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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 少年と黒服

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寓話

白いスーツの紳士は一つのボタンを備えた箱を持って、やって来た
彼はある男の元へ訪れ、伝える

 貴方がこのボタンを押すと、貴方の知らない、しかし、この世界に生きる人が誰か死ぬ
 もし貴方がボタンを押せば、貴方に100万ドルを現金で差し上げよう

紳士は男に鞄を開いて見せた。――中には大金が詰め込まれている
彼は、一夜明けたらその箱を回収に来るのでそれまでに決断して欲しい、と告げると男の元を後にした

男は躊躇し、逡巡し、苦悶し、
日は落ち、やがて、夜が明けた

白スーツの紳士は昨日のように男の元へ現れ、問う
ボタンを押さないのか、と

その時が来るまで悩み抜いた男は、紳士に待ってくれと一言応え、
意を決したように、箱に手をかけた

銃声が響いたのは、その時だった

いつの間にか、紳士はうつ伏せとなって倒れていた
彼の背中の一点から、鮮やかな赤が広がっていく
紳士の白衣を自身の血が染めていく

一瞬の出来事に呆然とした男は、紳士の立っていた、すぐ後ろに
黒いスーツを来た男が立っている事を見止めた
黒服は、素早く男へと近づき、ボタンを備えた箱を取り上げ、
地へと捨て、踏み潰した。箱は呆気なく壊れた

 貴方は運がいい
 貴方は、もう少しで、悪魔に魂を売る所だった

黒服は、男へ告げる
男は、ようやく事態を把握したのか、

 私は、運が、いい、だと?

そう応えた。男は言い淀み、唇を震わせる

男は、口を開いた

 私は、運がいい、だと?
 悪魔に魂を、売る所だった?

 私は、私の名は、嫌われている
 力は無い。名誉も、金もだ
 私には、病に侵された母が居る
 医者は、母を見捨てた
 だが、医者が見捨てたのは、母の病が手遅れだからでは、無い
 私が、金を持っていないからだ

 確かに、私は、この紳士に、魂を売るような真似をしたかも知れぬ
 紳士の言うように、罪なき人を、一人殺そうとしたのかも知れぬ
 しかし、それは
 それは、母を救うためだった
 たとえ、私が、人を殺した罪を着ようとも、母には生きて欲しい
 だのに、だのに

男は、言いよどんだ

黒服は、男へ静かに告げた

 たとえ、貴方が、自身の事情で
 悪魔に魂を売るのだともしても、だ
 私は、悪魔を殺した
 何故なら、私はその為に存在するのだから
 気の毒だが、貴方の事情は、私にとって知った事では無いのだ

黒服は、男に背を向け、去って行った
男は黒服の後ろ姿を見詰め、倒れた白服の紳士に目を落とし、

やがて、地へと膝をついて、倒れ込んだ


男の母を侵した病は、やがて男を侵し、死へと誘うだろう

男の行為は、善か悪か?
このような問いこそ、愚問というものだろうが



――寓話はここで終わる



学校町 西区付近 河川敷か? (夕方の時分)

「友達って何ですか…?」
緑の上に仰向けに転がっている人が2人いる
唐突に、一方に声をかけたのは、もう一方の、男子だった
着ている制服からして、西区、工業高校の生徒のようだ

「え、いきなり何を言い出すんですか?」
同じく寝そべっているもう一方、全身を黒で包んだ男が
首を男子の方へと向ける

ひときわ強い風が吹き抜ける
彼ら2人の寝ている緑が音をあげた
男子の方は暫く黙っていたが、やがて身体を起こし
片膝を立てるように座った

「確かに、友達って素晴らしいものかもしれませんね
 例えば銃撃戦に巻き込まれた時に、自分の盾になってくれるんですよ
 そんな人が簡単に得られるんだ」
「例えが特殊過ぎですよ…」
黒服の男は困惑した表情で、男子と同じように身体を起こす

「そして、知らず知らずの内に利用し合えるのが、友達、です
 利用して、利用されて…フフフ、互いの私欲の為に
 動いてくれる人間って、有難いですよね」
「あのう…何時にも増して暗過ぎですよ?
 何か学校で嫌な事でもありましたか?」

