「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 首塚-77

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 それは、少年、黄昏 裂邪が学校町に来てからの話
 裂邪がエーテルと遭遇してから数ヶ月あと、といったところだろうか



「そろそろ、腹一杯なんだが」
「そうか?じゃあ、そろそろ帰るか」

 獏の食事の為、夜の街に出ていた裂邪
 空中散歩を終えて、地上へと降りた
 …その、直後だった


 ----ぞくり


 背筋を駆け抜けた、悪寒
 それは、まるで幽霊とでも遭遇したような………心霊現象に関わってしまったかのような、そんな時に感じる悪寒に、よく似ていて

「な、何だ…?」
「…嫌な予感がするんだが」

 ぞくぞくと、全身を悪寒が駆け巡る
 本能が警告してくる、「逃げろ」と

 しかし、体が思うように動かない
 圧倒的な何かを前にしてしまった時のように、脚が……うまく、動かない


 かしゃん、と
 音が、ゆっくりと近づいてくる
 まるで、甲冑を着た誰かが歩いているような音


 …違う
 甲冑を着た者が歩いている音

「…おやぁ?このような時間に、童子がこのような場所にいるとは………ほぉう、契約者か?」

 聞えてきた、低い声
 …己の体が震えていた事に、裂邪はようやく気付いた
 そんな、振るえる体を叱咤し、振り返る

 ……そこにいたのは、甲冑を身に纏った若武者
 おおよそ、現代の街中を歩き回るには相応しくない存在が、そこにいた
 真夜中と言う時間帯を考慮してもなお、その存在は異質
 しかし……この学校町において、それは当たり前のように、そこに存在していた

 息苦しさを感じる
 その若武者を前にしていると…自分が、押しつぶされてしまいそうな錯覚を、裂邪は覚える

「…く、首塚の……平将門……!」
「首塚?将門?……あれが…?」

 やや声が震えている獏の言葉に、裂邪は目の前の若武者が……「首塚」の平将門であると、ようやく認識した
 …日本史の歴史で習うような人物
 それが、現実に、今の時代に、目の前に存在している違和感
 …日本に置いて、トップクラスの祟り神が目の前に存在している、恐怖
 いくつもの感情が、ごちゃまぜになる
 そんな裂邪達の様子など気にする事なく、将門はふむ、と遠慮する事一切なく、裂邪達を観察してくる

「ふむ?どうやら多重契約者のようだが………そこにいるのは、獏か」
「うー!獏、知ってるー!うーうー!」

 突然、この場の空気にそぐわぬ、愛らしい少年の声が響いた
 ひょこり、将門の影から小学校低学年程度と思われる外見の少年が姿を現す
 その手には、コアラの絵が描かれたお菓子の箱が握られている

「日本の獏は、夢を食べるー!獏の絵を書いた紙を枕の下に置いておくと、悪い夢を食べてくれるー!」
「相変わらず、お前はよく知っているな」
「うー!僕褒められたー!」

 うーうーうー
 将門に頭を撫でられ、無邪気に笑っている少年
 あの少年は、あんなにも将門の傍に立っていて平気なのだろうか?
 これだけの距離を保ちながらも、平将門という存在の圧迫感に潰されそうになっている裂邪は、こっそりと冷や汗をかいた

「…他の都市伝説は…ふむ、実体もたぬものなのか、それとも、今たまたま傍にいないのか……まぁ、どちらでも良いか」

 くっく、と楽しげに笑っている将門
 その視線が、裂邪を捕えた

 …圧倒されるな
 自分は、いつか世界制服を成し遂げる男なのだ
 この程度で、負けていられるか!

