「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-59

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匿名ユーザー

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 カタカタとキーボードを叩く音と、さらさらと紙の上にペンを走らせる音がする
 普段はそれなりの人数がいるはずのその部屋に、今いるのは二人だけだ

「他のC-Noの方々はどうしましたの?」

 愛百合はキーボードを叩きながら、ややむすっとした調子でそう問うた
 書類を確認し、サインを入れながら天地は答える

「それぞれ別の仕事を割り振ってる」
「郁は、「組織」と「首塚」の合同戦技披露会に行ったと聞いたけれど」
「それも仕事だ。慶次と組んで「組織」以外の参加者、及び観戦者に関する情報収集」
「……慶次君の担当は私なのに、どうして彼が?」

 つ、と天地がペンを走らせる動きが止まった
 ちらり、愛百合の表情を確認し、ため息をつく

「慶次は、お前から少し離れて色々勉強すべき時期だからな。お前がべったりついたまま、って訳にもいかないだろ」
「あら、私、あの子を息子のように思いながら、色々教えてきたつもりよ?」
「だからこそだ。今のままだと、お前の色が強すぎる」
「……それでは、いけないのかしら?」

 伺うような視線が天地へと向けられた
 天地は特に迷うこともなく回答する

「ただ一人の黒服にだけ影響され続ける、ってのはあまりいい傾向じゃねぇな。自覚のあるなし関わらず、視野が狭まる可能性が出てくる」
「それを言ったら、二十年以上もたった一人の黒服に担当され続けた契約者もいるでしょう?」
「あれは例外だ。っつか、あのヤンデレコーラを担当できるのがただ一人しかいねぇ。その上、あのヤンデレコーラが担当黒服の影響受けてるかっつーと受けてない上にヤンデレ加速傾向だ」

 愛百合が口にしたそれが誰であるのか即座に理解し、言葉を返す
 あの兄弟愛こじらせすぎた上、最近では家族愛も盛大にこじらせようとしているヤンデレと他の契約者を同じように扱ってはいけない
 取扱い注意なあの男の担当が大門 大樹以外になったならば、それこそ制御不能になるのは目に見えている

「かなえはまだ、契約者やってる同級生からの影響受けられるが、慶次の方は大学通ってる訳でもないし、そうはいかないだろう。お前がいない状態で他の奴と接触させて、勉強させるのが一番なんだ」
「……納得いかないわねぇ。手塩にかけて育てた子に、悪い影響が出ないか心配よ」
「そこは、育てた身として育てた相手を信頼してやれよ」

 それはそうなんだけど……と、少し渋っているような表情を愛百合は浮かべてくる
 まるで、実の子のように面倒を見ている契約者を心から心配しているように、そう見えるのだが………

(本当に、心配しているんだったらいいんだがな)

 表に出すことなく、天地に化けているディーデリヒ・ダンジェルマイアはそのように考えた
 「組織」DNo上位陣が一人、実質DNoの親衛隊と呼ばれるメンバーのうちの一人である彼は「ドッペルゲンガー」であり、何者にでも化けることが出来る
 本物の天地から依頼され、こうして天地に化けて愛百合を見張っている訳なのだが

(ダレンを殺そうとしてきた連中と、同じ雰囲気がするんだよな………天地が「狐」の件とは別に警戒している訳だ)

 「狐」の件に乗じて何かしでかすかもしれない、と言う警戒ゆえなのだろう
 「狐」絡みでも、今現在、警戒している相手がいるようではあるが……

(ハンニバルの言うことばかり聞いていた餓鬼が、立派に考えるようになったもんだ)

 愛百合の今までの働きぶりや過去の実績に関する資料の内容を思い返しながら、ディーデリヒ天地のふりをしながらの愛百合の観察を続けていた









 一方、その頃
 学校街・獄門寺組本家にて

「……以上が、こっちで掴んでいる情報だ。「狐」のスパイに関しては、引き続き、俺の権限で極秘で調査を続ける」

 そのように、天地は報告を終えた
 「狐」に関する情報交換会。「組織」「首塚」「教会」「レジスタンス」と言う大きな組織だけではなく、「獄門寺家」「マッドガッサー一味」も加わっての、ある意味で豪華な顔ぶれだ
 未だに「組織」が他の組織と交流していると文句垂れてくるような奴(代表例:愛百合)もいる為、この会議への参加は極秘だ
 もっとも、天地以外にも似たような事情を抱えている者がいないと言う訳でもない
 今まさに資料に目を通しているカイザーもその筆頭だろう
 普段の面子ならともかく、今、「教会」本部から派遣されているジェルトヴァが嫌がる顔をしそうだ
 そうした点を考えると、将門が「良し」と言えばほぼ問題がなくなる「首塚」や、同じく龍一の方針に組員の大半が賛同して動く「獄門寺組」は少しうらやましい所だ。トップの判断ありきである為、そのトップにかかる重圧は恐ろしい事になるが

(いっそ、「レジスタンス」くらいのバランスがちょうどいいのかもしれないな)

 ちらり、視線を向けた先では「レジスタンス」において所属している事実と名前が知られている荒神 ウル
 学校街在住の日本人と結婚したため、学校街にとどまっている事も増えたが、元々はヨーロッパを中心に世界中の「レジスタンス」支部を周っていた、「レジスタンス」でも上位の実力者
 上下の関係が「組織」等と違って厳密ではなく、支部によって行動方針や敵対対象が変わる「レジスタンス」であれば、今のように他組織との情報交換会も問題はないのだろう

