「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 都市伝説と戦わない「This is It」

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匿名ユーザー

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7月18日
羽田から千歳まで飛行機で戻る。
私は師であった教授の遺品の中に有ったとある書物を頂いた。
彼は生前、文化人類学の研究者として名を馳せていたのだがとある南方の島に行って以来様子がおかしくなり、そのまま山奥に隠棲して生涯を終えている。
愛弟子である私にすら何が有ったかを明かさなかった。
彼の遺した本とフィールドワークのメモを解き明かすことでもしかしたら彼が何を発見したのかがわかるかも知れない。
この日記を書いている時点で飛行機の機材の到着が遅れたというアナウンスが入った。
やれやれ、異常気象に合わせてこれでは北海道に帰るのが遅れそうだ。

7月19日
見てはいけないものを見てしまった。
私は一刻も早くここから離れなくてはいけない。
教授の研究を狙う者がこんなに居るだなんて私は思わなかったのだ。
どうやら家には帰れそうにない。
私を狙う者は既に家にも手を回しているだろう。
留守電には出てくれなかったが私の愛する妻と二人の娘が無事であることを願うばかりだ。

7月20日
私は今ホテルの一室でこの日記を書いている。
ここならばしばらくは追手もかからないだろう。
教授のメモの内容の要約については後の方に纏めて書いた。
信じられないことだが、教授の本に載っていた魔術は本物だ。
解読する中で私もまた使い方を理解してしまった。
それにしても雪が酷い。
ホテルは停電してしまったそうだ。
今は自家発電装置で賄っているが……いつ駄目になることやら。
先程から窓の外で何かが歩いているような気がする。
巨人?
いいやまさか……。
やけに外が明るいおかげで日記を書けて幸運だったと思っておこう。
念の為に後で確認してみよう。
追記→巨人は居た。どうやら私は本当にわけの分からない世界に居るらしい

7月21日
私の携帯に妻の弟から連絡が入った。
どうやら私の妻と子が奴らの手にかかったらしい。
そうなるとこの状況で生きている彼ももはや信用ならない。
私は携帯を捨てた。
教授は、何を研究していたのだ。
彼が自らの書物にまとめていたのは見るも悍ましい黒魔術の数々だった。
呪殺、召喚、異形との混血、普段の私であればそれはくだらないオカルトだと一笑に付しただろう。
だが今私が置かれているこの異常な状況からすればそれらはまだ正気にも思える。
毒が恐ろしくて食事は缶詰ばかりになってしまった。
私はおそらくもうすぐ死ぬ。
だが真実を、この真実だけは確かめなくてはいけない。
それが私にできる最後の……

7月22日
新聞を見ると妻の弟の家が出ていた。
強盗が入ってきて彼らを皆殺しにしたらしい。
するとあの時既に彼は死んでいた……?
やはりあの電話の指示に従わなくてよかった。
もしかしたら私の妻と娘も生きているかもしれない。
今はそれだけが希望だ。
教授の遺したこのメモが正しいのならば私があの場所に行きさえすれば……

7月23日
ついに私は私の故郷についた。
故郷の人々は私を変わらず受け入れてくれる。
あの玩具屋の主人も年齢を感じさせない若々しさで私に挨拶までしてくれた。
この不況でもなくならない玩具屋とは大したものだ。
……少しメランコリアにとらわれてしまった。
今の私にはやらなくてはいけないことがあるのだった。
私が、私が世界を救わなくてはいけないのだ。
もしこの日記を見ている人が居るならばそれは恐らく私が失敗したということである。
願わくば私の、教授の遺志を継いで頂きたい。
君の力になる全てはこの日記の裏に記してある。
敵の名前は“ようぐそとほうふ”だ。
私は明日、この本に記された聖地、月山(ツクヤマ)へと行く。
君の健闘を祈る。




※    ※    ※








「――――良い夢は見れたかな?」







私の故郷には月山という霊峰が有る。
私の身の回りで続く異常事態を止め、異形の招来を邪魔するにはそれしか無いのだ。
山道をひた走る私の前に真紅の外套を纏った青年が立っていた。

「そこをどけ、今の私にはやらねばならぬことが有る」

「どかないと言ったら? 財団の奴らを殺したみたいに俺も殺すのか?
その本から勉強した魔術ってやつで? 面白いねえ見てみたいねえ!」

青年は青い石のペンダントを指でいじりながら挑発的な笑みを浮かべる。

「退かないならば……」

私の頭にビリビリと電撃が走る。
激痛、嘔吐感、めまい、その他あらゆる不快感が腹の底からこみ上げる。
教授の遺したメモに有った呪文を唱えると私の前に壁が現れて、そのまま壁が青年へと向かう。

「温いな」

青年は腰から紫と金で彫刻された艶やかな短刀を取り出し、壁に向けて斬りかかる。
ガラスの割れるような音と共に私の呼び出した壁は砕け散る。
馬鹿な、ありえない。これは、これはあの青い炎の巨人すら退けた……
青年は流れるような動作で銃を抜き取り、私に向けて五発ほど撃ちこむ。
だがそれは無駄だ。私とて防護策は怠って無い。
肉体を保護する呪文もまた教授のメモにある。
私が世界を救う、救わねばならぬのだ。
どんな強敵が現れようともここで倒れる訳にはいかない。
私こそが今、英雄なのだから。
弾丸は私の身体に当たるが弾かれて何処かへ消える。