「ハハハ、俺は友達が居ないんで、人間関係で悩む事は皆無ですよ」
黒服の言葉に、男子は笑って返す
勿論、その目は笑っていない
一瞬で、男子は笑顔から真顔に戻った
「ところで…そもそも友達って、本当に友達なんでしょうか?」
男子の次の質問に
「あの、意味がよく分からないんですけど」
黒服は、困惑した表情のままだ

「要するにこういう事です
 俺と貴方は友達でしょうか?」
「そう…だと信じていたんですけど」
「しかし、貴方は俺の考えている事が分からないでしょう?
 もし、俺が、貴方の事を友達でもなんでもないと思っていたら、どうするんですか?」
「それは…あの、本当に、そう、思っている、ん、ですか?」

男子は答えずに、顔を逸らした
溜息を吐く音が聞こえる
黒服はどんどん居心地が悪くなってきていた

「黒服さん、友達居ますか?」
「へ、私、ですか? あ、あの…貴方とは、友達だと、そう、思って、思っていたんですよ…?」
黒服はベソをかき始めている
目は潤み、今にも体液を垂れ流しそうだ
男子は、彼の顔を見ないまま
「俺以外にですよ。例えば、『組織』の人とか」
そんな事を言ってきた
「そ!! それは、あの、
 貴方は、私の事、友達だと思ってくれているんですね!!
 そうですね!!! やだなぁ、ビックリしちゃったじゃないですか!!!!」

黒服は懐からハンケチを引き抜くと、盛大に鼻をかむ
そして、未だ潤んだ目のまま、顎に手をやり、思案顔になった
「そうですねえ…『組織』の人だと」
「先輩格とか、ただの同僚とか、そういうのは無しですよ」
「そ、そうですか? ムム」
男子はおもむろに顔を黒服へと向ける
「そうです。いますか? 貴方の変質的に捻くれた妄想を共有できる、友人というヤツが」
「あの…すいません、いませんです、ハイ」
男子はまたも溜息をつく

「そうなると、俺達には友達がそれぞれ1人しかいない、という事になります」
「そうなりますね」
「しかし、俺達の関係を友達と呼んでいいのでしょうか?
 もしかしたら、友達とは違った関係かもしれないんですよ?」
「そうなんですか?」
「そうなんです。そして、俺達は知る必要があるんですよ
 友達とかいうヤツが一体何なのかを確かめないといけない」
「でも…どうやって?」
「聞き込むんですよ、友達とか言う連中に。それ位しか思いつきませんが
 それとも貴方に、何か案がありますか?」
「え? 案? 無いですよ」
「じゃあ行きますよ」
男子は立ちあがった
その表情は暗く、黒いものを含んでいた

「え、行くって?」
「聞き込みにですよ」
座ったままの黒服をみやりながら、さも当然というように答える

男子は辺りを見回した
「例えばああいうのは論外です」
黒服は立ちあがって、男子の指差す先を見遣った
女子高生と白い服の男が歩いている
女子の方は制服から察するに、恐らく東区の高校だろう
男はと言えば、何処となく古風な雰囲気を醸している

「あれって旧軍の制服じゃあ…」
「あれは恋人というもので、リア充というヤツです
 友達という関係ではありません。聞かなくても分かります
 所謂、もげろ、とか言うアレの典型例ですよ」
黒服の呟きを無視し、男子は何処か暗い声で呻る

「いや…でもアレ、どちらかが都市伝説っぽいですよ?
 もしかしたら、恋人でなくて契約関係なんじゃ…」
「都市伝説と人間との間にも、ロマンスはあったりするでしょう!
 許せないッッ!! ジェラスッッ!! きぃぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!」
「おおお落ち着いて下さい!」
前触れ無く興奮しだした男子を、黒服が必死で止めに入る

「何やってるんですか?! 離して下さい!!
 学校町にいる都市伝説契約者は、サーチ&デストロイ!
 サーチ&デストロイが基本でしょうが!!」
「止めて下さい! そんな過激派が言っちゃう事言わないで下さいよ!!
 『組織』全体のイメージダウンですよ!!!」
「離せッッ!! うおおおおおおおッッ!!」
「ダメですッッ!!」
「うおおおおおおゥ!! って、あれ? あの2人は?」
「良かった…ゼイ…何処かに行ってくれたみたいですね…ゼイ」
「チッ」

