「きゃっはははははははははははははははは!!!」
響き渡る無邪気な笑い声
H-No.3はヘンリエッタ達を見下ろし、無邪気に残酷に笑っている
ジェラルドの巨体は、相手の攻撃を避ける事には向いていない
ただでさえ、動きのすばやい一寸婆の攻撃を避けきれずにいると言うのに…さらに、ヘンリエッタを庇いながら戦っている状況
ヘンリエッタを庇うジェラルドの体に増えていく、細かい傷
それができていく様子を見て、楽しげに笑うのだ
H-No.3はヘンリエッタ達を見下ろし、無邪気に残酷に笑っている
ジェラルドの巨体は、相手の攻撃を避ける事には向いていない
ただでさえ、動きのすばやい一寸婆の攻撃を避けきれずにいると言うのに…さらに、ヘンリエッタを庇いながら戦っている状況
ヘンリエッタを庇うジェラルドの体に増えていく、細かい傷
それができていく様子を見て、楽しげに笑うのだ
「…ッジェラルド!妾に構うでない!離せ!!」
「……いけません。今のお嬢様は、少々、気が弱っておられます」
「……いけません。今のお嬢様は、少々、気が弱っておられます」
ヘンリエッタの命令に、しかし、今のジェラルドは答えない
化け物、と
そう呼ばれた事が、ヘンリエッタの心を削り、苦しめる
そして、その苦しみはヘンリエッタの力そのものを削り取る
たとえ、力を削り取られた状態とて、ヘンリエッタは一寸婆程度に殺されるような存在ではない
…だが、それでも、ジェラルドはヘンリエッタを庇いながら戦う
ヘンリエッタが傷つくことを拒むように、彼女を護り続ける
そう呼ばれた事が、ヘンリエッタの心を削り、苦しめる
そして、その苦しみはヘンリエッタの力そのものを削り取る
たとえ、力を削り取られた状態とて、ヘンリエッタは一寸婆程度に殺されるような存在ではない
…だが、それでも、ジェラルドはヘンリエッタを庇いながら戦う
ヘンリエッタが傷つくことを拒むように、彼女を護り続ける
「ほんっと、ごくろーさまだよね、忠犬さん?自分はいくら傷ついてもいいから、お嬢様だけは、って?きゃはははは、無駄だよ、無駄無駄。回収予定の検体以外は、みんな殺すからさ」
あ、でも、と
H-No.3は、無邪気に続ける
H-No.3は、無邪気に続ける
「でも、大丈夫だよ、ちゃんと死体は再利用するからさ、研究に!ほら、地球に優しいエコだよね?」
己の、絶対的勝利
それを疑ってもいない様子のH-No.3
彼が召喚する一寸婆は、さらにさらに増え続ける
このままでは……この病院全体を、包み込みかねないほどに
それを疑ってもいない様子のH-No.3
彼が召喚する一寸婆は、さらにさらに増え続ける
このままでは……この病院全体を、包み込みかねないほどに
「あー、それ考えるとさー……惜しかったよなぁ、D-No.0は」
……ぴくり
H-No.3の、言葉に
ヘンリエッタは、かすかに体を振るわせた
H-No.3の、言葉に
ヘンリエッタは、かすかに体を振るわせた
「誰に実行させたか知らないけどさー。ちゃんと死体も回収させなくちゃ。せっかくの検体が手に入らなかったんだもん。ちゃんと指示出しておかなきゃ駄目だよね」
「……っH-No.3、貴様………っ貴様も、あいつを……!」
「うん、そーだよ。H-No.1とH-No.2と一緒にね。僕らが直接動いたんじゃ、怪しまれるからさー。他の強硬派や過激派をたきつけて!その間に、僕らは実験しててアリバイ完璧、ってね」
「……っH-No.3、貴様………っ貴様も、あいつを……!」
「うん、そーだよ。H-No.1とH-No.2と一緒にね。僕らが直接動いたんじゃ、怪しまれるからさー。他の強硬派や過激派をたきつけて!その間に、僕らは実験しててアリバイ完璧、ってね」
