すたすたと歩く自分の契約者の後ろを、赤い靴はゆっくりとついていっていた
基本的に、自分の姿は彼女が能力を発動しない限りは人の目につくことはない
時折、霊感が強いなどと称される人間に視認される事もあるようだが、些細な問題である
そうやって人目につくことがないからこそ、こうやって当たり前のように、彼女の後ろをついて歩く事ができる
恐らく、普段から誰の目にも見える状態であれば、不審者として通報されるのではないだろうか
少なくとも、自分の契約者の小学校や、習い事で通っているバレエ教室やピアノ教室、スケート教室で目撃されたら不審者として通報されるであろう、残念ながら
だが、それも仕方ないことである
自分の契約者は、まだ6歳。小学校一年生
ロリである
すばらしき人類の宝・ロリなのである
と、なると、小学校に通っていれば、自然と回りにはロリがたくさん
体育の授業では体操着姿を拝めるし、夏場の水泳の授業ではスクール水着を思う存分拝見できる
習い事でも、同じ年頃の子供が自然と固まる為、思う存分ロリを観察できる
うん、素晴らしい
素晴らしい事ではないか
よって、自分がはぁはぁしてしまっても、なんら問題はないのである
が、悲しいかな、この国の常識とやらはそれを許してはくれないらしい
愛くるしい存在であるロリに心を奪われる事の何がいけないと言うのか
まったく、嘆かわしい
まぁ、最近はショタもいいね!!と、ちょっと思うのだが
基本的に、自分の姿は彼女が能力を発動しない限りは人の目につくことはない
時折、霊感が強いなどと称される人間に視認される事もあるようだが、些細な問題である
そうやって人目につくことがないからこそ、こうやって当たり前のように、彼女の後ろをついて歩く事ができる
恐らく、普段から誰の目にも見える状態であれば、不審者として通報されるのではないだろうか
少なくとも、自分の契約者の小学校や、習い事で通っているバレエ教室やピアノ教室、スケート教室で目撃されたら不審者として通報されるであろう、残念ながら
だが、それも仕方ないことである
自分の契約者は、まだ6歳。小学校一年生
ロリである
すばらしき人類の宝・ロリなのである
と、なると、小学校に通っていれば、自然と回りにはロリがたくさん
体育の授業では体操着姿を拝めるし、夏場の水泳の授業ではスクール水着を思う存分拝見できる
習い事でも、同じ年頃の子供が自然と固まる為、思う存分ロリを観察できる
うん、素晴らしい
素晴らしい事ではないか
よって、自分がはぁはぁしてしまっても、なんら問題はないのである
が、悲しいかな、この国の常識とやらはそれを許してはくれないらしい
愛くるしい存在であるロリに心を奪われる事の何がいけないと言うのか
まったく、嘆かわしい
まぁ、最近はショタもいいね!!と、ちょっと思うのだが
「…何か、おかしな事を考えてない?」
「いいや?」
「いいや?」
ぼそり、独り言のように呟いた契約者の言葉に、赤い靴は返事を返す
何分、こちらの姿は彼女以外には見えていないのだから、この状態で会話するには、自然と契約者が独り言を呟いているようになってしまう
ぶつぶつ独り言を言っていると思われるのが嫌なのか、この状態のときは、いつも彼女は小声だ
そして、自分はその小声の言葉を、一言もらさず、拾って答えるようにしていた
それが、彼女と契約した自分にとって、自然と当たり前のことになっていたのだ
すたすたと、彼女は足早に歩いている
一度家に帰り、小学校の制服を脱いで…そう、契約者の通う小学校は制服制なのだ。さすが金持ちご用達の私立…、外を出歩く
都市伝説の契約者、もしくは野良の都市伝説を探す為だ
そして、自分たちで勝てそうな相手であったならば、勝負を挑む
それが、自分たちの…契約者に習い事がない日の、日課である
自分の契約者は、都市伝説との戦いを、一種のゲームのように考えていた
それは、例えるならば、格闘ゲーム
ゲームセンターで弱そうな人間を見つけては乱入して叩きのめすような、若干タチの悪いものであるという自覚は、少なくとも自分にはある
