「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 狂科学者と復讐者-09

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「きゃっはははははははははははははははは!!!」

 響き渡る無邪気な笑い声
 H-No.3はヘンリエッタ達を見下ろし、無邪気に残酷に笑っている
 ジェラルドの巨体は、相手の攻撃を避ける事には向いていない
 ただでさえ、動きのすばやい一寸婆の攻撃を避けきれずにいると言うのに…さらに、ヘンリエッタを庇いながら戦っている状況
 ヘンリエッタを庇うジェラルドの体に増えていく、細かい傷
 それができていく様子を見て、楽しげに笑うのだ

「…ッジェラルド!妾に構うでない!離せ!!」
「……いけません。今のお嬢様は、少々、気が弱っておられます」

 ヘンリエッタの命令に、しかし、今のジェラルドは答えない

 化け物、と
 そう呼ばれた事が、ヘンリエッタの心を削り、苦しめる
 そして、その苦しみはヘンリエッタの力そのものを削り取る
 たとえ、力を削り取られた状態とて、ヘンリエッタは一寸婆程度に殺されるような存在ではない
 …だが、それでも、ジェラルドはヘンリエッタを庇いながら戦う
 ヘンリエッタが傷つくことを拒むように、彼女を護り続ける

「ほんっと、ごくろーさまだよね、忠犬さん?自分はいくら傷ついてもいいから、お嬢様だけは、って?きゃはははは、無駄だよ、無駄無駄。回収予定の検体以外は、みんな殺すからさ」

 あ、でも、と
 H-No.3は、無邪気に続ける

「でも、大丈夫だよ、ちゃんと死体は再利用するからさ、研究に!ほら、地球に優しいエコだよね?」

 己の、絶対的勝利
 それを疑ってもいない様子のH-No.3
 彼が召喚する一寸婆は、さらにさらに増え続ける
 このままでは……この病院全体を、包み込みかねないほどに

「あー、それ考えるとさー……惜しかったよなぁ、D-No.0は」

 ……ぴくり
 H-No.3の、言葉に
 ヘンリエッタは、かすかに体を振るわせた

「誰に実行させたか知らないけどさー。ちゃんと死体も回収させなくちゃ。せっかくの検体が手に入らなかったんだもん。ちゃんと指示出しておかなきゃ駄目だよね」
「……っH-No.3、貴様………っ貴様も、あいつを……!」
「うん、そーだよ。H-No.1とH-No.2と一緒にね。僕らが直接動いたんじゃ、怪しまれるからさー。他の強硬派や過激派をたきつけて!その間に、僕らは実験しててアリバイ完璧、ってね」

 あっさりと言い切ったH-No.3
 彼もまた、D-No.0の暗殺計画に、関わっていた
 …D-No.0は、生きている、生き延びている、と
 その事実を知った状態ではあるが…それでも
 彼を、傷つけたのだという事実、殺そうとしたのだという事実
 それが、ヘンリエッタに憎悪を抱かせるには、十分な情報だ

「貴様ら、何故、あやつを……っ」
「だぁってさ~、邪魔くさいんだもん。僕らのやる事やる事ぜ~んぶ反対してきてさ。鬱陶しかったんだもん」

 子供っぽく頬を膨らませて断言するH-No.3
 …そんな、勝手な理由で
 あの慈悲深いお人好しを、殺そうとしたというのか、こいつらは!?

「死んでくれたおかげで、さ。色々できて楽しかったよ。お嬢様が実験禁止してくれなかったら、もっと色々できたのになぁ………だからさぁ」

 ざわり
 一寸婆達の動きが、激しくなる
 その、目が
 いっせいに、ヘンリエッタを睨みつけた

「死んでよ、お嬢様。僕ら、もっと一杯実験したいんだよね。どうすれば人間は、都市伝説は死ぬか、死ななくなるか。強くなるか弱くなるか。僕はもっと一杯一杯知りたいな」

 ざぁあああああああああああああああああ、と
 まるで、波のように、一寸婆達がいっせいに、ヘンリエッタ達に向かってくる
 ジェラルドがそれを撃ち落そうとするが…数が、多すぎる
 黒い殺意の群れが、二人を包み込もうと襲い掛かっていく

「ほらほらほらっ!死んじゃえ死んじゃえっ!!」

 その様子を、無邪気に見下ろし続けるH-No.3


 だから、気づかなかった
 自分の背後に近づく影に
 気づけるはずもなかった
 何せ、自分の背後にあるのは屋上への道のみ
 屋上には、「誰もいなかった」はずなのだから


「…お前が、死ね」

 背後からかけられた、言葉
 それを、聞き届けるよりも、先に

 どんっ、と
 H-No.3の体は、階段に突き落とされた

「え…………っ!?」

 べちゃ!と
 一寸婆を潰しながら、階段の上に落ちたH-No.3
 落ちてしまった、その段は

 「13」段目


「引きずり込め、13階段」


 決して、大きな声ではない
 一寸婆達が狂ったように笑い続ける中、聞き漏らしかねない程度の声量の声
 しかし、不思議と…その声は、H-No.3の耳に、はっきりと届いて

「……え」

 H-No.3は
 自分の背後に現れ、自分を突き落とした相手が……かつての、自分達の研究対象
 H-No.96である事に、気づいて
 そして、H-No.96の契約都市伝説が、「13階段」である事に気づき、青くなる

 もう、遅い
 H-No.3が転がっている13段目
 そこから、無数の腕が伸びて
 H-No.3を捕らえ、離さない

「え、な、ど、どうして、どうして、お前がここに………っ!?」

 信じられない、と
 そうとでも言うように、H-No.3はH-No.96を見上げる

 …H-No.96は、ただ冷たく、H-No.3を見下ろしていた

「っな、や、やだ………やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだっ!?僕、まだ死にたくないよっ!?まだやってない実験が一杯あるのに、まだ、試してない薬一杯あるのに!?嫌だ、嫌だよっ、まだたくさん、やりたい事あるのに………っ!!??」

 H-No.3の叫びを聞いても、発動は止まらない
 無数の腕につかまれて、そのまま、H-No.3は階段の13段目に引きずり込まれて

 ……数秒後
 一寸婆達は一斉に絶叫し……………まるで、最初から存在してなかったのように、その存在が消滅した



「…な……」

 …呆然と
 ヘンリエッタは、彼を見上げる
 H-No.96……広瀬 辰也
 何故、彼が、ここに?

 じ、とヘンリエッタ達を見下ろしてくる辰也
 その視線は、どこまでも冷たく……ぞくり、ヘンリエッタは悪寒すら、覚えた



 一寸婆達が、消えた
 何事もなかったかのように、静かになる病室
 しゅるり、宏也は髪で庇っていた佳奈美と愛華を開放した

「ひ、宏也さん?な、何が起きてたの?」
「さぁな…ひとまずは、危険な状態ではなくなった、な」

 …だが
 何だ?この、嫌な予感は

「…おい、悪い、二人を頼んだ!」
「え?…わかりました」
「宏也さんっ!?」
「すぐ戻る。いいか、そこにいろよ!?」

 在処にこの場を任せ、病室を飛び出す宏也
 傷ついたジェラルドと、ヘンリエッタの姿が目に入って
 そして

「……っ辰也」
「…………よぉ、宏也」

 宏也をも、静かに見下ろして
 ……辰也は静かに、暗く、笑った


「…これで、あと、二人」


 残る復讐対象は、あと二人
 それを確認するかのような、その呟きは
 どこまでも暗く、激しい憎悪によって彩られていた




to be … ?




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