「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 悪意が嘲う・悪意が消えたその後に・水の変態-02

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「どうした、ですか?ふるえる、ですか?」
「モトアルジサマコワイモトアルジサマコワイモトアルジサマコワイモトアルジサマコワイイヌモコワイ」

 店の奥隅で隠れて震えている沙々耶
 その様子に、メイが首をかしげる
 ……ゲルマニアに、訪れていた、客
 それが、沙々耶に見事すぎるがまでに恐怖を与えていた

 灰色のコートに、金色に変わってしまった目を隠すサングラス
 ……朝比奈 秀雄
 沙々耶が都市伝説「悪魔の囁き」だった頃の、契約者
 その存在は、彼女にとって結構なトラウマである
 彼が姿を見せただけで、これだ
 震え続ける沙々耶の姿に、メイは首を傾げつつ、その頭を撫でていた



「………」

 …一方
 沙々耶の正体が元・悪魔の囁きである事知らない秀雄は、見知らぬ少女相手に、姿を見せた途端盛大に悲鳴をあげて逃げられた為、若干、落ち込んでいたのだが
 それは、どうでもいい事である
 秀雄の足元では、クールトーがごろん、と腹を見せて横になっていた
 普段のクールトーの様子からすれば、信じられない姿である

「…どうかしたかね?」
「………いいや、何も」

 店主である、「第三帝国」総統に声をかけられ、秀雄は小さく、首を左右に振った
 改めて、話を持ちかける
 …とある、戦力の提供を

「……戦闘に特化している、とは言い難い。だが、ある程度の戦闘能力は保有している」
「しかし、クールトーに続いて、それまでこちらに提供しては、そちらの戦力が落ちるのではないかね?」
「…問題ない。これと同性能の能力を保有したものが、あと4体いる」

 総統と話す秀雄の背後には、一人の少女の姿があった
 …少女、に、見える者の、姿が

「んー、ペットショップってこんな感じなのかー…雄どれかな」

 きょろきょろと、好奇心一杯に、店内を見回す様子は微笑ましい
 可愛らしい大き目の瞳が、輝いている

「…失礼」
「?」

 と
 近づいてきた総統に、少女は首をかしげた
 …もっとも、その視線は、若干熱いものに思えたが、総統はそれに気付かなかったふりをする

「その姿、「薔薇十字団」提供の特殊な道具によるものと聞いているが?」
「そうだよ、脱いで見る?」

 少女の言葉に、総統は店の入り口に「準備中」の札を、改めて掲げてきた
 店の外から、中をのぞけない状態にする

 それを確認して……少女は、ずるり、と
 「皮」を、脱いだ

 姿を現したのは、水のかたまり
 ゼリーのような半固形のそれが、ぷるぷると震えている

『あー、窮屈だった』

 …夏休み時期、プールで大暴れした変態
 そのうちの、一体である
 水そのものの肉体は、外を出歩く事にむかない
 その姿を隠していたのが、たった今脱ぎ捨てた「皮」だ
 「薔薇十字団」が作り上げたそれは、この変態のように人間の姿を取れない都市伝説が、人間社会に紛れ込む為に使うものだ
 秀雄が「どんな姿でも構わない」と注文したものが、たまたま少女の姿のものだったらしい

「なるほど、着脱は自在か」
『練習させられたから、どっちも30秒以内には』
「…本来ならば、もっと素早いべきなのだがな」
『ごめんなさい、もっと罵ってください』

 変態の変態発言は、秀雄も総統もスルーして
 ふむ、と総統は考え込んでいる

「能力は、水を多少操れる事と、引き寄せる事だったか。それと、水中での高速泳法」
「そうなるな……もっとも、この「皮」を纏っていても、人間らしい食事は一切とれん。水分を補給する程度はできるようだが」

 …ミネラルウォーターやら水道水やら以外、色がついた飲み物だと、若干、その体の色がにごるから嫌なようだが
 それに、弱点はそれ以外にも、一日一回は全身を水に漬ける必要性がある
 ある程度の弱点を含んでいるのが、問題といえば問題だ
 テリトリー外では本領発揮できないのは、都市伝説らしいといえばらしいので、弱点に含まないでおくが…

「…そちらが必要としないならば、こちらが適当に使う。返事はいつでも構わない。使うにしても、不要になったらこちらに返却してくれればいい」
『完全に物扱い……っでも、それもいい……っ!』

 …若干、変態度がパワーアップしているような気がしないでもない変態

 その口を塞がせる方法を考えておくべきだった
 秀雄はこっそりと、ため息をついたのだった




終われ





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