誰の馬だろう。
それが王隠堂ひまわりが始めに思った事だ。
ひまわりの家は広い。西洋好きの祖父と日本好きの父親の増改築により、洋室と和室が斑になった奇妙な家である。
ひまわりも、全ての部屋を見た事が無い。とは言え、庭に真っ黒な馬がいれば知っているはずである。
馬は首が無くても大丈夫なんだろうか。
それが次に考えた事だ。
「何あれ……?」
大丈夫なわけがない。小学校高学年程度の知識しか持たないひまわりでも、それぐらいわかる。
ガチャリと、重々しい金属同士が当たる音。
何の音かと見れば、時代錯誤甚だしい西洋の鎧の騎士。
そして、その騎士にも、首が無い。
「二歩下がりな」
「え?」
どこからか声が聞こえた。目の前の騎士ではない。しわがれた女の声。
声につられ、ひまわりが下がった瞬間、目の前を何かが通った。
壁に刺さった剣。その剣の持ち主は目の前の騎士。下がらなければ、頭が切れていただろうその攻撃をしたのは、
都市伝説「デュラハン」
「逃げた方がいいかな……?」
デュラハンが明らかな殺意を持って攻撃してきた事を認識し、ひまわりは駆け出した。
それが王隠堂ひまわりが始めに思った事だ。
ひまわりの家は広い。西洋好きの祖父と日本好きの父親の増改築により、洋室と和室が斑になった奇妙な家である。
ひまわりも、全ての部屋を見た事が無い。とは言え、庭に真っ黒な馬がいれば知っているはずである。
馬は首が無くても大丈夫なんだろうか。
それが次に考えた事だ。
「何あれ……?」
大丈夫なわけがない。小学校高学年程度の知識しか持たないひまわりでも、それぐらいわかる。
ガチャリと、重々しい金属同士が当たる音。
何の音かと見れば、時代錯誤甚だしい西洋の鎧の騎士。
そして、その騎士にも、首が無い。
「二歩下がりな」
「え?」
どこからか声が聞こえた。目の前の騎士ではない。しわがれた女の声。
声につられ、ひまわりが下がった瞬間、目の前を何かが通った。
壁に刺さった剣。その剣の持ち主は目の前の騎士。下がらなければ、頭が切れていただろうその攻撃をしたのは、
都市伝説「デュラハン」
「逃げた方がいいかな……?」
デュラハンが明らかな殺意を持って攻撃してきた事を認識し、ひまわりは駆け出した。
「どこに逃げる……?」
ひまわりの足はそれほど速くない。
逃げるなら、誰かに助けを求めたいが、今、ひまわりの家には誰もいない。
兄は大学へ、大きい姉は図書館へ行った。小さい姉は昨日ふらふらと出て行ったきり。
母も父も、家にいる事の方が少ない。今日にかぎってハウスキーパーは休みだ。
ガチャリ、ガチャリと金属の音が屋敷に響く。走るひまわりから離れずについてくる。
「そこを右に曲がりな」
「誰?」
先程の年老いた女の声が聞こえる。
「助かりたいだろう。なら言う通りにしな」
声に従い、迷路のような屋敷を右へ左へと駆け回る。そして、少しずつ少しずつ、デュラハンの鎧の音が遠ざかる。
「そこの部屋に入りな」
その部屋は和室。
そして、部屋の中央にふわふわと浮かぶ、半透明の老女。
「おばあさん、誰?」
「ふん、浮いてんのと、半透明なのは無視かい。ま、アレの孫に私らへの恐怖心なんか期待しとらんかったがね。
わたしは都市伝説だよ。」
「都市伝説?」
「詳しい説明は父親にしてもらいな。今はあの首無しを何とかしないといかんだろ。」
そう言うと老女はふわふわと漂うように部屋の隅に移動する。そこには、
「これ、使いな」
黒い鞘におさめられた、奇麗な日本刀。
「契約と行こうじゃないか」
ひまわりの足はそれほど速くない。
逃げるなら、誰かに助けを求めたいが、今、ひまわりの家には誰もいない。
兄は大学へ、大きい姉は図書館へ行った。小さい姉は昨日ふらふらと出て行ったきり。
母も父も、家にいる事の方が少ない。今日にかぎってハウスキーパーは休みだ。
ガチャリ、ガチャリと金属の音が屋敷に響く。走るひまわりから離れずについてくる。
「そこを右に曲がりな」
「誰?」
先程の年老いた女の声が聞こえる。
「助かりたいだろう。なら言う通りにしな」
声に従い、迷路のような屋敷を右へ左へと駆け回る。そして、少しずつ少しずつ、デュラハンの鎧の音が遠ざかる。
「そこの部屋に入りな」
その部屋は和室。
そして、部屋の中央にふわふわと浮かぶ、半透明の老女。
