雨
乾いた大地に潤いを与える恵み
しかし、それは時として
乾いた大地に潤いを与える恵み
しかし、それは時として
「・・・んむっ」
「ふあっ・・・はぁう・・・」
「ふあっ・・・はぁう・・・」
誰にも見られたくない秘密を隠してくれる
ここはとある公園
そのベンチに、たった1つの七色の傘を差してベンチに座っているのは、
カップルとは言い難い小学校低学年程の少年と少女
なのに雨の日とはいえ真昼間から濃厚なキスを交わしているのだから最近の子供はませ過ぎている
ここはとある公園
そのベンチに、たった1つの七色の傘を差してベンチに座っているのは、
カップルとは言い難い小学校低学年程の少年と少女
なのに雨の日とはいえ真昼間から濃厚なキスを交わしているのだから最近の子供はませ過ぎている
「て、天架ぁ・・・」
「天美・・・んっ」
「天美・・・んっ」
互いの名を呼び合いながら、ねっとりと口を重ねている2人
ただ、おかしいのは年齢だけではない
よく見ればこの2人――――顔が、瓜二つである
髪を1つに纏めているか2つに分けているかの違いを除けば、
まるで鏡の中の自分と接吻をしているかのように錯覚させる、不可思議な光景
そう、2人――天架 と天美 は一卵性双生児の兄妹だ
ただ、おかしいのは年齢だけではない
よく見ればこの2人――――顔が、瓜二つである
髪を1つに纏めているか2つに分けているかの違いを除けば、
まるで鏡の中の自分と接吻をしているかのように錯覚させる、不可思議な光景
そう、2人――
「て、天架ぁ、き、キスが長すぎるよぉ」
「良いじゃん、久しぶりなんだから。それに、天美があまりにも可愛いからさ」
「もぉ、天架ったら・・・天架も、かっこいいよ?」
「天美ぃ♪」
「天架ぁ♪」
「良いじゃん、久しぶりなんだから。それに、天美があまりにも可愛いからさ」
「もぉ、天架ったら・・・天架も、かっこいいよ?」
「天美ぃ♪」
「天架ぁ♪」
双子が互いを抱きしめる
ところで、ギリシャ神話にはナルキッソスという、水面に映った自分に恋をしてしまった少年の話があるのだが、
果たしてこの双子とどちらがナルシストなのだろうか
ところで、ギリシャ神話にはナルキッソスという、水面に映った自分に恋をしてしまった少年の話があるのだが、
果たしてこの双子とどちらがナルシストなのだろうか
「・・・ねぇ、」
ちら、と横目にやったのは天架だった
「さっきから何ジロジロ見てんの?」
視線の先には、雨でびしょ濡れになった、マントを羽織った男が立っていた
シルクハットを目深に被ったその男は、
シルクハットを目深に被ったその男は、
「っと・・・やっと気づいてもらえた・・・」
何故か、泣いていた
「さっきからずっと『赤いマント好きか』『青いマント好きか』って聞いてるのに無視されるし・・・
しかもガキの癖に堂々とイチャイチャやってるし・・・何なのよもう・・・」
「天架、この人怖い」
「大丈夫だよ天美、俺がついてるから」
「えぇい、まだやるか!? 情熱の赤ってことで良いから、血塗れにでもなってろ!!」
しかもガキの癖に堂々とイチャイチャやってるし・・・何なのよもう・・・」
「天架、この人怖い」
「大丈夫だよ天美、俺がついてるから」
「えぇい、まだやるか!? 情熱の赤ってことで良いから、血塗れにでもなってろ!!」
マントの男――「赤マント青マント」は、マントの中から右手に4本、左手に4本、計8本のナイフを取り出した
それを見て、叫び声をあげたり逃げ出したりするのが普通なのだが
それを見て、叫び声をあげたり逃げ出したりするのが普通なのだが
「あーぁ、折角誰も来ないように雨“降らせた”のになー」
「て、天架・・・」
「分かってるよ天美。行くぞ!」
「うん!」
「て、天架・・・」
「分かってるよ天美。行くぞ!」
「うん!」
すくっ、と立ち上がり、2人は同時に天に向けて手を挙げる
「ん、何だ? どうするつもりだ?」
「来い!」
「来て!」
「「「虹蛇」ぃ!!」」
「来い!」
「来て!」
「「「虹蛇」ぃ!!」」
叫んだ瞬間だった
先程まで降っていた雨が止み、雲の切れ間から陽光が差した
そして、空の彼方から、低い咆哮と高い咆哮が、重なって轟いた
先程まで降っていた雨が止み、雲の切れ間から陽光が差した
そして、空の彼方から、低い咆哮と高い咆哮が、重なって轟いた
「っな、何だあれは!?」
太陽を背にしなやかにうねりながら飛翔してきたのは、2頭の龍だった
赤、橙、黄、緑に輝く龍
緑、青、藍、紫に煌く龍
2頭は仲睦まじく、円を描くようにその場を飛んでいた
赤、橙、黄、緑に輝く龍
緑、青、藍、紫に煌く龍
2頭は仲睦まじく、円を描くようにその場を飛んでいた
「っへへ、こいつは「虹蛇」って言ってな、天気を操る龍なんだ!」
