「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 無垢なる支配者と蜘蛛-03b

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 全ての天使達が、一瞬で屠られた様子を
 そして、B-No.001が、返り血にまみれている、その姿を
 A-No.0は、ただ、無表情に見つめていた

 …そして
 その視線が、神野悪五郎へと向けられる

「……プログラム化された、都市伝説の契約書……地獄門…………あなたは、イっちゃんに、多重契約をさせたのですか」
「黙れ、下郎。貴様となど、言葉を交わしたくもない」

 感情のこめられていないA-No.0の言葉に、神野悪五郎はそう答えた
 しかし、A-No.0は、構わず続ける

「多重契約のリスクを、イっちゃんに背負わせたのですか?そして、何故、イっちゃんを生身でこちらの世界に侵入させたのです。
 通常ログインと違い、生身での進入は、この世界を形成している存在に目をつけられる意味で、危険です。何故あなたはイっちゃんに、そんなリスクを背負わせたのですか」
「黙れといっている……」

 …A-No.0は、神野悪五郎の言葉を、意に介した様子はない
 ただただ、いつも通り、今まで通り
 無感情な言葉を続ける

「…都市伝説の契約書の、プログラム化。そんな事を可能にできるのは…私が把握している限りでは、B-No.0しか存在しません……あなたは、あなたと契約している存在は。B-No.0と接触を持っているというのですか?」
「…下郎が。言葉が通じぬか」

 ………
 駄目だ、会話になっていない
 二人の会話を半ば他人事のように聞きながら、B-No.001は軽い頭痛のようなものを感じた

 …と
 A-No.0の視線が、B-No.001に、向けられた

「イっちゃん。何故、彼は私の質問に答えてくれないのでしょうか?」
「…本気でわかっていないのですか?アーちゃん」
「理解できないので、尋ねています」

 淡々とした言葉に、B-No.001はため息をついた
 やや嫌味をこめて、答える

「彼も、あなたの事が嫌いだからではないですか?」
「………?何故、彼が、私を嫌うのですか?」
「そりゃあ、あなたは、彼の契約者を「組織」に勧誘しておきながら、一方的に切り捨てるなんてしたんですからね。嫌われて当然なんじゃないですか?」

 冷たく、そう言い放ってみせるB-No.001
 A-No.0は、不思議そうに首をかしげて…


 ………つぅ、と


「……え?」
「……?」

 静かに、静かに
 A-No.0の頬を、涙が伝う

(…なみ、だ?)

 そう
 ………涙だ
 静かに、静かに
 A-No.0が……涙を、流している

「…?これは…?」

 自分が、涙を流している事を
 A-No.0は、ようやく自覚したようだった

 ただただ、不思議そうに…ただし、無表情のまま…首をかしげる

「え?ア、アーちゃん、どうして、涙を流しているんです?」
「……?何故、なのでしょうか?」

 B-No.001の言葉にも、A-No.0は首を傾げるばかりだ

 …自分で、何故、涙を流しているのか、理解できていない…?

 いや、それよりも
 …涙を、流す?
 それは、まさか
 感情など持ちえていない存在のはずの、A-No.0だが
 …感情を、持ち合わせていたとでも、言うのか?

 B-No.001が、そんな疑問を抱いていると

『やーいやーい、いじめっこー』

 と
 非常に、非常に、この場の空気にそぐわない、緊張感の伴わない声が、頭に響いた
 B-No.001も聞き覚えのある、できればあんまり聞きたくなかった、声で

「っちょ!?何です、突然の言いがかりは!?」
『状況的に、エーちゃん泣かしたのはお前らだろうがよ』

 B-No.001の言葉に、声は続き
 直後、A-No.0の前に、イクトミが姿を現した
 恐らくは、小さな蜘蛛の姿で接近してきていたのだろう
 己を護るように姿を現したイクトミに、A-No.0は小さく首をかしげた

「イクトミ?あちらはどうにかなったのですか?」
「あぁ。ついでに、ちいとばかし面倒なことが起きたが…まぁ、いい。それは後で報告する」
「わかりました」

 A-No.0の前に立つイクトミは、ゆらゆらと軽く手を揺らしながら、B-No.001と神野悪五郎を見つめてくる
 いつでも、戦闘行為に入れるよう、警戒している様子だ
 …特に、神野悪五郎、相手に

「……ところで、イクトミ。イっちゃんと神野悪五郎がいじめっこ、と言うのは、どう言う事ですか?それは、私が涙を流している事と、何か関わりがあるのですか?」
「どう考えても、お前はあいつらの言葉を聞いて涙を流しただろうが。関わりがないとでも思ったのか」
「……?よく、わかりません。そもそも、何故、私は涙を流しているのですか?これには、私の思考に波が起きている事が、関係しているのですか?」

