首のゆくえ
「ラジオをお聞きの皆様こんばんは。初めての方は初めまして。そうでない方はまた会えて嬉しく思います。
現代に語られる恐怖の噂、都市伝説の世界へようこそおいでくださいました。
さて、今夜の噂は『首無しライダー』。世間様にはわりと名の知れた噂にございます。
首なし人間がバイクを駆り、道行く人の首を刈る。後に残るは首の無い死体が一つ。
……はて、では刈られた首はどこにいったのでしょうか?」
現代に語られる恐怖の噂、都市伝説の世界へようこそおいでくださいました。
さて、今夜の噂は『首無しライダー』。世間様にはわりと名の知れた噂にございます。
首なし人間がバイクを駆り、道行く人の首を刈る。後に残るは首の無い死体が一つ。
……はて、では刈られた首はどこにいったのでしょうか?」
「今宵語るは、そのような話でございます。ではごゆるりとお付き合いくださいませ……。」
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「……はぁ、すっかり遅くなっちゃった。」
明かりもまばらな夜の住宅街を、一人の少女が歩いている。
コツコツと靴の音だけが響き、周囲に人の気配はまるで感じられない。
コツコツと靴の音だけが響き、周囲に人の気配はまるで感じられない。
「でも大会近いし仕方ないか。……うん、泣き言なんて言ってられないよね。」
疲れてはいるがどこか爽やかさを感じられる声で、少女は自分を奮起させる。
コツコツと響く靴の音。それを掻き消すように、唐突にけたたましいエンジン音が鳴り響いた。
少女はビクッと体を震わせ、思わず体を萎縮させた。
コツコツと響く靴の音。それを掻き消すように、唐突にけたたましいエンジン音が鳴り響いた。
少女はビクッと体を震わせ、思わず体を萎縮させた。
「うぅ、やだなぁ……暴走族とかだったらどうしよう……。」
この道に来ませんように、と祈りながら、若干足を速める少女。
だがそんな少女の祈りもむなしく、エンジン音を唸らせたバイクが正面から近づいてくるのを見て取った。
心の中で不運を嘆きつつ、下手に気にする方が不味いと思い、そのまま歩き続ける。
バイクの方も少女に気付いた様子で、速度を落としながらこちらに近づいてくる。
少女はバイクから視線をそむけながら道路の端に避けて、できるだけ早足で通り過ぎようとする。
が、すれ違い様、つい目を向けてしまった。
そしてその異様な外見に疑問を持った。
だがそんな少女の祈りもむなしく、エンジン音を唸らせたバイクが正面から近づいてくるのを見て取った。
心の中で不運を嘆きつつ、下手に気にする方が不味いと思い、そのまま歩き続ける。
バイクの方も少女に気付いた様子で、速度を落としながらこちらに近づいてくる。
少女はバイクから視線をそむけながら道路の端に避けて、できるだけ早足で通り過ぎようとする。
が、すれ違い様、つい目を向けてしまった。
そしてその異様な外見に疑問を持った。
……え?あの人、首が――――
その思考が完結するより先に、少女の首が宙を舞った。
首から上がなくなった体を見下ろすように、その傍らに立つ首なしライダー。
「うん、今日の子もなかなか僕好みの可愛い子だよ。いつも僕の好みを押し付けて悪いね。」
そんな首無しライダーに一人の男が近づき、いたって軽い調子で話しかける。
その男の腕の中には、先ほど首なしライダーが刈った首が大事そうに抱えられている。
その男の腕の中には、先ほど首なしライダーが刈った首が大事そうに抱えられている。
「……何、お互い様だって?まぁその通りではあるんだけどさ。
僕は君が刈った首を持ち去ることで、君の『首なしライダー』としての存在を確固たるものにする。
そして君はそれに応えるべく、僕好みの人間を優先して標的とする……そういう契約だったね。
それでも僕の感謝の気持ちに変わりは無いよ。いつもありがとう、首なしライダー。」
僕は君が刈った首を持ち去ることで、君の『首なしライダー』としての存在を確固たるものにする。
そして君はそれに応えるべく、僕好みの人間を優先して標的とする……そういう契約だったね。
それでも僕の感謝の気持ちに変わりは無いよ。いつもありがとう、首なしライダー。」
「……おっと、こうしちゃいられない、首は鮮度が命だ。じゃあ今日はこの辺で。また次の首が決まったら教えてくれよ。」
その言葉を契機に、首なしライダーはエンジン音を鳴り響かせて住宅街を後にした。
首を抱えた男はそれを見送ると、近くの家の中へ入っていった。
一見するとどこにでもあるような一般的な邸宅だが、リビングの一角に開いた四角い穴が地下室の存在を示していた。
男は首を抱えたまま地下室への階段を降り、そこに鎮座する巨大な冷蔵庫の扉を開けた。
