---小さな子供が泣いている
親の居ない心細さに
独りぼっちの心細さに、泣いている
親の居ない心細さに
独りぼっちの心細さに、泣いている
冷たい廊下に座り込み
子供は、ただただ泣いていた
子供は、ただただ泣いていた
どうして、自分にはお父さんもお母さんもいないのだろう?
どうして、自分は独りぼっちなのだろう?
どうして、自分は独りぼっちなのだろう?
……自分は、お父さんとお母さんに、捨てられてしまったのだろうか?
悪い方向に考えは転がり落ちて
寂しくて、悲しくて
ただただ、子供は泣き続けた
寂しくて、悲しくて
ただただ、子供は泣き続けた
「………何、泣いてんだ」
そんな子供に、そう声をかけてきたのは、子供と同じくらいの年齢の、少年だった
同じくらいの年齢、のはずなのだが…子供を見下ろしてくる瞳は、その年齢に似合わず、酷く冷めていた
同じくらいの年齢、のはずなのだが…子供を見下ろしてくる瞳は、その年齢に似合わず、酷く冷めていた
ぐしぐしと
答える事もできず、泣き続ける子供
少年は、ため息をついて……ぽふ、と子供の頭を撫でた
答える事もできず、泣き続ける子供
少年は、ため息をついて……ぽふ、と子供の頭を撫でた
「泣くな。煩い。泣いたって、誰も助けやしないぜ、ここは」
「う………」
「…むしろ、煩い、って殺されるかもな」
「う………」
「…むしろ、煩い、って殺されるかもな」
びくり
少年の言葉に、子供は体をすくませた
静かに、少年は続ける
少年の言葉に、子供は体をすくませた
静かに、少年は続ける
「ここの連中にとって、俺達は使い捨ての道具でしかないからな。生き延びたかったら、泣いてる暇なんかねぇんだ。生き延びる方法を考えておけ」
「…で、も」
「…で、も」
どうして
どうして、自分はそんな恐ろしい場所にいなければならないのだ?
悲しくて、悲しくて
また、子供は泣き出してしまう
どうして、自分はそんな恐ろしい場所にいなければならないのだ?
悲しくて、悲しくて
また、子供は泣き出してしまう
「…お父さん、お母さん…」
「……お前の親は、もう死んでいる」
「-----っ!?」
「……お前の親は、もう死んでいる」
「-----っ!?」
少年の、その言葉に
子供は、涙を流しながら、顔をあげた
少年は憐れんでいるような表情で、子供を見つめてくる
子供は、涙を流しながら、顔をあげた
少年は憐れんでいるような表情で、子供を見つめてくる
「…ここにいる、と言う事は…お前の親は、もう死んでいる、ということだ。ここに集められた俺たちくらいの餓鬼は、みんな親が死んだ奴ばかりのはずだからな」
「………ん、な」
「………ん、な」
そんな
いつか、お父さんとお母さんが、迎えに来てくれるんじゃないか
そんな、ささやかな希望すら、抱けないと言うのか
いつか、お父さんとお母さんが、迎えに来てくれるんじゃないか
そんな、ささやかな希望すら、抱けないと言うのか
それじゃあ
自分は、何にすがればいい?
自分は、何にすがればいい?