あっさりと言い切ったH-No.3
彼もまた、D-No.0の暗殺計画に、関わっていた
…D-No.0は、生きている、生き延びている、と
その事実を知った状態ではあるが…それでも
彼を、傷つけたのだという事実、殺そうとしたのだという事実
それが、ヘンリエッタに憎悪を抱かせるには、十分な情報だ
彼もまた、D-No.0の暗殺計画に、関わっていた
…D-No.0は、生きている、生き延びている、と
その事実を知った状態ではあるが…それでも
彼を、傷つけたのだという事実、殺そうとしたのだという事実
それが、ヘンリエッタに憎悪を抱かせるには、十分な情報だ
「貴様ら、何故、あやつを……っ」
「だぁってさ~、邪魔くさいんだもん。僕らのやる事やる事ぜ~んぶ反対してきてさ。鬱陶しかったんだもん」
「だぁってさ~、邪魔くさいんだもん。僕らのやる事やる事ぜ~んぶ反対してきてさ。鬱陶しかったんだもん」
子供っぽく頬を膨らませて断言するH-No.3
…そんな、勝手な理由で
あの慈悲深いお人好しを、殺そうとしたというのか、こいつらは!?
…そんな、勝手な理由で
あの慈悲深いお人好しを、殺そうとしたというのか、こいつらは!?
「死んでくれたおかげで、さ。色々できて楽しかったよ。お嬢様が実験禁止してくれなかったら、もっと色々できたのになぁ………だからさぁ」
ざわり
一寸婆達の動きが、激しくなる
その、目が
いっせいに、ヘンリエッタを睨みつけた
一寸婆達の動きが、激しくなる
その、目が
いっせいに、ヘンリエッタを睨みつけた
「死んでよ、お嬢様。僕ら、もっと一杯実験したいんだよね。どうすれば人間は、都市伝説は死ぬか、死ななくなるか。強くなるか弱くなるか。僕はもっと一杯一杯知りたいな」
ざぁあああああああああああああああああ、と
まるで、波のように、一寸婆達がいっせいに、ヘンリエッタ達に向かってくる
ジェラルドがそれを撃ち落そうとするが…数が、多すぎる
黒い殺意の群れが、二人を包み込もうと襲い掛かっていく
まるで、波のように、一寸婆達がいっせいに、ヘンリエッタ達に向かってくる
ジェラルドがそれを撃ち落そうとするが…数が、多すぎる
黒い殺意の群れが、二人を包み込もうと襲い掛かっていく
「ほらほらほらっ!死んじゃえ死んじゃえっ!!」
その様子を、無邪気に見下ろし続けるH-No.3
だから、気づかなかった
自分の背後に近づく影に
気づけるはずもなかった
何せ、自分の背後にあるのは屋上への道のみ
屋上には、「誰もいなかった」はずなのだから
自分の背後に近づく影に
気づけるはずもなかった
何せ、自分の背後にあるのは屋上への道のみ
屋上には、「誰もいなかった」はずなのだから
「…お前が、死ね」
背後からかけられた、言葉
それを、聞き届けるよりも、先に
それを、聞き届けるよりも、先に
どんっ、と
H-No.3の体は、階段に突き落とされた
H-No.3の体は、階段に突き落とされた
「え…………っ!?」
べちゃ!と
一寸婆を潰しながら、階段の上に落ちたH-No.3
落ちてしまった、その段は
一寸婆を潰しながら、階段の上に落ちたH-No.3
落ちてしまった、その段は
「13」段目
「引きずり込め、13階段」
決して、大きな声ではない
一寸婆達が狂ったように笑い続ける中、聞き漏らしかねない程度の声量の声
しかし、不思議と…その声は、H-No.3の耳に、はっきりと届いて
一寸婆達が狂ったように笑い続ける中、聞き漏らしかねない程度の声量の声
しかし、不思議と…その声は、H-No.3の耳に、はっきりと届いて
「……え」
H-No.3は
