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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 無垢なる支配者と蜘蛛-03c

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 …B-No.001を、隔離した空間から解放した後
 A-No.0とイクトミもまた、その空間から離脱していた
 二人は、正規の方法でログインしていた訳ではないのだ
 あまり長時間、あの空間にいるべきではない

 あの異空間から離脱し、己の執務室に戻っているイクトミ
 つけっぱなしのパソコンを通して、改めて、A-No.0に、B-No.004の事などを報告する

「…以上だ」
『……そうですか。彼は、生きていたのですね』
「生きていたのか…復活したのか。その辺の判断は微妙だな。サムディが何かしたんだろうけど」
『…かも、しれませんね……彼と接触を図る事ができれば良いのですが』

 …まぁ、無理だろう
 首領を追放した時点で、B-No.0は、A-No.0との接触を望まないだろうから

 …だが……A-No.0からしてみれば、首領の追放は「組織」の為であり、また、首領へのかすかな慈悲でもあった
 彼の性格を考えると…この「組織」と言う存在のトップに立つ、という事実は、あまりにも重すぎた
 ダレンの暗殺未遂事件を防げなかった、という以外にも、そのような理由も、首領追放の裏にはあったのだ
 その事実を……イクトミは、把握してやっている
 彼は、「組織」において唯一、A-No.0の完全なる理解者なのだから

 …だからこそ
 ふと、A-No.0の沈黙から、何かを感じ取る

「どうした?エーちゃん。他に気になる事でもあったか?」
『……いえ。イっちゃんに謝らなければならないな、と思いまして』
「イっちゃん?あいつにか?」
『はい…それと、もう一人のイっちゃんにも』

 …え?と首を傾げかけて
 あぁ、B-No.005の事か、とすぐに思い当たったイクトミ
 確か、あの幼女は、親しい者に自分をそう呼ばせていたはずだ
 自分が覗き見ていた光景によれば、だが

「幼女の方には、どうして謝るんだよ?」
『彼女にとって、イっちゃんは大切な家族だと言う事です。その彼を、私は強制的に、他者の目には触れられぬ場所へと移動させました。彼女を心配させた事でしょう』

 常識が微妙にズレているA-No.0ではあるが
 さすがに、大切な存在を心配する心境は、ある程度わかるようだ

「…そうか、じゃあ、今度イっちゃん…男の娘の方な。そっちに連絡とる時、もう一人のイッちゃんとも接触させてもらって、謝りな」
『そうですね……ところで、イクトミ。「男の娘」とは何ですか?』
「おぉっと、今は気にするな。今度教えてやるから」
『わかりました』

 うん、口が滑った
 また、余計な事を教えてしまうところだった
 これ以上、余計な知識を教えるのはさすがに罪悪感がわく

(…この、トリックスターの俺が、な)

 こっそりと、苦笑する
 まったく…最近の自分は、自分らしく、ない

「……な、エーちゃん」
『何ですか?』
「どうだった?仮初とは言え、実体を持ったのは」

 …あの、ネットゲームの世界において
 A-No.0を自由に行動させるため、ゲームの機能を使って仮初の姿を作り、それを与えた
 ……女性の姿にしたのは、100%自分の趣味として、だ
 あれは、イクトミなりに考えての行動だった

 実体を持たないがゆえに
 A-No.0は誰とも触れ合う事が出来ない
 誰とも、面と向かって話す事ができない
 …そんな、A-No.0でも
 あの空間ならば…仮初とはいえ肉体を持ち、触れ合い、向かい合うことが出来る
 それが、A-No.0にとって、良い影響を与えればいい、とイクトミは願う

『……そうですね。誰かと、面と向かって話す、と言う事は……難しいです』
「そうか」
『しかし、不快ではありませんでした』

 淡々と、答えてくるA-No.0
 しかし、水面が波打つように、かすかに感情の揺れが見えたことを、イクトミは見逃さない

「そうか…また、あそこに入りたいか?」
『そうですね。あの空間の調査も必要ですし』
「…調査に関しては、エーちゃんは無理するなよ?俺が把握できる範囲からいなくなるんじゃないぞ?」
『わかっています。私の能力は戦闘向きではありませんから。危険を感じたら、すぐに離脱します』