ぼろぼろ、ぼろぼろ、涙を流し続ける子供
少年は、ため息をついて、子供に尋ねる
少年は、ため息をついて、子供に尋ねる
「…お前、名前、あるか?」
「……なま、え?」
「……なま、え?」
そうだ、と少年は尋ねてくる
ぐしぐし、涙を乱暴にぬぐいながら、子供は答える
ぐしぐし、涙を乱暴にぬぐいながら、子供は答える
「…もんじょう……てんち…」
「……そうか、名前が、あるのか」
「……そうか、名前が、あるのか」
そう、呟いた少年の表情は
どこか、寂しそうで、悲しそうで……酷く、少年の事が、羨ましそうだった
どこか、寂しそうで、悲しそうで……酷く、少年の事が、羨ましそうだった
「それなら、俺とは違うな……担当してくる黒服はいるか?」
「…い、る」
「そいつのナンバーは?」
「……えー……なんばー、よんろくよん……」
「…い、る」
「そいつのナンバーは?」
「……えー……なんばー、よんろくよん……」
少年の問いかけに、答えていく子供
悲しい気持ちは晴れないが、涙は止まってきた
悲しい気持ちは晴れないが、涙は止まってきた
「A-No.464…Aナンバーとなると、強硬派か………どっちにしろ、俺よりはマシか」
ぐりぐりと
やや乱暴に、子供の頭を撫でてきた少年
乱暴な撫で方だと言うのに、子供はなんだか酷く、安心できた
やや乱暴に、子供の頭を撫でてきた少年
乱暴な撫で方だと言うのに、子供はなんだか酷く、安心できた
「…生き延びたかったら、泣くな。本音は隠せ。思った事はなるべく、口に出すな。与えられた仕事は、何も考えずに全てやり遂げろ。そうすれば、処分される事はない」
「しょ……ぶん……」
「しょ……ぶん……」
処分、というのが、殺されるという意味なのだと
子供は、本能的に理解してしまった
恐怖に、体が震える
子供は、本能的に理解してしまった
恐怖に、体が震える
「死にたくないだろ?だったら、そうしておけ」
「う、うん…」
「う、うん…」
こくり
子供は、少年の言葉に頷いた
子供は、少年の言葉に頷いた
…もう、涙は完全に止まっている
「わかったなら、いい」
そう言って、少年はさっさと歩き出した
子供は慌てて立ち上がり、少年を呼び止める
子供は慌てて立ち上がり、少年を呼び止める
「ま、待って……!お兄ちゃんは、名前は………?」
「…俺には、名前なんて、ない」
「…俺には、名前なんて、ない」
どこか、絶望したような声で
少年は、振り返りもせずに、子供にそう答えた
冷たい廊下を、早足で歩いていく
少年は、振り返りもせずに、子供にそう答えた
冷たい廊下を、早足で歩いていく
「-------H-No.96!早く来い。投薬を始める」
「…わかってるよ」
「…わかってるよ」
廊下の向こう側、白衣を纏った黒服が顔を出して…乱暴にその少年の腕を掴んで、部屋の中に引き込んでしまった
子供は、呆然とその様子を見ていることしかできず
子供は、呆然とその様子を見ていることしかできず
…再び、一人になってしまった、心細さ
それに、泣き出しそうになって
しかし、少年の言葉を思い出し、泣く事はできなかった
それに、泣き出しそうになって
しかし、少年の言葉を思い出し、泣く事はできなかった
…また、あの少年と会えればいい
子供は、この時確かに、そう思ったのだ
子供は、この時確かに、そう思ったのだ
…随分と、昔の夢を見た者だ
青年、モンスの天使契約者……門条 天地は、憂鬱な朝を迎えた
腕の中の天使が、もぞもぞと動く
青年、モンスの天使契約者……門条 天地は、憂鬱な朝を迎えた
腕の中の天使が、もぞもぞと動く
「ふにゃ~…?ご主人様、どうしました~?」
「…いや、なんでもねぇ」
「…いや、なんでもねぇ」
むにゅん
むにゅむにゅ
腕の中だけではなく、背中にも天使が抱きついてきている
そう言えば、昨日は二人出した状態で寝たのだった
…二人ですんで良かった
これ以上出ていたら、どこに引っ付かれていたか、わかったものではない
どちらにせよ、2人が完全に目を覚ますまで、起き上がれない事は確定だが
むにゅむにゅ
腕の中だけではなく、背中にも天使が抱きついてきている
そう言えば、昨日は二人出した状態で寝たのだった
…二人ですんで良かった
これ以上出ていたら、どこに引っ付かれていたか、わかったものではない
どちらにせよ、2人が完全に目を覚ますまで、起き上がれない事は確定だが
「…っち」
夢の事を思い出し、小さく舌打ちする
まだ、自分が10にも届かない子供だった頃の夢
