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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 獣の王様-06

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“獣の王様 第六話「三原沙耶」”

 F-No.333、三原沙耶はピラミッドパワーとリンドブルムの二重契約者である。
 元々彼女は動物行動学を学ぶ学生だったのだが都市伝説事件に巻き込まれて兄と共に死亡。
 死の直前に契約した都市伝説の力で黒服として蘇っている。
 只野凱空が起こした一連の事件において、彼女は犯人のプロファイリングを直接行っていた一人であった。

「間違いない、間違いなく犯人は男の筈。
 複数犯もあり得るだろうけど……。
 直接被害者に手を下しているのは男よ。
 体型は小太りで人格は破綻気味ね。
 なんで言っちゃ駄目なのかなあ?」

 変人揃いのF-No.の中でも特に変人である彼女だったが、
 その頃から彼女のプロファイリングは組織の上司に一目置かれていた。
 彼女のその頃の直属の上司も彼女の言うことは信じていたのだ。
 だがしかし、上司は更にそのまた上司からこの情報はできるだけ秘匿しておくようにと、
 良く解らない命令を受けていたので組織全体には伝わっていなかった。

「現場で発見されたとかいう女の子は組織が嫌いな子ね。
 真相が解れば協力者として扱えるかも知れないわ……。」

 しかし、自らの発見のもみ消しの代償としてある程度以上の自由な行動を許可されていた沙耶は、
 事件の被害を防ぐために只の黒服としてはあり得ないレベルの権限を持つに至っていた。
 まあ彼女は人の上に立つタイプではないので大した意味は無いのだが。




「さて、文句言っててもしょうがない!
 今日もパトロールしちゃうぞー!」

 彼女が今居るのは数寄屋町という町である。
 モンゴリアンデスワームの契約者が現在潜伏しているということで彼女と彼女の仲間が何人かこの町に赴いていた。
 彼女がパトロールするのは主に学校や幼稚園など社会的な弱者が多い場所である。
 彼女のプロファイリングによれば今回の契約者は、
 残忍で、狡猾で、人の不幸をこそ自らの喜びとするタイプの猟奇的な殺人鬼だからだ。
 そのプロファイリングと組織に犯人と目される少女はあまりにもイメージが合致しない。

「せんぱぁ~い!マジでまたやるんですかぁ?
 それよりその契約者っぽい女の子捕まえましょうよぅ。」
「駄目、その子は犯人じゃないわ。」
「なんでですか?」
「その子が死体と一緒に居たところが目撃されてない。」
「それはあたしたちが間に合ったからで……。」
「本当にそう思う?」
「?」
「今まで私たちの追跡をかわし続けている狡猾な契約者にしては、
 あのモンゴリアンデスワームの契約者は殺した数が少ないわ。
 というより殺さないで財布だけ取った回数が少ないのよ。
 財布を抜き取った犯人と、財布の持ち主を襲った犯人は多分別。」
「えー……。」
「私の推理に間違いは無いわ。」
「勘じゃないすか?」
「勘じゃないよ、例え勘であったとしても勘という名の推理さ!」

 それを世間では勘というのである。
 後輩黒服はため息を吐いた。





「あっ!先輩あれあれ!」
「ん?おー、ありゃあ財布泥棒の少女じゃないか。
 年下の男の子連れてるなんて中々良い趣味じゃないか。」
「モンゴリアンデスワームの契約者かもしれないんですよぅ?」
「襲われたところで(私は)問題有るまい。」
「()内!そのカッコってなんだ!」
「可愛いじゃんモンゴリアンデスワーム。
 家に持ち帰ってエロエロ調教したいわ。
 そうだ、今回の任務終わったら都市伝説改造実験計画室の連中に頼んでさ。
 モッコリイヤンエロワームにしちゃおうぜー。一人の夜も捗るわ。」
「やめて!先輩止めて!俺の中の先輩のイメージが!
 ちょっと頭があれだけど天才な人ってイメージが!
 ちょっと頭があれな上に昆虫だって構わず喰っちまうド変態に!」
「そーだよ?」
「くそっ、なんだよその不屈の性欲!
 男子中学生か!エロサイト巡り→妙なサイト発見→異常性癖開花、の黄金コンボを決める男子中学生か!」
「てへっ☆」

 キャルン、とか効果音がつきそうな良い顔で三原沙耶は笑う。
 黙っていれば女性としてはそこそこ悪くない感じなのだが……。
 まあ天は二物を与えない。
 何でもかんでも完璧を求めるのは酷だろう。
 それにしても彼女の趣味は酷すぎるが。

