「ねー、鈴々花さん」
「何」
「なんで僕、鈴々花さんのお部屋で血を抜かれてるんでしょう、しかも200ccも」
「検体」
「何の?」
「契約が人体に及ぼす影響、特にお前の場合、実体が瞬間移動するプロセス。私は実体が一旦素粒子レベルで分解され、目標地点で再構成されると踏んでいるが、その場合・・・」
「待った!それだと、目標が移動しても正確に座標を特定できる説明がつかないよ。僕はやはり空間歪曲型ワープ航法を挙げたいね!メカニズムを解明したあかつきには、機械化してきじまさん型(タイプ)簡易ワープ装置を開発・・・」
「それは勝手にやれ。ああ、契約者の力の源泉はやはり脳か!ああ、解剖したい、頭部を綺麗に切り開いて、神経細胞の1ミクロンまで残らず解明してみたい!」
「あ、脳と言えば」
噛み合わない会話を別方向に展開させたのは、鈴々花の黒と青で纏められた部屋には不似合いなようでマッチしている、脳のホルマリン漬け。
大きさからいって人間か、少なくとも類人猿のものであるそれは、ガラスケースに取り付けられたブルーライトのせいで怪しさ100万倍だが、ふたりともそんな事は気にならない。
「あの脳、人間の?普通の人の部屋にあったらドン引きだけど、鈴々花さんにはよく似合うね」
墓穴を掘りかねないような褒め方だが、鈴々花は褒められようが貶されようが気にしなかった。
「両親からの預かりもの。大事な脳だから、万難を排しても護れと言われている」
「へー、歴史上の偉人か何か?」
その時、ぴくりと鈴々花が聞き耳を立てる。
「・・・来た」
「へ?」
直後、派手な音を立てて窓ガラスが砕け、ひとりの女のシルエットが浮かび上がる。
「おーっほっほっほ!」
女は黒いスーツを着ていたが、それは所謂「組織の黒服」が纏うようなスーツとは少し違うようだった。
胸元は派手に開き、そこから覗く豊かな谷間にはプラチナのネックレスが覗いている。
「あれだけ警告してあげてるのに、まだ懲りないの?つるぺたのおじょーちゃん」
女は挑発するようにことさら胸を揺らして見せた。長いウェーブのかかった金髪とサングラスが相まって、さながらアメリカ映画の女悪役といった雰囲気だ。
「・・・うるさい」
かすかに鈴々花が気色ばむのがわかる。
(あれ、鈴々花さん、もしかしてコンプレックス?)
「何」
「なんで僕、鈴々花さんのお部屋で血を抜かれてるんでしょう、しかも200ccも」
「検体」
「何の?」
「契約が人体に及ぼす影響、特にお前の場合、実体が瞬間移動するプロセス。私は実体が一旦素粒子レベルで分解され、目標地点で再構成されると踏んでいるが、その場合・・・」
「待った!それだと、目標が移動しても正確に座標を特定できる説明がつかないよ。僕はやはり空間歪曲型ワープ航法を挙げたいね!メカニズムを解明したあかつきには、機械化してきじまさん型(タイプ)簡易ワープ装置を開発・・・」
「それは勝手にやれ。ああ、契約者の力の源泉はやはり脳か!ああ、解剖したい、頭部を綺麗に切り開いて、神経細胞の1ミクロンまで残らず解明してみたい!」
「あ、脳と言えば」
噛み合わない会話を別方向に展開させたのは、鈴々花の黒と青で纏められた部屋には不似合いなようでマッチしている、脳のホルマリン漬け。
大きさからいって人間か、少なくとも類人猿のものであるそれは、ガラスケースに取り付けられたブルーライトのせいで怪しさ100万倍だが、ふたりともそんな事は気にならない。
「あの脳、人間の?普通の人の部屋にあったらドン引きだけど、鈴々花さんにはよく似合うね」
墓穴を掘りかねないような褒め方だが、鈴々花は褒められようが貶されようが気にしなかった。
「両親からの預かりもの。大事な脳だから、万難を排しても護れと言われている」
「へー、歴史上の偉人か何か?」
その時、ぴくりと鈴々花が聞き耳を立てる。
「・・・来た」
「へ?」
直後、派手な音を立てて窓ガラスが砕け、ひとりの女のシルエットが浮かび上がる。
「おーっほっほっほ!」
女は黒いスーツを着ていたが、それは所謂「組織の黒服」が纏うようなスーツとは少し違うようだった。
胸元は派手に開き、そこから覗く豊かな谷間にはプラチナのネックレスが覗いている。
「あれだけ警告してあげてるのに、まだ懲りないの?つるぺたのおじょーちゃん」
女は挑発するようにことさら胸を揺らして見せた。長いウェーブのかかった金髪とサングラスが相まって、さながらアメリカ映画の女悪役といった雰囲気だ。
「・・・うるさい」
かすかに鈴々花が気色ばむのがわかる。
(あれ、鈴々花さん、もしかしてコンプレックス?)
「今日こそその『脳』は貰ったわ!」
叫んで女がベランダから部屋に踏み込み―
床に長く裾を引いていたカーテンで足を滑らせた。
叫んで女がベランダから部屋に踏み込み―
床に長く裾を引いていたカーテンで足を滑らせた。
「ぷぎゃっ!!」
がつん、という地味だが痛そうな音をたてて、女が動かなくなる。
「これで二十二回目」
鈴々花が女を引きずってベランダから外へ放り出す。
「これでよし、と」
「いや、よくないでしょ、あの人が死んじゃったら鈴々花さん、犯罪者だよ」
「大丈夫。あの女、青酸カリを打っても、致死量のモルヒネでも死なない。10階から落ちた程度で死ぬものか」
「そういうもんなのかなあ」
なんだか更に、日常からかけ離れていく気がするなあ。
現はそんな気分で、女が落ちていった窓の外を眺めた。
鈴々花が女を引きずってベランダから外へ放り出す。
「これでよし、と」
「いや、よくないでしょ、あの人が死んじゃったら鈴々花さん、犯罪者だよ」
「大丈夫。あの女、青酸カリを打っても、致死量のモルヒネでも死なない。10階から落ちた程度で死ぬものか」
「そういうもんなのかなあ」
なんだか更に、日常からかけ離れていく気がするなあ。
現はそんな気分で、女が落ちていった窓の外を眺めた。
END