「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 迷いの森の少女

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匿名ユーザー

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夜、人気のない薄暗い通りに、少女が一人立っていた。
夜の闇に溶け込む少女の黒い服が、都市伝説関係者ならよく知る「組織」の人間だと告げていた。
「そですかぁ。ここで待ってたら良いんですねぇ?はい~、またよろしくお願いしますですよぉ」
そう言って小さい手が携帯電話を顔から離す。
同時に揺れた奇麗な金髪が、月の光を反射してキラキラと輝く。
その奇麗な髪の先は、くるぶしまで伸び、そのまま気にせずに歩き回っているのか、泥や埃でだいなしになっていた。
「そろそろですかねぇ」
少女がそう呟くと同時、建物の隙間から通りに男が飛び込んでくる。
息を切らせながら、走っていた男は、少女に気がつき、
「っ!?」
足を止める。
「…………組織か」
「そですよぉ。貴方は裏切り者さんですよねぇ?」
「違うと言ったら?」
「嘘はいけないと思いますですよぉ」
男は組織に所属する契約者だった。
しかしある日、任務を拒否し黒服を攻撃し、逃亡した。
「任務で殺すはずだった契約者が、俺の彼女だったんでな」
「そですかぁ。くだらない理由ですねぇ」
「くだらない?……ふん、所詮は黒服か。感情を理解できんらしい」
興味なさそうな少女に、男は吐き捨てるように言う。
そうして、二人は睨み合った。いや、正確には睨んでいたのは男だけで、少女は眠たげな目を向けていただけだが。
「……で?」
しばらくの沈黙の後、男が口を開く。
「俺の愛しの彼女は何処だ」
「それは私の担当ではないので、知りませんですよ」
組織は、一般人に危害を加える都市伝説や契約者と戦う。
組織が、男の恋人を攻撃したという事は、恋人に何か問題があったということで。男が任務を放棄したからといって、恋人への攻撃が止むわけではない。
そしてもう一つ、過激派と呼ばれる組織の派閥の一つは、裏切り者を許さない。
「俺は彼女を捜さにゃならん。どいてくれ」
「嫌だと言ったらどうなるんでしょうかぁ」
「それなら、力づくだ」
そう言って男はペットボトルを取り出す。中身はコーラ。
コーラの原液の入ったタンクに落ちた従業員が、あっという間に溶けた。
そんな都市伝説がある。コークロアというものだ。
男はその契約者であった。
そして、契約によって拡大解釈され得た能力により、
ペットボトルが、溶けた。
男の周囲をコーラが飛び回る。
あらゆる物を溶かす。そんなコーラを操る能力を男は持っていた。
「やる気満々ですねぇ。ですがぁ……私は痛いのは嫌いなのですよぉ」
少女がやる気なさげに、そう言うと男の周囲に、
草が生えた。
「………………は?」
一瞬、男は我が目を疑った。
周囲が森になっている。
「……異世界に閉じ込めるタイプの能力か!?」
「少し違いますですよぉ」
薮の向こうから、少女の声が聞こえてくる。
その声が聞こえてすぐ、男は声の方向へコーラを飛ばす。
コーラに溶かされ、薮が無くなり、少女の姿が見えるようになる。
そして、コーラは少女に当たる事なく、地面に落ちた。
「……?」
その光景に、男は疑問を覚える。
少女に向けて操っていたコーラが勝手に地面に落ちた。
男は地面に落ち、地面を溶かしているコーラを操り、再び少女に向けて操る。
けれど、コーラは少女に当たる事なく、見当外れな草木や地面に着弾した。
「なんだ?どうなってる?」
「せっかちは嫌われますですよぉ」
「五月蝿い!」
理由は知らないが、この空間では上手くコーラを操れないらしいと判断した男は、少女に向かって歩きだす。
当たらないならば、直接かけてやれば良い、そう考えて。
「………………???」
そう考えて、男は少女に近づいたはずだ。
何故、自分は少女に背を向けて歩いているのか。奇妙な出来事に男は足を止める。
「異世界に閉じ込める能力だと思っているようですがぁ」
戸惑う男を尻目に、少女はのんびりと喋る。
「たしかに、ここは異空間ですが、閉じ込めたりはしてないですよぉ」
周囲をよく見れば溶かした薮の合間から、微かに先程までいた通りが見える。
分かった事は二つ。
一つ、ここは先程の通りと同じ場所。この空間自体は異空間だが、端まで行けば通りに出るだろう。
一つ、この空間はさほど広くない。幅20メートルも無いだろう。森と言うよりただの薮だ。
分からない事は二つ。
一つ、いくら少女を攻撃しようとしても、いくら少女に近づこうとしても、何故か関係の無い場所を目指している。
一つ、先程から随分と歩き回っているのに、全くこの広くないはずの空間の端に着かない。
「まさか、これは千葉の…………?」
「おや、分かってしまいましたかぁ」
何か気がついた様子の男を見ながら、少女は言う。