 よし、と頷くイクトミ
 …まったく、過保護なものだ

『…それでは、私はこれで………少し、疲れました』
「ん、慣れない事したんだしな……ゆっくり休めよ」

 はい、と短く返事が返ってきて
 A-No.0の気配が、消える

 ……はぁ、と
 深々と、イクトミはため息をついた

「あ~………らしくねぇ」

 A-No.0の、ダレンへの恋慕
 それに気付いて、動揺した事
 ダレンへの恋慕という、あまりにも無謀すぎるそれを持ってしまったA-No.0への心配
 …どこまでも、らしくない
 むしろ、そんな状況に直面したら、面白がるのが本来の自分のはずだと言うのに

「サンジェルマンに忠告したのもそうだし、お嬢さんの知り合いを助けるのに手ぇ貸したのもそうだし…………俺は、トリックスターだぞ?事態を引っかきまわすのが俺のはずだろ?」

 だと、言うのに
 このありさまは、何だ?


「………だから、さ。やっぱり君は、神でしかないんだよ」


 聞こえて来た声
 視界が、執務室からガラリと切り替わる
 真っ黒な世界
 …世界の内側
 神々の精神世界
 神と呼ばれる存在達の意思だけが入り込み、会話する世界

「…お前かよ」
「君が、どれだけ明るく陽気で卑猥なだけのトリックスターでいたくとも。時代が、それを許さなかった。君の猥談に笑い転げていた彼らは、侵略者の脅威から獰猛な戦闘民族の本性を出した。それから、君が逃れるなんてできるはずがない」

 ……ぽちゃん、と
 真っ暗な世界に、波紋が広がったような錯覚
 イクトミに語りかける存在は、真っ黒な世界の片隅で、水面に波紋を作るように、石を落とすような動作を繰り返す

「破滅のメッセンジャー。それが、君の神としてのもう一つの本質。君がそれから逃れようとしても、決して逃れられない。君は人間に近い位置にいたいのかもしれないけれど、その本質がそれを否定する」
「…言われなくとも、わかってるよ、この糞餓鬼が…」

 小さく舌打ちするイクトミ
 どうにも、この相手は苦手だ

「……まぁ、お嬢さんの知り合いの破滅的未来は、お前のおかげで感知できたようなもんだ。そこは感謝してやるが………波紋を作るだけ作っておいて、あとは他人任せかよ」
「…僕は、傍観者でしかないからね………ただ、見える未来がそのまま、ってのはつまらない。だから、石を落として波紋を作る…後はそれでどっちに転ぶか、それだけ」
「………ったく……これだから、学校街の古い血筋。それも、神喰らいの外道御三家の血は厄介だよ……!」
「…………きひひっ………一度は、学校街を離れた血筋さ。そこまで言う事ないんじゃない?」

 楽しげに笑うそれ
 ぽちゃん、と
 真っ黒な世界に、また波紋が広がる

「よりによって、お前の代で覚醒したから、タチが悪いんだっつーの」
「他の旧家の血だって、今の時代になって、それが表に濃く現れている……運命、って奴なんじゃない?」

 波紋が、イクトミの足元まで届く
 それは、イクトミに触れた瞬間、あっさりと霧散して消えた

「…何を考えてるんだよ、お前は」
「別に……僕はただ、今、仲のいい人たちには幸せに生きて欲しいと思う。それくらいかな」

 ぽちゃん、ぽちゃん
 波紋が、広がる、広がる、広がる
 いくつもいくつも作られて
 広がり、消えてを繰り返す

 目の前の存在が、何度も繰り返してきた事
 それが、この世界において、擬似的に再現される

「……俺は戻るぞ。仕事があるからな」
「そう………頑張ってね?君が見た破滅的な未来が、現実にならないようにさ…………きひひっ」
「……わかってるよ」

 目を閉じる
 再び開けば…執務室に戻っていた
 肉体は、移動などしていない
 意識が、呼びかけに応じて引っ張られただけなのだから



「………あぁ、もう。らしくねぇ。ただのトリックスターに戻りてぇ………」

 叶わぬ願いを、一人呟き
 イクトミは、己の役目へと、ただ、戻っていくのだった


 神々の交差点での会話を
 苦々しく、胸に秘めながら




to be … ?





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