僕が契約している都市伝説は『ドッペルゲンガー』だ。
といっても、民間伝承のあれじゃない。
ネット上の都市伝説で、ネトゲで自分と同じ名前、服装のキャラが走り回っているというれっきとした都市伝説だ。
初めて出会った時は、少し不気味だった。
何しろ自分と同じ顔、服装にも関わらず、体型が女だったからだ。
どうやらこのドッペルゲンガー、都市伝説に飲み込まれた元契約者らしい。
「……で人間だった時の性別が女だった、と」
『ソウデス』
僕の呟きに反応して、携帯電話に文字が書き込まれる。
彼女はネット上の都市伝説なので、こうした端末ごしにコミュニケーションが取れる。
いや、本当は普通に現実に出てきて会話したり、触れ合ったりできるんだけど、気持ち悪いから止めさせた。
周りに能力を使う対象が誰もいない時にネットから出てきた彼女は、どうしても女体型の「僕」になってしまうからだ。
「完全に僕になるか、別の女の子になるかしてくれたら良いんだけどね」
『ゴメンナサイ』
「まあ、今のままでも問題ないから良いけど」
『ワタシハ イヤデス。アイタイ』
「そんな事言っても……」
彼女は現実に出て来ないように言った時、凄く残念そうな顔をしていた。
どうやら、僕はずいぶんと気に入られたらしい。
それがまた、気持ち悪かった。自分と同じ顔が、抱き着いてきたり、添い寝しようとしてきたりするのだ。
思い出すたびに寒気がする。
「いっけないんだぁ」
「っ!?」
突然、後ろから声をかけられて、驚く。
「学校で携帯使ったら駄目なんだよぅ?」
「あ、えと、藤森さん?なんで、ここに?」
「うちのクラスの不良生徒さんが、立入禁止の屋上に向かっていたのが見えたからねぇ。
クラス委員として注意せねばっ!と思ったのですよ」
笑顔でそう言いながら藤森さんがくるくると回る。そうすると、腰まで伸びた髪がふうわりと浮き上がる。
うん、可愛い。
「そういえば、屋上って鍵かかってないんだね。初めて知ったよ」
「あ、うん、まあね」
僕が勝手に鍵を拝借しただけなんだけどね。
「それじゃ!注意もしたから戻るね!」
そう言って、楽しそうに藤森さんは走っていく。
嵐のような人だ。
「チャイムまでには戻るのよー」
階段を駆け降りる音とともにそんな声が、だんだん小さくなっていく。
「残念」
もう少し、一緒にいたかった。せっかく二人きりになれたんだし。
可愛いかったな。
『ソロソロ ツギノジュギョウデス』
携帯を見ると、そんな事が書いてあった。
「そうだね、僕も戻ろうか」
次は英語だったはずだ。
今日の日付と僕の出席番号から、当てられないだろうから、寝よう。
そう思いながら、階段に向かった時、
「ひやぁぁぁあぁぁ!?」
力の抜ける悲鳴を上げながら、藤森さんが戻ってきた。
その後ろから、
「トン、トン、トンカラ、トン」
全身に包帯を巻いた集団が現れた。
「トンカラトン!?何でこんなとこに!?っ、多いし!?」
五人や六人じゃない。三十人以上いる。
まさかとは思うけど、ここに来る前にクラスを一つ襲撃してきたんだろうか。
「何?何なの!?この人達誰さぁ!?」
藤森さんが半泣きになりながら、僕の側に立つ。
震えていて可愛い。
「大丈夫だよ。僕が守るから」
「え?え?あ、危ないよ?」
これは、良い所を見せるチャンスだ。
「「「「トンカラトンと言え」」」」
包帯集団の何人かがそう言う。けれど、何人かは口を開かない。
言っても言わなくても、襲われる。
なら、戦うしかない。
「いくよドッペルさん」
『リョウカイデス』
そうして、携帯の画面から、包帯の男が現れた。
「ひゃ!!?」
それを見て、藤森さんが悲鳴をあげる。
「大丈夫だよ」