彼女に、その自覚があるかどうかはわからないが
とまれ、いい悪いはさておき、自分たちはそうしてきたのだ
もっとも、相手を殺したり、消滅させたりまではしていない
あくまでも、格闘ゲーム
相手を殺すまでではない
相手を負かす事ができれば、それで充分なのである
そんな考え方は、ある意味、まだ子供である契約者らしい
たとえ、生まれた家柄の宿命ゆえか、汚い大人の社会も見てきているとしても
たとえ、自分という都市伝説と契約した事により、世界の裏側を見ることができるようになったとしても
まだ、契約者は6歳のロリなのである
本来ならば、純真無垢であるべき年頃だ
そんな彼女に、殺す、消滅させる、などと言う物騒な発想など、似合わないのだ
できれば、大人になってもそうであってほしいと考える
…都市伝説と戦う以上、平穏無事ではいられないかもしれないが
それでも、心を汚さずにすむ方法は、いくらでもあるのだ
何分、こちらの姿は彼女以外には見えていないのだから、この状態で会話するには、自然と契約者が独り言を呟いているようになってしまう
ぶつぶつ独り言を言っていると思われるのが嫌なのか、この状態のときは、いつも彼女は小声だ
そして、自分はその小声の言葉を、一言もらさず、拾って答えるようにしていた
それが、彼女と契約した自分にとって、自然と当たり前のことになっていたのだ
すたすたと、彼女は足早に歩いている
一度家に帰り、小学校の制服を脱いで…そう、契約者の通う小学校は制服制なのだ。さすが金持ちご用達の私立…、外を出歩く
都市伝説の契約者、もしくは野良の都市伝説を探す為だ
そして、自分たちで勝てそうな相手であったならば、勝負を挑む
それが、自分たちの…契約者に習い事がない日の、日課である
自分の契約者は、都市伝説との戦いを、一種のゲームのように考えていた
それは、例えるならば、格闘ゲーム
ゲームセンターで弱そうな人間を見つけては乱入して叩きのめすような、若干タチの悪いものであるという自覚は、少なくとも自分にはある
彼女に、その自覚があるかどうかはわからないが
とまれ、いい悪いはさておき、自分たちはそうしてきたのだ
もっとも、相手を殺したり、消滅させたりまではしていない
あくまでも、格闘ゲーム
相手を殺すまでではない
相手を負かす事ができれば、それで充分なのである
そんな考え方は、ある意味、まだ子供である契約者らしい
たとえ、生まれた家柄の宿命ゆえか、汚い大人の社会も見てきているとしても
たとえ、自分という都市伝説と契約した事により、世界の裏側を見ることができるようになったとしても
まだ、契約者は6歳のロリなのである
本来ならば、純真無垢であるべき年頃だ
そんな彼女に、殺す、消滅させる、などと言う物騒な発想など、似合わないのだ
できれば、大人になってもそうであってほしいと考える
…都市伝説と戦う以上、平穏無事ではいられないかもしれないが
それでも、心を汚さずにすむ方法は、いくらでもあるのだ
「………」
すたすたと、契約者は周囲を観察しながら歩く
自分も、それに習って周囲を観察している
都市伝説という存在である故か、他の都市伝説の存在を、なんとなく感知することはできる
大体の強さも…大雑把ではあるが、何となく感じることはできる
都市伝説の気配はないか、人ゴミの中、歩きながら探す
もっとも、この都市伝説探しは、徒労に終わる事が多い
いかに、都市伝説が多いこの学校町とはいえ、そう毎日毎日、都市伝説絡みの事件が起きている訳でもないし、都市伝説が歩けば都市伝説にあたるとも限らない
まぁ、そうやって徒労に終わった日は、その日の残り半分、彼女はずっと不機嫌であり、自分や彼女の家の使用人たちが酷く苦労する事になるのだが…
これも、運なのである
対戦相手がなかなか見つからないのも、ゲームゆえ
一応、自分の契約者は、そう考えてくれているようだから
自分も、それに習って周囲を観察している
都市伝説という存在である故か、他の都市伝説の存在を、なんとなく感知することはできる
大体の強さも…大雑把ではあるが、何となく感じることはできる
都市伝説の気配はないか、人ゴミの中、歩きながら探す
