…B-No.001を、隔離した空間から解放した後
A-No.0とイクトミもまた、その空間から離脱していた
二人は、正規の方法でログインしていた訳ではないのだ
あまり長時間、あの空間にいるべきではない
A-No.0とイクトミもまた、その空間から離脱していた
二人は、正規の方法でログインしていた訳ではないのだ
あまり長時間、あの空間にいるべきではない
あの異空間から離脱し、己の執務室に戻っているイクトミ
つけっぱなしのパソコンを通して、改めて、A-No.0に、B-No.004の事などを報告する
つけっぱなしのパソコンを通して、改めて、A-No.0に、B-No.004の事などを報告する
「…以上だ」
『……そうですか。彼は、生きていたのですね』
「生きていたのか…復活したのか。その辺の判断は微妙だな。サムディが何かしたんだろうけど」
『…かも、しれませんね……彼と接触を図る事ができれば良いのですが』
『……そうですか。彼は、生きていたのですね』
「生きていたのか…復活したのか。その辺の判断は微妙だな。サムディが何かしたんだろうけど」
『…かも、しれませんね……彼と接触を図る事ができれば良いのですが』
…まぁ、無理だろう
首領を追放した時点で、B-No.0は、A-No.0との接触を望まないだろうから
首領を追放した時点で、B-No.0は、A-No.0との接触を望まないだろうから
…だが……A-No.0からしてみれば、首領の追放は「組織」の為であり、また、首領へのかすかな慈悲でもあった
彼の性格を考えると…この「組織」と言う存在のトップに立つ、という事実は、あまりにも重すぎた
ダレンの暗殺未遂事件を防げなかった、という以外にも、そのような理由も、首領追放の裏にはあったのだ
その事実を……イクトミは、把握してやっている
彼は、「組織」において唯一、A-No.0の完全なる理解者なのだから
彼の性格を考えると…この「組織」と言う存在のトップに立つ、という事実は、あまりにも重すぎた
ダレンの暗殺未遂事件を防げなかった、という以外にも、そのような理由も、首領追放の裏にはあったのだ
その事実を……イクトミは、把握してやっている
彼は、「組織」において唯一、A-No.0の完全なる理解者なのだから
…だからこそ
ふと、A-No.0の沈黙から、何かを感じ取る
ふと、A-No.0の沈黙から、何かを感じ取る
「どうした?エーちゃん。他に気になる事でもあったか?」
『……いえ。イっちゃんに謝らなければならないな、と思いまして』
「イっちゃん?あいつにか?」
『はい…それと、もう一人のイっちゃんにも』
『……いえ。イっちゃんに謝らなければならないな、と思いまして』
「イっちゃん?あいつにか?」
『はい…それと、もう一人のイっちゃんにも』
…え?と首を傾げかけて
あぁ、B-No.005の事か、とすぐに思い当たったイクトミ
確か、あの幼女は、親しい者に自分をそう呼ばせていたはずだ
自分が覗き見ていた光景によれば、だが
あぁ、B-No.005の事か、とすぐに思い当たったイクトミ
確か、あの幼女は、親しい者に自分をそう呼ばせていたはずだ
自分が覗き見ていた光景によれば、だが
「幼女の方には、どうして謝るんだよ?」
『彼女にとって、イっちゃんは大切な家族だと言う事です。その彼を、私は強制的に、他者の目には触れられぬ場所へと移動させました。彼女を心配させた事でしょう』
『彼女にとって、イっちゃんは大切な家族だと言う事です。その彼を、私は強制的に、他者の目には触れられぬ場所へと移動させました。彼女を心配させた事でしょう』
常識が微妙にズレているA-No.0ではあるが
さすがに、大切な存在を心配する心境は、ある程度わかるようだ
さすがに、大切な存在を心配する心境は、ある程度わかるようだ
「…そうか、じゃあ、今度イっちゃん…男の娘の方な。そっちに連絡とる時、もう一人のイッちゃんとも接触させてもらって、謝りな」
『そうですね……ところで、イクトミ。「男の娘」とは何ですか?』
「おぉっと、今は気にするな。今度教えてやるから」
『わかりました』
『そうですね……ところで、イクトミ。「男の娘」とは何ですか?』
