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連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦以降-05

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 昼下がりの喫茶店
 その一角を、男三人の集団が陣取っていた

 一人は、金色に染めた髪によく日焼けした肌、ジャラジャラと身につけたシルバーアクセサリー
 一人は、茶色に染めた髪の、服の下によく鍛えられた体を隠している
 最後の一人は、天然の薄茶色の髪に白い肌、眼鏡をかけた、小柄で中性的な外見

 仲の良い三人は、本日、二人が一人に共通の相談があって集まっていたのだ

「ストーカー?」
「あぁ」
「そうなんだよ」

 金髪の青年、翼の発した声に、2人が答えた
 つ、とホットココアを口にして、中性的な青年、直希が続ける

「昨年のクリスマスに大量発生した、恐怖のサンタ。どうも、あれの一体の突然変異らしいのだが」
「…………あれか」

 恐怖のサンタには、忌々しい思い出のある翼
 やや、表情を歪める

「何分、どれだけ追い払おうとも懲りた様子がなくてな」
「殴っても蹴ってもぶっ飛ばしてもまだ来るからな。死ぬ一歩手前どころか死ぬくらい叩きのめしても生きてるし」

 コーヒーを啜りつつ、茶色の髪の青年、誠が忌々しそうにそう言った
 冗談とか比喩ではなく、本気で普通なら死ぬレベルまで叩きのめして、それでもまだ生きていたのである
 いっそ、山にでも穴掘って生めてダイナマイトで爆破したろか、などと、彼はそうとうに物騒な事を考え始めている

「確かに、切っても刺しても焼いても呪っても、まだ生きているときた。恐るべし生命力だ」
「お前ら、二人してさらっと容赦ないことしてるな」

 苦笑する翼
 …だが、誠と直希の二人にとっては、それほどのことをしたくなる相手なのだ

 クリスマスイブの、あの日
 初めて遭遇したあのサンタが袋から出してきたのは………血塗れの、翼の惨殺死体
 当然、偽物だった
 だが、それは誠の精神を激しく揺さぶり動揺させ、一瞬で体のリミッターを外させたし
 直希は直希で、翌日起き上がれなくなるくらいの疲労を背負う事を覚悟で、攻撃能力を持つ天使を一斉召還して攻撃、と言う無茶をするくらいには激怒したのだ
 二人にとって、大切な友人
 偽物とはいえ、その死体を見せ付けられたのだ冷静になるはずがないし、今後、そんな物を見せてきた相手は見つけ次第フルボッコである

 つまるところ、ファーストコンタクトの印象があまりにも最悪だったのである
 よほどの事がなければ、その評価は好転しないだろう

 二人が、相当にそのストーカー…マゾサンタを嫌っているのを、雰囲気で理解したのだろう
 翼は、二人を安心させるように言う

「もし、俺が傍にいる時にそいつが出やがったら、俺が追い払ってやるよ」
「…そりゃ、ありがたいけどよ」
「だが、僕らとしては、あまり君に迷惑はかけたくないよ」

 注文していたパフェが届き、それにスプーンを伸ばしつつ、直希が申し訳無さそうな表情を浮かべた
 誠も、嬉しいが複雑だ、という表情を浮かべる

「それに、お前……今、大変だろ?」
「いや、平気だよ」

 翼とて、つい最近、元クラスメイトである藤崎 沙織に襲われたばかりだ
 多かれ少なかれ精神的なショックを受けているはずなのだが、翼はそれを表に出そうとしない
 ……そうすることで、精神的な落ち込みを彼本人が誤魔化そうとしている事を、誠も直希も理解していた
 大して仲の良かった相手ではなかったとしても、元・クラスメイトに襲われて落ち込まないはずがない
 ……なお、翼、藤崎から寄せられていた想いに、カケラも気づいていない
 誠は気づいていたが、一切合財、口にした事はない

「………それなら、お言葉に甘えようか。ただし、君も何かあったら、僕や誠に相談してくれよ」

 ふっ、とようやく笑みを浮かべて、直希がそう口にした
 誠も即座にそれに続く

「俺も。絶対相談しろよ?絶対だからな」
「あぁ、わかってる。でも、お前ら、まずは自分の心配しろよ?」
「「お前(君)に言われたくない」」

 同時に言われ、そうか?と翼は首をかしげる
 …そして、直希に視線をやった

「誰が一番心配かって、直希、お前がだよ。また体調崩したりしてないだろうな?」
「ふむ、まぁ、軽く風邪気味になったりはしているが、今のところ悪化はしてない、問題ないさ」

 ぱく、ぱく、と
 パフェを食べ進めつつ、答える直希
 …だが、翼から見れば、そのパフェが問題なのだ

「お前、体調崩しやすいんだから……せめて、この寒い時期に金魚鉢パフェ食うのはやめろ」

 ……そう
 直希が食べているのは、この店の名物「金魚鉢パフェ」
 名前の通り、金魚鉢のように大きな器に入ったパフェである
 値段もそれなりだが、何より量が凄い
 普通なら、直希のような小柄な人間が食べきれる量ではない……この直希、意外と大食いなので、ぺろっと食べきるのはさておき
 とまれ、直希のように体力のない人間が、このくそ寒い時期、冷たいアイスたっぷりのパフェを、それもこんな量の多いパフェを食べるのは、確かに健康的に問題である

「店内は温かいんだ。問題はない」
「いや、お前ホットココア頼んでるだろ。体明らかに冷えてるじゃねぇかっ!?」

 あぁ、もう、こいつは
 甘味の為なら、健康を害しても構わないという姿勢
 …いや、甘味どころか、食べたい食べ物の為なら遠慮なく健康を害しかけない姿勢なのだが、この男
 昔の長い入院生活の反動だ、と本人は弁明しているが、それでも酷い


 会話内容の深刻さが薄まり、誠は小さく笑った
 ……また、三人でこうやって集まって話せる
 それが、酷く幸せだ
 大学は隣町の大学であり、学校町から通うのは大変だが、後悔はしていない

 また三人で、馬鹿をやっていられる事が
 ---何よりも、翼の傍にいられる事が
 誠にとって、酷く幸せなのだから



fin




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