四-二
率直に言うなら、私服の冴さんは綺麗だった。
綺麗とかわいいの中間。
思ったより調子の良さそうな冴を前に、武は色んなの意味でドキリとする。
正直なところ、女の子の家に行ったのなんて、幼稚園以来だった。
古い記憶をたぐり寄せても、ここまで小綺麗な家もまずなかったと思う。
他の部屋は扉が閉まっていて、まっすぐリビングに通された。悪く言えば、あんまり生活感がなくモデルルームの様だった。
だから、冴さんのスリッパが怪獣だったことも気にならなかった。
来客用のスリッパは、ごくフツーのスリッパだった。後ろからきた、怖い兄さんのスリッパも普通だった。
つまり、趣味か。
武が、スリッパについて考察していると、怖い兄さんが紅茶とお菓子を出してくれた。
冴さんは、真っ赤になって慌てている。
「い、いつもは自分でやるんだからね!?ね、明深!?」
「紅茶一杯で、一時間も待たせる気ですか」
「うう、煎れるなら、完璧に煎れたいじゃない」
座ってとしょぼくれながら、言う冴さん。
それ以上に、しょぼくれている晃。しょぼくれているんじゃなく、ちらちらと明深さんを目で追っている。
そんなに、怖かったのか…。
「それで、今日は何の用?単なるお見舞いなら、叩き出すわよ」
冴の言葉に、一瞬、武は肩を震わせる。
冴の言葉により、刺さる目線を向けてきた明深に、だ。
これは、怖い。と思う。
心の底でムサシが、臆病者となじってくれるが、これは実際に体感しないとわからない怖さだった。
ので、ムサシを無視した。
「まず、これと…」
冴に先生に託された答案を渡し、武は昨日の後のことを説明した。
説明を聞きながら、冴は時折カップに口をつけ、離し。武も、少し紅茶を貰った。
晃は、たまに相槌を打ってくれるが、未だに黙ったままだ。
視界の端を通り過ぎていく明深が、部屋の隅の小さな机に安置されたヴァイオリンケースの前にお菓子をお供えしている。
綺麗とかわいいの中間。
思ったより調子の良さそうな冴を前に、武は色んなの意味でドキリとする。
正直なところ、女の子の家に行ったのなんて、幼稚園以来だった。
古い記憶をたぐり寄せても、ここまで小綺麗な家もまずなかったと思う。
他の部屋は扉が閉まっていて、まっすぐリビングに通された。悪く言えば、あんまり生活感がなくモデルルームの様だった。
だから、冴さんのスリッパが怪獣だったことも気にならなかった。
来客用のスリッパは、ごくフツーのスリッパだった。後ろからきた、怖い兄さんのスリッパも普通だった。
つまり、趣味か。
武が、スリッパについて考察していると、怖い兄さんが紅茶とお菓子を出してくれた。
冴さんは、真っ赤になって慌てている。
「い、いつもは自分でやるんだからね!?ね、明深!?」
「紅茶一杯で、一時間も待たせる気ですか」
「うう、煎れるなら、完璧に煎れたいじゃない」
座ってとしょぼくれながら、言う冴さん。
それ以上に、しょぼくれている晃。しょぼくれているんじゃなく、ちらちらと明深さんを目で追っている。
そんなに、怖かったのか…。
「それで、今日は何の用?単なるお見舞いなら、叩き出すわよ」
冴の言葉に、一瞬、武は肩を震わせる。
冴の言葉により、刺さる目線を向けてきた明深に、だ。
これは、怖い。と思う。
心の底でムサシが、臆病者となじってくれるが、これは実際に体感しないとわからない怖さだった。
ので、ムサシを無視した。
「まず、これと…」
冴に先生に託された答案を渡し、武は昨日の後のことを説明した。
説明を聞きながら、冴は時折カップに口をつけ、離し。武も、少し紅茶を貰った。
晃は、たまに相槌を打ってくれるが、未だに黙ったままだ。
視界の端を通り過ぎていく明深が、部屋の隅の小さな机に安置されたヴァイオリンケースの前にお菓子をお供えしている。
昨日の話しを、話し終えた武。
冴は空のカップを口に持っていたことに気がつき、悟られないようそれとなくカップソーサーの上に置いた。
「じゃあ、死体洗いのバイトについては、完全に解決してないの?」
「でも、ムサシが次は何とかするって」
「だから、俺に本の監視をさせてるんだけどな」
ようやく口を開けた晃は、すぐさまカップの中身を飲み干した。
そんなに口が渇くことが、あったらしい。
決死の覚悟で口を開いた晃に、冴は気にすることもなく、続けた。
「ううん、自分のことは自分でやるわ。私も不意をつかれただけよ、次は何とかする」
その言葉を聞いた明深は、ワントーン低い声で冴に進言した。
