顔を上げると「猫さがしてます」と書かれた紙が電柱に貼ってあった。
どこかの飼い猫が迷子にでもなったのだろう。
「見つかるといいな」
思わず、そう呟いていた。
べつに、猫が好きなわけではない。むしろ、眼が怖くて嫌いだ。
ただ、捜す方の、残された方の、気持ちを考えるとそう思わずにはいられなかった。
どこかの飼い猫が迷子にでもなったのだろう。
「見つかるといいな」
思わず、そう呟いていた。
べつに、猫が好きなわけではない。むしろ、眼が怖くて嫌いだ。
ただ、捜す方の、残された方の、気持ちを考えるとそう思わずにはいられなかった。
私、には由香という友達がいた。
幼稚園からの腐れ縁、幼なじみ、親友、だった。
数週間前から、行方不明になっている。
誘拐や家出、駆け落ちの可能性まで考慮しながら、警察が捜索してくれている、はずだ。
最近、警察に聞いても何も教えてくれないから今、どうなっているのかは分からない。
しかし、駆け落ちは無いだろう。
何故なら、由香には好きな人がいるからだ。
……「好きな人がいる」っていうか、私の事が好きなんだけど。
それは、由香が失踪する前日の話だ。
由香が突然、私に告白してきた。
親友じゃなくて、友達じゃなくて、幼なじみじゃなくて、女として好きなんだと。
予想外の事に戸惑ったけど、私は断った、拒絶した。
私は普通に男が好きだし、気になる男子だってクラスにいる。
由香は、泣いていた。
だから、私は不安なんだ。
由香がいなくなったのが、私のせいなんじゃないかと。
幼稚園からの腐れ縁、幼なじみ、親友、だった。
数週間前から、行方不明になっている。
誘拐や家出、駆け落ちの可能性まで考慮しながら、警察が捜索してくれている、はずだ。
最近、警察に聞いても何も教えてくれないから今、どうなっているのかは分からない。
しかし、駆け落ちは無いだろう。
何故なら、由香には好きな人がいるからだ。
……「好きな人がいる」っていうか、私の事が好きなんだけど。
それは、由香が失踪する前日の話だ。
由香が突然、私に告白してきた。
親友じゃなくて、友達じゃなくて、幼なじみじゃなくて、女として好きなんだと。
予想外の事に戸惑ったけど、私は断った、拒絶した。
私は普通に男が好きだし、気になる男子だってクラスにいる。
由香は、泣いていた。
だから、私は不安なんだ。
由香がいなくなったのが、私のせいなんじゃないかと。
気がつけば、沈んだ気分でまた地面を見ながら歩いていた。
落ち込んでいても仕方ないと、顔を上げると
「脚はいらんかね?」
変なお婆さんがいた。
「……え?」
「脚はいらんかね?」
意味が分からなかった。
気配もなく現れたお婆さん、その質問、そして何より、お婆さんが背負っている風呂敷からはみ出ている、人の、女の子の足。
「…………なに、それ」
「脚はいらんかね?」
「い、いらな……」
そこまで言って、慌て口を閉じる。
思い出したのは「足売り婆」という都市伝説。
「脚はいるか」と尋ねてきて、「いる」と言っても「いらない」と言っても酷い目にあわせる、そんなお婆さんの怪談。
もちろん、あれは作り話のはずだけど、直感的に答えてはいけないと思った。
「いらな?その後は、い、だね?いらないんだね?」
もう、遅かったようだけど。
足売り婆に「いらない」と言えば、足を取られる。
逃げないといけない。でないと、足を取られる。
走って、交番にでも行かないと、足を取られる。
私の足が、あの風呂敷からはみ出ている足に仲間入りする事になる。
あの足に、あの女の子の……
「………ねえ、その足は」
「ん?」
「その足はどうしたの……?」
「ああ、これかい?これが気になるのかい?