男子は抑え込んできた黒服を物凄い形相で睨み付ける
「貴方が止めなければ、リアルもげろが出来たものを…」
「止めて下さいよ、ハァ、そんな簡単に、敵を作っちゃ駄目ですって…ハァ」
黒服は抑え込むのに必死だったようで息も絶え絶えといった体だ

「あ、向こうから、男子の2人組がこっちへ来ますよ
 聞いてみたらどうですか?」
黒服の見る方向、河川敷傍の歩道を男子高生2人がこちらへと歩いてくる

「丁度いいな。あの人達に聞いてみましょう」
男子は暗い表情に戻ると、速足で2人組へと近づいていく
ひとまず男子の関心を別に逸れた事を良しとしよう
黒服は彼の後を追う

「ちょっと、そこの貴方達」
こちらへと近づいてくる男子と黒服に警戒したのか
男子が声をかけた時、2人組の表情は強張った
両方とも東区高校の制服を着ている
一方は部活生なのか、大きなショルダーバッグで頭髪を短く刈り込んでいる
もう一方はショートヘアの男子で、線の細さや同年齢の標準より低い背、
中性的な顔立ちから、女子のようにも見える
黒服はチラリと、この人は女装したら案外似合うかもしれない、などと場違いな事を考えた

「ちょっと、そこの貴方達」
「な、なんですか」
男子の呼びかけに反応したのは、頭髪を刈り込んだ方だった
背の低い方は、部活生のような男子の後ろに隠れるようにしている

「貴方達は、友達ですか?」
「…は?」
いきなりそう尋ねられても困惑するしかないだろう
黒服は部活生男子に心の中でお詫びするしか無かった

「俺と、この人――そう言って黒服を指差す――は友達がいないんです
 ぶっちゃけ、友達って感覚が分からないんですよ
 貴方達は、友達ですかぁ? ねえ、そうなんでしょう?
 教えて下さいよぉ、友達って何なんでしょうかねぇぇ?」
(ちょ、ちょっと! 初対面の人に何を凄んでるんですか?!)
黒服のサイレント突っ込みを無視し、
男子は部活生男子の方へと詰め寄った
「友達、なんでしょ? え、違う、違うの?
 じゃあ何ですか? 彼は貴方の身代わり?
 それとも、利用し合える仲?
 どんなきっかけで知り合って、なんで関係が継続してるんですかぁ?
 ねえ、何か喋って下さいよぉ」
最早男子は黒いオーラを全開で部活生男子にメンチ切ってる
流石にこれはまずい、どうやって止めるか、と黒服が男子に声をかけようとした

その時

「お、俺は」

部活生男子は口を開いた

「俺は…」
部活生男子は、繰り返す
彼の後ろに隠れている背の低い男子は
部活生の腕にしがみ付いている
ブルブル震えているのは、
ブラックオーラをフルスロットルな男子に怯えているからだろうか?

「んん? よく聞こえないなぁ?
 貴方は、その後ろに隠れてる彼と、友達なんですかぁ?
 そうじゃあないのぉ?」

「こ、こいつは」
部活生男子は一瞬詰まった
左手をゆっくりと持ち上げる
その手は、固く、握り締められている
思わず黒服は唾を飲み込んだ
これ以上いけない、男子が殴られる
黒服がブラック男子をどつこうとした、瞬間


部活生男子は小指を立てた
「こいつは、俺の、コレ、です」
そう言い放った彼の顔には、怒りと緊張と不安と恐怖が綯い交ぜになった表情があった


黒服は言葉を失った。これこそまさに、パーフェクトな絶句
首を無理やり脇の男子に捻り回す

「へ?」
彼は間の抜けた声を出して硬直していた

一拍間をおいて
「ごヴぃえんなひゃいッッッ!!!」
黒服はその場に身を投げ、魂の土下座をかます

河川敷脇の歩道
男子、黒服、そして、彼らとは無関係の東区男子高校生2人組


ひときわ強い風が吹き抜ける
河川敷の緑が音を上げた


彼らの間には、気まずい沈黙が訪れていた





世間的には『夢の国』の事件が収束し、
組織は『マッドガッサー』と『コークロア』の対処に追われているのだが
彼らには、そのような事は、本当にどうでも良かった

〈くそみそ〉





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