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連載 - 電子レンジで猫をチン!-43

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【電磁人の韻律詩43~握った掌じゃ何もつかめないから~】

秋も深まる、というか冬が忍び寄る11月。
『猫レンジ』という都市伝説である恋路は現在契約者と喧嘩していた。
ついでに言うと喧嘩の勢いで家出してバイト先の店長の家に居候していたのだ。

「恋路ちゃーん、挽肉買ってきてヨー。」
「魁さんまた買い物忘れたんですか?」

店長の魁さんは子供っぽい外見なので夜中に歩いていると警察に補導される。

「ゴメンゴメン、でも私の外見だと夜中に買い物行くと補導されちゃうアル。
 なんとかならないかい?」
「それくらい問題無いですよ。それじゃあちょっと行ってきますね。」
「早く帰っておいでヨ、最近妙な野生の都市伝説……っぽい何かが目撃されてるから。」
「なんですかそれ?」
「ボロボロのシーツに身を包んだ子供らしいアル。
 捕まえようとしたら蹴り飛ばされた人が居るネ。
 まあさまよってるだけで手を出さなきゃ無害だから気にする必要は無いかもしれないヨ。」
「そうなんですか?じゃまあさっさと行って帰ってきますよ。」
「いってらっしゃーい。」
「いってきまーす。」

こうして彼女は近所の肉屋さんまで買い出しに向かうことになったのだった。





「こんにちわ皆さん、私の名前は恋路、外見年齢17才。
 彼氏有り、趣味はボトルシップ製作と八極拳と赤心少林拳の練習。
 種族は都市伝説、でも人間っぽく生活していまーす。」

暗い夜道、足音だけが遠く響く。
誰も居なくてちょっと怖くなってきた恋路は自己紹介なんてしつつ道を歩いてみる。
本人としては気を紛らわせる為にしているのだろうが、
もし本当に怖い物がその暗がりに居たとして、
その行為は無駄に自分の情報を与えるだけの無意味な行為だ。
むしろ、興味を引きつけるという意味では有害でさえある。

「ねぇ、お姉さん。」
「え。」
「お姉さんは何処に行くの。」
「出た、シーツお化け。」
「お姉さんは何処に行くの。」
「買い物だよ。」

恋路の目の前には先ほど魁さんから注意を受けていたシーツお化けが立っていた。





「私、人を探しているの。」

ゾワリ、と恋路の背中に悪寒が走る。
目の前のシーツお化けからは生きている存在の気配がしないのだ。
死んだ者が何かの悪意で生きているような、無理矢理生かされているような違和感。
無害とか有害とかじゃなく、こんな物居てはいけないという直感。

「悪いね、忙しいから他の人をあたってくれ。」

一刻も早くこの場を去ろう。
恋路は一目散に逃げだそうとする。

「教えて、貴方知ってそうだから。」

恋路は一瞬で回り込まれた。
こっちの動きをあらかじめ知っていたかのような無駄のないシーツお化けの動き。
まるで反射みたいだ、と恋路は思う。
どんな達人でも反射より速くは動けない。
電気信号の通る経路の長さが全く違うのだ。

「ねぇ、教えてお姉さん。私は会わなきゃいけない人が居るの。」
「でもそれは私じゃない。そして私は君の会いたい人なんて知らないよ。」
「その人も都市伝説関係者なの。だから都市伝説と関わりがありそうな人に聞いて回ってるんだ。」

逃げられない。
そう思った恋路は助けを求めて辺りを見回す。






「簡単な質問に答えたら帰って良いんだから、そんな怖い顔しないでよお姉ちゃん。」
「どうも帰して貰えるか心配でね。」
「本当だよ、私は嘘は吐かないんだから。」
「そうかい、で、質問って?」
「お姉ちゃん黄昏裂邪って知らない?」
「…………知らないね。」
「ふーん、そっか。じゃあもう帰って良いよ。
 カエッテ、カエッテ、カエッッッゥtゥtゥツツッツ」

急にシーツお化けが奇声を上げてもがき苦しみ始める。
突然吹いた風に吹き飛ばされるシーツ。
中からは水玉のパジャマを着た少女が現れた。

「アハハハハハハハハハハハ!」
「君はあの時の……!?
 って、話も通じないか、此処は一旦引かせて貰うよ。」

突然高笑いを始める少女。
恋路はこの少女に見覚えがあった。
彼女のパートナーが真夜中の路上で服を脱がせていた少女だ。
異常な様子に危険を感じて今度こそ逃げだそうと走り出す恋路だが、また回り込まれた。

「死ね!死ね!なんで私ばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないのよ!
 憎い、幸せそうにしてる奴ら皆が憎いんだよおおお!」