これは、ええと、いつだっけね。まあ、数週間くらい前さね。この辺りを歩いてた女の子の脚だあよ」
「……その女の子、口元にホクロとかなかった?」
「ううん?そういえば、あったような気もするねえ。なんだい?知り合いかい?」
「私の、……私の友達よ」
親友とは言わない。好きだと言われ、私は由香を拒絶した。気持ち悪いと思った。っていうか気持ち悪いって本人に言った。
その後、仲直りする前に、由香は消えた。
あの時、親友ではなかった。それでも、一番仲の良い友達だったんだ。
だから、こいつが殺した由香を殺したんだとしたら
「絶対に許さない」
「へえー。で、どうするんだい?」
意地の悪い笑みを浮かべながら足売り婆が近づいてくる。
私の足をとるつもりなんだろう。それならそれで良い。
その代わり、こいつを殴ってやる。蹴ってやる。引っ掻いてやる。体当たりしてやる。絞めてやる。殺してやる。
そう覚悟している間に、足売り婆が私の目の前まで来た。
さあ、ぶっ飛ばしてやろう。とした時
「邪魔」
「ぎやっ!?」
突然横から現れた女に、足売り婆が蹴り飛ばされた。
血のように真っ赤な服に、大きなマスク。
「口裂け女……」
「ねえ、あの足売り婆を殺したいの?」
「え……?」
「手伝うよ。私と契約してくれたら」
はっきり言って何が起きているのか分からなかった。
分かっている事は、この口裂け女と契約とやらをすれば、あの足売り婆を、友達の仇を、殺せるという事だ。
なら、迷う事などない。
「分かった。契約する」
そう言ってから、あっという間だった。
気がつけば、足元に顔を引き裂かれ、身体中にメスや鋏が刺さった足売り婆が倒れていた。
「終わったよ」
そう言って、口裂け女は笑った。
マスクで表情は分からなかったけど、声は笑っていた。笑いを我慢しているようだった。
「それで、どうして足売り婆を殺したかったの?」
「友達が、殺されたかもしれなくて……仇を……とりたくて」
「友達か。仲良かったの」
「え?はい、大切な友達です。…………あっちは恋愛感情だったみたいですけど」
「そっか、そっか」
なんで私は初対面の人にこんな事を話しているんだと、そう思って、口裂け女の方を見ると
「っ!?」
視界いっぱいに、大きなマスクが入ってきた。気がつかない間に口裂け女が接近していたらしい。
「死んでないよ」
突然、マスクでくぐもった声で口裂け女が言った。
「え」
「死んでない。人違いだよ」
そう言ってますます口裂け女が顔を近づけてくる。
「契約した。私は貴女と」
「な、に……?」
「仲の良い友達がいてもいい」
「…………??」
「好きな人がいてもいい。恋人がいてもいい。結婚してもいい。子供ができても、お婆さんになっても構わない。
貴女には私が必要。私は貴女の為に戦う。他には無い、誰にも奪われない、女の子同士でも構わない、特別な関係」
気がつけば、口裂け女の左手が、指を絡ませるように私の右手を握っていた。
「貴女の死ぬ時が私の死ぬ時」
口裂け女がマスクを外す。
「ずぅっと一緒だよ」
口裂け女の口元には、小さなホクロがあった。
落ち込んでいても仕方ないと、顔を上げると
「脚はいらんかね?」
変なお婆さんがいた。
「……え?」
「脚はいらんかね?」
意味が分からなかった。
気配もなく現れたお婆さん、その質問、そして何より、お婆さんが背負っている風呂敷からはみ出ている、人の、女の子の足。
「…………なに、それ」
「脚はいらんかね?」
「い、いらな……」
そこまで言って、慌て口を閉じる。
思い出したのは「足売り婆」という都市伝説。
「脚はいるか」と尋ねてきて、「いる」と言っても「いらない」と言っても酷い目にあわせる、そんなお婆さんの怪談。
もちろん、あれは作り話のはずだけど、直感的に答えてはいけないと思った。
「いらな?その後は、い、だね?いらないんだね?」
もう、遅かったようだけど。
足売り婆に「いらない」と言えば、足を取られる。
逃げないといけない。でないと、足を取られる。
走って、交番にでも行かないと、足を取られる。
私の足が、あの風呂敷からはみ出ている足に仲間入りする事になる。
あの足に、あの女の子の……
「………ねえ、その足は」
「ん?」
「その足はどうしたの……?」
「ああ、これかい?これが気になるのかい?