もっとも、この都市伝説探しは、徒労に終わる事が多い
いかに、都市伝説が多いこの学校町とはいえ、そう毎日毎日、都市伝説絡みの事件が起きている訳でもないし、都市伝説が歩けば都市伝説にあたるとも限らない
まぁ、そうやって徒労に終わった日は、その日の残り半分、彼女はずっと不機嫌であり、自分や彼女の家の使用人たちが酷く苦労する事になるのだが…
これも、運なのである
対戦相手がなかなか見つからないのも、ゲームゆえ
一応、自分の契約者は、そう考えてくれているようだから
……今日という日も、徒労に終わりそうな予感がしてきた
都市伝説の気配は見つからない
そろそろ、契約者がイライラし始めてきている
都市伝説の気配は見つからない
そろそろ、契約者がイライラし始めてきている
「……見つからない?」
「駄目だな。それらしい気配がない」
「あぁ、もう…口裂け女でも人面犬でも、なんでもいいのよ。とにかく出てきなさいよ…!」
「駄目だな。それらしい気配がない」
「あぁ、もう…口裂け女でも人面犬でも、なんでもいいのよ。とにかく出てきなさいよ…!」
苛立ってきているからか、歩き方がやや乱暴になっている
自分としては、どうせ遭遇するならば、ロリな都市伝説の方がいいのだが
メリーさんやら三本脚のリカちゃんやら花子さんやら、とりあえずそこら辺を
……いや、まて
口裂け女は口裂け女でも、ロリの口裂け女はいないものか
別に、年齢がいくつであろうとも、女は女だろう
だから、ロリの口裂け女がいてもいいはずである
そんなものに遭遇できたならば、自分はその口裂け女の全てを受けて入れてやる準備は万全なのだが
自分としては、どうせ遭遇するならば、ロリな都市伝説の方がいいのだが
メリーさんやら三本脚のリカちゃんやら花子さんやら、とりあえずそこら辺を
……いや、まて
口裂け女は口裂け女でも、ロリの口裂け女はいないものか
別に、年齢がいくつであろうとも、女は女だろう
だから、ロリの口裂け女がいてもいいはずである
そんなものに遭遇できたならば、自分はその口裂け女の全てを受けて入れてやる準備は万全なのだが
「……うん?」
と、そんな事を、考えていると
…ようやく、それらしい気配を、感じた
自己主張の薄い、都市伝説の気配
恐らく、自分と違い、意思を持たないタイプの都市伝説だろう
例えるならば、あの「はないちもんめ」の契約者のようなタイプだ
…ようやく、それらしい気配を、感じた
自己主張の薄い、都市伝説の気配
恐らく、自分と違い、意思を持たないタイプの都市伝説だろう
例えるならば、あの「はないちもんめ」の契約者のようなタイプだ
都市伝説にも、たくさんのタイプが存在する
細かく分類するとキリがないが、ひとまず大雑把に分けるならば、意思を持つ都市伝説と、もたない都市伝説が存在する
自分は前者に当たるタイプだ
この通り意思を持ち、自我がある
自分のような都市伝説は、気配を感じればすぐにわかるのだ
その手の都市伝説の気配は、自己主張の強さを感じるから
細かく分類するとキリがないが、ひとまず大雑把に分けるならば、意思を持つ都市伝説と、もたない都市伝説が存在する
自分は前者に当たるタイプだ
この通り意思を持ち、自我がある
自分のような都市伝説は、気配を感じればすぐにわかるのだ
その手の都市伝説の気配は、自己主張の強さを感じるから
しかし、今感じ取った都市伝説の気配は、その自己主張が薄い
よって、恐らくは自我のない都市伝説のタイプだろう
よって、恐らくは自我のない都市伝説のタイプだろう
「いたの?」
「あぁ………あの辺り、だな」
「あぁ………あの辺り、だな」
その、気配の先にあったのは、繁華街の狭い路地裏
二人でそちらに向かうと…そこには、小さなテントがあった
『タロット占いの館』等と、小さな看板が出ている
二人でそちらに向かうと…そこには、小さなテントがあった
『タロット占いの館』等と、小さな看板が出ている
「占い、ね…」
「入ってみるのか?」
「入ってみるのか?」
うぅん…と、考えている様子の契約者