自分の背後に現れ、自分を突き落とした相手が……かつての、自分達の研究対象
H-No.96である事に、気づいて
そして、H-No.96の契約都市伝説が、「13階段」である事に気づき、青くなる
自分の背後に現れ、自分を突き落とした相手が……かつての、自分達の研究対象
H-No.96である事に、気づいて
そして、H-No.96の契約都市伝説が、「13階段」である事に気づき、青くなる
もう、遅い
H-No.3が転がっている13段目
そこから、無数の腕が伸びて
H-No.3を捕らえ、離さない
H-No.3が転がっている13段目
そこから、無数の腕が伸びて
H-No.3を捕らえ、離さない
「え、な、ど、どうして、どうして、お前がここに………っ!?」
信じられない、と
そうとでも言うように、H-No.3はH-No.96を見上げる
そうとでも言うように、H-No.3はH-No.96を見上げる
…H-No.96は、ただ冷たく、H-No.3を見下ろしていた
「っな、や、やだ………やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだっ!?僕、まだ死にたくないよっ!?まだやってない実験が一杯あるのに、まだ、試してない薬一杯あるのに!?嫌だ、嫌だよっ、まだたくさん、やりたい事あるのに………っ!!??」
H-No.3の叫びを聞いても、発動は止まらない
無数の腕につかまれて、そのまま、H-No.3は階段の13段目に引きずり込まれて
無数の腕につかまれて、そのまま、H-No.3は階段の13段目に引きずり込まれて
……数秒後
一寸婆達は一斉に絶叫し……………まるで、最初から存在してなかったのように、その存在が消滅した
一寸婆達は一斉に絶叫し……………まるで、最初から存在してなかったのように、その存在が消滅した
「…な……」
…呆然と
ヘンリエッタは、彼を見上げる
H-No.96……広瀬 辰也
何故、彼が、ここに?
ヘンリエッタは、彼を見上げる
H-No.96……広瀬 辰也
何故、彼が、ここに?
じ、とヘンリエッタ達を見下ろしてくる辰也
その視線は、どこまでも冷たく……ぞくり、ヘンリエッタは悪寒すら、覚えた
その視線は、どこまでも冷たく……ぞくり、ヘンリエッタは悪寒すら、覚えた
一寸婆達が、消えた
何事もなかったかのように、静かになる病室
しゅるり、宏也は髪で庇っていた佳奈美と愛華を開放した
何事もなかったかのように、静かになる病室
しゅるり、宏也は髪で庇っていた佳奈美と愛華を開放した
「ひ、宏也さん?な、何が起きてたの?」
「さぁな…ひとまずは、危険な状態ではなくなった、な」
「さぁな…ひとまずは、危険な状態ではなくなった、な」
…だが
何だ?この、嫌な予感は
何だ?この、嫌な予感は
「…おい、悪い、二人を頼んだ!」
「え?…わかりました」
「宏也さんっ!?」
「すぐ戻る。いいか、そこにいろよ!?」
「え?…わかりました」
「宏也さんっ!?」
「すぐ戻る。いいか、そこにいろよ!?」
在処にこの場を任せ、病室を飛び出す宏也
傷ついたジェラルドと、ヘンリエッタの姿が目に入って
そして
傷ついたジェラルドと、ヘンリエッタの姿が目に入って
そして
「……っ辰也」
「…………よぉ、宏也」
「…………よぉ、宏也」
宏也をも、静かに見下ろして
……辰也は静かに、暗く、笑った
……辰也は静かに、暗く、笑った
「…これで、あと、二人」
残る復讐対象は、あと二人
それを確認するかのような、その呟きは
どこまでも暗く、激しい憎悪によって彩られていた
それを確認するかのような、その呟きは
どこまでも暗く、激しい憎悪によって彩られていた
to be … ?