「おぉっと、今は気にするな。今度教えてやるから」
『わかりました』
うん、口が滑った
また、余計な事を教えてしまうところだった
これ以上、余計な知識を教えるのはさすがに罪悪感がわく
また、余計な事を教えてしまうところだった
これ以上、余計な知識を教えるのはさすがに罪悪感がわく
(…この、トリックスターの俺が、な)
こっそりと、苦笑する
まったく…最近の自分は、自分らしく、ない
まったく…最近の自分は、自分らしく、ない
「……な、エーちゃん」
『何ですか?』
「どうだった?仮初とは言え、実体を持ったのは」
『何ですか?』
「どうだった?仮初とは言え、実体を持ったのは」
…あの、ネットゲームの世界において
A-No.0を自由に行動させるため、ゲームの機能を使って仮初の姿を作り、それを与えた
……女性の姿にしたのは、100%自分の趣味として、だ
あれは、イクトミなりに考えての行動だった
A-No.0を自由に行動させるため、ゲームの機能を使って仮初の姿を作り、それを与えた
……女性の姿にしたのは、100%自分の趣味として、だ
あれは、イクトミなりに考えての行動だった
実体を持たないがゆえに
A-No.0は誰とも触れ合う事が出来ない
誰とも、面と向かって話す事ができない
…そんな、A-No.0でも
あの空間ならば…仮初とはいえ肉体を持ち、触れ合い、向かい合うことが出来る
それが、A-No.0にとって、良い影響を与えればいい、とイクトミは願う
A-No.0は誰とも触れ合う事が出来ない
誰とも、面と向かって話す事ができない
…そんな、A-No.0でも
あの空間ならば…仮初とはいえ肉体を持ち、触れ合い、向かい合うことが出来る
それが、A-No.0にとって、良い影響を与えればいい、とイクトミは願う
『……そうですね。誰かと、面と向かって話す、と言う事は……難しいです』
「そうか」
『しかし、不快ではありませんでした』
「そうか」
『しかし、不快ではありませんでした』
淡々と、答えてくるA-No.0
しかし、水面が波打つように、かすかに感情の揺れが見えたことを、イクトミは見逃さない
しかし、水面が波打つように、かすかに感情の揺れが見えたことを、イクトミは見逃さない
「そうか…また、あそこに入りたいか?」
『そうですね。あの空間の調査も必要ですし』
「…調査に関しては、エーちゃんは無理するなよ?俺が把握できる範囲からいなくなるんじゃないぞ?」
『わかっています。私の能力は戦闘向きではありませんから。危険を感じたら、すぐに離脱します』
『そうですね。あの空間の調査も必要ですし』
「…調査に関しては、エーちゃんは無理するなよ?俺が把握できる範囲からいなくなるんじゃないぞ?」
『わかっています。私の能力は戦闘向きではありませんから。危険を感じたら、すぐに離脱します』
よし、と頷くイクトミ
…まったく、過保護なものだ
…まったく、過保護なものだ
『…それでは、私はこれで………少し、疲れました』
「ん、慣れない事したんだしな……ゆっくり休めよ」
「ん、慣れない事したんだしな……ゆっくり休めよ」
はい、と短く返事が返ってきて
A-No.0の気配が、消える
A-No.0の気配が、消える
……はぁ、と
深々と、イクトミはため息をついた
深々と、イクトミはため息をついた
「あ~………らしくねぇ」
A-No.0の、ダレンへの恋慕
それに気付いて、動揺した事
ダレンへの恋慕という、あまりにも無謀すぎるそれを持ってしまったA-No.0への心配
…どこまでも、らしくない
むしろ、そんな状況に直面したら、面白がるのが本来の自分のはずだと言うのに
それに気付いて、動揺した事
ダレンへの恋慕という、あまりにも無謀すぎるそれを持ってしまったA-No.0への心配
…どこまでも、らしくない
むしろ、そんな状況に直面したら、面白がるのが本来の自分のはずだと言うのに
「サンジェルマンに忠告したのもそうだし、お嬢さんの知り合いを助けるのに手ぇ貸したのもそうだし…………俺は、トリックスターだぞ?事態を引っかきまわすのが俺のはずだろ?」
だと、言うのに
このありさまは、何だ?
このありさまは、何だ?