自分が感じ取った気配は、ここまで近づけば彼女も感じているだろう
だから、迷っているのだ
自己主張の薄い、都市伝説の気配
しかし、それに近づけば…どうにも、相手の強さを推し量れない
戦闘向きでないように思えて、戦闘向きのような、強いようでいて、弱いような
どうにも、はっきりしないのだ
勝てそうな相手以外には、勝負を挑まない
それが、この契約者のモットーなのだ
ここ最近、相手の実力を見誤ったために酷い目にあって、それが身に染めているのだろう
若干、警戒心が強くなってきている
自分が感じ取った気配は、ここまで近づけば彼女も感じているだろう
だから、迷っているのだ
自己主張の薄い、都市伝説の気配
しかし、それに近づけば…どうにも、相手の強さを推し量れない
戦闘向きでないように思えて、戦闘向きのような、強いようでいて、弱いような
どうにも、はっきりしないのだ
勝てそうな相手以外には、勝負を挑まない
それが、この契約者のモットーなのだ
ここ最近、相手の実力を見誤ったために酷い目にあって、それが身に染めているのだろう
若干、警戒心が強くなってきている
「……どなたか、いらっしゃるのですか?」
「っ!?」
「っ!?」
テントの中から、声をかけられた
そりゃあ、気配も何も隠していなかったから、当たり前だろう
とりあえず、その声に敵意はない
そりゃあ、気配も何も隠していなかったから、当たり前だろう
とりあえず、その声に敵意はない
「…まぁ、いいわ」
ぽつり、契約者は呟く
戦うにしろ戦わないにしろ、中に入る決意はできたようだ
…そう言えば、この年頃のロリというものは、占い好きである
そうじゃなくとも、女性と言うものは自然と占いを好むものだ
タロット占い、という神秘的な単語に惹かれたせいもあるのだろう
彼女は、テントの中へと入り込む
赤い靴もまた、その後に付いていった
戦うにしろ戦わないにしろ、中に入る決意はできたようだ
…そう言えば、この年頃のロリというものは、占い好きである
そうじゃなくとも、女性と言うものは自然と占いを好むものだ
タロット占い、という神秘的な単語に惹かれたせいもあるのだろう
彼女は、テントの中へと入り込む
赤い靴もまた、その後に付いていった
…ふわり
少し、甘ったるい香りが、テントの中に充満していた
神秘的な雰囲気を出す為に、香でも炊いているのかもしれない
自分は平気だが、苦手な人間にはとことん苦手な香りかもしれない
まぁ、自分も、ロリが自然に発する子供特有のにおいの方が好きだが
少し、甘ったるい香りが、テントの中に充満していた
神秘的な雰囲気を出す為に、香でも炊いているのかもしれない
自分は平気だが、苦手な人間にはとことん苦手な香りかもしれない
まぁ、自分も、ロリが自然に発する子供特有のにおいの方が好きだが
テントの奥には、一人の女性が座っていた
赤い靴の感覚からすれば、既にしなびた婆レベルの年齢である
が、恐らく通常の人間の感覚からすれば、充分に美しい女性と言えた
神秘的な雰囲気を出すためであろう、顔の半分を薄い紫のヴェールで覆っている
赤い靴の感覚からすれば、既にしなびた婆レベルの年齢である
が、恐らく通常の人間の感覚からすれば、充分に美しい女性と言えた
神秘的な雰囲気を出すためであろう、顔の半分を薄い紫のヴェールで覆っている
「…何か、お悩み事でも?」
その女性は、静かで落ち着いた、どこか優しげな声で赤い靴の契約者に声をかけた
別に、と、ややバツが悪そうに、彼女は答える
別に、と、ややバツが悪そうに、彼女は答える
…悩み事がない訳ではないだろう
喫茶ルーモアのマスターの仇を探そうとして見つからない、などと、いくつかの悩みはロリなりに抱えているはずだ
喫茶ルーモアのマスターの仇を探そうとして見つからない、などと、いくつかの悩みはロリなりに抱えているはずだ
だが、彼女は決して、そう言う悩みを口にするタイプではない
基本的に、意地っ張りなのだ
自分の弱みなど、口に出そうとはしない
基本的に、意地っ張りなのだ
自分の弱みなど、口に出そうとはしない
「そうですか…それでは、何か、お探し物でも?」
