*
Project-ACE case04:Inquiry /事実確認/
――――とある青年の場合――――
俺さ、あの道は結構走ってんだよ。単車で。
んであの日はバイトが遅くなって、真っ暗で、道路に車も走ってなくて、
せっかくだからあの道を攻めてみるか、って思ったのさ。
んであの日はバイトが遅くなって、真っ暗で、道路に車も走ってなくて、
せっかくだからあの道を攻めてみるか、って思ったのさ。
しばらく走ってたらさ、後ろから単車が近づいて来るんだよ。
ぶっちぎろうと思って本気で走ったんだけどさ、どんどん近づいて来るんだ。
結局俺のすぐ後ろに付かれたんだけど…そいつ、首が無かったんだよ。
ぶっちぎろうと思って本気で走ったんだけどさ、どんどん近づいて来るんだ。
結局俺のすぐ後ろに付かれたんだけど…そいつ、首が無かったんだよ。
もうそれでパニクって、ハンドル切り損ねて事故ってさ、
体中痛くて動かねーところにあいつが近づいてきてさ、あの時はホント死ぬかと思ったね。
そしたらあいつがいきなり吹っ飛んだ…いや吹っ飛ばされたんだよ。
ライトの逆光で見えなかったけど、黒い影がそいつを吹っ飛ばしたんだ。
体中痛くて動かねーところにあいつが近づいてきてさ、あの時はホント死ぬかと思ったね。
そしたらあいつがいきなり吹っ飛んだ…いや吹っ飛ばされたんだよ。
ライトの逆光で見えなかったけど、黒い影がそいつを吹っ飛ばしたんだ。
そいつ、しばらくは突っ立ってたんだけど、俺に近づいて見下ろしてきたんだ。
さっきから痛てーしわけわかんねーしで、もうどうでもいいやーって思ってたら、
そいつの後ろを車が猛スピードで通っていったんだよ。
その後そいつがさっきの車を追いかけていって、それから……あ?何だそれ?ピンマイクかなにk
さっきから痛てーしわけわかんねーしで、もうどうでもいいやーって思ってたら、
そいつの後ろを車が猛スピードで通っていったんだよ。
その後そいつがさっきの車を追いかけていって、それから……あ?何だそれ?ピンマイクかなにk
――――――パシュン――――――
「回収地点に置いて来い。その後、もう一度記憶消去して帰還しろ。」
「了解しました。」
「了解しました。」
*
――――とある老婆の場合――――
あたしゃ大分前からあそこに居るんだけどね、
あそこを通る人間…特に夜の奴らは危なっかしくて困ってるのさ。
無茶なスピードで事故って死んだ奴らを何人も見てきたよ…。
あそこを通る人間…特に夜の奴らは危なっかしくて困ってるのさ。
無茶なスピードで事故って死んだ奴らを何人も見てきたよ…。
あんな奴らでも目の前で死なれるのは気分のいいもんじゃないからねぇ、
ちょいと脅かしてやって、そいつらがもう来ないようにしてやろうと思ってたのさ。
それをしばらく続けてたら、そういう車は減ってきたんだよ。
ちょいと脅かしてやって、そいつらがもう来ないようにしてやろうと思ってたのさ。
それをしばらく続けてたら、そういう車は減ってきたんだよ。
でも今度はどこからか「首無しライダー」の奴らが沸いてきてねぇ、
あいつら、誰彼かまわず人間を襲おうとするんだよ。
あいつらを止めるために、あたしゃずっと走り続けたのさ。
あいつら、誰彼かまわず人間を襲おうとするんだよ。
あいつらを止めるために、あたしゃずっと走り続けたのさ。
そしたら昨日の夜、また首無しの奴が人間を襲おうとしてたのを見つけてねぇ。
なんとか人間が殺されちまう前に、首無しの奴を倒したのさ。
そしたら今度は猛スピードで車が走ってきてね、
それを止めようと思って、気づいたら…こうやって、あんたらに捕まってたのさ。
なんとか人間が殺されちまう前に、首無しの奴を倒したのさ。
そしたら今度は猛スピードで車が走ってきてね、
それを止めようと思って、気づいたら…こうやって、あんたらに捕まってたのさ。
このままあたしがあそこに居なけりゃ、奴らがまた悪さするに決まってる…。
だからお前ら…あたしをさっさと元の場所に戻せ!!!
そうすりゃあたしが人間を守ってやる!!!奴らが人間を襲う前に―――
だからお前ら…あたしをさっさと元の場所に戻せ!!!