笑い始めたと思ったら今度は鬼のような形相で恋路に膝蹴りを放つ。
完全に狂っている。





「この……!」

恋路は少女の膝を掌で受け止めて左に受け流す。
外見と違って重たい蹴りだ。
受け流された少女は近くの塀にぶつかるかと思いきや空中で体勢を立て直して地面に着地した。
少女が一歩踏み込んで下段蹴りを繰り出す。
それを軽く跳躍して避けた恋路。
跳躍の中で恋路と少女は近づいていた。
身体と身体がピッタリ絡みあい、普通ならお互いなんの技も撃てない。

「これなら蹴りは使えないね?」

恋路は強く大地を踏みしめその勢いを腰から肩に伝導させる。
八極拳の基本である発剄だ。
これならば技を撃てない至近距離から相手を攻撃できる。
少女の華奢な身体は今度こそコンクリートの塀に叩き付けられた。
そして少女がガックリと動かなくなる。

「……やったか。」

彼女らしくもなく恋路は一瞬だけ油断した。
その瞬間、少女の身体が跳ねる。
空中回転後ろ回し蹴りが恋路に向けて繰り出された。
反応が遅れた恋路はわずかに防御が間に合わない。
その蹴りを受け流すのではなく受け止めた恋路の腕にとてつもない衝撃が走る。





「ぅぐ、あああああああああああああ!」

あまりの激痛に叫ぶ恋路。
その様子を見た少女は口元を歓喜に歪める。

「キャハハ!もっと叫んでよ!」

そう言って彼女はジリジリと恋路と距離を詰めてくる。
都市伝説による能力の発動は契約者が近くに居ないと使えない。
発動ができなくても使える身体強化はもうとっくに使っていた。
少女が笑顔を貼り付けたまま恋路に飛びかかった瞬間だった。

「――――――――喰らえ、“技名募集中”!」

ぅわん、と大きく薙ぐような只の平手打ち。
恋路に飛びかかった少女が今度は吹き飛ばされる。
文字通りなぎ払われた。
その一撃を放った男は恋路を守るようにまっすぐ立っている。

「大丈夫か恋路!?」

彼の名前は明日真。
正義の使者、人々の明日を創る契約者、そして何より恋路を愛し、恋路に愛される男。
この物語の主人公。




「おいお前、なんで恋路を襲っているんだ?」
「オニィ……チャン?」

明日真の姿を見た瞬間、少女の動きが止まる。
彼女の中で数日前の記憶が呼び起こされる。
見ず知らずの彼女の為に逃げることなく戦っていた正義の味方。
壊れかけ髑髏の仮面と共に戦うこの町の知られざるヒーロー。

「アスマ、その子の様子なんか変だよ。」
「うん、それは解る。
 前に会った時は服着てなかったし。」
「いやそこじゃないから、そこじゃなくて急に笑ったり怒ったりしててね。
 半分錯乱してる見たいって言うか……。」

また少女は頭を抱えてくるしみ出す。

「まあ良いや、捕まえて組織の人に引き渡せば……。」

そう言って明日真が彼女に近づく。

「うわあああ!」

近づいてくる明日真の姿を確認したとたん、少女は脅え始める。
彼女は明日に向けてとっさに回し蹴りを放った。





「これくらいの蹴りなら……!」

一週間の特訓の成果で蹴りを難無く躱す明日。
がら空きになった少女の身体に掌底を決める。
ダメージそのものはあまりなかったが少女の身体がグラッと揺れる。

「よし、捕まえるぞ!」

掌底に使った掌をそのまま少女の腕を掴む為に伸ばす。
救いを求める誰かの手を掴む為に明日の手は戦闘中でも開き続けているのだ。

「―――――――!」

だが少女はまるで“反射”のようにその手を払いのける。
彼女の意志とはまるで関係なく。
そして尻餅をついた彼女は素早く体勢を立て直すとその場から走り去ってしまった。





「あれ、行っちゃった……。大丈夫か恋路?」
「腕がビリビリするだけだから大丈夫。
 でもどうして此処が?」
「魁さんに教えて貰ったんだよ。そしたらお前が襲われてるからさ。」
「ふーん、……ありがとう。」
「なんだよ、そっけないなあ!」

恋路は明日の付けていた髑髏の仮面をそっと外す。

「ありがと。」

恋路は明日にキスをした。

「え、あ、……なにやってんだよ!
 ここ道のど真ん中じゃないかもう!」
「夜だし誰も居ないだろう。それにしても挽肉どうしようかなあ。」
「あ、それなら俺がもう買っておいたぜ。」
「え?」
「いや、バイクで恋路探してたら見つからなかったから……。
 そのまま店まで着いちゃって……。」
「ったくもう……、まあ良いや。じゃあさっさと魁さんのお店まで戻るよ!
 何時までもあそこにいられないし私の荷物まとめて帰らないと!」
「帰るって……。」
「明日家に決まってるじゃないか!まったくもう!」

恥ずかしそうにそう言って、恋路は笑った。
【電磁人の韻律詩43~握った掌じゃ何もつかめないから~】

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