それは、とある国のとある場所
外界と寸断された、一般人は決して立ち入る事のできぬ場所
外界との連絡手段など、ないはずのその場所にて
外界と寸断された、一般人は決して立ち入る事のできぬ場所
外界との連絡手段など、ないはずのその場所にて
「…ちゃんと、食事は三食とっていますか?きちんと、栄養のバランスは考えていますか?」
『ちゃんと、食べてますよ。栄養も変に偏らないように、肉も魚も食べてますってば……勘弁してくださいよ、シスター・ドリス。俺、もう子供じゃないんですから』
『ちゃんと、食べてますよ。栄養も変に偏らないように、肉も魚も食べてますってば……勘弁してくださいよ、シスター・ドリス。俺、もう子供じゃないんですから』
カソックを身に纏った、一人の美しい女性が、誰かと通信機のような物で連絡を取り合っていた
…これは、本来、こんな場所に持ち込んではいけない物だ
だが、彼女は、とある手段を使って、これを手に入れていた
……何せ、心配で心配で、仕方ないのだ
大切な、息子代わりの、あの青年が
だから、ここに来るよりも前からの親友たちに頼み込んで、手に入れてもらった
お陰で、こうやっていつでも、彼と連絡を取り合える
…これは、本来、こんな場所に持ち込んではいけない物だ
だが、彼女は、とある手段を使って、これを手に入れていた
……何せ、心配で心配で、仕方ないのだ
大切な、息子代わりの、あの青年が
だから、ここに来るよりも前からの親友たちに頼み込んで、手に入れてもらった
お陰で、こうやっていつでも、彼と連絡を取り合える
「あら………私にとっては、あなたはいつまでも可愛い子供ですよ」
くすり、とシスター・ドリスと呼ばれた彼女は微笑む
通信機の向こうの…彼女がヘンリーと呼んだ青年は、ドリスの言葉に苦笑しているようだった
通信機の向こうの…彼女がヘンリーと呼んだ青年は、ドリスの言葉に苦笑しているようだった
『そろそろ、俺はあなたより見た目は年上になりますよ?』
「…見た目など、関係ありません。あなたは、私の大切な息子です」
『…………ありがとうございます。シスター・ドリス』
「…見た目など、関係ありません。あなたは、私の大切な息子です」
『…………ありがとうございます。シスター・ドリス』
感謝の言葉
それを受けて、ドリスは少し、寂しそうに微笑んだ
……あの子は、自分に感謝してくれるけれど
むしろ、感謝すべきは……こちらだというのに
それを受けて、ドリスは少し、寂しそうに微笑んだ
……あの子は、自分に感謝してくれるけれど
むしろ、感謝すべきは……こちらだというのに
『それじゃあ、そろそろ通信切りますよ?俺と連絡とりあってるとこ、他の神父様達に見付かったらやばいでしょう』
「ふふっ、それもそうですね…それでは、また」
「ふふっ、それもそうですね…それでは、また」
ぷつり、と通信を切る
ドリスは、通信機をそっと懐に仕舞いこむと……目の前の、見事なステンドグラスを見上げて
静かに跪き、十字を切る
ドリスは、通信機をそっと懐に仕舞いこむと……目の前の、見事なステンドグラスを見上げて
静かに跪き、十字を切る
「…神よ、私はまた、罪を犯しました」
息子代わりのヘンリーと、こうして極秘に連絡を取り合うたび、彼女はこうして懺悔する
……今、自分が身をおいている「教会」に、このような秘密を抱えている事実を懺悔する
……今、自分が身をおいている「教会」に、このような秘密を抱えている事実を懺悔する
いつも通りの光景
ここは、彼女以外、誰も立ち入りが許されて居ない場所であるが故、この姿を目撃できる者はいない
ここは、彼女以外、誰も立ち入りが許されて居ない場所であるが故、この姿を目撃できる者はいない
……いない、はずなのだ、本来は
だが
この日は、いつもと違った
この日は、いつもと違った
ドリスの背後の空間が、歪む
そこから…音もなく、一人の男が姿を現した
長い白髪、銀色の瞳…眼鏡をかけて、白いスーツを身に纏った青年
そこから…音もなく、一人の男が姿を現した
長い白髪、銀色の瞳…眼鏡をかけて、白いスーツを身に纏った青年
ドリスは振り返ることもなく
その気配に、小さく笑いかけた
その気配に、小さく笑いかけた
「……あなたは、いつかいらっしゃるのではないかと思っておりました」
「…そうかい。それなら、俺が来た用件はわかっているな?」
「もちろんです……ミスター・ザン」
「…そうかい。それなら、俺が来た用件はわかっているな?」
「もちろんです……ミスター・ザン」
ゆっくりと、ドリスは振り返る
そこにいた青年…ザンに、悲しげに微笑みかけた
そこにいた青年…ザンに、悲しげに微笑みかけた
「あの方の事、ですね?」
「あぁ」
「あぁ」
手の中で何かを弄びながら、ザンはまっすぐにドリスを見つめた
その、かすかに威圧感すら感じる視線から、ドリスは逃げようとしない
その、かすかに威圧感すら感じる視線から、ドリスは逃げようとしない
…まるで、逃げない事こそが、己の罪の償いであるかのように
「あの日……あいつは、死んでいなかったんだな?」
「…………」