「「教会」では、子飼いの契約者が何人か行方不明、か」
「はい。大半は殺害された可能性が高いのですが……一人だけ。学校街で目撃談がありました」
「アメリカではオカルトミュージアムで封印・管理していたはずの「アナベル」が姿を消したそうだ。他の諸々のヤバイ物が表に出なかったのは幸いといえば幸いだが」

 カイザーとウルがそれぞれ、資料に書き記していた情報を改めて口に出した
 確か、「教会」子飼いの契約者の中で行方不明となっており、かつ、学校街で目撃談があったのは「死神を閉じ込めた樽」の契約者だったはずだ
 死神に分類される都市伝説を問答無用に無力化して閉じ込める能力を持っている
 死神でさえあればどの国のどのような伝承であろうとも無力化する上、場合によっては契約者まで無力化出来ることはわかっている
 と、なると、他に気になる事は

「その「死神を閉じ込めた樽」の契約者、死神以外を樽に閉じ込めることは?」
「………出来ない、となっていますね。少なくとも、「教会」ではそう把握しています」
「じゃあ。出来る可能性もある、と言う事ね?」

 カイザーの返答を聞いてそう口に出したのは「首塚」の面子として来ていた鮫守 虎吉
 そろそろ結構な年齢になっているはずだが、相も変わらず女の姿をしている。「父親と母親、両方こなす」と言う彼の誓いは、息子が結婚しても続いているらしい

「否定はできません。行方不明になる前は出来なかったとしても、行方不明になってから出来るようになった可能性もありますので」
「死神だけを閉じ込めるんなら、死神に該当する奴を出さなければいいだけの事だが、それ以外もとなると厄介度が増すな………どう対処しろってんだ」

 小さく唸る
 少なくとも、死神相手であれば問答無用で閉じ込める樽の能力
 死神以外にも効く場合もそうなのかどうか……「もしも」の可能性ばかり考えても仕方ないと言われるかもしれないが、警戒するにこした事はない
 都市伝説に関することは、少し警戒しすぎるくらいがちょうどよいのだと、ここに集まっている者逹はよくわかっていた

「狐の一派に襲われた子を一人、「首塚」で保護してはいるけど……彼女を襲った相手はだいぶ攻撃的な能力だったみたいだから、「死神を閉じ込めた樽」ではないのよねぇ」
「あぁ、車やらバイクやら、弾丸みたいに飛ばしてきたって奴か……超能力系統でサイコキネシスか、とも思ったが」
「そもそも、サイコキネシスだったら、当人に対して使いそうなものだが……」
「……だよなぁ。正体がわからない以上、こいつも要警戒、か。鬼灯が持ってた情報ん中にも、それらしい能力の奴はいなかったからな」

 獄門寺家の客人となっている鬼灯
 三年前から「狐」を追い続け、時に戦闘となり「狐」に従う者逹を薙ぎ払ってきたあの男は、久々に獄門寺家に着くやいなや「狐」に従う者逹の情報を、自分が把握している限り龍一に提供した
 その情報を龍一が「首塚」等に流す事によって、「狐」に誘惑された者はかなり捕まったり………捕まる直前に自ら命を絶ち、死んだり消えたりしていった
 今現在、「狐」に誘惑されるなりなんなりして配下となり、かつ生き残っている者は数える程度だ

「アメリカの「ピエロ人形」の契約者、ヨーロッパの「ファザー・タイム」。日本の、どの伝承の奴かまでは不明だが「鬼」か」
「姿を消した時期から見て、「アナベル」や「死神を閉じ込める樽」の契約者辺りも加わっている可能性がありますね」

 他にも、まだ戦力が居る可能性はある
 鬼灯は、全ての「狐」の配下を把握できた訳ではないのだから
 それでも、だいぶ追い詰めてきたはずだ
 後は、「狐」………「白面金毛九尾の狐」本体を見つけ出すだけなのだが、それに関する情報は現状、ほぼない
 なんとかしなければ

「……「白面金毛九尾の狐」に「バビロンの大淫婦」。人を襲う「赤マント」の大量発生に、「怪奇同盟」の盟主の暴走。ほんっと、一気に発生しやがって」
「「バビロンの大淫婦」に関しましては、本当、申し訳ないです」

 天地のぼやきに、カイザーが心底申し訳なさそうにそう言った
 本来は「教会」がなんとかしなければいけない案件が学校町まで流れてきた結果、他組織まで巻き込む事態となってしまっているのだ
 一応、まだ「教会」所属であるカイザーとしては胃が痛い問題だろう

「将門様が、「何か、学校町全体に違和感を感じる」とも仰っていたし……何かしら、起こっているのかもしれないわね」
「あぁ。そう言えば「ライダー」も。学校町に来てすぐ、地理を把握するためにざっとバイクで回った後に「何か妙な感覚がする」と言っていたな。あいつは感知系能力は持っていないから、ただの勘だとは思うが……」

 ふぅ、とため息を付きながらの虎吉の言葉に、ウルも憂鬱そうにそう言った
 …恐らく、「ライダー」とのやらは勘が良いのだろう。いい意味でも、悪い意味でも


 情報が回る、伝わる、新たに湧き出る
 自分達とその家族を、身内を
 学校町を、世界を

 何かを守るために、彼らは力を合わせる

 いくつもの組織が、集団が、害なす者を狩るべく動き続けていた



to be … ?





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