これは、ええと、いつだっけね。まあ、数週間くらい前さね。この辺りを歩いてた女の子の脚だあよ」
「……その女の子、口元にホクロとかなかった?」
「ううん?そういえば、あったような気もするねえ。なんだい?知り合いかい?」
「私の、……私の友達よ」
親友とは言わない。好きだと言われ、私は由香を拒絶した。気持ち悪いと思った。っていうか気持ち悪いって本人に言った。
その後、仲直りする前に、由香は消えた。
あの時、親友ではなかった。それでも、一番仲の良い友達だったんだ。
だから、こいつが殺した由香を殺したんだとしたら
「絶対に許さない」
「へえー。で、どうするんだい?」
意地の悪い笑みを浮かべながら足売り婆が近づいてくる。
私の足をとるつもりなんだろう。それならそれで良い。
その代わり、こいつを殴ってやる。蹴ってやる。引っ掻いてやる。体当たりしてやる。絞めてやる。殺してやる。
そう覚悟している間に、足売り婆が私の目の前まで来た。
さあ、ぶっ飛ばしてやろう。とした時
「邪魔」
「ぎやっ!?」
突然横から現れた女に、足売り婆が蹴り飛ばされた。
血のように真っ赤な服に、大きなマスク。
「口裂け女……」
「ねえ、あの足売り婆を殺したいの?」
「え……?」
「手伝うよ。私と契約してくれたら」
はっきり言って何が起きているのか分からなかった。
分かっている事は、この口裂け女と契約とやらをすれば、あの足売り婆を、友達の仇を、殺せるという事だ。
なら、迷う事などない。
「分かった。契約する」
そう言ってから、あっという間だった。
気がつけば、足元に顔を引き裂かれ、身体中にメスや鋏が刺さった足売り婆が倒れていた。
「終わったよ」
そう言って、口裂け女は笑った。
マスクで表情は分からなかったけど、声は笑っていた。笑いを我慢しているようだった。
「それで、どうして足売り婆を殺したかったの?」
「友達が、殺されたかもしれなくて……仇を……とりたくて」
「友達か。仲良かったの」
「え?はい、大切な友達です。…………あっちは恋愛感情だったみたいですけど」
「そっか、そっか」
なんで私は初対面の人にこんな事を話しているんだと、そう思って、口裂け女の方を見ると
「っ!?」
視界いっぱいに、大きなマスクが入ってきた。気がつかない間に口裂け女が接近していたらしい。
「死んでないよ」
突然、マスクでくぐもった声で口裂け女が言った。
「え」
「死んでない。人違いだよ」
そう言ってますます口裂け女が顔を近づけてくる。
「契約した。私は貴女と」
「な、に……?」
「仲の良い友達がいてもいい」
「…………??」
「好きな人がいてもいい。恋人がいてもいい。結婚してもいい。子供ができても、お婆さんになっても構わない。
貴女には私が必要。私は貴女の為に戦う。他には無い、誰にも奪われない、女の子同士でも構わない、特別な関係」
気がつけば、口裂け女の左手が、指を絡ませるように私の右手を握っていた。
「貴女の死ぬ時が私の死ぬ時」
口裂け女がマスクを外す。
「ずぅっと一緒だよ」
口裂け女の口元には、小さなホクロがあった。
終