「……とりあえずあの二人どうします?」
「どうせ私たち変装してるし、黒服ってばれるわけも無いから尾行してみよーよ。」
「そうですねぇ、そうしますか。」

 とりあえずこの二人組は冬木華恋と上田明也の二人組を尾行することにしたのであった。






「あ、あの女の子綺麗だなあ。」
「色目使ってるんじゃないわよエロガキ。」
「良いじゃないですか、別にレンさん俺の彼女でもないし。
 俺がそんなこと言われる筋合いは……おー、あの飯屋うまそー。」
「やっべぇ……この子一遍殴りたいわ。」
「殴っても良いのですよ、それが愛ならば。」
「解ったわ、愛に満ちたびんたを一発くれてあげましょう。」
「ご褒美ですね、解ります。」
「ただし愛抜きで。」
「なにそのワサビ巻きサビ抜きみたいな物!?
 只の罰ゲームじゃん!」

 二人は他愛もない会話を続けている。
 三原と後輩はそんな二人のあとをずっと着けていた。

「ふむ……、恋愛関係じゃあないのかな。」
「ぽいですね、なんか友達みたいなー。」
「馬鹿野郎!」
「はぁ?」
「言ってみただけです。」
「おいおい」
「嘘だよ。」
「嘘かよ!」
「友達以上恋人未満かな。あんたの報告によるとあの二人、あんたから一度逃げたらしいじゃない。」
「あー、確かにあたしと、もう一人の同僚から上手いこと逃げてましたね。」
「一緒に危ない目に遭ってドキドキすると吊り橋効果で二人の距離は縮まるわ。」

 後輩黒服は前方を歩く二人を見る。
 だからあの二人はあんなに親しげにしているのかと得心がいったらしく、ほうほうと呟いている。





「あーピュアな関係だわあの二人ー。
 なんか妬ましいわー、どうにかなっちゃえばいいのにな-。」
「さらっと怖いこと言ったよこの人。」
「良いじゃん、なんか心に傷を負ったらしい流離いの少年と、
 自分の友の仇を追って一人孤独な戦いを続けてきた少女と、
 同い年じゃなくてちょっと年上年下の関係が出来ているところが萌えだわあ。」
「何言ってるんですか。」
「いや、勘だけどそんなところだと思うよ。
 すくなくともあの少女の方はそうだと思うな。
 あの子が親元を離れて旅を始める直前に、モンゴリアンデスワームが彼女の家の付近で目撃されている。
 そしてその直後に彼女の周囲の人間から彼女の記憶だけがすっぽり抜け落ちた。」
「それは契約の代償が周囲の人間の記憶だったからじゃ?」
「モンゴリアンデスワーム如きがそんな高尚な条件で交渉をするなんて思えないね。」
「そうかなー。」
「うん、その記憶欠落は少女が本当に契約している都市伝説の能力か何かじゃないかな。
 とてつもなく強大なのか、それとも記憶に関する能力を持っているのか。
 その両方かも知れない。」
「じゃあ少年の方は?」
「ああ、それは勘という名の推理。」
「えっ」
「だってあんな悲しげな瞳をした子供なんて中々居ないって。
 まったく親は何してるんだろうね。
 母性愛を引きずり出されるような眼をしてたじゃん。
 あんたも一遍見てみなって。」
「あー言われて見ればそんな気も……、雨の日に濡れた子犬的な。」
「だろ?」

 三原達がやいのやいの喋っている間に上田と華恋はスーパーマーケットに入る。




「なにっ!?」
「どうしたんですか先輩。」
「しまった……油断した……。」
「何がどう油断したんですか?」
「あの二人、確実に出来ている。言葉だけを捕らえて推測を誤っていたのか……。」
「なんでスーパーマーケットに二人で入っただけでそうなるんですか。」
「良いか駿河ルミ後輩!」
「はい。」
「男女が二人きりで食事をするなら友達か恋人だ。」
「はい。じゃあ友達以上恋人未満はそれほど間違ってないんじゃ……。」
「否、あの二人は多分これから昼ご飯の食材を買う!」
「……だから?」
「良いか、親戚でもない異性間で手料理を作って上げるor作ってもらうっていうのはだな。
 動物で言えばプロポーズにも等しい訳よ。
 人間にしても、もはや付き合っている云々別にした深い信頼と友情が有る訳よ。
 そんな間柄にある年下の可愛い男の子が側に居たらなあ……。」
「居たら?」
「私なら喰っちまうね。親戚でも喰うかも。」
「それは先輩だけです。」
「ああ、そうですか。」
「なんか葱と卵と焼き豚買って店を出ましたよ。」
「なんだってー!?」
「町中です。声を落としてください。」