「……そうね。探しものなら、あるわね」
「……そうね。探しものなら、あるわね」
女性の問いかけに、彼女は答えた
てく、てく…と、ゆっくり、女性に近づいていく
てく、てく…と、ゆっくり、女性に近づいていく
「お探しものが見付かるかどうか…占って、見ましょうか?」
「…」
「…」
こくり、と
彼女は、小さく頷いた
当たるも八卦、当たらぬも八卦
…それだけではなく、この女性が都市伝説なのか、それとも、都市伝説の契約者なのか
そして、都市伝説、もしくは都市伝説の契約者であったとして、それがどんな都市伝説なのか
それを、見抜いてやろうと言う思いもあるのかもしれない
もしかしたら、都市伝説がその占いに絡んでいるかもしれないからだ
都市伝説には、その気になれば日常生活で便利になったり、職種にこっそりと生かせるようなものもあるから
彼女は、小さく頷いた
当たるも八卦、当たらぬも八卦
…それだけではなく、この女性が都市伝説なのか、それとも、都市伝説の契約者なのか
そして、都市伝説、もしくは都市伝説の契約者であったとして、それがどんな都市伝説なのか
それを、見抜いてやろうと言う思いもあるのかもしれない
もしかしたら、都市伝説がその占いに絡んでいるかもしれないからだ
都市伝説には、その気になれば日常生活で便利になったり、職種にこっそりと生かせるようなものもあるから
では……と、女性はタロットカードを取り出した
ちらり、こちらの様子を窺ってきた彼女に、小さく首を左右に振ってみせる
これは、違う
このタロットカードからは、都市伝説の気配はしない
純粋に、ただのプラスチック製のタロットカードである
さらさらと、よどみない動きで、女性はタロットカードをシャッフルし、特定の意味があるであろう並びに並べていく
時折、契約者にシャッフルや配列を手伝わせたりなどしつつ……魔法陣のような並びにカードが配列されていった
はらり、はらり
ゆっくりと、カードがめくられていく
「運命の輪」の逆位置、その隣に「魔術師」の正位置。「女教皇」の逆位置に、「法王」の正位置…
カード一枚一枚に意味があり、正位置逆位置にも全て意味があり、場合によっては、その並びにも意味があるのだろうが、専門的な知識をもたない赤い靴には、意味はわからない
ただ、「死神」や「悪魔」、それに「塔」や「吊るされた男」のような不吉なカードが出てこない事にはほっとした
…彼女が探しているのは、人一人殺した凶悪な相手なのだ
死神、などという不吉なカードがでたら、それは契約者の命の危険を意味するようなものだ
契約者の安全面などを考えると、そのような不吉なカードには姿を現してほしくないものである
ちらり、こちらの様子を窺ってきた彼女に、小さく首を左右に振ってみせる
これは、違う
このタロットカードからは、都市伝説の気配はしない
純粋に、ただのプラスチック製のタロットカードである
さらさらと、よどみない動きで、女性はタロットカードをシャッフルし、特定の意味があるであろう並びに並べていく
時折、契約者にシャッフルや配列を手伝わせたりなどしつつ……魔法陣のような並びにカードが配列されていった
はらり、はらり
ゆっくりと、カードがめくられていく
「運命の輪」の逆位置、その隣に「魔術師」の正位置。「女教皇」の逆位置に、「法王」の正位置…
カード一枚一枚に意味があり、正位置逆位置にも全て意味があり、場合によっては、その並びにも意味があるのだろうが、専門的な知識をもたない赤い靴には、意味はわからない
ただ、「死神」や「悪魔」、それに「塔」や「吊るされた男」のような不吉なカードが出てこない事にはほっとした
…彼女が探しているのは、人一人殺した凶悪な相手なのだ
死神、などという不吉なカードがでたら、それは契約者の命の危険を意味するようなものだ
契約者の安全面などを考えると、そのような不吉なカードには姿を現してほしくないものである
「…あなたが、探しているものは。見つけ出す事が、非常に困難な状態におかれています」
結果が見えたのだろう
女性は、静かに口を開く
女性は、静かに口を開く