「………だから、さ。やっぱり君は、神でしかないんだよ」
聞こえて来た声
視界が、執務室からガラリと切り替わる
真っ黒な世界
…世界の内側
神々の精神世界
神と呼ばれる存在達の意思だけが入り込み、会話する世界
視界が、執務室からガラリと切り替わる
真っ黒な世界
…世界の内側
神々の精神世界
神と呼ばれる存在達の意思だけが入り込み、会話する世界
「…お前かよ」
「君が、どれだけ明るく陽気で卑猥なだけのトリックスターでいたくとも。時代が、それを許さなかった。君の猥談に笑い転げていた彼らは、侵略者の脅威から獰猛な戦闘民族の本性を出した。それから、君が逃れるなんてできるはずがない」
「君が、どれだけ明るく陽気で卑猥なだけのトリックスターでいたくとも。時代が、それを許さなかった。君の猥談に笑い転げていた彼らは、侵略者の脅威から獰猛な戦闘民族の本性を出した。それから、君が逃れるなんてできるはずがない」
……ぽちゃん、と
真っ暗な世界に、波紋が広がったような錯覚
イクトミに語りかける存在は、真っ黒な世界の片隅で、水面に波紋を作るように、石を落とすような動作を繰り返す
真っ暗な世界に、波紋が広がったような錯覚
イクトミに語りかける存在は、真っ黒な世界の片隅で、水面に波紋を作るように、石を落とすような動作を繰り返す
「破滅のメッセンジャー。それが、君の神としてのもう一つの本質。君がそれから逃れようとしても、決して逃れられない。君は人間に近い位置にいたいのかもしれないけれど、その本質がそれを否定する」
「…言われなくとも、わかってるよ、この糞餓鬼が…」
「…言われなくとも、わかってるよ、この糞餓鬼が…」
小さく舌打ちするイクトミ
どうにも、この相手は苦手だ
どうにも、この相手は苦手だ
「……まぁ、お嬢さんの知り合いの破滅的未来は、お前のおかげで感知できたようなもんだ。そこは感謝してやるが………波紋を作るだけ作っておいて、あとは他人任せかよ」
「…僕は、傍観者でしかないからね………ただ、見える未来がそのまま、ってのはつまらない。だから、石を落として波紋を作る…後はそれでどっちに転ぶか、それだけ」
「………ったく……これだから、学校街の古い血筋。それも、神喰らいの外道御三家の血は厄介だよ……!」
「…………きひひっ………一度は、学校街を離れた血筋さ。そこまで言う事ないんじゃない?」
「…僕は、傍観者でしかないからね………ただ、見える未来がそのまま、ってのはつまらない。だから、石を落として波紋を作る…後はそれでどっちに転ぶか、それだけ」
「………ったく……これだから、学校街の古い血筋。それも、神喰らいの外道御三家の血は厄介だよ……!」
「…………きひひっ………一度は、学校街を離れた血筋さ。そこまで言う事ないんじゃない?」
楽しげに笑うそれ
ぽちゃん、と
真っ黒な世界に、また波紋が広がる
ぽちゃん、と
真っ黒な世界に、また波紋が広がる
「よりによって、お前の代で覚醒したから、タチが悪いんだっつーの」
「他の旧家の血だって、今の時代になって、それが表に濃く現れている……運命、って奴なんじゃない?」
「他の旧家の血だって、今の時代になって、それが表に濃く現れている……運命、って奴なんじゃない?」
波紋が、イクトミの足元まで届く
それは、イクトミに触れた瞬間、あっさりと霧散して消えた
それは、イクトミに触れた瞬間、あっさりと霧散して消えた
「…何を考えてるんだよ、お前は」
「別に……僕はただ、今、仲のいい人たちには幸せに生きて欲しいと思う。それくらいかな」
「別に……僕はただ、今、仲のいい人たちには幸せに生きて欲しいと思う。それくらいかな」
ぽちゃん、ぽちゃん
波紋が、広がる、広がる、広がる
いくつもいくつも作られて
広がり、消えてを繰り返す
波紋が、広がる、広がる、広がる
いくつもいくつも作られて
広がり、消えてを繰り返す
目の前の存在が、何度も繰り返してきた事
それが、この世界において、擬似的に再現される
それが、この世界において、擬似的に再現される
「……俺は戻るぞ。仕事があるからな」
「そう………頑張ってね?君が見た破滅的な未来が、現実にならないようにさ…………きひひっ」
「……わかってるよ」
「そう………頑張ってね?君が見た破滅的な未来が、現実にならないようにさ…………きひひっ」
「……わかってるよ」
目を閉じる
再び開けば…執務室に戻っていた
肉体は、移動などしていない
意識が、呼びかけに応じて引っ張られただけなのだから
再び開けば…執務室に戻っていた
肉体は、移動などしていない
意識が、呼びかけに応じて引っ張られただけなのだから
「………あぁ、もう。らしくねぇ。ただのトリックスターに戻りてぇ………」
叶わぬ願いを、一人呟き
イクトミは、己の役目へと、ただ、戻っていくのだった
イクトミは、己の役目へと、ただ、戻っていくのだった
神々の交差点での会話を
苦々しく、胸に秘めながら
苦々しく、胸に秘めながら
to be … ?