【雪姫】
「本日は戦後始めての大寒波がこの夜刀浦市を……」
男はリモコンを押してテレビを消す。
寒いのは知っている。
聞き飽きたそのニュースに彼はうんざりしていた。
チャイムが鳴る。
寒いのは知っている。
聞き飽きたそのニュースに彼はうんざりしていた。
チャイムが鳴る。
「はーい?」
こんな日にわざわざ一人暮らしの男性を尋ねる人間なんて誰なのだろうか?
彼は覗き窓からドアの外を眺める。
迫る灰色の塊。
避ける暇もなく迫る、迫る、迫る。
ぷつりと潰された眼球、眼窩を抜けて走る白刃。
何をすることも出来ずに彼は死んだ。
彼は覗き窓からドアの外を眺める。
迫る灰色の塊。
避ける暇もなく迫る、迫る、迫る。
ぷつりと潰された眼球、眼窩を抜けて走る白刃。
何をすることも出来ずに彼は死んだ。
「すまん」
刀の持ち主は静かに頭を下げる。
口元に巻いたマフラーを外して彼は自分の背後に向けて声をかける。
口元に巻いたマフラーを外して彼は自分の背後に向けて声をかける。
「由紀、こいつを食え」
「はい」
男の背後から青白い顔をした和服の女性があらわれて、まだ暖かい死体に息をふきかける。
あっという間に死体は凍りつき、男は死体から刀を引きぬく。
雪女は男の指示通りに女性の首筋に食らいつき、凍りついた肉を引きちぎり咀嚼し嚥下する。
口元からはゆるゆると血を流し、白い着物を紅く染めてしまう。
目には恍惚の色が浮かび、柔らかな肉の迸りに頬が紅潮する。
そんな雪女の様子を見て男は静かに頷く。
あっという間に死体は凍りつき、男は死体から刀を引きぬく。
雪女は男の指示通りに女性の首筋に食らいつき、凍りついた肉を引きちぎり咀嚼し嚥下する。
口元からはゆるゆると血を流し、白い着物を紅く染めてしまう。
目には恍惚の色が浮かび、柔らかな肉の迸りに頬が紅潮する。
そんな雪女の様子を見て男は静かに頷く。
「おいお前たち、なにをやっているんだ?」
男の背後からぬるりと現れる黒服。
男は驚きもしないで質問を返す。
男は驚きもしないで質問を返す。
「そういうあんた達こそ何者だ?」
黒服はドアの隙間に広がる情景を見て全てを察する。
「自らの都市伝説に人間を食わせて回っている契約者の存在を許す訳にはいかない」
黒服の右手が赤く燃える。
灯る焔、巡る火炎、黒服が契約した都市伝説の名前は“火車”。
雪女にとっては天敵である炎を操る都市伝説。
灯る焔、巡る火炎、黒服が契約した都市伝説の名前は“火車”。
雪女にとっては天敵である炎を操る都市伝説。
「死ぬがよい」
男はとっさに民家のドアを閉めて雪女を扉の向こうに逃がす。
しかし至近距離から尽きぬ業火が刀を持った男に降り注ぐ。
男は躱すことも出来ずにその直撃を受けた。
しかし至近距離から尽きぬ業火が刀を持った男に降り注ぐ。
男は躱すことも出来ずにその直撃を受けた。
「……ふん、容易い任務だ――――――」
炎の中から白刃が伸びる。
黒服の腹を掠り鮮血を豪雪の中に散らす。
黒服の腹を掠り鮮血を豪雪の中に散らす。
「……惜しいな」
「くっ!?何故耐えられたんだ!」
「ユニチカ、トレカ、これが何か解るか?
耐熱繊維だよ、炎での攻撃は良くされるからな」
耐熱繊維だよ、炎での攻撃は良くされるからな」
男は瞬時に黒服の後ろに回り、彼の背中を斬りつける。
反撃に炎が舞うが一度動き出した男はまるで影のように消えては現れて動きを捉えることができない。
反撃に炎が舞うが一度動き出した男はまるで影のように消えては現れて動きを捉えることができない。
「しかし雪女の契約者ならばそれでも炎には……!?」
「俺は」
黒服の胸から刀が生える。
次の刹那、黒服の首が飛ぶ。
ゴムマリのように飛んだ首が最高点まで辿り着く前に黒服の両腕が見事に胴と物別れする。
男は足だけになった遺体を思い切り蹴り飛ばす。
次の刹那、黒服の首が飛ぶ。
ゴムマリのように飛んだ首が最高点まで辿り着く前に黒服の両腕が見事に胴と物別れする。
男は足だけになった遺体を思い切り蹴り飛ばす。
「契約者ではない」
吐き捨てるようにそう言って男はドアを開ける。
雪女が飛び出すように出てきて男に抱きつく。
雪女が飛び出すように出てきて男に抱きつく。
「契約者だったら……こんなことをする必要もなかったんだがな」
彼女に聞こえないように男は小さく呟いた。
「行くぞ」
「はい」
刀を鞘に収めると男はそのまま歩き出す。
はるか遠くには何人かの黒服たち。
はるか遠くには何人かの黒服たち。
「……面白い」
「何故貴方は」
感情の感じられない声で雪女が尋ねる。
「何故貴方は私に固執するのですか?」
「お前など心底どうでもいい」
「では何故契約すらできぬ貴方が私を守ろうと……」
「お前を本当に守りたいなら契約でもしてヒトクイをやめさせればいい
俺はただ待っているだけだ……」
俺はただ待っているだけだ……」
近づいてきた黒服の男たちが光線銃を構える。
蛇のように低い姿勢で光線を回避するとそのまま最速最短で彼らの側に近寄り、黒服達を真っ二つにする。
蛇のように低い姿勢で光線を回避するとそのまま最速最短で彼らの側に近寄り、黒服達を真っ二つにする。
「切る相手が現れるのを」
カチン、と刀を納めると同時に黒服の身体は真っ二つになる。
「俺は……ただ待っているんだ、お前はそれまでの役に立つ暇つぶし道具だ
この街には切り刻みがいのある敵が居る、そいつを見つけるまで俺は動かない」
この街には切り刻みがいのある敵が居る、そいつを見つけるまで俺は動かない」
男はため息を吐く。
「さて、なんでお前は俺の顔をまじまじと見ているんだ?」
「へ?いや、なんでもないです。なんでもないですよ」
男はまだ知らない。
雪女が契約をした所で人食いをやめられないかもしれないことを。
男はまだ知らない。
雪女が男に心惹かれてしまっていることを。
雪女が契約をした所で人食いをやめられないかもしれないことを。
男はまだ知らない。
雪女が男に心惹かれてしまっていることを。
「さて、今日の宿を探すか」
「お金が……」
「適当に殺して奪うか、奪うかすれば良いだろう」
都市伝説による食人と、人間による殺人、別々に行われる事件故、手が出しづらい。
かくして魔剣士と雪姫は今日も旅を続けるのであった。
かくして魔剣士と雪姫は今日も旅を続けるのであった。
【雪女 おしまい】