「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 芸術カルテット

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kemono

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だれでも歓迎! 編集
「全員集まったみたいだな・・・じゃあ、始めるぞ」
「『芸術カルテット』、幽霊退治大作戦♪」
「ところで、もっとマシなチーム名はなかったのか?」
「Mmm・・・Meは今のままでもVery Goodだと思うけどネ」

真夜中の校庭で、怪しい集会を行なっているのは、4人の中学生ほどの少年少女

「その前に女性陣、あまり派手にやりすぎないでくれ。 前回は君達の所為でバレかけたからな」

肩まで伸びた髪を夜風に靡かせる、ヴァイオリンケースを持った少年――柊 響介(ヒイラギ キョウスケ)

「派手じゃないもん! リーダーの癖に君が地味過ぎるだけだもん!」

茶色がかった長髪と、ピンクのウェストポーチを揺らす少女――信時 成美(ノブトキ ナルミ)

「僕は徹底的にやるだけだ・・・で、場所は本当にここでいいんだろうな?」

紫の布に包まれた長方形の何かを背負う、ショートヘアの少女――相原 彩乃(アイハラ アヤノ)

「間違いないヨ。 MeのAbilityでここと同じ場所がはっきり写ってたからネ」

首からポラロイドカメラを提げた、金髪で青い瞳の少年――緑河 ショット(ミドリカワ -)

「ショットの「念写」は百発百中だ、問題ないだろう」
「そうか? この間はとんでもない写真が出てきたからどうも疑わしくてね」
「そ、そんなこともあったかナ、Ha-ha-ha・・・」
「ねぇ、何処にいるの? この校庭に出るって噂の―――」

と、成美が言いかけた直後だった
男性が低く呻いているような声が、闇夜に響いた
全員が、さっと身構える

「Wow、この声ハ・・・?」
「出たぞ・・・あれだ」

校庭に、薄っすらと霧が立ち込める
その奥から、がちゃ、がちゃ、と金属の擦れる音が、幾つも幾つも聞こえてくる
ようやく月明かりに照らされたそれは、甲冑を着た男達
だが、身体に矢が刺さっている者や、首や片腕が欠損している者で構成された集団――落ち武者だ
『この校庭に、夜な夜な「落ち武者の亡霊」が出没しては生徒を襲っているらしい』
そんな噂を聞きつけ、4人は真夜中にわざわざここへ来たのだった
けれどもそれは、単なる肝試しでなく、

「作戦はいつも通りだ。さて―――コンサートの始まりだ!」
「オッケー!」「分かった」「Roger!」

成美、彩乃、ショットが散らばると同時に、
「落ち武者の亡霊」の内2体が、その場に残った響介目掛けて刀を振るった

「おっと、生憎俺は非戦闘員なんだ」

並々ならぬ手捌きでケースを開け、中のヴァイオリンを取り出す響介
その瞬間、ヴァイオリンケースから半透明の黒い手が伸び、落ち武者の動きを止めた

「「チェリーニのヴァイオリン」・・・呪われたヴァイオリンだ
  呪いで君達の動きを封じさせてもらった
  リーダーから潰すのは戦場では得策かも知れんが、その前に」

パチンッ、と指を鳴らすと、彼の背後に突如としてグランドピアノが出現した
彼はそのピアノに背を持たれ、弓を弦に当てると、

「俺の演奏を聴け・・・ベートーヴェン作曲、『エリーゼのために』」

曲の演奏を始めた
流れるようなヴァイオリンの音、心の鼓動のような“ピアノ”の音
響介が演奏しているのは、ヴァイオリンのみだ
動けぬ2体の落ち武者の前で、響介は1人でに鍵盤を叩くピアノとのデュエットを続けた

「さぁ、行くわよ!!」

『エリーゼのために』をバックミュージックに、成美がウェストポーチから取り出したのは、
これまたピンク色の可愛らしいデザインが施された、二つ折りの携帯電話
それを開くと、彼女はたった3つのボタンを押してゆき、

「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」

叫ぶと同時に、彼女の身体が強く輝き、一瞬にして衣装が変わる
白地に燃える炎のような赤が映える、所々に蝶をあしらった動きやすい衣装

「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」

と、本当に変身してしまったわけだが、勿論彼女は本物のプリキュアではない
彼女の契約都市伝説は「なりきりグッズで本物になれる」
子供達の夢と期待が都市伝説化したものである
無論、仮面ライダーやスーパー戦隊にもなれる訳だが、彼女はプリキュアにしか興味がない

「純情乙女の炎の力、受けてみなさい! プリキュア!ファイヤー・ストライク!!」

右足を背後に向けて大きく振り上げると、彼女の足元に炎の球が現れる
それをサッカーボールの要領で勢いよく撃ち出し、1体の落ち武者に命中させる
朽ちた鎧がぼろぼろと砕け、落ち武者はその場に焼け崩れた

