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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 小文字の奇跡

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何処か、遠くから、地響きめいた音が響いた、気がする。
多分それは、〈都市伝説〉と〈契約〉した〈能力者〉たちの引き起こしたもの。
だから、普通の人は。

感じない。
分からない。

もうすぐ、バレンタイン・デー。
町中がそんな雰囲気。
恋人たちは寄り添い、夫婦は仲睦まじく。
男の子が、女の子に、女の子が、男の子に、ささやかな気持ちを贈る、素敵な日。

穏やかじゃない、暗い雰囲気を醸している人も、時折見かけるけれども、
〈都市伝説〉や〈能力者〉達が、殺し合いを広げるよりは、
ずっと、ずっと、今の町の方が素敵だ。
誰かを憎み合ったり、傷つけあったりするよりも、
照れながら、恥ずかしがりながら、すました振りをしながら、
チョコレートを贈り合う方が、ずっと、ずっといい。

私もそんな風に過ごしたかった。
でも、無理なのは、分かってる。

ずっと、前から、分かってる。

大きく裂けた口は、私が私である証。
捨てても捨てても、何時の間にか懐にある、錆びた鎌は、私が私である運命。
人を見ると、急に不安になって、怖くなって、私が綺麗なのか如何か、問いかけたくなるのは、

私が私である、ノロイ。

嫌だった。
逃げ出したかった。
私を縛り付ける〈その話〉から。
私は、〈人〉から受け入れられる事など無い。
もう、温もりに、包まれる資格なんて、私には無い。
――ずっと、ずっと、そう思ってた。

とある喫茶店のマスター。
彼が私の正体を知っている事は、はじめから分かってた。
でも、
「いい豆が入ったんだよ、キミが初めて飲む事になるかな」
其処はすごく暖かくて、
「そう言えば、こんな話を聞いた事は無いかい?」
私を、受け入れてくれて、
「わ、わ、わ……」
「大丈夫? ――少し深呼吸しようか」
「ふぅぅぅぅ……。あ、あの、その話なら、私、違う話を聞いた事、あります――」
思えば、人と、まともに、話をしたのは、
私が〈こんな姿〉になってからは、
マスターが初めてだったかな。

「また、おいで」

店を出る時、後ろから声を掛けられて、
振り返って、マスターの笑顔が目に映って、
――その時、私は、マスターに決して見せまいと思いながら、すごく泣きじゃくった事を憶えてる。

それから、時折私は、その喫茶店に足を運ぶようになった。

ただ、嬉しかった。
「――私、カモミって言うんです――」
此処に、居ていいんだ、そう思って。
「――実は、その話には、続きがあってね――」
ただ、嬉しかった。
「――マスター、あの、また、お邪魔しても、いい、ですか?――」
噂話や、都市伝説といった話をするのが好きな、
「――いい豆を用意して、待ってますよ――」
少し変わった、マスターだったけれど。



そのマスターが、去年の夏、亡くなった。



御葬式に参加する事は、出来なかった。
その時、私は、この町を、離れていたからだ。
私が戻って来た時、既に、店は、〈黒い服の人達〉のモノになっていた。

〈黒服〉。

私は、彼らが、嫌いだった。
〈私のような存在〉を、管理するか、殺すか、そのどちらかを行う、そんな人達。
勿論、そんな怖い事ばかりするような、〈黒服〉ばかりでない事も知ってる。

「いいですか、私たち〈黒服〉は、悪者です。関わっちゃ、ダメですよ」

ある〈黒服〉の人に、そう言われた事を、思い出す。

ひどく、憂鬱だった。
あの場所が、〈黒服〉のモノになってしまった。
マスターは、もう、二度と、帰って来ない。

もう、あの、暖かい場所は、何処にも、無い。

その日。
私は、迫る夜の闇に紛れて、この町の西区を歩く。
あれ以来、疎遠になってしまった、あの喫茶店の通りへと、近づいていく。
もう、マスターは居ない。
あの場所は、〈黒服〉達のモノ。
そんな事は、分かってる。
それでも、私は、何故だか、恋しくなってしまってた。
もしかしたら、マスターが亡くなったというのは、ホントはウソで、
ひょっこり、戻って来てて、
カウンターの内に佇んでいるんじゃないか。

分かってる。
でも――、ちょっと、確かめる、だけ――。

喫茶店の窓から漏れる光は、何処か優しくて、
あの穏やかな雰囲気が、ある様な気がした。



窓を、少し、覗き込む。
其処に、奇跡は、あった。



「マスター! マスター!!」
勢い急いで、喫茶店のドアを開ける。
あの、何処か懐かしい、ベルの音は、意外にも大きく響いた。

突然の来客に、キョトンとした表情のマスターだったが、

「いらっしゃいませ」

にっこり微笑んだ表情を私に見せる。

「マスター、マスター……、どうして……」
言い淀む私を、
「心配かけて、御免ね」
マスターは、いつもと変わらない雰囲気で包んでくる。
「……マスター」
熱いモノが込み上げてきて、マスターの姿がぼやけ、
「お帰りなさい……っ」
ようやく、それだけ、喉の奥から、絞り出した。
「ただいま」
マスターの、優しい声。
私は、止めどなく流れ落ちる涙を、手の甲で拭って、顔を上げる。
マスターは、マグカップを差し出してきた。
熱い、ホットチョコレートの香り。

「お帰り、カモミさん」

おしまい





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