「おばあさん、誰?」
「ふん、浮いてんのと、半透明なのは無視かい。ま、アレの孫に私らへの恐怖心なんか期待しとらんかったがね。
わたしは都市伝説だよ。」
「都市伝説?」
「詳しい説明は父親にしてもらいな。今はあの首無しを何とかしないといかんだろ。」
そう言うと老女はふわふわと漂うように部屋の隅に移動する。そこには、
「これ、使いな」
黒い鞘におさめられた、奇麗な日本刀。
「契約と行こうじゃないか」
反りと鎬をもつ湾刀。光に揺らめく銀色の刃先。その怪しい光とは裏腹に、切れ味など無い、模造刀。
子供が持つには長すぎるその刀を、ひまわりはよろよろとふらつきながら構える。
「首無しが来たら思いっきり切り付けな。私が許可する」
「分かりました……?」
いまだ状況が飲み込めていないながらも、力強く頷く。
ガチャガチャと騒がしく金属の音が近づいてくる。
そしてついにデュラハンが部屋の前に姿を現す。
「っ、やあっ!!」
その姿を確認すると、すぐさまひまわりは駆け出し、刀を振り下ろす。
キンッ
が、それはあっさりとデュラハンの持つ剣に受け止められる。そして、
「ひゃっ!?」
そのまま剣を横に振るえば、ひまわりの軽い身体はあっさりと吹っ飛ぶ。
「い、たい……?」
気がつけば、握っていたはずの刀が無い。吹っ飛ばされた拍子に離してしまったらしい。
刀を捜そうと起き上がろうとしたひまわりの前にデュラハンが立つ。
「あ……」
死ぬかもしれない。ひまわりはそう思った。
子供が持つには長すぎるその刀を、ひまわりはよろよろとふらつきながら構える。
「首無しが来たら思いっきり切り付けな。私が許可する」
「分かりました……?」
いまだ状況が飲み込めていないながらも、力強く頷く。
ガチャガチャと騒がしく金属の音が近づいてくる。
そしてついにデュラハンが部屋の前に姿を現す。
「っ、やあっ!!」
その姿を確認すると、すぐさまひまわりは駆け出し、刀を振り下ろす。
キンッ
が、それはあっさりとデュラハンの持つ剣に受け止められる。そして、
「ひゃっ!?」
そのまま剣を横に振るえば、ひまわりの軽い身体はあっさりと吹っ飛ぶ。
「い、たい……?」
気がつけば、握っていたはずの刀が無い。吹っ飛ばされた拍子に離してしまったらしい。
刀を捜そうと起き上がろうとしたひまわりの前にデュラハンが立つ。
「あ……」
死ぬかもしれない。ひまわりはそう思った。
「首無し、あんた刀に『触れた』ね?」
突如、老女が口を開く。
「そのうえ、振り下ろされてた刀を弾いて、強引に『動かした』ね?」
その口から漏れるのは、憎しみ、怒り、悲しみ。憎悪の、怨嗟の、そして、呪いの言葉。
「死者を弔う刀に何すんだい。」
周囲に満ちる、滝の音、赤ん坊の泣き声。
「「「「「『死ね』」」」」」
ガチャンッ、とデュラハンが倒れる。
突如、老女が口を開く。
「そのうえ、振り下ろされてた刀を弾いて、強引に『動かした』ね?」
その口から漏れるのは、憎しみ、怒り、悲しみ。憎悪の、怨嗟の、そして、呪いの言葉。
「死者を弔う刀に何すんだい。」
周囲に満ちる、滝の音、赤ん坊の泣き声。
「「「「「『死ね』」」」」」
ガチャンッ、とデュラハンが倒れる。
都市伝説「滝不動」。正確には「滝不動明王」。山形最凶と名高い心霊スポット。
奉納された剣に触れてはいけない、動かしてはいけない。死者を蔑ろにする者に呪いあれ。
奉納された剣に触れてはいけない、動かしてはいけない。死者を蔑ろにする者に呪いあれ。
「大丈夫かい?」
老女がひまわりに尋ねる。
「あ、はい。大丈夫で、す……?」
結局、何が何だか分からぬまま、ひまわりは答えた。
「それなら、さっさと起きな。これから忙しくなるよ。
都市伝説について、契約について、私の事、戦い方、いろいろ教える事が多そうだ」
何故か楽しそうな老女を見ながら、ひまわりは自分の人生が大きく変わっていくような感じがした。
老女がひまわりに尋ねる。
「あ、はい。大丈夫で、す……?」
結局、何が何だか分からぬまま、ひまわりは答えた。
「それなら、さっさと起きな。これから忙しくなるよ。
都市伝説について、契約について、私の事、戦い方、いろいろ教える事が多そうだ」
何故か楽しそうな老女を見ながら、ひまわりは自分の人生が大きく変わっていくような感じがした。
終