「良いことを教えてやるよ
あんたの手に入れた魔術書の名前は“緑の本”
効果は妄想の実現及び外なる神との一時的な契約
あんたが一生懸命学んだつもりの魔術は神の気まぐれで
あんたの繰り返してきた戦いとやらはあんた自身の内に秘めていた妄想さ」

「ふん、馬鹿なことを言うな!」

用意していた火炎瓶を投げつける。
破壊した所で仕込んだ薬液が青年を焼く二段構えだ。
これならば刀で切られた所で……

「馬鹿はあんただ」

青年は手をギュッと握る。
すると瓶がその場で何かに押しつぶされたように圧縮されて小さくなり、消えてしまう。

「その本は見る者によって内容を様々に変える
だがそれは絶対に作者の願望を映し出し、それを作者に実現させる
あんたは家族を奪われた悲劇の戦士にでもなりたかったのかい?
まったく幾つだよ
あんたはこんなもの手に入れた時点でまず真っ先に家族の元へと帰るべきだったんだ
本当に本当に馬鹿にしてるぜ」

青年は懐から再び拳銃を取り出して、今度は私の持っていた本を狙う。
私は反応できない。だが何故本を?
本の内容なら既に私の頭の中に入って……
本は突如輝きだして銃弾を弾いた。
当たり前だ。今度の追手はこんなことも知らないのか。

「その本が映し出す内容は千差万別
しかし共通点はもう一つ有る
これはあんたの願いとは無関係だ
それはね、その願望の終着点として……ヨグ=ソトースを呼び出すのさ」

「ヨグ……? 貴様何故その名前を!」

青年の銃口が私の額を狙う。

『お前が封じようとしていたモノをお前自身が呼び出す
そしてそれを嘲笑する
そのためだけに作られた悪趣味な魔導書なのさそれは』

青年の言葉が何故だか私の耳に張り付く。
嘘とも思えない、わけの分からない説得力がその言葉には有った。

「私は……私は信じないぞおおおおおおおおおおおおお!」

私は全ての力を込めて再び呪文を唱えた。
視界が白く霞み、私の意識は途絶えた。


※    ※    ※


「う……あ……」

「残念だったな、俺のほうが十秒ほど起き上がるのが早かった」

青年は私を見下ろしている。
どうやら相打ちになったものの彼のほうが先に目を覚ましたらしい。

「安心しろ、魔術書の担い手たるお前が死ねば、お前の妄想が起こした全てのことは無かったことになる」

信じられない。
私が、私の魔術書が……。

「お前は不運なことに通り魔に会って死んだ可哀想な只の人間として死ねる」

私の信じた物が……教授の遺志が……。

「教授は気づいていたんだよ
一度読んだらもうアウトだって
だから山奥に籠もってたんだよ
あんたもどうしても平和に生きたければそうするしかなかった
俺が来た時もあの人喜んでたぜ、やっと死ねるってさ」

「お、お前が教授を……」

「ああ、悪いか?
あんたも同じように只の人間として死ねる
あんたの妻子も無事、親戚連中も無事
何もかもが平和
そして唯一欠けてしまったあんたを皆が悼む
まあマシだぜえ死に方としてはさ」

青年は私から奪い取った本をライターで燃やす。
本を奪い返そうと伸ばした手は青年の足に踏み潰された。
本の最後の一片が燃え尽きて風に消えた時、私は私の心のなかから執着のようなものが消えていくのを感じた。
何故私は世界を救わなくてはいけないと思ってたのだ。
その為にとてつもなく大きな物を犠牲にしてしまった。
結局私はあの本にどうしようもなく魅せられていたのだろう。
もう取り返しはつかない、ならばせめて……。

「……私が死ねば、妻子は助かるのか?」

「ああ」

「……せめて、楽に頼む」

青年は深くため息をついて俯く。

「くふっ……」

突然青年が笑い出す。
何を考えている……?

「ははっ!」

「な、なんだ!?」

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!
うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあああああっはははっっはっはっはっはっは!
ふへえはあああははははははっはあ!
あんたも馬鹿だなあ本当に馬鹿だ!救いようがなく愚かで本当に楽しい奴だなあ!
呪いが解けた? 妻子は助かるのか?
あんたの見る夢はあんたが目覚めるしか無いし、一度消えた命は二度と帰らねえよ!
そうじゃなきゃこの世に生きる意味すらねえや!
お前一人のせいで皆死んだ! バカみてえに死んだ! 本当に笑えたよ! いいコメディだった最高だった感動した!
本当になんでこんな簡単に俺の言うこと信じちゃうんだよ馬鹿だなあ馬鹿だねえこれだから人間ってのはやめられねえなああああああああひひひひひひっひっひっひぃ……ひうぃ……」

青年は悪魔的な笑顔を浮かべて私を嘲り笑う。

「お、お前は……」

嘘だ。
嘘だ。
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「そうさ、これが現実だ!」

私の首に短刀が振り下ろされた。
この鮮やかに乱れ飛ぶ鮮血は……ああ、これは、これは本当だ。

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