雨上がりの学校町。
ひとりの少女が白杖をついて歩いていた。
かつかつ、かつかつと杖の先端で足下を確かめる動きは滑らかで、この杖が確かに少女の「目」なのだと云うことがよくわかる。
ひとりの少女が白杖をついて歩いていた。
かつかつ、かつかつと杖の先端で足下を確かめる動きは滑らかで、この杖が確かに少女の「目」なのだと云うことがよくわかる。
「ったく、重いわね・・・これも引っ越し屋に頼めばよかった」
キャリーを引きずった若い女が前から歩いてきた。太股のあたりまである三つ編みにされた金褐色の髪が印象的だが、それは少女にはもちろん見えることはない。
ふたりは狭い歩道ですれ違おうとしたが、女の後ろから走ってきた自動車が、追い越しざまに音を立てて泥水を跳ね上げる。
「ひゃっ!」
「きゃっ!」
女は跳ね上がる泥水は避けたものの、バランスを崩して少女にぶつかり少女が転倒してしまう。
「あ・・・」
「ご、ごめんなさい!ケガはない?」
慌てて少女を抱え起こし、その手に杖を握らせるが
「服が・・・」
少女の着ていたコートは胸元のあたりから裾まで泥に汚れ、水滴を滴らせている。
「この寒さでこれじゃキツいわね・・・私にも責任があるし、よかったら洗って乾かすから、家に来てくれない?」
キャリーを引きずった若い女が前から歩いてきた。太股のあたりまである三つ編みにされた金褐色の髪が印象的だが、それは少女にはもちろん見えることはない。
ふたりは狭い歩道ですれ違おうとしたが、女の後ろから走ってきた自動車が、追い越しざまに音を立てて泥水を跳ね上げる。
「ひゃっ!」
「きゃっ!」
女は跳ね上がる泥水は避けたものの、バランスを崩して少女にぶつかり少女が転倒してしまう。
「あ・・・」
「ご、ごめんなさい!ケガはない?」
慌てて少女を抱え起こし、その手に杖を握らせるが
「服が・・・」
少女の着ていたコートは胸元のあたりから裾まで泥に汚れ、水滴を滴らせている。
「この寒さでこれじゃキツいわね・・・私にも責任があるし、よかったら洗って乾かすから、家に来てくれない?」
「黒いパピヨン」の看板が出された、小さな洋品店。
その奥の居室にある、こぢんまりとした応接セットに腰掛けた少女は、ジンジャーティーに遠慮がちに口を付ける。
「もうすぐ乾くから、それまでお茶でも飲んでてね」
「すみません、わざわざ」
「いーのよ、悪いのは人に泥水はねた車なんだから」
サテンのリボンで飾られた蒼いベルベットのコルセットにボレロを羽織り、
バレリーナのチュチュのようなシフォンのスカートを纏った典雅な印象とは裏腹に、ホントに最低よねー、と女がからからと笑った、その時。
軽やかな音がして、入り口の扉が開く。
「いらっしゃい!・・・ごめんなさいね、開店、明日からなの。なにぶん今日はこんなでね」
ドアを開けてすぐの、本来店舗であるスペースにはいくつかの飾り棚があるだけで、後は無造作に段ボールが転がっている。
「あの、なにかお店をなさってるんですか?」
ぱたりとドアの閉まる音と共に、少女がぽつりと呟く。
「ええ、自己紹介もまだだったわね。私は此処で、明日から洋品店を開くのよ」
女は「月夜野 せせり」と名乗り、愛想良く笑う。
その奥の居室にある、こぢんまりとした応接セットに腰掛けた少女は、ジンジャーティーに遠慮がちに口を付ける。
「もうすぐ乾くから、それまでお茶でも飲んでてね」
「すみません、わざわざ」
「いーのよ、悪いのは人に泥水はねた車なんだから」
サテンのリボンで飾られた蒼いベルベットのコルセットにボレロを羽織り、
バレリーナのチュチュのようなシフォンのスカートを纏った典雅な印象とは裏腹に、ホントに最低よねー、と女がからからと笑った、その時。
軽やかな音がして、入り口の扉が開く。
「いらっしゃい!・・・ごめんなさいね、開店、明日からなの。なにぶん今日はこんなでね」
ドアを開けてすぐの、本来店舗であるスペースにはいくつかの飾り棚があるだけで、後は無造作に段ボールが転がっている。
「あの、なにかお店をなさってるんですか?」
ぱたりとドアの閉まる音と共に、少女がぽつりと呟く。
「ええ、自己紹介もまだだったわね。私は此処で、明日から洋品店を開くのよ」
女は「月夜野 せせり」と名乗り、愛想良く笑う。
「そうですか、お洋服屋さん・・・それなら、女の子、沢山来るんでしょうね」
「ええ、出来れば貴女みたいな娘にも、是非うちの服を着て貰いたいわ」
「ええ、出来れば貴女みたいな娘にも、是非うちの服を着て貰いたいわ」
続く