「そして…貴方自身、それを探す事に、ややためらいを持っています……いえ、探す事にためらいを持っているのか、それとも、見つけ出してからやろうとしている、その事にためらいを感じているのか…そこまでは、わかりませんが」
「っ」
「っ」
ぎゅう、と
契約者が、こっそりと、手を握り緊めている
…ためらい
それは、薄々と自分も感じていた
探している相手を見つけ出して、叩きのめす
彼女は、そうしようとしている
契約者が、こっそりと、手を握り緊めている
…ためらい
それは、薄々と自分も感じていた
探している相手を見つけ出して、叩きのめす
彼女は、そうしようとしている
叩きのめすだけ
殺すつもりは、ない
けれど
加減を、間違えてしまうかもしれない
怒りに囚われ、殺してしまうかもしれない
殺すつもりは、ない
けれど
加減を、間違えてしまうかもしれない
怒りに囚われ、殺してしまうかもしれない
それを、彼女はこっそりと恐怖している
その小さな体には、契約の関係で、能力を発動した瞬間に…自分の身体能力が、彼女に身につく
己の腕力が、体力が、彼女に身につくのだ
その力で、加減もなしに相手を叩きのめせば
その小さな体には、契約の関係で、能力を発動した瞬間に…自分の身体能力が、彼女に身につく
己の腕力が、体力が、彼女に身につくのだ
その力で、加減もなしに相手を叩きのめせば
…場合によっては、殺してしまうかもしれない
怒りに我を忘れていれば、尚更だ
もし、万が一、そんな状況になったならば、止めるのは自分の役目であると自覚している
ロリに、殺人などと言う行為は似合わないから
怒りに我を忘れていれば、尚更だ
もし、万が一、そんな状況になったならば、止めるのは自分の役目であると自覚している
ロリに、殺人などと言う行為は似合わないから
「悩みを抱えた今のままでは……その、探しものが見付かったとして、致命的な失敗を、犯してしまうかもしれません」
「…そう」
「…そう」
微かに、契約者は俯いている
薄々、自覚があったことを、他人に指摘された気まずさを感じているのだろう
彼女の心の悩みを言い当てた点で見ると、この占い師はそれなりの実力を持っているのかもしれない
薄々、自覚があったことを、他人に指摘された気まずさを感じているのだろう
彼女の心の悩みを言い当てた点で見ると、この占い師はそれなりの実力を持っているのかもしれない
…もしくは、それが都市伝説の能力なのか?
「…これを、どうぞ」
「?」
「?」
そっと
占い師は、契約者に何か渡した
占い師は、契約者に何か渡した
それは、小さな可愛らしい、フェルト製の袋
中に、何か石ころでも入っているのだろうか
どこか、丸みを帯びて…
中に、何か石ころでも入っているのだろうか
どこか、丸みを帯びて…
「………!!」
…そして
その、袋の中から
微弱な、都市伝説の気配を感じた
その、袋の中から
微弱な、都市伝説の気配を感じた
「…なぁに、これ。お守り?」
自分が感じたその気配は、契約者にも感じ取れたのだろう
若干、警戒心を抱えつつ、彼女は呟く
占い師はしとやかにそれに答えた
若干、警戒心を抱えつつ、彼女は呟く
占い師はしとやかにそれに答えた
「はい、お守り…の、ようなものです。中を見ても問題ありませんよ」
「…………」
「…………」
お守り袋の中を見てはいけない、効果が消えてしまうから…
少なくとも、その都市伝説ではないようだ
そうであったら、中を覗かれた瞬間に、効果が消えてしまう
そっと、契約者はお守り袋の中を覗きこむ
…そこに入っていたのは、小さな石だった
その石から…はっきりと、都市伝説の気配を感じる
少なくとも、その都市伝説ではないようだ
そうであったら、中を覗かれた瞬間に、効果が消えてしまう
そっと、契約者はお守り袋の中を覗きこむ
…そこに入っていたのは、小さな石だった
その石から…はっきりと、都市伝説の気配を感じる
「ヘマタイト、というパワーストーンです。貴方の、悩みを抱えている事によるストレスを、緩和してくれるでしょう」
(……!パワーストーンか!)
(……!パワーストーンか!)