「赤い雄の龍、紫の雌の龍の、2人で1つの都市伝説・・・私と天架みたい」
「全くぅ、天美は可愛いなぁ♪」
「天架だってぇ♪」
「いい加減にしろ!!」
「赤い雄の龍、紫の雌の龍の、2人で1つの都市伝説・・・私と天架みたい」
「全くぅ、天美は可愛いなぁ♪」
「天架だってぇ♪」
「いい加減にしろ!!」
切れた「赤マント青マント」は、両手に構えたナイフを投げた
が、それらは「虹蛇」が振るった鞭のような尻尾で残らず弾き飛ばされた
が、それらは「虹蛇」が振るった鞭のような尻尾で残らず弾き飛ばされた
「っち・・・」
「おいおい、「虹蛇」を怒らせるとどうなるか知らないの?」
「ッ!?」
「おいおい、「虹蛇」を怒らせるとどうなるか知らないの?」
「ッ!?」
直後、二重の咆哮が響き渡り、陽の光が雲によって遮られ、
今度は稲光が一帯を眩く照らした
「虹蛇」は天気を司る神獣
彼らの大いなる怒りは、天災となって具現化される
今度は稲光が一帯を眩く照らした
「虹蛇」は天気を司る神獣
彼らの大いなる怒りは、天災となって具現化される
「ば、馬鹿な――――――――――――」
勝負は一瞬で決まった
耳を劈くような雷鳴と共に、「赤マント青マント」の頭上から巨大な雷が落とされた
雷の速さは光と同じ、ならそれを回避することは―――無論、不可能
目が眩む程の一閃が消えると、その後には消し炭すら残っていなかった
耳を劈くような雷鳴と共に、「赤マント青マント」の頭上から巨大な雷が落とされた
雷の速さは光と同じ、ならそれを回避することは―――無論、不可能
目が眩む程の一閃が消えると、その後には消し炭すら残っていなかった
「ふんっ、俺達を怒らせるからこうなるんだ」
「ありがとう、「虹蛇」達」
「ありがとう、「虹蛇」達」
天美が手を振ると、それに答えるように2頭の「虹蛇」も優しげに吼え、
青空に浮かぶ雲に向かってうねりながら翔けていった
青空に浮かぶ雲に向かってうねりながら翔けていった
「・・・さて、天美」
「うん、続き・・・やろっか♪」
「うん、続き・・・やろっか♪」
と、天架と天美は再びベンチに座り、顔を徐々に近づけ目を瞑り、熱いキスを交わす―――
「はいはいはーい、そこまででーす」
―――その前に届いた声に、2人は驚いて顔をそちらに向けた
閉じられた黒い傘を振り回しながら歩み寄る、黒尽くめの高校生くらいの少年
閉じられた黒い傘を振り回しながら歩み寄る、黒尽くめの高校生くらいの少年
「「あ、お父さん!?」」
「全くお前らは、双子の兄妹の癖に何やってんだ」
「う、うるさい!お父さんとお母さんよりはマシだよ!」
「俺と母さんは結婚してるからイチャイチャラブラブちゅっちゅしててもいいの!
兄弟姉妹は結婚できないだろうが!」
「い、いいもん、結婚できなくても、私は天架のことが好きだもん!」
「それに、『例え兄弟姉妹でも同性でも、好きだって思うことは大切だ』っていっつも言ってるじゃん!」
「ぐっ・・・そ、それを言われると何とも言いがたいんだけど
まぁ俺は良いんだよ、でも母さんがちょっと気になってるみたいでなぁ、仲が良すぎるって
いやいやそんなこと言いに来たんじゃねぇんだよ、昼飯だから早く帰って来い」
「えー!? 今から天美とちゅーするところなのに!?」
「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、お父さん待って!」
「ダメ!ゼッタイ! 寝る時に布団の中でコソコソとやりなさい!」
「「はぁーい」」
「全くお前らは、双子の兄妹の癖に何やってんだ」
「う、うるさい!お父さんとお母さんよりはマシだよ!」
「俺と母さんは結婚してるからイチャイチャラブラブちゅっちゅしててもいいの!
兄弟姉妹は結婚できないだろうが!」
「い、いいもん、結婚できなくても、私は天架のことが好きだもん!」
「それに、『例え兄弟姉妹でも同性でも、好きだって思うことは大切だ』っていっつも言ってるじゃん!」
「ぐっ・・・そ、それを言われると何とも言いがたいんだけど
まぁ俺は良いんだよ、でも母さんがちょっと気になってるみたいでなぁ、仲が良すぎるって
いやいやそんなこと言いに来たんじゃねぇんだよ、昼飯だから早く帰って来い」
「えー!? 今から天美とちゅーするところなのに!?」
「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、お父さん待って!」
「ダメ!ゼッタイ! 寝る時に布団の中でコソコソとやりなさい!」
「「はぁーい」」
渋々返事をすると、『お父さん』と呼ばれた少年は満足そうに頷き、
2人を連れて影の中に入っていった
2人を連れて影の中に入っていった
(・・しっかし、あの「虹蛇」を2人で契約する辺りは流石俺とミナワの子だよなぁ)
...fin