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単発 - 都市伝説と戦わない「Time Sounds Like Tick Tackあるいは時は時計の音がする」

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匿名ユーザー

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「……心臓の病です。既に、手のつけようが無い程進行しています」

医師にそう宣告された日の夜、私は一人で酒を飲んでいた。
それを止める人間は居ない。
居ないからこそこうなったのかもしれない。
妻に先立たれ、一人で玩具屋を切り盛りし続ける日々。
玩具屋の仕事自体は充実感も有り、楽しい仕事ではあったが彼女の居ない寂しさは埋め難く、酒量が増えていることは自分でも分かってた。
思えば私はこうやって緩慢な自殺を行なっていたのかもしれない。
治療の見込みが無い時に延命行為などの医療行為を停止することを尊厳死、苦痛が耐えがたく治療の見込みが無い時に薬剤の投与などで積極的に命を止めることを安楽死というのだそうだ。
私は安楽な死を望む。
彼女の居ないこの世界になど未練は無い。

「ソレ、――――ハ――――本、トーか?」

ガサガサと鼓膜をひっかくようなざらついた電子音声。
気づくとそれはそこに居た。
懐中時計の瞳、板バネの額、エナメル線の毛髪に歯車のコメカミ、身体のありとあらゆる箇所を機械に置換した異形。
衣服すらも針金を編みこんで作っている。

「キ――ミ、ハ誰よ、Ri、Shiぬの――――ガ―――コワ意」

酔っているせいでこんな幻を見ているのだろうか。
目の前の彼は私の本心を言い当てていた。確かに私は死ぬのが怖かった。
彼女の居ないこの世界に未練は無い。それは事実だ。
だが私と彼女の仲すら容易く引き裂いたこの世界が恐ろしいのも私にとっては事実だった。
でも、だからどうした。私に一体何ができるのだ。

「おもちゃTaちが――――キ――minoキミヲ待ッ―――――てる
キミは^^彼らに、かれらの為に生きなくてはいけない」

次第に言葉は人間味を帯びていく。だが酒に酔った私がそれを不自然に思うことはない。
むしろ、久しぶりにこうして話せる相手が居ることが私は嬉しかった。
私は、妻と、同じように玩具と、玩具で遊ぶ子どもたちを大切にしていた。
私の人生にとってはそれらが最後の支えだ。
私が病院に入れば、私の大切にしていた物を守ってくれる存在は居なくなる。
私は酒瓶を投げ捨てて男と共に私の店のおもちゃ売り場へと向かう。
そこにはいつまでも売れ残っていたブリキの兵隊が有った。
男は、それにするかい?と私に尋ねる。
私はそっと頷く。男はブリキの兵隊から心臓を取り出し、私の胸を裂いて移植する。
彼が針金で私の傷を塞ぐと、信じられないことに私の中でブリキがそっと鼓動を始めていた。

「これで私の役目は終わりだ」

そう言うと同時に男の瞳の時計は動きを止めてしまった。
私はその哀れな男の亡骸を店の奥まで引きずってソファの上に寝かせてやった。
お疲れ様と声をかけ、彼の瞳だった時計を私は首からぶら下げる。
こうして私は、私の愛する玩具達と一緒に、また新しい時を刻み始めた。


※    ※    ※


ヌイグルミの表皮、たまごっちの耳、水鉄砲の腕、キックブレードの足、フルートと小太鼓が奏でる単調で愉快なメロディーに合わせて男が一人楽しそうに歩いている。
すっかり廃墟と化した町並みをソレは楽しそうに歩いている。
崩れかけたアスファルトの道に何度も足をとられ、その度に転んで起き上がり、それでも楽しそうに男は歩いている。
だって彼は大好きなものとずっと一緒なのだから。
だってこれだけは彼の元から決していなくなりはしないんだから。
彼は、彼だけは歩いていける。
この道を、永遠に。

 

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