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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 獣の王様-05

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匿名ユーザー

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“獣の王様 第五話「名前」”

「これは風邪をひかせないために仕方がないことだが俺にやましい気持ちしかない!」

 川城丁は何の遠慮も憂いも恐れも無くユカのセーラー服を引っぺがした。

「よっしゃ次ブラジャー!」

 それにしてもノリノリである。
 彼は今までに見せたことのないくらいの素早さでユカのブラジャーに手をかけ……

 ガシッ

 手をかけ……られない。

「何をやってるのかな丁くん?」
「はい、乾いたお召し物を乾かそうかと思ってました!」
「嘘だね!」
「はい、あっやーべっ!」
「否定しろよ!」

 ユカに殴られて丁は派手に吹き飛ぶ。
 割と漫画かアニメのようなレベルのリアクションだが彼はどうにか無事である。





「化けの皮が凄い良い勢いで剥がれていくわねこのエロガキめ……。」
「酷い……あんまりだ。」
「私をここに運んだのは貴方?」
「え、はい……そうです。」
「ありがとう。」
「いえいえ、一宿一飯の恩義です。」
「宿貸した覚えは無いわよ。」
「いやぁ、宿も貸して頂ければ有り難いなーって……。」
「あんたに貸したら身の危険が……」
「…………。」

 ウルウルした瞳でユカを見つめる丁。
 ユカは少し頬を引きつらせた後にため息を吐く。

「えーい!此処まで来たら仕方ないわ!」
「やった!今日は暖かい布団で眠れるぞ!」
「その前に聞かせなさい、あんた何者よ?
 黒服相手に暗示みたいなことやったり、都市伝説見ても物怖じしなかったり。
 都市伝説の関係者なんでしょ?」
「良いですけど~、僕一応通りすがりの家出少年でして……。
 下手に聞くとヘヴィーな過去とかなんだとかで大変ですよ?
 アニメで言うと普段はヘラヘラしているけど内に深い悲しみを湛えている主人公の仲間の三枚目みたいな。」
「ご託は良いから本名と!あんたの契約してるっぽい腰の都市伝説と!
 それとついでにあんたの過去について洗いざらい吐きなさい!
 そしたらとりあえず私の寝床には連れてってやるわ!」

 そう言うと彼女は丁の腰の刀の形をしたキーホルダーを奪い取った。
 彼の腰から離れた瞬間にキーホルダーは本物の小刀に変化した。




「良いですけどー」
「良いですけど?」
「貴方の“本名”も教えてくださいよ、ユカさん。」
「……ふぅん。気付いてたんだ。」
「自分も偽名使うんなら他人の偽名にも敏感かなーって思ったんですけど、やっぱそうだったんだ。」
「え?」
「誘導尋問なのですよ。」
「……素敵なクソガキっぷりね。」
「ありがとうございます。
 それでは改めて紹介させて頂きます。
 僕の名前は上田明也です。カワシロってのは母方の名字から頂きました。
 そしてその都市伝説は村正、伝説に残る妖刀です。
 腹立ち紛れに親父から盗んできました。」

 少年はそういってぺこりと頭を下げた。

「…………。」
「今度はユカさんの番ですよ。」
「…………。」
「あ、その刀からすぐ手を離した方が良いですよ。
 モンゴリアンデスワームの契約者ならばあまり触ってて気分は良くないっていうか。
 そいつってばやたら虫を切りたがるんで。」
「えっとね、まず私はモンゴリアンデスワームとか言う都市伝説の契約者ではない。」
「え?」
「組織の奴らが勘違いしてるだけ。」