千葉県に、一つの心霊スポットがある。
古くから禁足地とされる場所。
「足を踏み入れると二度と出てこられなくなる」という伝承。
「八幡の藪知らず」と呼ばれる神隠しの森。

それが、少女の都市伝説
『不知八幡森』

「能力は簡単に言うと、『道に迷わせる』ですよぉ。この森はおまけですねぇ」
「俺の攻撃が当たらないのは……?」
「攻撃が『道に迷った』からですよぉ」
男の問いに簡単に答え、少女は欠伸を一つする。
「ん~、私はもうおねむの時間ですので、帰りますですよぉ。
 貴方も、彼女が心配なら会いに行けば良いですよぉ」
自分の能力で男をこの森から出れなくしているのに、そんな事を言って、少女は長い髪を引きずりながらふらふらと森の外へ歩く。
「まっ、待て!おい!」
「あ、そうでした」
男の呼びかけではなく、何かを思い出し、少女は立ち止まる。
「この森、そのうち毒ガスがでますから、長居しない方が良いと思いますですよぉ」
「な……おい!待ちやがれ!」
男が少女を追って、何故か逆走している事に気がついたの時には、すでに少女の姿は見えなくなっていた。

「みゃー」
「おや、猫さん。こんばんはですよぉ」
よって来た猫に挨拶をして、少女はふらふらと歩く。
「おぉ?」
マナーモードの携帯電話の震えに気がつき、少女は足を止める。
「はい~?おや、こんばんはですよぉ」
電話の相手は、組織の仲間。内容は、
「そですかぁ。終わりましたですかぁ」
男の恋人の討伐が終了したという報せ。
「どうせ、間に合いませんでしたねぇ」
電話を切り、そんな事を呟く。
「おぉ?おおぅ、」
気がつけば、猫が少女の長い髪にじゃれて遊んでいた。
「痛いのは嫌いなのですよぉ」
少女は猫を抱え上げ、髪から離す。
「みゃあ」
「あの契約者には、能力で小動物を虐待する趣味がありましたですよぉ」
猫を見ながら、誰に言うでもなく少女は呟く。
「そんな女を恋人だからと庇っていましたですよぉ。恋だの愛だのと、迷惑な話ですねぇ」
「みゃ?」
「猫さんも標的になっていたかもしれないという話ですよぉ」
「みー?」
「助けたお礼に帰り道を教えてくれたりしませんでしょうかぁ」
猫を抱きながら、少女はふらふらと歩く。
「迎えがないと帰れないのですが、まだ来ませんですよぉ」
人通りのない道と、草木に覆われた薮の二つの光景が重なった視界で、少女は歩く。
「…………迎えが来るまで寝てましょうかぁ」
一人で帰るのを早々に諦めたようだ。

夜、人気のない薄暗い通りに、少女が一人立ったまま寝ていた。
森から出れず、森ごと移動し、自身の能力の影響で常に道に迷う。
かわいらしい少女の森には、何十人もの死体が転がり、今日も数人、さ迷っている。

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