ようやく、感じ取った都市伝説の正体に気付く
それは、パワーストーン
石・宝石の類には、意味が存在し、不思議な力をもっているとされている
…その、女性向のお呪い
それとの契約者か
それは、パワーストーン
石・宝石の類には、意味が存在し、不思議な力をもっているとされている
…その、女性向のお呪い
それとの契約者か
「……これも、料金に入っているのかしら?」
「えぇ、そうですよ」
「えぇ、そうですよ」
追加料金なんていらない、ということか
契約者は、占いの代金を占い師に払う
いつ見ても、ロリがブランド財布から一万円札を出している様子は見ていて違和感だ
ここは、あれだろう
ロリたるもの、可愛らしいキャラクター物の財布から小銭を出すべきだろう、常識で考えて…
その辺り、自分の契約者は若干、ズレている所がある
見栄っ張りゆえなのか、それとも、家の環境のせいなのか、その辺りはわからないが
契約者は、占いの代金を占い師に払う
いつ見ても、ロリがブランド財布から一万円札を出している様子は見ていて違和感だ
ここは、あれだろう
ロリたるもの、可愛らしいキャラクター物の財布から小銭を出すべきだろう、常識で考えて…
その辺り、自分の契約者は若干、ズレている所がある
見栄っ張りゆえなのか、それとも、家の環境のせいなのか、その辺りはわからないが
「おつりはいらないわ」
そう言って、契約者はテントから足早に立ち去ろうとしている
…逃げようと、している
ここに、居心地の悪さを感じているのだ
悩みを言い当てられた気まずさから、逃げようとしている
…逃げようと、している
ここに、居心地の悪さを感じているのだ
悩みを言い当てられた気まずさから、逃げようとしている
「また、いつでもどうぞ」
そんな契約者に、占い師は優しい声をかけた
契約者は振り返りもせず、テントから出て行く
その契約者に付いていき、テントを出る、そのさいに…ちらり、振り返り
契約者は振り返りもせず、テントから出て行く
その契約者に付いていき、テントを出る、そのさいに…ちらり、振り返り
占い師と、目が合った
「…やっぱり、見えてたのか」
「はい」
「はい」
「………」
…ぎゅう、と
彼女は、お守り袋を握り緊めている
都市伝説の気配がする、パワーストーン
…ストレスを緩和する、とそう言っていた
都市伝説であるがゆえに、確かにその力を秘めているのだろう
少し、表情が落ち着いてきている
彼女は、お守り袋を握り緊めている
都市伝説の気配がする、パワーストーン
…ストレスを緩和する、とそう言っていた
都市伝説であるがゆえに、確かにその力を秘めているのだろう
少し、表情が落ち着いてきている
「大丈夫か?」
「えぇ……なるほど、こう言う都市伝説な訳ね」
「戦わないか?」
「…あんな戦闘向きじゃない奴、叩きのめしてもつまらないわ」
「えぇ……なるほど、こう言う都市伝説な訳ね」
「戦わないか?」
「…あんな戦闘向きじゃない奴、叩きのめしてもつまらないわ」
戦う相手は自分よりも弱い相手
ただし、まったく戦闘向きじゃない相手を叩きのめすのも、最近の彼女は嫌なのだ
…やはり、あの事件が、尾を引いているのだ
ただし、まったく戦闘向きじゃない相手を叩きのめすのも、最近の彼女は嫌なのだ
…やはり、あの事件が、尾を引いているのだ
「帰るわよ。もう疲れたから」
「あぁ、わかった」
「あぁ、わかった」
歩き出す彼女
その後ろを、ついて歩く
その後ろを、ついて歩く
「………?」
…つい、と
彼女が、歩く速度を少し緩めた
まるで、こちらと並んで歩こうとしているように
その意思を感じ取り、赤い靴は彼女と並んで歩く
……す、と
さり気なく、差し出される手
不自然にならない程度に、差し伸べられた手
契約者の意図を感じ取り、赤い靴は静かにその手を握ってやった
小さな小さな、ロリ特有の柔らかい手
それを、壊さないように握り緊めてやる
彼女が、歩く速度を少し緩めた
まるで、こちらと並んで歩こうとしているように
その意思を感じ取り、赤い靴は彼女と並んで歩く
……す、と
さり気なく、差し出される手
不自然にならない程度に、差し伸べられた手
契約者の意図を感じ取り、赤い靴は静かにその手を握ってやった
小さな小さな、ロリ特有の柔らかい手
それを、壊さないように握り緊めてやる
「どうしたんだ、今日は?」
「…煩いわね。なんでもないわよ」
「…煩いわね。なんでもないわよ」
ぷい、とそっぽを向く契約者
いつも通りの、素直ではないツンデレロリである
いつも通りの、素直ではないツンデレロリである
