「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - モンスの天使-09

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 ---小さな子供が泣いている
 親の居ない心細さに
 独りぼっちの心細さに、泣いている

 冷たい廊下に座り込み
 子供は、ただただ泣いていた

 どうして、自分にはお父さんもお母さんもいないのだろう?
 どうして、自分は独りぼっちなのだろう?

 ……自分は、お父さんとお母さんに、捨てられてしまったのだろうか?

 悪い方向に考えは転がり落ちて
 寂しくて、悲しくて
 ただただ、子供は泣き続けた



「………何、泣いてんだ」

 そんな子供に、そう声をかけてきたのは、子供と同じくらいの年齢の、少年だった
 同じくらいの年齢、のはずなのだが…子供を見下ろしてくる瞳は、その年齢に似合わず、酷く冷めていた

 ぐしぐしと
 答える事もできず、泣き続ける子供
 少年は、ため息をついて……ぽふ、と子供の頭を撫でた

「泣くな。煩い。泣いたって、誰も助けやしないぜ、ここは」
「う………」
「…むしろ、煩い、って殺されるかもな」

 びくり
 少年の言葉に、子供は体をすくませた
 静かに、少年は続ける

「ここの連中にとって、俺達は使い捨ての道具でしかないからな。生き延びたかったら、泣いてる暇なんかねぇんだ。生き延びる方法を考えておけ」
「…で、も」

 どうして
 どうして、自分はそんな恐ろしい場所にいなければならないのだ?
 悲しくて、悲しくて
 また、子供は泣き出してしまう

「…お父さん、お母さん…」
「……お前の親は、もう死んでいる」
「-----っ!?」

 少年の、その言葉に
 子供は、涙を流しながら、顔をあげた
 少年は憐れんでいるような表情で、子供を見つめてくる

「…ここにいる、と言う事は…お前の親は、もう死んでいる、ということだ。ここに集められた俺たちくらいの餓鬼は、みんな親が死んだ奴ばかりのはずだからな」
「………ん、な」

 そんな
 いつか、お父さんとお母さんが、迎えに来てくれるんじゃないか
 そんな、ささやかな希望すら、抱けないと言うのか


 それじゃあ
 自分は、何にすがればいい?


 ぼろぼろ、ぼろぼろ、涙を流し続ける子供
 少年は、ため息をついて、子供に尋ねる

「…お前、名前、あるか?」
「……なま、え?」

 そうだ、と少年は尋ねてくる
 ぐしぐし、涙を乱暴にぬぐいながら、子供は答える

「…もんじょう……てんち…」
「……そうか、名前が、あるのか」

 そう、呟いた少年の表情は
 どこか、寂しそうで、悲しそうで……酷く、少年の事が、羨ましそうだった

「それなら、俺とは違うな……担当してくる黒服はいるか?」
「…い、る」
「そいつのナンバーは?」
「……えー……なんばー、よんろくよん……」

 少年の問いかけに、答えていく子供
 悲しい気持ちは晴れないが、涙は止まってきた

「A-No.464…Aナンバーとなると、強硬派か………どっちにしろ、俺よりはマシか」

 ぐりぐりと
 やや乱暴に、子供の頭を撫でてきた少年
 乱暴な撫で方だと言うのに、子供はなんだか酷く、安心できた

「…生き延びたかったら、泣くな。本音は隠せ。思った事はなるべく、口に出すな。与えられた仕事は、何も考えずに全てやり遂げろ。そうすれば、処分される事はない」
「しょ……ぶん……」