 周囲の人の視線が三原に突き刺さる。
 駿河は彼女を連れて急いで店を出る。




「良いか、彼等が作るのは恐らく炒飯だ。」
「それが?」
「良いか、炒飯というのは基本的に簡単お手軽料理だ。
 残り物を適当に料理しましたで十分通用する料理だ。
 それの為の具材をわざわざ買った。
 つまり食事を作って食べさせるってことはだよ。
 二人の間でそれが別に何でもない当然の事として受け入れられるくらいに!
 あの二人の関係は進んでいるってことなんだよ!」
「な、なんだってー!?
 …………とでも言うと思いました?
 バカですか先輩は?死ぬんですか?」
「いやマジで、冗談じゃなく。
 つきあい始めのバカップルがカレーとか作るけどさ。
 ああいうのって如何にも『家庭の味だよ、ちょっと手間暇かけました><』って感じじゃん。
 そういうんじゃなくて
 『今日何喰う?』
 『偶には炒飯食べたいなー』
 『炒飯で良いのかよーw』
 みたいなもう付き合い始めっていうか結婚カウントダウンレベルだから。
 大親友の彼女の連れおいしいパスタ作ったお前家庭的な女のタイプの俺一目惚れ♪
 みたいな!」
「え、ちょっと待って……それ何の曲でしたっけ?」
「自作のラップ的なあれ、三年後くらいに流行るね。」
「流行らねーよ。あれ、二人とも何時の間にか居ない。」

 二人が漫才をしている間に上田達は居なくなっていた。




「てへへ、やっちゃったね。」
「てへへじゃねーよ。」
「まあ良いんだ。モンゴリアンデスワームの契約者が大きな町に入ったのは今回が初めて。
 だから町の規模に合わせて大きな事件を起こす可能性が高い。
 問題はそれが何かってことさ。
 帰って軽く会議でもして、それから上司に報告だ。」
「はーい。」

 あーでもその前に、と三原は呟く。

「そこの少年少女、私は雑魚じゃないぞ。」
「へ?」

 駿河の近くの茂みがガサガサと揺れる。  

「そこに……!?」
「違うぞ馬鹿駿河!逆だ!」

 駿河ルミの虚を突いてレンが彼女を遙か上空に連れ去る。
 それを追いかけようとした沙耶に、上田明也が斬りかかった。

「貴方が雑魚じゃないのは解っている。」
「ちっ、初手が遅れたか。」

 沙耶は村正の鋭い刃をリンドブルムの鱗で受け止めて上田を蹴り飛ばす。

「手応えがおかしい!?」
「脚一本もーらった。」

 沙耶の脚からは何時の間にか夥しい量の血が流れていた。






「村正には贋作が多いんですよ。沢山服の中に仕込んでおけば攻撃されても大丈夫ですよね?
 なんせドラクエで言えば刃の鎧みたいなもんですし。」

 上田明也は服の袖から大量の小刀を出してみせる。
 本来彼は操作系能力者で、村正と契約したところで刀に触れた人間を操る程度のことしかできない。
 だがしかし村正の今の契約者は別の人間である。
 彼の適正は多岐にわたっており、力を使うだけならば村正に認められることで可能である。
 そう、彼は現在村正の本当の契約者の力を模倣している状態となっているのだ。

「創造系統か。」

 三原の掌から赤い雷が走る。

「おっと、そこまでです。」
「やる気じゃないのかい?」
「僕たちとしては放っておいて欲しいだけです。」
「君たちが真犯人じゃないことくらいはとっくに掴んでいる。
 私は君を追いかける気も上に報告する気もない。
 だから私の可愛い後輩をさっさと返してくれるとありがたいな。」
「そうですか……。」
「信用できないと思っているね。
 まあ仕方ないか、だがまあもうちょっとばかりは信用してくれよ。
 そうでないと……そうだね、お父様に言いつけるよ?」

 三原はにやりと笑う。
 彼女は明らかに上田明也の事情について何か知っていた。
 三原の脚の傷は徐々に塞がり始めている。
 時間が経つにつれ、契約者でも何でもない上田の形勢が不利になっていくのは明らかだった。 




「……またあいつか。仕方ないね、貴方の後輩は向こうに捨てられてるはずです。」 
「素直な子供は大好きだ。」
「好かれてもしょうがないです。愛してください。」
「あの少女は君を愛しているのか?」

 三原としては軽い冗談程度のつもりだった。
 だが……

「――――いいえ。」

 その少年が三原に返した返事の声色とその少年がその時に湛えていた瞳の色は、
 悪意も敵意も害意も怒りもなく、唯々寂しくて悲しくて、
 今にも泣き出してしまいそうなほどに冷たいだけの物だった。

「待……」
「それでは失礼。」

 この頃から上田の逃げ足は早かった。
 彼はあっという間に三原の前から姿を消した。

「……只のカワイソーな男の子でも無いのかね。」

 彼とはまた戦うことになりそうだ。
 その時彼は今よりずっと手強くなっている。
 巣を求め餌を求めるひな鳥ではなく、全てを己が手で奪わんとする猛禽になっているだろう。
 そう思いながらも三原沙耶は彼を追いかけようとは思えなかった。

“獣の王様 第六話「三原沙耶」 続”

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