、ぼんやりと桜を見あげはじめた
また、ぼんやりと桜を見あげはじめた
…いや
ぼんやり、とは、また何か違う
それは、どこか途方にくれているような…
ぼんやり、とは、また何か違う
それは、どこか途方にくれているような…
「Sさん、Sさん」
「うん?どうした」
「…あの子、迷子になっちゃってるみたいですよぉ」
「うん?どうした」
「…あの子、迷子になっちゃってるみたいですよぉ」
少年の様子を見て、「女の勘」で感じ取ったそれを、想軌に伝える紗江良
は?と、その言葉に、むしろジルが反応した
は?と、その言葉に、むしろジルが反応した
「あれは、迷子になるなんて年頃には見えないぞ?高校生くらいのようだし…」
「いや、でもまぁ、年齢に関係なく迷子になる可能性はある訳だから」
「………」
「いや、でもまぁ、年齢に関係なく迷子になる可能性はある訳だから」
「………」
…ジルと、想軌の言葉が聞えたのだろうか
つ、つ、つ、と
少年は、気まずそうに、想軌達から顔をそむけた
つ、つ、つ、と
少年は、気まずそうに、想軌達から顔をそむけた
ビンゴかい
心の中で突っ込む想軌とジル
ジルの言葉通り、少年は高校生くらいに見える…いや、実際には、今年で19歳になる少年なのはさておき…迷子になるとしたら、少々情けない年頃ではある
しかし、実際、何歳だろうと迷子になる可能性はある
それに、今回、紗江良が言った「迷子」と言う言葉には、「連れと逸れた」と言う意味が込められている
そちらの意味で考えれば、別に、これくらいの年頃でも、舞後になっても問題はないだろう
心の中で突っ込む想軌とジル
ジルの言葉通り、少年は高校生くらいに見える…いや、実際には、今年で19歳になる少年なのはさておき…迷子になるとしたら、少々情けない年頃ではある
しかし、実際、何歳だろうと迷子になる可能性はある
それに、今回、紗江良が言った「迷子」と言う言葉には、「連れと逸れた」と言う意味が込められている
そちらの意味で考えれば、別に、これくらいの年頃でも、舞後になっても問題はないだろう
「……連れと………爺ちゃんと、逸れただけだ」
ぼそっ、と
顔をそむけながら、少年はそう言ってきた
迷子だと認められたくなくて、そう口にしたようだが、むしろ、迷子である事を確定させる言葉でしかない
顔をそむけながら、少年はそう言ってきた
迷子だと認められたくなくて、そう口にしたようだが、むしろ、迷子である事を確定させる言葉でしかない
「まぁ、つまりは迷子なんだな」
「………迷子じゃない」
「………迷子じゃない」
何という意地
想軌が、ちょっぴり呆れを見せた、その時
想軌が、ちょっぴり呆れを見せた、その時
……くきゅるぅ
何とも可愛らしい、腹の音が響いた
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
音の、発信元に
思わず、三人の視線が一点集中した
思わず、三人の視線が一点集中した
音の発信元は、間違いなく、この天地によく似た少年
……つつつ、と
また、少年が顔をそむけてきた
……つつつ、と
また、少年が顔をそむけてきた
「…多分、お弁当とか財布とか、全部、その逸れちゃったお爺さんが持ってるんでしょうねぇ」
「……だろうなぁ」
「……だろうなぁ」
紗江良の能力に頼らなくとも、あっさりと予測できる、そのわかりやすい現状に
想軌は、どこか微笑ましさすら、覚えたのだった
想軌は、どこか微笑ましさすら、覚えたのだった
しかし、同時に
門条 天地によく似た、その姿に
門条 天地によく似た、その姿に
つい最近の騒動の最中、資料で見た、「門条 晴海」と言う、かつて、「組織」の実験体だった女性のデータを、思い出してしまうのだった
to be … ?