画面から現れたのは一人ではない。二人、三人と次々に現れる。
『ドッペルゲンガー』の能力なんてものは、だいたい想像がつく。
名前も姿も能力も同じに、彼女がなる事か、
名前も姿も能力も同じ、敵のコピーを作る事だ。
何も言わず、次から次へと「トンカラトン」作る僕を見て、敵と判断したらしく、トンカラトン達が刀を構え、走ってくる。
それに呼応するように僕の「トンカラトン」も走りだす。
そして、乱戦が始まる。
能力が同じな以上、勝負は引き分けになりやすい。一対一でなら。
僕の能力は、同じコピーを二、三体作る事ができる。
敵が三十人いるなら六十体のコピーを作れば良い。実力が同じなら、数の多い方が勝つ。
「と、思ったけど」
それをするには屋上が狭い。
屋上全体で戦っては、藤森さんが巻き込まれる。
「仕方ない。こじ開けるよ」
『リョウカイデス』
藤森さんを避難させる。
その為には乱戦の中を突っ切り、屋上から出る階段まで行かなければならない。
「もぅ……何なのよぅ……」
「行くよ!」
呆然としていた藤森さんの腕を掴み、
「…………え?」
藤森さんの戸惑ったような声を背に走りだす。
「トンカラトン」がトンカラトンを強引に押しやり、隙間を作る。
そこに僕達が滑り込む。
その間に、別の「トンカラトン」がまた隙間を作る。
何度か「トンカラトン」を突破してきたトンカラトンを新たなコピーで回避しつつ、階段へたどり着く。
屋上には僕の「トンカラトン」の方が多く、決着がつくのは時間の問題だった。
それなら、僕はここにいなくても問題は無い。
それより、藤森さんを安全な場所まで送りとどけないと。まだ、校内にトンカラトンがいるかもしれない。
僕は、汗の滲んだ、震える藤森さんの腕をしっかりと握り直す。
「大丈夫。僕が一緒だから」
そう言って振り返ると、
「はい、一緒です」
彼女は、楽しそうに笑いながらそう言った。
といっても、民間伝承のあれじゃない。
ネット上の都市伝説で、ネトゲで自分と同じ名前、服装のキャラが走り回っているというれっきとした都市伝説だ。
初めて出会った時は、少し不気味だった。
何しろ自分と同じ顔、服装にも関わらず、体型が女だったからだ。
どうやらこのドッペルゲンガー、都市伝説に飲み込まれた元契約者らしい。
「……で人間だった時の性別が女だった、と」
『ソウデス』
僕の呟きに反応して、携帯電話に文字が書き込まれる。
彼女はネット上の都市伝説なので、こうした端末ごしにコミュニケーションが取れる。
いや、本当は普通に現実に出てきて会話したり、触れ合ったりできるんだけど、気持ち悪いから止めさせた。
周りに能力を使う対象が誰もいない時にネットから出てきた彼女は、どうしても女体型の「僕」になってしまうからだ。
「完全に僕になるか、別の女の子になるかしてくれたら良いんだけどね」
『ゴメンナサイ』
「まあ、今のままでも問題ないから良いけど」
『ワタシハ イヤデス。アイタイ』
「そんな事言っても……」
彼女は現実に出て来ないように言った時、凄く残念そうな顔をしていた。
どうやら、僕はずいぶんと気に入られたらしい。
それがまた、気持ち悪かった。自分と同じ顔が、抱き着いてきたり、添い寝しようとしてきたりするのだ。
思い出すたびに寒気がする。
「いっけないんだぁ」
「っ!?」
突然、後ろから声をかけられて、驚く。
「学校で携帯使ったら駄目なんだよぅ?」
「あ、えと、藤森さん?なんで、ここに?」
「うちのクラスの不良生徒さんが、立入禁止の屋上に向かっていたのが見えたからねぇ。
クラス委員として注意せねばっ!と思ったのですよ」
笑顔でそう言いながら藤森さんがくるくると回る。そうすると、腰まで伸びた髪がふうわりと浮き上がる。
