「大人しくしていろ。悪いようにはしない」
サングラスをかけた黒いスーツの男が、感情の籠らない無機質な声で言い放つ
周りにも同じような男女が数名
何れもその手には、SFでよく見かけるような形の光線銃が握られていた
周りにも同じような男女が数名
何れもその手には、SFでよく見かけるような形の光線銃が握られていた
「そんな物騒なもん向けといて、よくそんなことが言えるわねぇ?」
標的となっている真っ赤なワンピースの少女は、皮肉たっぷりにそう言った
セミショートの黒髪を彩るのは、一輪の真っ赤なツバキの花
セミショートの黒髪を彩るのは、一輪の真っ赤なツバキの花
「上層部からの命令だ。お前を捕らえるか、ここで殺せと」
引き金に指をかける黒服達
少女はくすっ、と小さく笑うと、ツバキの花を手に取って、
少女はくすっ、と小さく笑うと、ツバキの花を手に取って、
「馬鹿な人達ね……おいで、カメリア」
ひょい、とそれを己の目の前に投げた
刹那の間に投げられたツバキの花は形を変え、質量を変え、蠢き始め、
全長3メートル程の木の怪物へと変貌する
幹は胴、枝は手、根は足、洞は口
さやぐ緑の髪には、沢山の真っ赤なツバキの花が咲き誇っていた
カメリア―――そう呼ばれたツバキの怪物は、一瞬にして一人の黒服に接近し、腕を振るった
そして一人、また一人とすれ違い様に襲い掛かる
ぼとり、ぼとり、身体から離れたツバキの花が、紅い汁を零しながら地に落ちた
刹那の間に投げられたツバキの花は形を変え、質量を変え、蠢き始め、
全長3メートル程の木の怪物へと変貌する
幹は胴、枝は手、根は足、洞は口
さやぐ緑の髪には、沢山の真っ赤なツバキの花が咲き誇っていた
カメリア―――そう呼ばれたツバキの怪物は、一瞬にして一人の黒服に接近し、腕を振るった
そして一人、また一人とすれ違い様に襲い掛かる
ぼとり、ぼとり、身体から離れたツバキの花が、紅い汁を零しながら地に落ちた
「雑草を撤去しろ」
仲間の死に悲しむ様子も無く、残った黒服達は光線銃で怪物を狙い撃つ
発射された光条は、植物であるカメリアの身体を穿ち、貫く
発射された光条は、植物であるカメリアの身体を穿ち、貫く
「……ねぇカメリア、聞いた? カメリアのこと、『雑草』だ、って……」
少女が声を震わせながらカメリアに声をかける
抉れたカメリアの身体が見る見る内に元通りになり、
それどころか全体が大きくなり、花も一層咲き乱れる
抉れたカメリアの身体が見る見る内に元通りになり、
それどころか全体が大きくなり、花も一層咲き乱れる
「…許せないよねこんな人達!! こんな奴ら、ここで死んで“皆”のご飯にしちゃおうよ!!」
ぽと、とカメリアから落ちる3つのツバキの花
実る3つの果実は徐々に熟してゆき、3体の骸の上に落とされる
実る3つの果実は徐々に熟してゆき、3体の骸の上に落とされる
「さあ、ご飯だよ。沢山食べて、元気に育ってね」
果実は腐敗し種は芽を出し根を張り、骸を覆い尽くす
「御馳走はまだまだ沢山あるから、焦らなくても大丈夫だよ」
ミイラ化した骸とは対照的にツバキはすくすくと育ち、立派な木へと成長を遂げる
「どうせまた馬鹿な人達が沢山殺しに来るからね…その人達を食べちゃったら良いんだから」
木は尚も成長を続け、僅かに元気が無くなった
かと思えば、カメリアよりも小型だが、同じように根が足となり、枝が腕となり、ツバキの花がぽつぽつと咲き始めた
底の見えない不気味な樹洞は、あたかも笑っているかのように見えた
かと思えば、カメリアよりも小型だが、同じように根が足となり、枝が腕となり、ツバキの花がぽつぽつと咲き始めた
底の見えない不気味な樹洞は、あたかも笑っているかのように見えた
「私の大事なカメリアを馬鹿にした奴等を……ぐちゃぐちゃにしてあげて♪」
さく、さく、花がさく
あっちでさいて、こっちでさいて
真っ紅な花がさき乱れ
出来上がった、鮮やかな紅いお花畑
あっちでさいて、こっちでさいて
真っ紅な花がさき乱れ
出来上がった、鮮やかな紅いお花畑
「酷いよね、人間って………人が傷つく事、平気で言うもん」
少女が物哀しげに呟くと、彼女は背後から若葉の生えた手で包み込まれた
骸の内臓を貪る怪植物からカメリアへと視線を移すと、少女はその腕のような枝を恍惚とした表情で抱きしめた
骸の内臓を貪る怪植物からカメリアへと視線を移すと、少女はその腕のような枝を恍惚とした表情で抱きしめた
「でも貴方達は違う…私の言う事は何でも聞いてくれるし、守ってくれる……それにこんなに温かい……
人間なんて大ッ嫌いなの………私には、貴方達しか考えられない……」
人間なんて大ッ嫌いなの………私には、貴方達しか考えられない……」
持ち上げられ、彼女はカメリアの胴体にあたる幹にしがみついた
身体全体をぴったりと幹につけて、僅かに腰を上下に動かしている
身体全体をぴったりと幹につけて、僅かに腰を上下に動かしている
「はぁっ……ずっと傍にいて、カメリア……私、貴方の事が…………好き♪」
少女はそっと、カメリアに口付けした
...終