「……おや」
そのテントから出てきた意外な人影に、黒服は小さく首をかしげた
いつぞや遭遇した、赤い靴とその契約者
…彼女の所に、あの少女たちが訪れるとは
そう言えば、あの赤い靴の契約者の少女は、都市伝説と積極的に戦おうとするタイプだった
いつぞや遭遇した、赤い靴とその契約者
…彼女の所に、あの少女たちが訪れるとは
そう言えば、あの赤い靴の契約者の少女は、都市伝説と積極的に戦おうとするタイプだった
まぁ、あの魔法使いのようなタチの悪いタイプではないから、放置していたが…
………もっとも、彼女が契約している赤い靴の方は、何か別の意味で放置していてはいけない予感がたっぷりとするのだが
残念ながら、黒服はあの手のやからにつける薬は持っていない
………もっとも、彼女が契約している赤い靴の方は、何か別の意味で放置していてはいけない予感がたっぷりとするのだが
残念ながら、黒服はあの手のやからにつける薬は持っていない
「…お久しぶりです」
「まぁ……ようやっと、来てくださったのですね」
「まぁ……ようやっと、来てくださったのですね」
テントの中に入ると、彼女が嬉しそうな声をあげた
自分のような都市伝説と遭遇して喜ぶなど、本当に変わっている
自分のような都市伝説と遭遇して喜ぶなど、本当に変わっている
「今日は、どうかなさったの?」
「…あなたの耳にも入ってるやかもしれませんが。学校町に、タチの悪い都市伝説が入り込みました」
「あぁ……」
「…あなたの耳にも入ってるやかもしれませんが。学校町に、タチの悪い都市伝説が入り込みました」
「あぁ……」
静かに、タロットカードをシャッフルする彼女
するり、彼女が何気なく抜き出した一枚
するり、彼女が何気なく抜き出した一枚
…それは、「悪魔」のカードだった
嬉しそうに、微笑む彼女
何が嬉しいのか、黒服にはよくわからない
何が嬉しいのか、黒服にはよくわからない
「あなたには、お世話になっていますから」
彼女が、なぜか自分に手渡してくるパワーストーンには、随分と助けられている
彼女の契約しているパワーストーンの都市伝説は、戦闘向きとは言えない
しかし、防御面などを考えると、随分と強力なのである
力が込められたパワーストーンは一回使いきりとは言え、その種類によってはその力は絶大だ
彼女の契約しているパワーストーンの都市伝説は、戦闘向きとは言えない
しかし、防御面などを考えると、随分と強力なのである
力が込められたパワーストーンは一回使いきりとは言え、その種類によってはその力は絶大だ
「…それでは、忠告はしましたよ。私はコレで」
「あぁ、お待ちになって……これを」
「あぁ、お待ちになって……これを」
そっと、大きな袋を渡された
じゃらり、石がこすれあう音がする
中に、パワーストーンがいくつも入っているのだろう
じゃらり、石がこすれあう音がする
中に、パワーストーンがいくつも入っているのだろう
「…こんなに、ですか?あなた自身を護る石が、なくなってしまうのでは?」
「自分を護る分は、きちんと確保していますわ。…あなたは、危険な世界に身を置いているのですもの…それでも、足りないくらい」
「……ありがとうございます」
「自分を護る分は、きちんと確保していますわ。…あなたは、危険な世界に身を置いているのですもの…それでも、足りないくらい」
「……ありがとうございます」
短く、礼を述べて、黒服はテントを出た
…どうにも、あの女性は苦手である
自分のような存在に、ここまで親切にしてくる理由がわからないのだ
じゃらり、パワストーンが詰まった袋を手に、黒服はあの女性の考えがわからず、小さくため息をつくのだった
…どうにも、あの女性は苦手である
自分のような存在に、ここまで親切にしてくる理由がわからないのだ
じゃらり、パワストーンが詰まった袋を手に、黒服はあの女性の考えがわからず、小さくため息をつくのだった
「…困った人」
黒服が、テントを出るのを見送って
ぽつり、彼女は呟いた
ぽつり、彼女は呟いた
貴方は覚えていないでしょう
人間だった頃、貴方がどんな人だったのか
貴方は覚えていないでしょう
人間であった頃の心は残っていても、記憶は貴方に残っていない
人間だった頃、貴方がどんな人だったのか
貴方は覚えていないでしょう
人間であった頃の心は残っていても、記憶は貴方に残っていない
貴方はきっと、人間だった頃も、気付いていなかったでしょう
私が一体、あなたをどう思っていたのかを
私が一体、あなたをどう思っていたのかを
fin