今では裏切り者となった、H-No.96…「13階段」の契約者と、会った頃のことを、夢に見たのだ
まだ、自分が10にも届かない子供だった頃の夢
今では裏切り者となった、H-No.96…「13階段」の契約者と、会った頃のことを、夢に見たのだ
あの頃、天地は何も知らない子供だった
何も知らなかったが故に、「13階段」の言葉にすがることでしか生き延びられなかった
生き延び続け、大人になっていくにつれ…「13階段」がどう言う立場なのかも、知るようになった
何も知らなかったが故に、「13階段」の言葉にすがることでしか生き延びられなかった
生き延び続け、大人になっていくにつれ…「13階段」がどう言う立場なのかも、知るようになった
Hナンバー
「組織」における、実験体の総称
他の「組織」メンバーよりもずっと手をかけられて育てられ、能力の向上なども、他の「組織」所属契約者より、ずっと優遇される存在
「組織」における、実験体の総称
他の「組織」メンバーよりもずっと手をかけられて育てられ、能力の向上なども、他の「組織」所属契約者より、ずっと優遇される存在
それを知って、嫉妬した
羨ましかった
自分と同じような境遇だったくせに、そんなにも扱いが違うだなんて
羨ましかった
自分と同じような境遇だったくせに、そんなにも扱いが違うだなんて
それを知って以来、死に物狂いで努力した
自分が契約している「モンスの天使」達の力が上がるように
弓じゃない、もっと強い近代兵器が使えるように
もっともっと、たくさんの天使を一挙に召還できるように
努力し、それを実現してきた
実験体のように、特別手をかけられなくても、投薬なんてされなくても、これだけの事ができるのだ
それを、実証したくて
自分が契約している「モンスの天使」達の力が上がるように
弓じゃない、もっと強い近代兵器が使えるように
もっともっと、たくさんの天使を一挙に召還できるように
努力し、それを実現してきた
実験体のように、特別手をかけられなくても、投薬なんてされなくても、これだけの事ができるのだ
それを、実証したくて
…結果的に、どんなに努力しても、誰も褒めてなんてくれなかったけれど
「13階段」の契約者とは、あれからも何だかんだで顔を合わせ続けた
実験を生き延び続けた「13階段」の契約者
何も知らなかった頃は彼に懐いても居たが…それは、天地にとって、忘れ去りたい黒歴史だ
Hナンバーのことを知ってからは、何かと突っかかってはやりあい続けた
結局、まともに相手をされた事は、一度もなかったような気がしないでもないが
実験を生き延び続けた「13階段」の契約者
何も知らなかった頃は彼に懐いても居たが…それは、天地にとって、忘れ去りたい黒歴史だ
Hナンバーのことを知ってからは、何かと突っかかってはやりあい続けた
結局、まともに相手をされた事は、一度もなかったような気がしないでもないが
…そうだ
実験体は、普通の構成員よりも、ずっと手をかけられる
それだけ、「組織」に恩があるはずだ
その癖して、「組織」を裏切るだなんて
実験体は、普通の構成員よりも、ずっと手をかけられる
それだけ、「組織」に恩があるはずだ
その癖して、「組織」を裏切るだなんて
それが、許せなくて
だから、殺してやりたいと思った
自分が、殺してやろうと思った
だからこそ、あの秋の日、中央高校で仲間達と共に何かをやらかそうとしていた「13階段」契約者を殺そうとして……結局、邪魔が入って失敗してしまった
あぁ、腹が立つ
憎たらしい
だから、殺してやりたいと思った
自分が、殺してやろうと思った
だからこそ、あの秋の日、中央高校で仲間達と共に何かをやらかそうとしていた「13階段」契約者を殺そうとして……結局、邪魔が入って失敗してしまった
あぁ、腹が立つ
憎たらしい
「…他の奴なんかに殺されるんじゃねぇぞ、あの野郎…」
あいつを殺すのは自分だ
他の奴に、奪われて溜まるか
自分には、あいつを殺す権利がある
他の奴に、奪われて溜まるか
自分には、あいつを殺す権利がある
今、「組織」は穏健派が主導権を握っており、マッドガッサー一味を討伐する事も、捕縛する事さえ、まともにできない状態だ
だが、いつか
いつか、必ず
だが、いつか
いつか、必ず
自分に抱きついて眠ってきている天使達の感触を感じながら
天地は己の中で、静かに殺意を燃え上がらせていた
天地は己の中で、静かに殺意を燃え上がらせていた
その殺意が、酷く見当違いなものであるなどと
その事実に、気づく事も、なく
その事実に、気づく事も、なく
to be … ?