うん、可愛い。
「そういえば、屋上って鍵かかってないんだね。初めて知ったよ」
「あ、うん、まあね」
僕が勝手に鍵を拝借しただけなんだけどね。
「それじゃ!注意もしたから戻るね!」
そう言って、楽しそうに藤森さんは走っていく。
嵐のような人だ。
「チャイムまでには戻るのよー」
階段を駆け降りる音とともにそんな声が、だんだん小さくなっていく。
「残念」
もう少し、一緒にいたかった。せっかく二人きりになれたんだし。
可愛いかったな。
『ソロソロ ツギノジュギョウデス』
携帯を見ると、そんな事が書いてあった。
「そうだね、僕も戻ろうか」
次は英語だったはずだ。
今日の日付と僕の出席番号から、当てられないだろうから、寝よう。
そう思いながら、階段に向かった時、
「ひやぁぁぁあぁぁ!?」
力の抜ける悲鳴を上げながら、藤森さんが戻ってきた。
その後ろから、
「トン、トン、トンカラ、トン」
全身に包帯を巻いた集団が現れた。
「トンカラトン!?何でこんなとこに!?っ、多いし!?」
五人や六人じゃない。三十人以上いる。
まさかとは思うけど、ここに来る前にクラスを一つ襲撃してきたんだろうか。
「何?何なの!?この人達誰さぁ!?」
藤森さんが半泣きになりながら、僕の側に立つ。
震えていて可愛い。
「大丈夫だよ。僕が守るから」
「え?え?あ、危ないよ?」
これは、良い所を見せるチャンスだ。
「「「「トンカラトンと言え」」」」
包帯集団の何人かがそう言う。けれど、何人かは口を開かない。
言っても言わなくても、襲われる。
なら、戦うしかない。
「いくよドッペルさん」
『リョウカイデス』
そうして、携帯の画面から、包帯の男が現れた。
「ひゃ!!?」
それを見て、藤森さんが悲鳴をあげる。
「大丈夫だよ」
画面から現れたのは一人ではない。二人、三人と次々に現れる。
『ドッペルゲンガー』の能力なんてものは、だいたい想像がつく。
名前も姿も能力も同じに、彼女がなる事か、
名前も姿も能力も同じ、敵のコピーを作る事だ。
何も言わず、次から次へと「トンカラトン」作る僕を見て、敵と判断したらしく、トンカラトン達が刀を構え、走ってくる。
それに呼応するように僕の「トンカラトン」も走りだす。
そして、乱戦が始まる。
能力が同じな以上、勝負は引き分けになりやすい。一対一でなら。
僕の能力は、同じコピーを二、三体作る事ができる。
敵が三十人いるなら六十体のコピーを作れば良い。実力が同じなら、数の多い方が勝つ。
「と、思ったけど」
それをするには屋上が狭い。
屋上全体で戦っては、藤森さんが巻き込まれる。
「仕方ない。こじ開けるよ」
『リョウカイデス』
藤森さんを避難させる。
その為には乱戦の中を突っ切り、屋上から出る階段まで行かなければならない。
「もぅ……何なのよぅ……」
「行くよ!」
呆然としていた藤森さんの腕を掴み、
「…………え?」
藤森さんの戸惑ったような声を背に走りだす。
「トンカラトン」がトンカラトンを強引に押しやり、隙間を作る。
そこに僕達が滑り込む。
その間に、別の「トンカラトン」がまた隙間を作る。
何度か「トンカラトン」を突破してきたトンカラトンを新たなコピーで回避しつつ、階段へたどり着く。
屋上には僕の「トンカラトン」の方が多く、決着がつくのは時間の問題だった。
それなら、僕はここにいなくても問題は無い。
それより、藤森さんを安全な場所まで送りとどけないと。まだ、校内にトンカラトンがいるかもしれない。
僕は、汗の滲んだ、震える藤森さんの腕をしっかりと握り直す。
「大丈夫。僕が一緒だから」
そう言って振り返ると、
「はい、一緒です」
彼女は、楽しそうに笑いながらそう言った。
終