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単発 - 魔法少女マジカルホーリー

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kemono

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魔法少女マジカルホーリー


「ワタシ、キレイ?」
「えっ?」

 夜道、背後からかけられた声に少年は振り返った。
 そこには真っ赤なコートを着て大きなマスクで口を隠した女性。

「ねぇ、ワタシ、キレイ?」
「う、ぁ……く、口裂け……。」

 少年はきびすを返して一目散にその場を逃げ出した。

「あら逃げちゃった。返事の出来ない悪い子は……切り刻んであげようねええええええ!」

 一瞬で少年を追い越し、その裂けた口で少年に笑いかける口裂け女。
 少年は小刻みに震えながらその場にへたりこんだ。

「つーかまーえた。」
「ぁ……こ、こないで……。」
「い、や、よ。バイバイ少年、この世の中からさようなら。」
「光よ彼を守れ!『ヴァノ・アルトフィア』!」

 口裂け女が鎌を振るうと同時にどこからか少女の声が響き、少年の周囲に光の壁が立ち上る。
 振り下ろされた鎌が光の壁に弾かれ、驚愕の表情を浮かべる口裂け女。
 その口裂け女の後方に、フリフリの衣装を纏った一人の少女が降り立った。

「なに、あんた……誰よ?」
「人に仇なす悪しき者よ、魔法少女マジカルホーリーの名の下に、あなたを聖裁いたします!」

 魔法少女。
 携えたステッキを口裂け女に向けながら、少女は高らかにそう言い放った。

「魔法……ホーリー?なんか知らないけど、私の邪魔するんだ。……じゃああんたも切り刻んであげるよおおおおお!」
「高みへ導け!『ヒューエル・ルファ』!」

 口裂け女が魔法少女に襲い掛かるより早く、魔法少女の体は天へと舞い上がった。
 はるか上空へと消えた少女を地上から見上げる少年と口裂け女。

「え……逃げ、た?」
「逃げたわけじゃないよ。これがあの子の戦い方さ。」

 唐突にかけられた声に少年が視線を下げると、いつの間にか一匹の黒猫が足元に寄り添っていた。
 まさか猫が話すはずは、と唖然とする少年を見上げながら黒猫が口を開いた。

「どうしたんだい?ビックリして声も出ないのかい?」
「ね、猫がしゃべってる!?」
「うん、大丈夫そうだね。この中は安全だから安心して見てるといいよ。魔法少女の活躍を、ね。」

 そう言うと黒猫は視線を少年から天へと移し、少年もつられて天を仰ぐ。
 すると先ほど少女が消えた空から流れ星が降ってくるのが見えた。
 しかしよく見るとそれは、光を纏ったステッキを構えながら真っ逆さまに落下してくる魔法少女だった。

「数多を穿て!『ラクス・セ・パアト』!」

 目の前に無数の光の矢が降り注ぎ、口裂け女が光の雨に飲まれた。
 激しくも煌びやかで美しいその光景に少年は一瞬見蕩れる。
 そして光の雨がやんだときそこに残っていたものは、”無傷”の口裂け女の姿だった。

「はっ、見た目は派手だけど大したことないねぇ。遅すぎてあくびが出るよ。」
「あ、あれを全部避けられた!?」
「やっぱり100m3秒は伊達じゃないね。まぁ、マホの魔法精度にも問題があるんだけどね……まったく。」
「どうするの?攻撃が当たらないんじゃ負けちゃうよ!」
「当たらないなら当たらないなりの戦い方もあるのさ。」

 落下する魔法少女は地上すれすれで急激に減速し、ふわりと着地した。
 口裂け女は余裕の表情で魔法少女に一瞥をくれる。

「ねえあんた、あんなのが当たると思ってんの?魔法少女か何だか知らないけど、あんまりなめんじゃないわよ!」
「だったらこれよ!『モノ・サンジェリカ』!」

 魔法少女の背後に無数の光の槍が現れ、次々と口裂け女に向けて放たれる。
 しかし口裂け女はそれらもステップでかわしつつ、魔法少女へと距離を詰めていく。
 光の槍が次々と地面に突き刺さるが、口裂け女には一つたりとて当たってはいない。

「まだわからないの?あんたの攻撃なんか当たらないのよ!」
「当てる気なんか最初からないわ。あなたはもう”囲われている”。」
「なにをわけのわからないことを……ッ!?」