そうすりゃあたしが人間を守ってやる!!!奴らが人間を襲う前に―――
―――――プツン―――――
*
「ふむ、これは予想外ですねぇ…どうします?」
「決まっている。殲滅だ。」
「決まっている。殲滅だ。」
白衣の男――code:01からの質問に、黒服――A-No.206はあっさりと答える。
二人の目の前、強化ガラスの向こうには、魔術めいた紋様が刻印された鎖が絡み合っている。
その鎖に絡めとられるようにしながら、ターボ婆が何かわめいているのが見える。
しかし、その声は二人には聞こえていない。
二人の目の前、強化ガラスの向こうには、魔術めいた紋様が刻印された鎖が絡み合っている。
その鎖に絡めとられるようにしながら、ターボ婆が何かわめいているのが見える。
しかし、その声は二人には聞こえていない。
「奴の言うとおり元の場所に戻しておけば、あとは勝手にやってくれるんじゃないですか?」
「野良の都市伝説などに、都市伝説の管理を任せるわけにはいかない。」
「なるほど…じゃあ早速今夜にでも討伐ですか。」
「いや、数日奴らを泳がせる。」
「野良の都市伝説などに、都市伝説の管理を任せるわけにはいかない。」
「なるほど…じゃあ早速今夜にでも討伐ですか。」
「いや、数日奴らを泳がせる。」
すぐに行動しないことに意味はあるのか。
疑問を顔に浮かべながら、白衣の男は黒服を見る。
疑問を顔に浮かべながら、白衣の男は黒服を見る。
「首無しライダーを抑えていたターボ婆が消えたとなれば、奴らは大手を振って人を襲うだろう。」
「ではなおさら、早々に手を打ったほうがいいのでは?」
「一匹ごとに潰すよりも、まとまっていた方が手間が省ける。」
「…ああなるほど、その間に出た被害者は尊い犠牲ってことですか。…くっくっく、相変わらず酷い人だ。」
「ではなおさら、早々に手を打ったほうがいいのでは?」
「一匹ごとに潰すよりも、まとまっていた方が手間が省ける。」
「…ああなるほど、その間に出た被害者は尊い犠牲ってことですか。…くっくっく、相変わらず酷い人だ。」
愉快そうに笑う白衣の男と、眉一つ動かさない黒服。
そんな対照的な二人に共通しているものは、人の命に対する希薄さ。
人の命に対する尊厳や慈しみといったものが、圧倒的に欠けている。
そんな対照的な二人に共通しているものは、人の命に対する希薄さ。
人の命に対する尊厳や慈しみといったものが、圧倒的に欠けている。
「で、誰を使うんです?殲滅ともなれば、code:06だけでは厳しいでしょう。」
「まとめて処分するならば、粟原が適任だ。code:06はサポートにまわす。」
「なるほど、大量の食事なんて滅多にありませんからねぇ。いいデータが取れそうです。」
「まとめて処分するならば、粟原が適任だ。code:06はサポートにまわす。」
「なるほど、大量の食事なんて滅多にありませんからねぇ。いいデータが取れそうです。」
その目は期待でキラキラと輝いている。
「…ところで、あいつはどうします?」
白衣の男がターボ婆に視線を移す。
黒服はターボ婆を一瞥し、事も無げに告げる。
黒服はターボ婆を一瞥し、事も無げに告げる。
「必要な情報は引き出した。あとは処分するだけだ。」
「だったら私が貰ってもいいですかね?実験材料が足りないんですよ。」
「好きにしろ。ただし、外には漏らすな。」
「わかってますよ。穏健派の奴らに知られたらどうなることやら。」
「だったら私が貰ってもいいですかね?実験材料が足りないんですよ。」
「好きにしろ。ただし、外には漏らすな。」
「わかってますよ。穏健派の奴らに知られたらどうなることやら。」
にやり、と嬉しそうに顔を歪める白衣の男。
ふと、何かに気づいたように黒服を見る。
ふと、何かに気づいたように黒服を見る。
「こいつを私が貰うとなると…A-No218への説明はどうします?」
「伝える事実は必ずしも真実である必要は無い。」
「くっくっく…なるほど。相変わらず酷い人だ。」
「伝える事実は必ずしも真実である必要は無い。」
「くっくっく…なるほど。相変わらず酷い人だ。」
白衣の男は黒服の言わんとすることを理解し、低く笑う。
その笑い声を背に、黒服は部屋を後にした。
その笑い声を背に、黒服は部屋を後にした。
*
背後で扉が閉まり、誰も居ない静かな通路に立つ黒服。
「…まずはA-No.218への報告書の作成…か。」
扉の前で一つ呟き、自室へと歩き始めた。
Project-ACE case04:Inquiry /事実確認/ END.