 村正を上田に返すとユカは彼の隣に腰を下ろして語り始める。




「とりあえず最初に私の本名から話そうか。
 私の名前は冬木華恋、フユキカレンだからユカ……ってのは冗談で。
 ユカってのは私の妹の渾名。私はレンって呼ばれていたわ。
 鵜入香織ってのは私の妹の名前。
 まあ両親が離婚したし、私も入院してばっかりだったからあの子は私を知らないんだけどね。
 私、子供の頃にすんごい面倒な病気にかかっちゃって。
 死にたくないからって不死鳥の都市伝説と契約しちゃったの。
 それ以降も普通の人として生きていたんだけど、ある日面倒なことに巻き込まれちゃってね。」
「面倒?」
「友達と一緒に都市伝説契約者に襲撃されちゃったのよ。
 都市伝説同士は惹かれ合うから、他の子は私の巻き添えよね。」
「成る程。」
「とりあえず私は妹と友達をこれの能力で生き返らせてからあいつを追いかけてきたの。
 だってこれ以上私が居ればあの子達に迷惑でしょう?」
「……あいつ?」
「モンゴリアンデスワームの契約者よ。
 太った気持ちの悪い男でねえ……。」
「成る程成る程。」
「私はあの男の手による犠牲者を助けつつ、あいつを追ってたの。
 それを組織の奴らが勘違いして私は追われているの。」
「お疲れ様です……。」
「まあ治療費として財布とか財布の中身は貰ってたけどね。」
「…………。」
「あ、そーだ。ちょっと怪我してるんだし、私の能力みたい?」
「へ?」

 上田のすりむいた額に華恋は自らの血を振りかける。
 あっという間に上田の傷は治ってしまった。




「すげえ!」
「毎回リストカットしなきゃいけないのが偶に傷。」
「偶にじゃなくて毎回傷でしょうに。
 しかしそんな玉のような肌に傷を付けなければいけないなんて……。」
「はいはい。」
「本当に肌綺麗ですよね、触らせてください。」
「駄目です。
 怪我の度合いによってかけなきゃいけない血の量が違うから面倒なのよね。」
「ふーん。」
「死にかけた人助けてると血が足りなくて、あの豚野郎を逃がしちゃうのよね。」
「成る程成る程。」
「焼いても焼いても別の虫が集まってすぐ復活するし。」

 上田明也は何かを考えるような素振りを始める。
 そしてポンと両手を叩き華恋に一つの提案をする。

「僕の盗んできた村正ならその男を倒せると思いますよ。」
「そういえば虫になんちゃらかんちゃらって言っていたわね。」
「はい、フルオートで虫を追っかけて斬りつけるしー。」
「斬りつけるし?」
「傷は絶対治りません。効果は契約者にも及びます。」
「素敵!」

 華恋は上田を抱きしめる。
 しかし彼女は上田が滅茶苦茶にやけているのに気がついてデコピンを決める。




 廃水族館での若干の作戦会議を終えた後、
 黒服の眼をかいくぐって
 ユカと上田はユカが用意したアパートの一室でくつろいでいた。
 鼻歌混じりに中華料理まで作り始めている。

「料理なんて良いの?」
「はい、僕の家の料理人が教えてくれたんで。」
「へー、でも只の炒飯に見えるけど?
 そしてそのやたら減っているマヨネーズは何?」
「マヨネーズじゃないです、ラードです。」
「ラードって……。」
「油ですね。」
「止めなさいよ、太っちゃうじゃない。」
「僕は女の人は少し太っているくらいが丁度良いって言うか。
 脇腹とかぷにぷにして勢い余って脇に頭突っ込みたい人なんで良いんです。」
「さらっとセクハラ決めないでね、たたき出すわよ。」
「ごめんなさい。」
「とにかく、太るのは困るじゃない!」
「あんしんしてください。美味しいです。」
「だ~か~ら~!」
「良いから喰え!」

 炒飯を掬ったレンゲをユカに投げつける上田。
 開いた口の中に見事にたたき込まれる。



「う、う、うまちょびれ……。」
「でしょ?」
「さっさと皿寄越しなさい。
 ……やっぱ美味しいじゃない!昨日の残り飯だけでなんでこんなおいしくなるのよ!」
「ぶっちゃけ素材は何でも、それこそ蛇使っても美味しくなりますから。
 要は腕です。炒飯は少ないご飯で火力上げて、油をたっぷり使えばおいしくなります。」
「ほうほう……。ていうか……。」
「美味しかったですよ、蛇。とりあえず今晩はこれ喰って明日に備えましょう。
 俺も久し振りの実戦なんで寝ないと辛いですし。」
「はーい。あんた金持ちのぼっちゃんじゃないの?」
「良いじゃないですか、トカゲも美味しかったです。」

 ユカは夕食を食べ終わると上田を縛り付けた上でシャワーを浴びて眠る準備を整えた。
 上田が解放されたのは全てが終わった二時間後であった。

「鬼……、鬼がおる。」
「いやあ……そういう君は基本ケダモノじゃないか。」
「人肌が恋しいんです!」
「そんな真面目な顔で言われても……。」

 とりあえず上田はシャワーを浴びさせて貰った。
 シャワーから上がると布団が敷かれていたので、
 ユカの布団に入ろうとして思い切り殴られてから自分の為に用意された布団に入り込んだ。