 口裂け女が地面を蹴りだすと同時に、その体が見えない何かに弾かれた。
 予期せぬ現象に驚きながらも口裂け女は周りを見渡す。
 すると地面に突き刺さった光の槍から迸る閃光が槍同士を結んで口裂け女を囲っていたことに気付く。
 例えるならそれは光の檻。光の槍はその格子の一部にしか過ぎなかった。
 口裂け女は光の檻に向けて鎌を振るうが、それはことごとく弾かれる。

「あんた、最初からこれを狙って!?」
「あなたはもう動けない。そして、これで終わりよ。」

 魔法少女の体がゆっくりと宙に浮き、ステッキに青と白の光が灯る。
 ステッキの光が膨らんで魔法少女の体を包み込み、魔法少女の体が青白く眩い光を帯びる。

「断罪の神ハイゼンよ、わが呼び掛けに応え、悪しき輩に聖なる裁きを下したまえ!『アシュミダ・アル・ハイゼン』!」

 魔法少女の体から放たれた光条が空間を満たし、口裂け女は聖裁された。

 



 魔法少女が少年に駆け寄ると、少年を覆っていた光の柱がふっと消えた。

「大丈夫?怪我は無い?」
「あ、ありがとう。あなたは一体……?」

 少女は少年に静かに微笑み、その額にそっと口付けた。

「『アルル・ヴェーラクト』。……キミは”こっち側”を知らなくていい。元の幸せな日常にお帰り。」

 少年はその言葉が聞こえていないかのように虚ろな目で宙を見ている。
 魔法少女は少年の頭を撫でたのちステッキに腰かけ、肩に乗せた黒猫と共に夜空へと飛び立った。

「……あれ?ボク、なんでこんなところでボーっとして……早く帰らなきゃ。」

 少年は頭に残る柔らかい感触に首をかしげながらも、急ぎ家に帰るために走り出した。

 



 あああああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいっ!!!
 私は枕に顔を埋めてベッドの上でのた打ち回っていた。

「いやあ、今日も大活躍だったね、マホ。」

 黒猫が愉快そうな声で私の羞恥心を抉ってくる。
 この黒猫の名前はクノ。
 私が魔法少女マジカルホーリーになる羽目になった原因だ。
 私は涙目になりながらもクノをじっと睨んでやる。

「あんたの『キミには才能がある』なんて言葉に引っかかってなければ今頃こんなことには……ううううう。」
「何を言ってるんだいマホ。キミは生まれながらにして魔法少女となるべき宿命を背負っていたのさ!」

 ちなみに私の名前は「堀井真帆」。「ホリイ・マホ」。「ホーリー・マホウ」。……もうお分かりだろう。
 『名は体を現す』とはよく言うが、魔法的にも名前というものは重要らしく、私にこの名前がつけられたのも運命だとか何とか。
 この名前の由縁について両親にそれとなく聞いてみようとも思ったが、前述の理由を肯定されると立ち直れないような気がして結局聞けてない。
 多分一生聞くことはないだろう。

「ねえクノ……魔法の才能があるのはいいんだけどさ、魔法少女じゃなくてもっとこう……は、恥ずかしくない方法はないの?」
「いつも言ってるじゃないか。魔法の力は心の力。心が強く望めば、魔法はそれに応えてくれる。」
「だからって、『ノリノリになればなるほど魔法が強くなる』ってどういうことなのよ!」
「羞恥心は心のリミッターだよ、マホ。心を最大限に開放するには、羞恥心をなくすのが一番手っ取り早いのさ。」

 言ってることがなんとなく理解できてしまうのが悔しい。
 悔しいので再びクノをキッと睨んでやる。
 クノはそんな私を見てクスクスと笑っていたが、ピクリと髭を動かしたかと思うと、すっと私を見つめてきた。

「マホ、どうやらまた奴らが近くに出たみたいだよ。」
「またぁ!?ここ最近多いとは思ったけれど一晩で二体連続なんて……。」
「さあ早く!立ち上がるんだマジカルホーリー、町の皆を守るために!」
「わかってるわよもう……神よ、どうか私に、悪を討つ聖なる力を……『アシェック・マジカルホーリー』!」

 真帆の体が光に包まれ、その中からマジカルホーリーが姿を現す。
 そして魔法少女マジカルホーリーは黒猫を肩に乗せ、再び夜空へと飛び立った。


【終】





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