「うん、私ってば今日も絶好調♪ それそれそれぇ!!」

何度も何度も炎の球でシュートを決める
1つは撃ち抜き、1つは焼き滅ぼし、1つは大きく反れて――――

「あっ!? 彩乃ちゃん危ない!」

反れた1つは、一直線に彩乃の元へ―――――

「危ないのはお前の方だ」

呆れながら、彼女は背負っている長方形を布ごと掴むと、それを炎の球に向けて盾にする
ごぅっ!!と包みにしていた布だけが燃え上がり、その中身が露出した
立派な額縁に入れられた、泣いている少年の絵
だが、絵であるにもかかわらず、燃えた後が何処にも無かった

「全く、少しは周りの事も気にして戦ってくれ」
「えへへ、ごめーん」
「・・・まぁ、僕も他人の事は言えないか」

にたり、彩乃が笑った瞬間、描かれた少年の潤んだ目が光った
その刹那に、落ち武者達の立っている場所で、めらめらと炎が燃え上がった
周りを火で囲まれた落ち武者は、苦しそうに悶えながら次々と崩れ落ちる
これが彩乃の契約都市伝説、「火事を呼ぶ少年の絵」である
先程、成美の誤射を防いだのは、この絵が『火災現場で唯一燃えずに残る』という話によるものだ

「うふふふふ・・・あっははははははははははははは!!!
  やっぱり生きてるモノを燃やす方が気分がいい・・・あぁ、明日も良い絵が描けそうだ
  だが惜しいなぁ、この燃え盛る炎を表現できる絵の具が、果たして“血”以外に存在するのか・・・」

火の海に溺れゆく落ち武者達を見下しながら、彩乃は怪しく微笑んだ

「Well・・・いつものことだケド、女性陣は恐ろしいネ」

炎を纏って戦う彼女達を遠巻きに見ながら、ショットはゆっくりとシャッターを押した
カメラから写真が飛び出し、じわりと浮き上がる

「Oh,It's fantastic!・・・But very crazy・・・
  それより、まだまだいるみたいネ、これじゃキリが無いヨ」

と、ぶつぶつ不平を言っていると、ぞろぞろと彼の前に落ち武者達が歩み寄ってきていた

「Mmm,ここにオチムシャがいる、ということハ・・・」

顎に手を当てて暫く思案すると、何かを閃いたのか、にっと笑う
落ち武者が1人、また1人と、刀を振り上げ始めたその時、
どこからともなく矢が、銃弾が飛んできて、脆くなった甲冑を貫かれた落ち武者はその場に倒れ伏した

「過去にこの場で合戦があった・・・てことで、OK?」

“今いる場所の過去に起こった出来事を再現する”――ショットの契約した都市伝説、「時の重ね撮り」の能力だ
これは、ある一般青年が友人に語った、
『この世は永遠に回り続けるビデオテープのようなもので、そのテープは今と言う瞬間を過去の上から重ね撮りされている』、という説である

「ハァ、ハァ・・・もぉ、まだ出てくるの!?」
「あっははははは! 月光に紅い炎と黒い骸! 最高だ! 帰って直ぐにでも生み出してあげたいなぁ!!」
「彩乃ちゃんも壊れかけてるぅ!? 早く終わらせなさいよ響介ぇ!!―――――あ、」

ふと、何かに気づく成美
曲の流れが、緩やかになっていた
そして

「――――――――フィナーレだ」

ヴァイオリンとピアノの音が止んだ
とその時、今尚立ち続けていた落ち武者達が一斉に苦しみ始め、
膝を地につけ、刀を捨て、泡を吹き―――身体が、崩壊した
ふぅ、と一息吐いて響介が3人に駆け寄るのを見届け、ピアノは――「ピアノの霊」は闇に消えた

「・・・やっと、か」
「Thanks for your hard work!」
「遅い! もっと早く弾き終われないの!?」
「無理言うな、「ピアノの霊」の演奏は4回聴かないと効力が無いんだ」
「あと毎回思うんだけどさ、響介別に演奏しなくていいじゃない!君も戦ってよ!」
「俺はどんな時でも音楽を聴いてないと駄目なんでね。父さんに似たのかな」
「もぉ、君はすぐそうやって―――」

響介と成美の痴話喧嘩を聞きながら、クスクスと笑うショットと、ハァ、と溜息を吐く彩乃
こうして、校庭は再び夜の静けさを取り戻したのだった

「というかクラシックばかり弾くのもやめて!偶には楽しいの弾きなさいよ!
  『ガンバランスdeダンス』とか、『DANZEN!ふたりはプリキュア』とか!」
「・・・・・・・・・・・」
「何あからさまに嫌そうな目してるのよ!?」
「疲れた、僕は帰るよ」
「Ha-ha-ha・・・Good night」

彩乃とショットは早々と帰っていったが、残った2人が帰り始めたのは1時間後だったという

   ...END





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