「自分だけで、何とかするんでなく。出来れば、私を頼って欲しいですけどね」
冴は空のカップを口に持っていたことに気がつき、悟られないようそれとなくカップソーサーの上に置いた。
「じゃあ、死体洗いのバイトについては、完全に解決してないの?」
「でも、ムサシが次は何とかするって」
「だから、俺に本の監視をさせてるんだけどな」
ようやく口を開けた晃は、すぐさまカップの中身を飲み干した。
そんなに口が渇くことが、あったらしい。
決死の覚悟で口を開いた晃に、冴は気にすることもなく、続けた。
「ううん、自分のことは自分でやるわ。私も不意をつかれただけよ、次は何とかする」
その言葉を聞いた明深は、ワントーン低い声で冴に進言した。
「自分だけで、何とかするんでなく。出来れば、私を頼って欲しいですけどね」
微妙な空気が流れる。
明深が言葉を掛けたのは冴だが、明らかに視線は武を刺していた。
今までの話を、聞いて総合的に判断したら。
非があるのは、武。なんだろう。
少なくとも、ふらふらな女の子をほって置いた罪はある。
武は、空気を変える為と、ぶん殴られるのを覚悟で明深に言葉を掛けた。
「そうだ。明深さん」
「何か?」
明深は、すこぶる機嫌が悪く見せつつ応答した。
武は、負けじと声を掛け続ける。
「え、と。元日本代表なんですよね。空手の」
「…。まぁ、そうだったこともありますが」
「ムサシが"戦いたい"って言ってるんですけど」
「お断りします」
きっぱりと断りの言葉を返されて、ムサシが心の中で喚く。
素性を話しても、それがどうかしましたか?って感じだったのに。
"戦いたい"と言ってからの厳ついお兄さんは、見た目には出さないが物凄い拒絶反応を示してきた。
その拒絶反応を一切言葉に乗せず、明深は言い放った。
「私は、もうそういう意味では拳は振るいませんし。空手家でもないですから」
ムサシと明深に板ばさみにされ、困った武の助け舟を出したのは、冴だった。
「いいじゃないの。やってあげてよ、明深」
「本気ですか?今の私なら、その人を壊しかねませんよ?」
「相手は、都市伝説なのよ。私の知る限り、ムサシはしぶとくて、それなりの殺気も持ち合わせた何かよ。それに、手加減くらい出来るでしょう?」
冴の何かを訴える視線に負けた明深は、しぶしぶテーブルに背を向ける。
「わかりました。支度をしますので、少々、お待ちを」
「それじゃ、私も支度しないとね」
受け取ったプリントを手に取り、冴は席を立った。
「あ、晃君はもう帰ってもいいわよ」
「そうさせてもらいます。ごっそうさまでした」
晃は、勢い良く席を立ち、逃げるように去っていった。
そんなに怖かったのか…。怖いかもしれない。
明深が言葉を掛けたのは冴だが、明らかに視線は武を刺していた。
今までの話を、聞いて総合的に判断したら。
非があるのは、武。なんだろう。
少なくとも、ふらふらな女の子をほって置いた罪はある。
武は、空気を変える為と、ぶん殴られるのを覚悟で明深に言葉を掛けた。
「そうだ。明深さん」
「何か?」
明深は、すこぶる機嫌が悪く見せつつ応答した。
武は、負けじと声を掛け続ける。
「え、と。元日本代表なんですよね。空手の」
「…。まぁ、そうだったこともありますが」
「ムサシが"戦いたい"って言ってるんですけど」
「お断りします」
きっぱりと断りの言葉を返されて、ムサシが心の中で喚く。
素性を話しても、それがどうかしましたか?って感じだったのに。
"戦いたい"と言ってからの厳ついお兄さんは、見た目には出さないが物凄い拒絶反応を示してきた。
その拒絶反応を一切言葉に乗せず、明深は言い放った。
「私は、もうそういう意味では拳は振るいませんし。空手家でもないですから」
ムサシと明深に板ばさみにされ、困った武の助け舟を出したのは、冴だった。
「いいじゃないの。やってあげてよ、明深」
「本気ですか?今の私なら、その人を壊しかねませんよ?」
「相手は、都市伝説なのよ。私の知る限り、ムサシはしぶとくて、それなりの殺気も持ち合わせた何かよ。それに、手加減くらい出来るでしょう?」
冴の何かを訴える視線に負けた明深は、しぶしぶテーブルに背を向ける。
「わかりました。支度をしますので、少々、お待ちを」
「それじゃ、私も支度しないとね」
受け取ったプリントを手に取り、冴は席を立った。
「あ、晃君はもう帰ってもいいわよ」
「そうさせてもらいます。ごっそうさまでした」
晃は、勢い良く席を立ち、逃げるように去っていった。
そんなに怖かったのか…。怖いかもしれない。
四-2 了