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単発 - 電車でGO

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kemono

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電車でGO


「はじめまして。今日から車掌見習いをやらせていただきます、和田 千穂です」
「よう新人さん、今日が初めてか?」
「はい。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」

 電車に乗り込みつつ、先に待っていた先輩に挨拶をする。……おっと、忘れてた。

 みなさんこんにちは、そして始めまして。和田千穂です。
 職業はご覧の通り鉄道勤務。立派な女車掌を目指して頑張ります。どうぞよろしく。

「俺は轟 命だ。よろしく。」

 私の目の前のおっさn……先輩の名前は「トドロキ ミコト」というらしい。
 轟はよくわかる。だが、どう見ても「ミコト」なんて洒落た名前は似合いそうにない。
 「幸三」とかがよく似合いそうだ。「トドロキ コウゾウ」。うん、なかなかいいじゃない。
 これからよろしく、幸三さん。

「ところで和田ちゃん、幽霊とか怪奇現象は信じる口かい?」
「はい?」

 いきなり「和田ちゃん」と呼ばれたことも気になるが、突然何を言い出すんだこの人は。
 世間話にしても突拍子なさすぎだろう。

「いやまあ、見たことはないですけど……。」
「はっはっは!そうかそうか。じゃあ、これから頑張れよ。」
「はぃ?」

 "じゃあ"ってなんだ、"じゃあ"って。
 車掌たるもの、幽霊くらいは見えるようになれってか?
 初めて知ったぞそんな条件。

 そうこうしているうちに、出発時刻が近づいてきた。
 始発とあって乗客はまばらだ。半分はサラリーマン、四分の一は朝帰りと思わしき若者。そして残り四分の一の有象無象。

 朝早くからお疲れ様です、サラリーマンの皆さん。
 こんな早朝からどちらに行かれるんですか、有象無象の皆さん。
 平日に朝帰りとはおめでてーな、若者ども。リア充全員爆発しろ。

「おいおいどうした怖い顔して。」
「えっ?ああ、いえ、別になんでもないです。」

 どうやら顔に出ていたらしい。
 あぶないあぶない。あんな奴らでも一応お客様だ。大事にしなくては、うん。

「緊張してるのか?今日は見てるだけでいいから、まあ気楽にいこうや。」

 いや緊張してるわけじゃないんですよ。ただ奴らが妬ましくてたまらないだけで。

「多分、そのうち面白いものが見れるから、期待して待ってな。」
「面白いもの…ですか?」
「ああ。びっくりすること間違い無しだぜ。」

 はて、なんだろう。この時期なら紅葉並木とかだろうか?
 この沿線にそんな見所があった記憶は無いけど……。

「さってと、和田ちゃんの初仕事だ。気張っていきますか!」

 その言葉と同時に、車両のドアがぷしゅうと音を立てて閉まる
 警笛を短く鳴らし、電車がゆっくりと動き出す。
 こうして、私の初仕事が幕を開けた。

 



 先輩は電車最後部の運転室に座り、ときたまアナウンスを流す。
 私はその姿を見てるだけ。正直暇だ。
 おっさんは何度目かのアナウンスを終えて私へ向き直る。あ、おっさんって言っちゃった。

「なあ和田ちゃん、この電車の名前、知ってるか?」
「ええ、確か『イノイチ』でしたよね。」
「ああ。『いの一番』をもじってつけられたらしいが、いったい何が『いの一番』なのやら。」
「……古めかしさでは一番だと思いますが。」
「はっはっは、ちげぇねえ!」

 目の前のおっさんが豪快に笑う。勤務中だってこと忘れてないか?
 だが笑いたくなる気持ちもわかる。
 この電車、正直言って『ボロい』。

 使ってるモーターは旧式だし、外装はところどころメッキがはがれてるし、ドアに至っては開かないところまである。
 その開かないドアに『このドアは開きません』との張り紙がしてあることも、ボロさを助長させている。
 てか直せよ。ドアが開かないとか電車としてダメだろ。
 監査とかどうやって通ってるんだよ。