 ともすれば落ちそうになる意識を保ちながら、裂邪は将門を睨み付けた

「…何か、用か?」
「なぁに、たいした用はない…ただ、折角の縁だ。少し、確認しておこうか………お前は、「組織」の関係者か?」

 ぞくり
 再び、全身を走る悪寒
 将門から感じる圧迫感が、強くなる

「…関係、ねぇよ……そんな、もん」

 ゆっくりと、答える裂邪
 そうでもしなければ、うまく………声が、出ない
 裂邪の答えに…………圧迫感が、弱まった

「くくっ、そうか。ならば、良い」
「うー、「組織」じゃないなら、まずは敵じゃない」

 将門の言葉に続いて、少年がそう口にした
 …そういえば、「首塚」は「組織」と敵対していると聞いていた
 だから、尋ねてきたのか

「「組織」の者でないならば、まぁ良かろう。嘘もついておらぬようだしな」

 …この圧迫感の、威圧感の前で
 嘘をつく余裕など、あるものか

「…もし、「組織」の関係者だったら、どうしたって言うんだ」
「おい、裂邪…!」

 やや挑発的な裂邪の言葉を、獏が慌てて止めようとしたが、もう遅い
 だが、将門は裂邪のそんな挑発をむしろ楽しむかのように笑っている

「そうだなぁ?この場で祟り殺してやっても良かったかもしれんなぁ?」
「………っ」

 「首塚」の本質は祟る事
 己を害したものを、「首塚」を汚したものを、容赦なく祟り殺す
 それが、「首塚」と言う存在
 一歩間違えば、裂邪もまた、その祟りを身に受けていたのだろう

「安心するがいい…お前が「首塚」と敵対せぬ限り、祟りはせん」
「うー!敵じゃなければ祟らないー!うーうー」

 かしゃり
 将門が、裂邪に背を向けて歩き出す
 すぅ…と、圧迫感が、遠ざかっていく

「ここで会ったも何かの縁……また、会う事があるかもなぁ?」

 くっかかかかかかかかか!!と、楽しげに、楽しげに笑って、立ち去っていく将門
 てちてち、少年は、そんな将門の後をついていき

 ……ぴたり
 突然、立ち止まると
 くるり、裂邪と獏に向かって、振り返り


 ………きひひひひ、と
 不気味に、笑った


「…命拾いしたね………あぁ、都市伝説狩り、死なない程度に頑張りなよ?ただ、弱い者虐めみたいな事をしていたら………その時は、覚悟した方がいいかもよね?」
「------っ!?」

 先ほどまでと、ガラリと印象を変えた少年の様子に
 とっさに、警戒体勢を取る裂邪
 きひひ、と少年は無気味に笑い続ける

「…どう言う事だよ」
「そんな事もわからないの?…きひひひひ、将門様は、力なき者の味方なんだよ?弱い者虐めする奴なんて、お仕置きされるに決まってるじゃない………きひひっ」

 どこか小馬鹿にしてきているような少年の言葉
 くるり、少年はそのまま、裂邪達に背を向ける

「…大丈夫だよ、この街は、将門様にとって許せない連中に狙われやすいから………君みたいな奴は、今のところ後回し。何かしでかさない限りは、問題ないからさ。きっひひひひひひひひひひ」

 てちてちてち、とそのまま走り去る少年
 将門に追いついた少年の様子は………元に、戻っているようだった
 先程の不気味な様子は、カケラもない

「……ふぅぅ~………心臓に悪いバク…」

 っぽん!
 愛らしい、マレーバク姿になったバクが呟く
 はぁ、と裂邪も緊張をといた

「…何だってんだよ。あの将門もヤバそうだけど、あっちのガキも何かヤバそうだったぞ…?」
「どう考えても、将門の方がヤバいバク!と、言うか、「首塚」が学校町に来ているのは聞いていたけど、将門本人があんなのんきに散歩しているなんて聞いてなかったバク!!」

 もう二度と出会いたくないバクと、うめくバク
 そんなバクを尻目に、裂邪は将門達が去っていった方向へと視線をやる





 暗い、暗い道
 どこまでも深い闇が広がるその先には、もう、誰の姿も見えなかった






to be … ?



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