その中にずらりと並べられた首を一通り見回すと、抱えていた首を他の首と同じように並べた。
一見するとどこにでもあるような一般的な邸宅だが、リビングの一角に開いた四角い穴が地下室の存在を示していた。
男は首を抱えたまま地下室への階段を降り、そこに鎮座する巨大な冷蔵庫の扉を開けた。
その中にずらりと並べられた首を一通り見回すと、抱えていた首を他の首と同じように並べた。
「……この冷蔵庫ももうじきいっぱいか。そろそろ新しいの買いなおさなきゃなぁ。」
そう呟いて満足そうに顔を歪めると、並べられた首たちをいたわるかのように静かに冷蔵庫の扉を閉めた。
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「……こうして首なしライダーが刈った首を男が蒐集し、後には首の無い死体だけが残るのでございます。
首を刈る本能に駆られた首なしライダーと、首を蒐集する欲望に駆られた狂人。最良の相棒を得た最悪の二人組は、今もどこかを彷徨っているのです。」
首を刈る本能に駆られた首なしライダーと、首を蒐集する欲望に駆られた狂人。最良の相棒を得た最悪の二人組は、今もどこかを彷徨っているのです。」
「ところで最近、『友達がこのラジオで聞いた都市伝説に襲われた』といったお便りが多く寄せられます。
常日頃から申しておりますように、都市伝説とは『語られるところに存在する』のです。
聡明なリスナーの皆様、どうかここで聞いたことは語ることなく、そっと胸のうちに秘めてください。
さもなくば、次に都市伝説と出会うのは、あなたのご友人かもしれません……。」
常日頃から申しておりますように、都市伝説とは『語られるところに存在する』のです。
聡明なリスナーの皆様、どうかここで聞いたことは語ることなく、そっと胸のうちに秘めてください。
さもなくば、次に都市伝説と出会うのは、あなたのご友人かもしれません……。」
「……といったところでお別れの時間が参りました。
今夜の噂はこれにておしまい。7日後に再びお会いできることを、心よりお祈り申し上げます。」
今夜の噂はこれにておしまい。7日後に再びお会いできることを、心よりお祈り申し上げます。」
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「――――こうして最良の相棒を得た最悪の二人組は、今もどこかを彷徨っているのです……。」
「やだ怖いー。そんなの聞いたら一人で帰れないよぉ。」
「よしよし、怖くない怖くない。私が一緒に帰ってあげるから大丈夫だって。」
「やだ怖いー。そんなの聞いたら一人で帰れないよぉ。」
「よしよし、怖くない怖くない。私が一緒に帰ってあげるから大丈夫だって。」
人がまばらとなった放課後の教室で、きゃいきゃいと笑いながら怪談談義に花を咲かせる女子高生二人。
そのうちの片方が教室の時計を見上げ、思い出したように口を開く。
そのうちの片方が教室の時計を見上げ、思い出したように口を開く。
「あ、そうだ。あたしこれから委員会の仕事があるから少し遅くなるよ?」
「え、嘘?私、親に買い物頼まれてるからそろそろ帰ろうって言うつもりだったんだけど……。」
「えーちょっとー。あんな話しといて一人で帰れっていうの?」
「ホントごめん!今度何かおごるから、それでかんべんしてよ。」
「ふふっ、いいよそんなの。ただの噂でしょ?もうそんなの信じるような歳じゃないよ。」
「ごめんねー。買い物ついでに甘いもの買ってくるから、明日放課後にね!」
「うん。期待しないで待ってる。じゃあね!」
「え、嘘?私、親に買い物頼まれてるからそろそろ帰ろうって言うつもりだったんだけど……。」
「えーちょっとー。あんな話しといて一人で帰れっていうの?」
「ホントごめん!今度何かおごるから、それでかんべんしてよ。」
「ふふっ、いいよそんなの。ただの噂でしょ?もうそんなの信じるような歳じゃないよ。」
「ごめんねー。買い物ついでに甘いもの買ってくるから、明日放課後にね!」
「うん。期待しないで待ってる。じゃあね!」
手を振りながら教室を出ていった友人を見送った女子高生は一つのびをして、自身も委員会の仕事へと向かうべく教室を後にした。
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……もう、なんであたしが当番のときに限って仕事がいっぱいなのよ。
凄く疲れたしもうすぐ日も暮れるし……やっぱり一人はちょっと怖いし。
せめて自転車だったら気も紛れるんだけど、徒歩だと足音がやけに響いて、まるで後ろから誰か付いてきてるような……ヤメヤメ!