 処分、というのが、殺されるという意味なのだと
 子供は、本能的に理解してしまった
 恐怖に、体が震える

「死にたくないだろ?だったら、そうしておけ」
「う、うん…」

 こくり
 子供は、少年の言葉に頷いた

 …もう、涙は完全に止まっている

「わかったなら、いい」

 そう言って、少年はさっさと歩き出した
 子供は慌てて立ち上がり、少年を呼び止める

「ま、待って……!お兄ちゃんは、名前は………?」
「…俺には、名前なんて、ない」

 どこか、絶望したような声で
 少年は、振り返りもせずに、子供にそう答えた
 冷たい廊下を、早足で歩いていく

「-------H-No.96!早く来い。投薬を始める」
「…わかってるよ」

 廊下の向こう側、白衣を纏った黒服が顔を出して…乱暴にその少年の腕を掴んで、部屋の中に引き込んでしまった
 子供は、呆然とその様子を見ていることしかできず


 …再び、一人になってしまった、心細さ
 それに、泣き出しそうになって
 しかし、少年の言葉を思い出し、泣く事はできなかった

 …また、あの少年と会えればいい
 子供は、この時確かに、そう思ったのだ




 …随分と、昔の夢を見た者だ
 青年、モンスの天使契約者……門条 天地は、憂鬱な朝を迎えた
 腕の中の天使が、もぞもぞと動く

「ふにゃ~…?ご主人様、どうしました~?」
「…いや、なんでもねぇ」

 むにゅん
 むにゅむにゅ
 腕の中だけではなく、背中にも天使が抱きついてきている
 そう言えば、昨日は二人出した状態で寝たのだった
 …二人ですんで良かった
 これ以上出ていたら、どこに引っ付かれていたか、わかったものではない
 どちらにせよ、2人が完全に目を覚ますまで、起き上がれない事は確定だが

「…っち」

 夢の事を思い出し、小さく舌打ちする
 まだ、自分が10にも届かない子供だった頃の夢
 今では裏切り者となった、H-No.96…「13階段」の契約者と、会った頃のことを、夢に見たのだ

 あの頃、天地は何も知らない子供だった
 何も知らなかったが故に、「13階段」の言葉にすがることでしか生き延びられなかった
 生き延び続け、大人になっていくにつれ…「13階段」がどう言う立場なのかも、知るようになった


 Hナンバー
 「組織」における、実験体の総称
 他の「組織」メンバーよりもずっと手をかけられて育てられ、能力の向上なども、他の「組織」所属契約者より、ずっと優遇される存在

 それを知って、嫉妬した
 羨ましかった
 自分と同じような境遇だったくせに、そんなにも扱いが違うだなんて

 それを知って以来、死に物狂いで努力した
 自分が契約している「モンスの天使」達の力が上がるように
 弓じゃない、もっと強い近代兵器が使えるように
 もっともっと、たくさんの天使を一挙に召還できるように
 努力し、それを実現してきた
 実験体のように、特別手をかけられなくても、投薬なんてされなくても、これだけの事ができるのだ
 それを、実証したくて

 …結果的に、どんなに努力しても、誰も褒めてなんてくれなかったけれど

 「13階段」の契約者とは、あれからも何だかんだで顔を合わせ続けた
 実験を生き延び続けた「13階段」の契約者
 何も知らなかった頃は彼に懐いても居たが…それは、天地にとって、忘れ去りたい黒歴史だ
 Hナンバーのことを知ってからは、何かと突っかかってはやりあい続けた
 結局、まともに相手をされた事は、一度もなかったような気がしないでもないが


 …そうだ
 実験体は、普通の構成員よりも、ずっと手をかけられる
 それだけ、「組織」に恩があるはずだ
 その癖して、「組織」を裏切るだなんて

 それが、許せなくて
 だから、殺してやりたいと思った
 自分が、殺してやろうと思った
 だからこそ、あの秋の日、中央高校で仲間達と共に何かをやらかそうとしていた「13階段」契約者を殺そうとして……結局、邪魔が入って失敗してしまった
 あぁ、腹が立つ
 憎たらしい

「…他の奴なんかに殺されるんじゃねぇぞ、あの野郎…」

 あいつを殺すのは自分だ
 他の奴に、奪われて溜まるか
 自分には、あいつを殺す権利がある


 今、「組織」は穏健派が主導権を握っており、マッドガッサー一味を討伐する事も、捕縛する事さえ、まともにできない状態だ
 だが、いつか
 いつか、必ず


 自分に抱きついて眠ってきている天使達の感触を感じながら
 天地は己の中で、静かに殺意を燃え上がらせていた



 その殺意が、酷く見当違いなものであるなどと
 その事実に、気づく事も、なく





to be … ?

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