「………はぁ」
一人、執務室にて
仕事を進めながら、セシリアは小さくため息をついた
仕事を進めながら、セシリアは小さくため息をついた
「…何故、名乗ってしまったのだ…」
手元は、書類へのサインを、判を押す作業を続けている
視線は書類の内容を追っているし、その中身もきっちりと頭の中に入ってきていて、しっかりご吟味して仕事を続けている
そうしながらも…思考のどこかは、乙女120%だった
器用な事である
視線は書類の内容を追っているし、その中身もきっちりと頭の中に入ってきていて、しっかりご吟味して仕事を続けている
そうしながらも…思考のどこかは、乙女120%だった
器用な事である
「あぁあああああ、名乗ったとしても、だ!何故、私は「組織」の一員である事を話さなかった!?もし、後になってバレたならば、何やら企みをもって近づいたのでは、と誤解されるではないかっ!!??」
表情も、口に出している内容も、全ては恋して悩む乙女だ
仕事は有能に続けているが
……どこまで器用なのだろう
仕事は有能に続けているが
……どこまで器用なのだろう
「…あれは、完全に、偶然だ……たまたま、外に出る用事があった。そこを過激派の汚らわしい馬鹿に襲われた………私が蹴散らしても良かったのだが…………そこを、あのお方が、助けてくれた…」
……ぷっしぅ
耳まで真っ赤になるセシリア
千年の時を生きた女
魔女と呼ばれ、心を凍らせた女
………その心は、一瞬で溶かされていた
どろどろに溶けきって、色々と台無しである
耳まで真っ赤になるセシリア
千年の時を生きた女
魔女と呼ばれ、心を凍らせた女
………その心は、一瞬で溶かされていた
どろどろに溶けきって、色々と台無しである
「………千年。千年の時を生き続けたが……私を助けた男など、あの方がはじめてだ………」
千年、生き続けて
家族以外の男に助けられたのは、生まれて初めて
…まるで、運命のようだ
家族以外の男に助けられたのは、生まれて初めて
…まるで、運命のようだ
あそこで、セシリアが日景 翼に助けられて
セシリアが、翼に心惹かれる事が、運命付けられていたかのように
生まれて初めて、家族以外の男に助けられた
その事実が、確実に、セシリアの心を翼に惹きつける
セシリアが、翼に心惹かれる事が、運命付けられていたかのように
生まれて初めて、家族以外の男に助けられた
その事実が、確実に、セシリアの心を翼に惹きつける
「だが……ッ所詮、偶然なのだ。あそこで出会えた事も、あの方が、私を助けてくださった事も」
そう
全ては、偶然でしかない
セシリアは、そう考える
全ては、偶然でしかない
セシリアは、そう考える
それが、必然であった、などと
彼女は、思いもしない
彼女は、思いもしない
運命を見ることすらもできるセシリア
「魔法」に飲み込まれて人間ではなくなった、千年の時を生きる魔女
「魔法」に飲み込まれて人間ではなくなった、千年の時を生きる魔女
万能の力を得ながら、節度を持って力を使う彼女は、運命を見ることなど考えもしなかった
だから
同じ力を手に入れた片割れと違い、あの領域には、踏み込めない
同じ力を手に入れた片割れと違い、あの領域には、踏み込めない
「私は、「組織」のNo-0、あの方は「首塚」側近組…それも、平将門のお気に入り。また出会えるはずもない……」
助けてくれたのは、偶然
出会ったのも偶然
出会ったのも偶然
ただの偶然でしかない
そして、翼は、あのような出来事、大して珍しい事でもあるまい
そして、翼は、あのような出来事、大して珍しい事でもあるまい
……こちらの事を、覚えているはずもない
名前だって…覚えてくれたかどうか、わからない
名前だって…覚えてくれたかどうか、わからない
ちくり、心が痛み出す
悲しい気持ちが、心を支配し……
悲しい気持ちが、心を支配し……
………コンコン、と
執務室の扉が、ノックされる
執務室の扉が、ノックされる
「C-No.0、セシリア様、書類を持ってまいりました」
「入りなさい」
「入りなさい」
かけられた、声に
セシリアは、返事を返した
セシリアは、返事を返した
…いつもの、セシリアだ
部下に対する話し方、部下に対する表情
先ほどまでの恋する乙女は、消え去っている
よって、執務室に入った部下は、先ほどまで、セシリアが恋に悩んでいた事実になど、さっぱり気付かない
部下に対する話し方、部下に対する表情
先ほどまでの恋する乙女は、消え去っている
よって、執務室に入った部下は、先ほどまで、セシリアが恋に悩んでいた事実になど、さっぱり気付かない
「……っち、よりによって、エイブラハム派の人間が二人……」
「それと、エイブラハム派かどうかはっきりしない者が一人、エイブラハム派ではないものの、「教会」所属の契約者が一人…他に、子飼いが多数。子飼いは、情報収集の為に入り込んでいる可能性が」
「…しばし、監視を続けなさい。学校町に、「教会」は不介入であり続けていたはず。何を起こそうとしているのか、知る必要があります」
「それと、エイブラハム派かどうかはっきりしない者が一人、エイブラハム派ではないものの、「教会」所属の契約者が一人…他に、子飼いが多数。子飼いは、情報収集の為に入り込んでいる可能性が」
「…しばし、監視を続けなさい。学校町に、「教会」は不介入であり続けていたはず。何を起こそうとしているのか、知る必要があります」
事務的な会話
それを終えて、部下が部屋を出た
それを終えて、部下が部屋を出た
……直後
「……それでも……もう一度、出会えたならば……………っだが、どうすればいい?そ、そもそも恋愛など……っど、どうすれば良いのだ?誰かに相談………っで、できるか、そんなはしたない事っ!!」
セシリアは、再び乙女な表情に戻っていて
しかし、仕事はいつも通り、どこまでもいつも通りに行われていて
しかし、仕事はいつも通り、どこまでもいつも通りに行われていて
彼女が恋に落ちた事実は
まだ、誰にも知られていない
まだ、誰にも知られていない
多分続くかもしれない