 相変わらずの、無感情な声での、一方的な質問
 B-No.001とは違い、それに嫌な顔一つせず、イクトミは答える

「ん~?そうだな……エーちゃん、その思考の波ってのは、前に感じた事はあるか?あるとしたら、それはどう言う時だった?」
「……以前にも、この波を自覚した事はあります………ダレン・ディーフェンベーカーが暗殺されたと、聞いた時。その瞬間に……よく、似ています」

 一瞬
 声に、感情のゆれのようなものが、混ざる

 まただ、とB-No.001は怪訝に思った
 今まで、A-No.0と会話していて、何度か感じられた感情のゆれ
 …ダレン・ディーフェンベーカー、D-No.0の話題になった時、それが多いように思えたのだ

「そうか。それじゃあ、それは「悲しい」って感情だ。お前は、こいつらに嫌われた事を「悲しい」って感じた。だから、涙が流れたんだよ」
「…悲しい…?…………これが、「悲しい」という、感情なのですか?」

 己の頬を伝う涙に、不思議そうに触れながら、A-No.0が呟く
 それは、まるで映画などでよくある、感情を持たないはずのロボットやアンドロイドに、感情が芽生えたシーンに、よく似ていた

「…アーちゃん、あなたには……感情が、あるのですか?」
「……本来、「組織」として生まれた私には、感情など存在しませんでした………しかし、いつからか、それに似た思考の波が、私の中で生まれ始めています」

 B-No.001の質問に、A-No.0は無感情な声で答えた
 その間も、涙は止まっていない
 恐らくは、A-No.0が、生まれて初めて流した、涙
 それは、静かに流れ続けている

「…イっちゃん。あなたは、アダ名で呼び合うのは親愛の証だと言いました。ならば、私を「エーちゃん」とアダ名で呼んでくるイクトミは、私に親愛を感じているのでしょうか?」
「それは、俺に聞いてくれよな、エーちゃん」

 A-No.0の言葉に、イクトミが小さく苦笑した
 …それは、まるで、大人が子供の言動にするような、苦笑
 B-No.001が、初めて見たイクトミの表情だった

「…あぁ、そうでしたね。イクトミ、あなたは、私に親愛を感じてくれているのですか?」
「当たり前だろ。俺は、嫌いな奴の下になんざつかねぇよ」
「そうですか」

 イクトミの言葉に、A-No.0はやはり、無感情な声で答えた
 …再び、A-No.0の視線が、B-No.001に、戻される

「………私には、オール・アクロイドと言う名前が存在します。しかし、私は皆から、A-No.0と呼ばれます…………誰も、私を、名前で呼んではくれません

 少なくとも
 A-No.0が把握している限り…「組織」において、A-No.0を「オール・アクロイド」という名前で呼んでくる者は、いない
 いや、A-No.0の前でなければ、そう呼ぶ者はいるかもしれない
 しかし、A-No.0との会話中、その名前で呼んでくる者など、ほとんどいないのだ
 それは、A-No.0が、事実上の「組織」のトップである立場であるが故、自然と、そうなってしまっているのだが…

「…私を、名前で呼ぶ相手は…………ただ、一人。ダレン・ディーフェンベーカーしか、私は把握していません」

 …声に、感情のゆれが混じる
 ダレン・ディーフェンベーカーと
 その名前を、口に出した、瞬間に

「…ダレン・ディーフェンベーカーに名前を呼ばれると。必ず、私の思考に波がおきます。しかし、それは、「アメリカ政府の陰謀論」相手に起きる思考の波とは違い、決して、不快なものではありません…そして、それは、「悲しみ」とも、また違います」

 ---それは
 むしろ、心地よさすら感じる感覚
 A-No.0はそれを自覚して以来、その正体が何なのか、ただ、悩み続けていた

 その正体に悩むと同時に
 自分が、そのような思考の揺れに囚われて良いのかとも、悩んだ
 「組織」そのものである自分
 概念でしかなかったはずの自分
 ただ、「組織」を保つ為だけの存在するはずの、自分が
 それ以外の思考に囚われても良いのか、と

 ……その、答えが
 特に、前者の悩みの答えが
 ゆっくりと、導き出されようとしていた

「………イっちゃん。私が、ダレン・ディーフェンベーカー相手に感じる思考の波は…これも、何かの感情なのでしょうか?感情なのだとしたら……これは、どのような、感情なのでしょうか?」

 まさか 
 ありえない、とB-No.001は、頭を抱えたい気分になった
 無理難題を押し付けたつもりだった
 それで、A-No.0の質問から逃げ出すつもりだった

 だと、言うのに

(----ありえない……!)

 …A-No.0が、ダレン・ディーフェンベーカー相手に感じるのだという、その思考の波は
 感情は

 …「恋慕」と言うそれで、説明が可能なものだったのだ







to be … ?




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