犬狩り犬
「初めは数匹の飼い犬だった」
人面犬の喉が噛み千切られる。
「それが長く続き個体数が増え、給餌が追い付かなくなった」
飛び掛ってきた人面犬を雷が焼き尽くす。
「やむなく放し飼いを始め、残飯を漁るようになった」
逃げようとする人面犬の脊椎を噛み砕く。
「さらに個体数が増え、残飯では足りなくなった」
死骸を別の人面犬に投げつけて炎を浴びせる。
「そして、人を襲って食らうようになった」
辺り一面に転がる人面犬の死骸。
「こいつらを処分する理由を作ったのは、お前だ」
その中央にへたり込む男と、それを見据える黒服の男。そして一匹の大柄な犬。
10や20ではきかない数の人面犬は全て、たった一匹の犬によって殺されたのだ。
10や20ではきかない数の人面犬は全て、たった一匹の犬によって殺されたのだ。
「な……なんなんだよその犬……」
もはや逃げようもないことを悟ったのだろう。
男は震える声で黒服に問いかける。
男は震える声で黒服に問いかける。
「リュパン」
リュパンとはフランスに伝わる狼の妖精であり、塀のそばに現れるとされている存在だ。
それだけではあの強靭な身体能力や、雷を放ったり炎を吐いたりする能力の説明がつかない。
それだけではあの強靭な身体能力や、雷を放ったり炎を吐いたりする能力の説明がつかない。
「ブラックドッグ、チョーキングドーベルマン、送り狼、クー・シー、ガルム――」
「なっ……」
「なっ……」
黒服はなおも続ける。
「――真神、クルトー、ライラプス……幾多の犬を混血し産み出された犬殺しの犬。それがこのストラスドゥーンだ」
普通、犬が犬を殺すことはない。
縄張り争いなどで必要に応じて敵対することはあっても、同族である犬に殺意を向けることは決してありえない。
縄張り争いなどで必要に応じて敵対することはあっても、同族である犬に殺意を向けることは決してありえない。
だが、ストラスドゥーンは違う。
強靭な脚力をもつ犬と強靭な顎をもつ犬を掛け合わせ、普通の犬とは比較にならない力をもつ犬が生まれる。
幼い頃より犬を殺すようしつけられ、大きくなると犬を殺して遊ばせ、犬を殺すことを喜びとして育て上げる。
そうして人によって創られた犬殺しの犬、それがストラスドゥーンという存在である。
強靭な脚力をもつ犬と強靭な顎をもつ犬を掛け合わせ、普通の犬とは比較にならない力をもつ犬が生まれる。
幼い頃より犬を殺すようしつけられ、大きくなると犬を殺して遊ばせ、犬を殺すことを喜びとして育て上げる。
そうして人によって創られた犬殺しの犬、それがストラスドゥーンという存在である。
「ストラスドゥーンは犬殺しの犬。何があっても犬以外は殺さない」
「じ、じゃあ俺は――」
「じ、じゃあ俺は――」
黒服の手にはナイフが握られていた。
「人を殺すのは人の役目だ」
男の喉が真一文字に切り裂かれた。
「全ての業は人が負う。お前も、そして俺もな」
ナイフの血をぬぐう黒服の足元から、くうん、という鳴き声。
先ほどの戦いとは打って変わって、心配するような目で黒服を見上げるストラスドゥーンの姿があった。
先ほどの戦いとは打って変わって、心配するような目で黒服を見上げるストラスドゥーンの姿があった。
「お前は何も悪くないよ」
そう言って頭を撫でてやると、犬はうれしそうに黒服の顔を舐める。
黒服は何も言わず、されるがままに犬を撫で続ける。
まるでそうすることが何かへの償いであるかのように。
黒服は何も言わず、されるがままに犬を撫で続ける。
まるでそうすることが何かへの償いであるかのように。
【終】