「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ドクター-05

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ドクターとバイト青年@出会い編


豊かな実りを迎えた麦畑が広がる郊外の農地
月明かり星明りだけが頼りの真夜中に、まるで真昼のような明るさの場所があった
空に浮かぶのは典型的な未確認飛行物体といった風体の円盤で、周囲の明るさはその円盤から照射されているライトのせいだった
「さて、と」
物干し竿のような長い棒を担いだ青年が、周囲をぐるりと見回して呟いた
「お前ら、言葉は何が通じる? 英語か、日本語か、ドイツ語か、フランス語か」
青年を取り囲むようにいたのは、アンバランスな大きさの頭部と目をした灰銀色の人型生物
リトルグレイと呼ばれるタイプの宇宙人の群れは何かを話し合うかのように音を発し合うと
「わざわざ待ち伏せてまで我々に用でもあるのかね?」
リーダーと思われる大きな個体が、流暢な英語で青年に問い掛ける
「半月ほど前に、南の牧場にいた牛の中身抜いたのは手前らか」
「ふむ」
リーダーはよくわからない仕草をする――人間であれば顎に手を当てているのだろうか
「何か問題でも?」
「牛の数頭ぐらいなら獣とか病気だと思って諦めてやる。だが……牛の様子を見に行った牧場の娘はどうした」
「ああ、 使 っ た 」
拾った小銭で買い食いでもしたかのような、そんな軽い言葉は
青年から「何に」と問い返す冷静さを消し飛ばした
手にした棒の先端をリトルグレイの一体に狙いを定めると、その胴体に鋭い突きが叩き込まれる
「≠☆○@*!」
よくわからない声を上げたリトルグレイは、その突きの一撃で吹っ飛ぶ――事はなく、その背後の空間に押し込まれるようにして消滅した
攻撃を受けたリトルグレイは状況が全く把握できなかった
胴体に衝撃を受けたかと思うと周囲の風景が一変したのだ
それまでは真夜中の麦畑にいたはずだというのに、そこは四方を分厚いコンクリートに囲まれた異臭の漂う広い部屋だったのだ
そして、そこが何処かと考える暇もなくリトルグレイは水音を立てていた
目や口、鼻に入った液体が、粘膜を焼くように刺激する
周囲は掴めば沈んでしまうようなものしかなく、必死に水面から顔を出そうと足掻くが
辺りを囲む黒い影が、手にした棒を眼前に突きつけられたかと思うと
ごつり、と棒の先端が浮かびかけた頭に押し当てられ、圧倒的な力を込められて沈められてしまう
そして、ほんの一瞬だけ水面から顔を出した時に、既に何人もの仲間が同じように棒で水中に沈められている様が見えた
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
それが死体となり、浮かび上がって来る事がなくなるまで
藁をも掴む思いで縋りついていた死体達と同じようになるまで
プールの周囲を囲む影達は、ホルマリンのプールに浮いてくる死体を沈めるのが仕事なのだから
そこに沈められているのは死体でなければいけないのだから
「待て、私を殺せばお前の探している人間の手掛かりh」
リーダーが言葉を告げ終わるよりも早く、青年の手にした棒は最後の一人となったリトルグレイをホルマリンのプールに突き沈める
空に浮かぶ円盤は敗北を察してか、何処かへ消えた仲間達を見捨てるように空高くへ離脱しようとした、が
どこからともなく鳴り響くエンジン音
見れば暗闇の中、煌々と輝くヘッドライトが二つ
畑の中のあぜ道を暴走としか言い様のない速度で突っ込んでくるロールス・ロイスの姿
ロールス・ロイスはあぜ道から跳ねるように麦畑に飛び込み、麦を蹂躙しながらUターンをしたかと思うと
とんでもない速度で土手へと乗り上げ――空を舞った
「……はぁ!?」
青年が間の抜けた声を上げてその姿を目で追うと、放物線を描いて舞い上がったロールス・ロイスはそのまま円盤の側面にめり込んだ
車体がひしゃげる直前、運転席のドアが蹴り開けられたかと思うと、そこからはスーツと帽子でぴしりと身なりを整えた老運転手が飛び出し
次の瞬間にロールス・ロイスにワイヤーが掛けられ何処かへ消えたかと思うと、円盤の真上からもう一台のロールス・ロイスが降ってきて――結果としてそれが止めの一撃となった
空中で爆発四散する円盤を背に、麦畑のあぜ道に着地する老運転手
その背後にまたもう一台、新品のロールス・ロイスが落下してくる
「……何者だアンタ」
「それはこちらの台詞だな、青年。あの宇宙人どもには我々が用事があったのだが」
老運転手の背後、麦畑に墜落して燃えさかる円盤の炎を背に、白衣と銀髪を靡かせて立つ女性の姿
「アンタらも連中の仲間か? だったら」
舞い上がる火の粉を掻い潜り、白衣の女目掛けて駆け出した
「死ねよ」
渾身の一撃を叩き込もうとした、その瞬間
白衣の女がふらりとあぜ道から降りると――いつの間にか乗り込んだのか運転手を搭載したロールス・ロイスが砲弾のように飛び出した
青年の持つ都市伝説『死体洗いのアルバイト』の発動条件は、長い棒で対象を『押し込む』事
契約による身体強化と鍛錬により、熊程度なら平気で突き倒す腕を持っている青年だったが、正面からフルスロットルで突っ込んでくる車に対抗できるはずもなく
「ぶげはぁっ!?」
渾身の一撃であるが故に緊急回避をする事もできず、青年はロールス・ロイスに撥ね飛ばされ錐揉みしながら宙を舞う結果となった