「うっし、和田ちゃん。そろそろいくか。」
「仕事ですか?」
「いんや、アレは先頭のほうが見やすいからなぁ。先頭車両に移るぞ。」

 おっさんの言った『アレ』とは、出発前に言っていた『面白いもの』のことだろう。
 それを見るがために見やすいところに移動するとか。勤務中だぞおっさん。

「ああそうだ。ちょっとこれ、やってみろ。」

 そういって何かを手渡された。
 手の中にすっぽりと納まる小さな機械。いわゆる『数取機』という奴だ。

「使い方はわかるか?それで先頭車両まで客を数えてくれ。」
「はい、わかりました。」
「数は間違っても気にすんな。適当に何人くらい、ってわかってりゃいいから。」

 なんというアバウトさ。機械を使う意味がまるでない。
 まぁ、やれと言われたことには素直に従っておこう。日本人ですから。

 おっさんの後に続いて先頭車両まで歩き出す。
 間違っても気にするなとは言われたが、やるからにはしっかりやらせてもらう。
 というか、この乗客数で間違はしないだろう。

 電車の音にまじり、足音と数取機の音を響かせながら、先頭車両に向けてひたすら歩く。
 そして、先頭車両の運転席に到着し、全6車両のカウントが終了した。

「どれ、ちょっと見せてみ。」
「はい。どうぞ。」

 数取機をおっさんに差し出す。
 するとおっさんは、ポケットの中からもう一つの数取機を取り出した。
 おっさんはそれと私の数取機を見比べると、にやりと笑った。

「ほれ、見てみな。」

 そう言って私に二つの数取機を見せる。
 私の数取機は”44”と出ている。
 対しておっさんの方は……”31”?

「え、私、間違えてました?」
「いや、合ってるよ。」
「いや間違ってるじゃないですか。」
「あんたに才能があっただけってことさ。気にすんなって最初に言ったろ?」

 何の才能だよ。ボタンを押し間違える才能か?
 携帯で打ちまつがいしやすい才能か?
 なんの役に立つってんだよそんなの。

「……和田ちゃん、あそこ見てみな。」

 おっさんが静かに私に呼びかける。
 その指差す方向を見ると、進行方向上方に橋が見えた。

「陸橋……ですか?」
「ああ。んで、あそこに座ってる奴、見えるか?」

 目を凝らして見ると、陸橋のふちにワンピースの女の人が座っていた。
 細い体に赤いワンピースがよく似合……って危ない!あそこから落ちたらこの電車に轢かれ……



 女の人が飛び降りた。
 電車が迫る。
 声は出なかった。
 女の人と目が合った。
 笑っていた。



 女の人がぶつかる寸前、私は床にしゃがみこんで目をそらした。
 しかし、人が電車にぶつかるような音はしなかった。警笛も鳴らなかった。
 ただただ、電車の振動のみが何事も無かったかのように響いていた。

 疑問と恐怖を胸に、恐る恐る目を開けると……

「あら、この子新人さん?」
「おう、今日からな。よろしく頼む。」
「初めまして。私は宮本 暦。あなたのお名前は?」

 全身血まみれで青白い肌をした女の人が笑いかけてきた。
 その姿を最後に私の視界は真っ黒に染まった。

「……あら?気絶しちゃったわよこの子。」
「ったくしょうがねえなぁ。この子は和田……あー、下の名前なんだっけ和田ちゃ……あ、気絶してたんだっけか。」
「随分と繊細な子ね。まあいいわ。目が覚めたらゆっくりご挨拶させてもらうから。」
「そうしてくれ。んじゃ、終点までお付き合い願いますか。」

 車掌と気絶した車掌見習い。そして生きてる客と生きてない客を乗せた電車は、今日も何事も無く定刻どおりに運行中。


【終】





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