「ジブリルの野郎が、あいつを逃がしたんだな?そして………お前が、治療したんだろ。なぁ、ドリス!「癒しの土」に飲み込まれて、それそのものになっちまってるお前なら、たとえ死にかけの状態でも、治癒できるだろうからな!!」
「…………」
「ジブリルの野郎が、あいつを逃がしたんだな?そして………お前が、治療したんだろ。なぁ、ドリス!「癒しの土」に飲み込まれて、それそのものになっちまってるお前なら、たとえ死にかけの状態でも、治癒できるだろうからな!!」
感情を爆発させたかのような、ザンの声
ドリスは、それを真っ直ぐに受け止めて
ドリスは、それを真っ直ぐに受け止めて
「…その通りでございます」
一切、否定しなかった
申し訳なさそうに、ザンを見つめる
申し訳なさそうに、ザンを見つめる
「……せめて、あなたにだけでも、真実を伝えるべきでした……しかし、あの時の私達は、あの方を救う事で、精一杯でした…」
「…そのうち、俺との連絡手段がなくなっちまった、って訳か…」
「…そのうち、俺との連絡手段がなくなっちまった、って訳か…」
……彼が死んだのだと、そう思い込んでしまった日
あの血溜まりを、見てしまった後から
ザンは、「組織」との接触を取らなくなっていた
そして、彼との連絡手段も、失ってしまっていたから
……真実を知る事が、できないままだったのだ
あの血溜まりを、見てしまった後から
ザンは、「組織」との接触を取らなくなっていた
そして、彼との連絡手段も、失ってしまっていたから
……真実を知る事が、できないままだったのだ
しかし、先ほど、E-No.0ことエーテルと、彼の契約都市伝説であるマクスウェルの力を借りて、ザンは真実に辿り着いた
かけがえのない親友は
D-No.0は………まだ、生きているのだ、と
D-No.0は………まだ、生きているのだ、と
「過ぎた事は、いい……ドリス、あいつはどこにいるんだ?」
「…申し訳ありません…私は、それを把握してはいないのです。私は普段は「教会」のメンバーとしてここにいて……あの方達とは、あちらからの接触を待つしかないのです」
「…申し訳ありません…私は、それを把握してはいないのです。私は普段は「教会」のメンバーとしてここにいて……あの方達とは、あちらからの接触を待つしかないのです」
…ドリスの言葉から、嘘は感じられない
本当に、知らないのだろう
やや落胆しながら、ザンはため息をついた
本当に、知らないのだろう
やや落胆しながら、ザンはため息をついた
「…そうか」
「お力になれず、申し訳ありません」
「いや、いい………もし、今度、お前にあいつから連絡が来たなら、伝えてくれ……いつもの場所で、会おう、ってな」
「お力になれず、申し訳ありません」
「いや、いい………もし、今度、お前にあいつから連絡が来たなら、伝えてくれ……いつもの場所で、会おう、ってな」
ザンの申し出に、ドリスはこくりと頷いた
…せめてもの、罪滅ぼしをするかのように
…せめてもの、罪滅ぼしをするかのように
それじゃあ、とザンはこの場を立ち去ろうとして…
……が、何か思い出したように、立ち止まる
……が、何か思い出したように、立ち止まる
「あぁ、そうだ、ドリス。お前の土、少しもらえるか?」
「…構いませんが……どなたか、ご病気か、怪我をなさったのですか?」
「あぁ、真実を知るのに、エーテルに無茶させたからな……せめて、怪我くらいは治すもん、渡したいからな」
「わかりました、少々、お待ちくださいませ…」
「…構いませんが……どなたか、ご病気か、怪我をなさったのですか?」
「あぁ、真実を知るのに、エーテルに無茶させたからな……せめて、怪我くらいは治すもん、渡したいからな」
「わかりました、少々、お待ちくださいませ…」
静かに、ドリスは集中する
両手を合わせ、跪き……まるで、神へ祈りを捧げているような、姿で
祈る彼女のその組み合わされた両手
…彼女が、手を開いた時
そこには、一握りの土が出現していた
両手を合わせ、跪き……まるで、神へ祈りを捧げているような、姿で
祈る彼女のその組み合わされた両手
…彼女が、手を開いた時
そこには、一握りの土が出現していた
「癒しの土」
どんな病も治す、奇跡の土
ドリスが契約したことにより、この土は、怪我すらも治癒できるようになった
その土を、ドリスは小さな袋に詰める
どんな病も治す、奇跡の土
ドリスが契約したことにより、この土は、怪我すらも治癒できるようになった
その土を、ドリスは小さな袋に詰める
「どうぞ。使い方は…」
「わかってる。ちゃんと説明してから使うさ」
「わかってる。ちゃんと説明してから使うさ」
…流石に、問答無用で口に突っ込んだりはしない
ザンの言葉に、ドリスはくすりと微笑んだ
ザンの言葉に、ドリスはくすりと微笑んだ
…そんなドリスの前で、ザンは今度こそ、姿を消した
静寂な空間に、彼女は取り残される
静寂な空間に、彼女は取り残される
「……真実を知りましたか……………どうか、無茶をなさいませんように……」
真実を知った主の親友が、「組織」相手に無茶をしませにょうに
ドリスはそっと、神に祈るのだった
ドリスはそっと、神に祈るのだった
to be … ?