*



それから三日後
包帯とギプスで身体のあちこちを覆われた青年は、病院のベッドの上にいた
「都市伝説の契約者とは凄まじいものだな、アレに撥ねられて三日で意識が戻るとは。普通は死んでるぞ」
「五月蝿ぇ、殺すつもりで撥ねやがって」
窓から病院の駐車場に停まっているロールス・ロイスを見下ろしながら、感心したように頷くドクターと名乗った白衣の女
殺気の篭った目で睨んでくる青年に意地の悪い笑顔を向ける
「先にこちらの話も聞かずに死ねと言い放ったのは何処の誰かね?」
「ぐっ……そもそも言い方や登場の仕方が紛らわしいんだよ。どう見ても悪役だろアレは」
話によるとドクターは、あの宇宙人どもを殲滅するための事前調査のためにあの地を訪れていたらしい
場合によっては友好的な接触をして騙し討ちなども考えていたらしいが、青年が戦っている姿を確認してこれ幸いと便乗したとの事だ
「それで、いいように使われた間抜けに何の用だ。口封じに止めでも刺しに来たか?」
「それならあの晩、撥ね飛ばした後にバックで轢いて、止めに宙返りからの背面ボディプレスを決めようとしてた運転手を止めてまで君を病院に運んだりはしないさ」
「そこまでやろうとしてやがったのか、あのジジイ」
「ところで、だ。我が所属組織『第三帝国』は派手かつ大味な戦闘能力を持つ者ばかりでね。あの運転手でも相当大人しい戦闘能力なのだが、それでもこれから向かう土地での活動にはあまり向いてはいないのだよ」
あれでか、と辟易しながら青年は問い返す
「これから向かう土地?」
「日本だよ。あの国には戦闘航空機や戦闘車両を持ち込むのも難しいし、屋内や路地での戦闘となれば尚更だ。君のような契約者がいると非常に助かるのだが、雇われるつもりはないかね?」
「……俺は」
迷いを見せる青年に、ドクターは淡々と告げる
「君が探していた女性だが」
青年が、明らかに動揺したように身体を震わせる
「回収した円盤の残骸から、女性の身体だった『モノ』が発見されている……確認するかね?」
「いや、いい」
大きな溜息を一つ吐き
「あんた達に付き合ってた方が彼女の事も忘れられそうだ。付き合うよ」
「それはいかんな」
「あ?」
「あれだけの殺意を以って仇を殲滅できるほどだ、大事な人だったのだろう? ならば忘れず永遠に愛し続けたまえ。その上で新たな愛を捧げる相手を見つけ、幸せに生きる事が君の義務だろう」
「矛盾してないかそれ。あの子の事を忘れずに愛してるのに、次の愛する人をとか」
「愛は、愛しただけ無尽蔵に溢れ出すものだろう。例え身体が一つでも、心は無限大だからな」
満面の笑顔で、これっぽっちの疑心も無く言い放つドクターに、青年は苦笑で返す
「努力してみるよ。あんた達の手伝いをするのも、あの子を愛し続ける事も」


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