よし、明日あの子が買ってくる甘いものに期待しよう。もし買ってこなかったら罵ってやろうそうしよう。
凄く疲れたしもうすぐ日も暮れるし……やっぱり一人はちょっと怖いし。
せめて自転車だったら気も紛れるんだけど、徒歩だと足音がやけに響いて、まるで後ろから誰か付いてきてるような……ヤメヤメ!
よし、明日あの子が買ってくる甘いものに期待しよう。もし買ってこなかったら罵ってやろうそうしよう。
そんなことを考えつつ背後から聞こえたエンジン音に振り返り、あたしの体はそこで固まった。
……違う、あれは噂。友達がラジオで聞いた噂。所詮ありふれた創作に過ぎない。
じゃあアレは何?今あたしが見ている現実は何?
なぜ『首の無い人間がバイクに乗っている』の?
バイクが迫ってくる怖い逃げなきゃでも足が動かない怖い助けて怖い怖い怖いだれか――――
じゃあアレは何?今あたしが見ている現実は何?
なぜ『首の無い人間がバイクに乗っている』の?
バイクが迫ってくる怖い逃げなきゃでも足が動かない怖い助けて怖い怖い怖いだれか――――
少女の恐怖が終わると同時に、少女の首が宙を舞った。
「……綺麗だ、凄く綺麗だよ。艶やかな髪。きめ細やかな肌。困惑と恐怖の表情。きっと君はみんなと並んでも一際映えるだろうなぁ……。」
どこからともなく現れた男は愛しそうに抱えた首を撫でながら、夕闇へと消えていった。
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「……こうして首なしライダーが刈った首を男が蒐集し、後には首の無い死体だけが残るのでございます。
首を刈る本能に駆られた首なしライダーと、首を蒐集する欲望に駆られた狂人。最良の相棒を得た最悪の二人組は、今もどこかを彷徨っているのです。」
首を刈る本能に駆られた首なしライダーと、首を蒐集する欲望に駆られた狂人。最良の相棒を得た最悪の二人組は、今もどこかを彷徨っているのです。」
「ところで最近、『友達がこのラジオで聞いた都市伝説に襲われた』といったお便りが多く寄せられます。
常日頃から申しておりますように、都市伝説とは『語られるところに存在する』のです。
聡明なリスナーの皆様、どうかここで聞いたことは語ることなく、そっと胸のうちに秘めてください。
さもなくば、次に都市伝説と出会うのは、あなたのご友人かもしれません……。」
常日頃から申しておりますように、都市伝説とは『語られるところに存在する』のです。
聡明なリスナーの皆様、どうかここで聞いたことは語ることなく、そっと胸のうちに秘めてください。
さもなくば、次に都市伝説と出会うのは、あなたのご友人かもしれません……。」
「……といったところでお別れの時間が参りました。
今夜の噂はこれにておしまい。7日後に再びお会いできることを、心よりお祈り申し上げます。」
今夜の噂はこれにておしまい。7日後に再びお会いできることを、心よりお祈り申し上げます。」
「忠告は素直に聞かないと、どうなっても知りませんよ?」
終わり