……正直、自分には勿体ない彼女だと思う
青年、鈴村 賢一は、彼女の手料理を食べながら、そんな事を考える
青年、鈴村 賢一は、彼女の手料理を食べながら、そんな事を考える
「ん~?どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「いや、なんでもないよ」
可愛らしく小首をかしげた彼女に、賢一は笑った
それに釣られるように、彼女、別部 蘭も微笑む
相変わらずきれいな笑顔だな、と、賢一は見とれそうになってしまう
それに釣られるように、彼女、別部 蘭も微笑む
相変わらずきれいな笑顔だな、と、賢一は見とれそうになってしまう
「どう?美味しい?」
「うん、美味しいよ。蘭は、料理が上手だね」
「うん、美味しいよ。蘭は、料理が上手だね」
…彼女と付き合うようになったのは、ただの偶然
不良に絡まれていた彼女を助けたのが、キッカケだった
それ以来、付き合いが始まって
今ではこうやって、彼女の家に招かれるようにまでなった
不良に絡まれていた彼女を助けたのが、キッカケだった
それ以来、付き合いが始まって
今ではこうやって、彼女の家に招かれるようにまでなった
蘭には、両親がいない
仕事で外国に行っているのだと、彼女は言っていた
寂しくない?と聞いたら、ちょっと、と寂しそうな笑顔を浮かべてきて
できる事ならば、ずっとそばにいてあげたい
そう、願う
仕事で外国に行っているのだと、彼女は言っていた
寂しくない?と聞いたら、ちょっと、と寂しそうな笑顔を浮かべてきて
できる事ならば、ずっとそばにいてあげたい
そう、願う
「ふふ、褒めてもらえて、うれしいな」
賢一の褒め言葉に、蘭は笑う
幸せそうに笑う
幸せそうに笑う
「じっくり、味わって食べてね」
「うん、もちろん。蘭が作ってくれた料理だからね」
ぱく、と、彼女の手料理をじっくりと味わっていく賢一
少し味が濃いかな、とも思ったが、濃い目の味の方が好みだから問題ない
少し味が濃いかな、とも思ったが、濃い目の味の方が好みだから問題ない
賢一は、幸せな気持ちに包まれていた
だから、気づかなかった
だから、気づかなかった
「…………あ、れ?」
------命が消える、その瞬間まで
料理に入れられていたそれに、気づけなかった
料理に入れられていたそれに、気づけなかった
よいしょ、と
蘭は、賢一の死体を背負って、地下室へと向かう
うんしょ、よいしょ、と扉を開けた、その先
蘭は、賢一の死体を背負って、地下室へと向かう
うんしょ、よいしょ、と扉を開けた、その先
地下室には、棺が置かれていた
一つじゃない
二つ、三つ、四つ…………全部で、35個くらいはあるだろうか
一つじゃない
二つ、三つ、四つ…………全部で、35個くらいはあるだろうか
「よいしょ、と」
その一つの蓋を開けて、蘭は賢一の死体をそこに横たえた
うん、と満足げに笑って、棺に賢一の名前と年齢を書きこんでいく
うん、と満足げに笑って、棺に賢一の名前と年齢を書きこんでいく
周りの棺も、全て同じ
誰かの名前と年齢が書きこまれている
誰かの名前と年齢が書きこまれている
その内の二つには、「別部」と言う苗字が
「別部 正人」と「別部 清美」
蘭の、両親だ
「別部 正人」と「別部 清美」
蘭の、両親だ
二人も、棺に納められているのだろう
今まさに、棺に納められていっている賢一のように
今まさに、棺に納められていっている賢一のように
「これで、賢一君は、私のものだよね」
眠るように死んでいる賢一
それを見下ろして、蘭は幸せに幸せに笑う
それを見下ろして、蘭は幸せに幸せに笑う
「これで、賢一君は私以外の女の子と話さないもんね。私以外の女の子に笑いかけないもんね。これでずっとずっと、私のものだよね」
自分に笑いかける笑顔は、自分だけのもの
自分にかけてくれる声も言葉も、自分だけのもの
自分の頭を撫でてくれる手だって、自分だけのもの
その手で他の誰かをなでるなんて、許さない
その手で、他の誰かに触れるなんて、耐えられない
自分にかけてくれる声も言葉も、自分だけのもの
自分の頭を撫でてくれる手だって、自分だけのもの
その手で他の誰かをなでるなんて、許さない
その手で、他の誰かに触れるなんて、耐えられない
だから、殺した
「ふふ、便利な能力、手に入れちゃった。これで、賢一君も甫君も毅君も直弥君も丈君も誠一君も、みんなみんな、永遠に私のものだねっ」
蘭は、都市伝説契約者だ
契約しているのは、「ベラ・レンツィ」
……彼女を都市伝説と呼んでいいかどうかは、微妙である
契約しているのは、「ベラ・レンツィ」
……彼女を都市伝説と呼んでいいかどうかは、微妙である
ただ、できる事ならば「都市伝説だと思いたい」存在ではあるだろう
実の息子を含め35人もの男をヒ素で殺し、今、蘭がしているように、その死体を棺に入れて
そして、毎晩のようにローソクで照らしながら、棺の一つ一つを開け、殺した男たちの死体を見るのを毎晩の楽しみにしていたという………まさしく、狂気にとらわれた女
実の息子を含め35人もの男をヒ素で殺し、今、蘭がしているように、その死体を棺に入れて
そして、毎晩のようにローソクで照らしながら、棺の一つ一つを開け、殺した男たちの死体を見るのを毎晩の楽しみにしていたという………まさしく、狂気にとらわれた女
たまたま、それと契約した、その瞬間から
蘭の精神構造はそれに乗っ取られてしまったのかもしれない
ヒ素を生み出す能力を手に入れて、ベラ・レンツィがしたように、愛する相手を殺し続けるのだ
蘭の精神構造はそれに乗っ取られてしまったのかもしれない
ヒ素を生み出す能力を手に入れて、ベラ・レンツィがしたように、愛する相手を殺し続けるのだ
賢一を含め、全員の死体を確認していって、蘭は微笑む
幸せそうに、幸せそうに笑い続ける
幸せそうに、幸せそうに笑い続ける
いつか、誰かがとめるまで
彼女は、同じ殺人を繰り返して
この地下室には、棺桶が増え続けるのだろう
彼女は、同じ殺人を繰り返して
この地下室には、棺桶が増え続けるのだろう
fin