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連載 - 騎士と姫君-09

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「守る者、守られる者」


 学校町北区、どこかの路上にて。
 端から見れば仲のよい姉弟と思える様な二人が、てくてくと手を繋いで歩いていた。

「うー、それでね、昨日はパパといっしょにお祭りまわったんだよ」

「へえ、それはよかったですねえ」

「うー!」

 かたわらの少年はなんとも嬉しそうな笑みを浮かべる。
 その笑顔を見るだけで歩き詰めの疲れなんてどこかに吹っ飛ぶような、なんとも幸せな気分にさせられる……のだが。

「それにしても……田んぼ、ばっかりですねえ」

 辺りを見回してみれば、そこには一面黄金色の草原とも見まがう光景が広がっている。
 さほど遠くないところには山すらそびえ、本当にここは一つの地名の中なのかと疑いたくなってきてしまう。

「うー! バッタ! 緑のバッター!」

 そんな思いなどお構いなし、稲穂の森から飛び出してきた虫に目を輝かせる少年を見つめ、彼女はなんとも深いため息をついた。

 あれから運よく一人きりでいた少年と再会し、あの黒い集団から逃れる場所を求めて二人はさ迷い続けていた。
 いつまたあの黒服たちに襲われかねない状態の今、一人ぼっちの少年を発見できたのまでは良かった。
 しかしよくよく話を聞いてみれば、少年もまた気の向くままに歩いていただけだと言う。
 ならば家はどこかと訪ねてみても「うー?」と少年はかわいらしく首をかしげるのみ。

 つまり、事態は全く好転してはいなかった。

「うーうー! おねーちゃん、バッタ!」

「ああ……あれはバッタじゃなくて『イナゴ』って言うんですよ」

「いなご? うー、イナゴ!」

 早速教わった名前を口にしながら、少年は食い入る様に虫を見つめている。
 しばらく前には、確か遠くにロボットが見えると言ってはしゃいでいた。
 そんな光景を眺めていると、本当に今は逃避行の真っ最中なのかと疑いの気持ちが生まれてくる。
 しかし数時間前に味わったあの恐怖感が、「これは現実の出来事なのだ」と強く彼女に思い知らしめていてのだった。

 思えば影を探して歩いてきたはずなのに、気づいてみれば日差しを遮るものなど何もない場所にやって来てしまっていた。
 もしこの状態でまたあの集団に襲われたら?
 さっきは自分一人だったからまだよかったものの、今度はこの幼い少年もいるのだ。
 逃げ切る事はまず、不可能に近いだろう。いや、ほぼ逃げ切れまい。
 あの騎士を呼び出せばその可能性はぐっと高くなるだろうが、それは今の状況ではとても難しい。
 空を見上げれば、先程よりいくらか傾いたものの未ださんさんと輝く太陽がそこにはある。
 闇の領域の存在である騎士を日の元に呼び出すのは、まず無理だ。
 例外として、日差しの差し込まない影の中であれば、幾分力は抑えられてしまうものの騎士の助けを得ることもできる。
 しかし今いる場所は遮るものすら何もない平原の真ん中、影など見込めるはずもなかった。

 もし、今ここであの黒いモノたちに襲われたら……その時は自分がこの子の盾となろう。
 かつての自分を守ってくれた、あの騎士の様に。せめて一瞬だけだったとしも。
 どんな形であれ、今この子を守ってあげられるのは自分しかいないのだから――。

「うー……おねーちゃん、こわいの?」

 ふと耳に飛び込んできた声に我に返れば、眉を寄せて心配そうに見上げる少年の顔がかたわらにあった。

「ちがう? うーうー、あたまいたい? おなかすいた?」

 ぎゅっと両手で彼女の手を握り、少年はなおもそう問いかけてくる。
 こんな小さな子でさえ気づく様な顔をしていたのだろうか、自分は。

「まだまだ、だなあ」

「う?」

 そうつぶやくと、首をかしげる少年のそばにそっとかがみこむ。
 そしてきょとんとした表情の少年の頭を、優しくぽんぽんと撫でてあげた。

「大丈夫です、私は何ともないですよ」

「ほんと?」

「ええ」

 そう頷いてやれば、ようやく少年は笑顔を取り戻す。

「うーうー、だいじょうぶ! こわいの来たら、みんな将門さまがやっつけてくれるから!」

「まさかどさま?」

 不意に少年の口から飛び出した「まさかど」という言葉に、ふと内心引っかかりを覚える。
 「まさかど」と言えば、かの有名な「平将門」が浮かぶが、なぜこの少年の口から彼の人物の名前が出たのだろう。
 もう少し話を聞こうと口を開きかけるが、その時少年の頭のはるか向こうに何か動くものが目に入った。

「っ……!」

 ついにあの黒服がやって来たのかと、すぐさま立ち上がり目を凝らす。
 そしてだんだん近づいてくる彼らの姿がはっきりとわかると、その姿に思わず息を呑んだ。
 まず先程追われていたのよりも、明らかに数が多い。
 その姿はいずれも歪な奇形のものばかり、そして先頭に立つのは、紫のマントを纏った獣人の……着ぐるみ、だろうか。

「……うー! 不吉!」

 少年の目にもあれはよからぬものだと映ったのだろう。
 ぎゅっと握る手に力がこもり、「不吉」と繰り返し続けている。

「確かに……あれは不幸しか招きそうにありませんね」

 再び己の背中を冷たい汗が伝うのを感じる。
 今度はさっきの様に幸運が起きるとは限らないのだ。
 それでも、動ける内にせめて悪あがきぐらいはしなければ。

「……よし、逃げましょう!」

「うー!」

 そう二人は声を合わせ、黒い集団とは反対の方角へと駆け出した。


 黒が黄金色を塗りつぶしていく。
 それはまるで、すべてを食らい尽くす蝗(いなご)の大群が押し寄せるかの様な光景だった。



<To be...?>



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