「…………。」
「ねぇ、あんた、まだ起きてる?」
「むにゃむにゃ、もう喰いきれないよぅ。」
「テンプレートな寝言ねえ……。」
「嘘です、起きてます。」

 まだ布団に入って三十分も経っていないのだ。

「あんたなんで家出なんかしたの?」
「君に会うため。」

 それにしてもこの上田、ドヤ顔である。

「それはねーよ。」
「というのは冗談で、センチメンタルジャーニーです。」
「やなことあったの?」
「はい、二股かけたら一人には心臓止められて、もう一人には片目潰されました。」
「ああ、そういえば割り箸見つけられてなかったもんね。
 とりあえず二股は良くないよ。」
「一人とはずっと友達でなんていうかこうナアナアで付き合っているみたいな感じになって……
 もう一人はなんていうか……いきなりアタックを仕掛けられてそのまま勢いで……。」
「流されやすいなおい!」
「はい、なんででしょうかね。
 できるだけ誰も傷つけたくないなーって思ってたら何時の間にか皆傷ついてました。
 人って誰かを不幸にしないと生きていけないんですね。」
「そんなことは……、ないよ。きっとない。」

 自分に言い聞かせるようにユカ、いいやレンは呟く。




「誰かを、自分を、不幸にしないと生きていけないなんて、
 そんな存在だったら人間って悲しすぎるじゃない。」
「いいえ、人間って悲しいんだと思います。
 だから誰かを傷つけても自分だけ、あとついでにできれば自分の周りの人も、
 それだけ幸せだったらそれで良いと思って他人の幸せは諦めるべきです。」
「私はそう思わないよ。
 誰かを犠牲にして得た幸せなんてきっとまがい物。
 幸福を感じていたとしても、それはまやかしなのよ。」
「じゃあ人間は悲しいですよ。現代に生きる人々だって、
 先進国の人々は途上国の人々を犠牲にして、
 途上国の人々は先進国の人々の犠牲になり、
 まやかしの幸せか直接の不幸か、どちらかを享受しているってことです。
 貴方の考え方でいうとどちらも悲しいと思いませんか?」

 上田明也十五才、厨二病全開である。
 一生物のハズカシイ台詞である。

「…………そっか。」
「だからせめて、今此処にいる人を僕は大切にしたい。
 今此処にある刹那を全力で生きたい。
 どうせ人間どのみち駄目なんだから、おもしろおかしく駄目になりたいんです。」
「…………その為なら誰でも犠牲にできるの?」
「今は貴方の為に全てを犠牲にしたい気分です。」
「そんな生き方してると、何時か後悔するよ。」
「後悔してもそれが自分への罰です。勝手な事しておとがめだけ逃れようとは思いません。」
「それは誰かを傷つける理由にはならない。」

 まあハズカシイだけに。
 ハズカシイだけに彼の根本でもある本音なのだが。




「私の妹が言っていたのよ。
 何も変化しない平和な日常が一番好きだって。
 嫌なことはあるかも知れないけどそれでも普通に過ぎていく日々が良いって。
 それは誰も邪魔をする権利はないって。
 何も得ない代わりに何も失わないのが幸せだって。
 私もそう思うんだ。」
「そういうのも有りなんでしょうね。」
「ええ、素敵でしょ?」
「はい。」

 素敵だけれども
 そんな考え方は今の上田明也にはあまりに無味乾燥すぎて
 頭では理想だと解っていても彼の内側でドロドロと渦巻く真っ黒な欲望を抑えられなくて

「……でも、なんでも欲しいから。
 何でも欲しいから僕はまた誰かを傷つけてしまう。」
「良いわよ」
「?」
「貴方が誰かを傷つけるなら、私が貴方を止める。」

 なーんてね、とレンは笑った。
 でもその言葉は今の上田明也には強い否定に聞こえて、
 彼は曖昧な笑いを彼女に返すことしかできなかった。
 自分がどんな最低でも、そんな最低を含めて認めてくれる誰かを彼は求めていた。
 そんな人を求めて彼は旅をしていたのかもしれない。

“獣の王様 第五話「名前」 続”

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