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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代ーズ-08a

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匿名ユーザー

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08 よろしく




 放課後、俺はいつものように学校町の南区を歩き回っていた
 この区域は学校町内で最も賑やかな場所だ、雑然としてる印象はあるが俺は好きだ

 我が母校である商業が南区にあるってのも良い
 ただ、何というかまあうちの学校は不良とギャルが多い
 代々実害のある不良を輩出していたという悪名高い歴史があるらしいが
 ここ最近はみんなお利口ちゃんばかりなので非常に退屈ですと校長が朝礼で話してたような記憶がある

 そもそも俺が商業に入学した理由は「可愛い女子は商業に集まる」と吹き込まれたからなのだが
 コスモスやナデシコかと思えば色とりどりのラフレシアが咲き乱れていたレベルで

 いや、この話はもう止そう

 夕日を浴びつつ漫然と徘徊しながら真っ直ぐ家に帰るか
 それとも今日こそ一度も成功したことがないナンパに挑戦してみるかをぼんやり考え始めたときだった

「こんばんは」

 急に声を掛けられた
 そちらに顔を向けると、とんでもない格好の女性が立っていた

 清楚な雰囲気の白のブラウスに暗色のスカート、いやそこはいい
 腹部を締める構造なのか彼女の豊かな胸が強調される装いだった


 目が、泳ぐ


 これはひょっとしてアレじゃないか?
 噂は耳にしたが、もしやこれはオタク・サブカル界隈に古くより伝わるという、あの伝説の「童貞を殺す服」なのでは!?

「あら。覚えて、いませんか?」

 女性の声に我に返る、反射的に視線を彼女の顔に向けた
 女性は小首を傾げてじっとこちらを見返している

「あっ、おうっ……」

 思い出した、あの人だ
 あの雨の夜、赤マントに追い回されていた夜に出会ったあの美人さんだ

「あ、あの夜の、あの……、あの……」
「思い出して、もらえました?」

 女性の目尻が下がった、気がする
 あくまで俺の印象だ

「私と、お茶でも、如何ですか?」
「えっ……、えっ?」

 間違いない
 このときの俺は絶対に情けない顔をしていたに違いない









 いやまさかのまさかだ
 あの美人さんにお茶に誘われるなんて

 彼女に誘われるまま南区の喫茶店に案内された

「ヒーローズ……カフェ?」
「ええ。私の、好きな、場所なの」

 来たことがないお店だ、いや全く知らなかった
 南区は随分あちこち散策したはずだが未だ知らない場所があったとは

 彼女の後に続いて店へ入る
 入った瞬間、何故店名が「ヒーローズカフェ」なのかを理解した

 至る所にヒーローもののポスターが貼られ、フィギュアが飾られている
 店内のテレビでは特撮が放映されていた
 どこかで見た覚えがあるぞ、確かきりたんぽを武器に戦うご当地ヒーローのネイガーだったか

「こんばんは、瑞希さん」

 美人さんの挨拶にそちらを向く
 女性の店員さんが近寄ってきていた

 店員さんの美貌に、目が釘付けになる
 大和撫子というのは多分こういう人を言うに違いない
 しかも何だか良い匂いがするぞ!? 花の匂いか? 本当にナデシコなのか!?

「あら、夜ちゃんいらっしゃい。珍しいわね、彼氏連れで来るなんて初めてじゃない?」
「あの、違います。彼氏、ではなく。以前、この人に、お茶に、誘われた、ので。今度は、私から、誘い、返し、ました」
「へえ、ふーん」

 話し振りからして店員さんと知り合いなんだろう
 つまりこのお店は美人さんのホームグラウンドってわけか
 頭の中を回る店員さんのあまりの美しさと次いで雑念に半ば意識が引っ張られていた
 お二人の会話内容がほとんど聞き取れてない
 不意に店員さんと目が合う

「まあ、ゆっくりしてってね」
「あっはい、どうもっす。ありがとうございます」

 やべーぞ、声を掛けられた! めっちゃ緊張する!
 俺が幾ら女性慣れしてないからって余裕無さすぎじゃねえか俺、しっかりしろ!

 視線が泳ぐと厨房にいる男性と目が合った
 渋い感じの雰囲気を纏った方だ、思わず会釈してしまった

「座りましょうか」

 美人さんに促され席に着いた
 そこでふと陳列されていたフィギュアの一体に目が留まった

 スポーンだ

 彼はアメコミのヒーローだ、懐かしい記憶が蘇る
 施設にいた頃、戦闘教練で自分の戦闘スタイルを編み出さなければならなかったとき
 俺が縋り付いたのは当時憧れていたあの人のスタイルで、結局それは分からずじまいに終わった
 そうして完全に迷ったときに参考にしたのが、このスポーンの戦い方だった
 俺の実力不足で全く血肉にはならなかったがな!



「お店。気に入った、かしら?」

 美人さんが俺に話し掛けていることに、やや間を置いて気付く

 どうだろう、どうなんだろう

 不思議な場所だ、一度来たことがあるようなそんな懐かしい感じがする
 何故かは分からないけれども自室以上に落ち着く気がした
 まるで体が温かい雰囲気に包まれている心地だ

「家にいるみたいな気分で、何だか落ち着きます」
「そう、良かった」

 俺の率直な感想に美人さんは微笑んだ

「ところで、あなたは、どんなヒーローが、好きなのかしら?」
「はい? え、あ、アンパンマン」

 完全に予想外の質問が飛んできた
 俺の口が勝手に動いたが、今、俺は何と言った? アンパンマン?

「アンパンマン、なの?」
「あ、あー……、あの、あれっすよ
 お腹空いたヤツに自分の顔を引き千切って与えるって、中々に尖ってるじゃないっすか」

 真っ白になりかけた頭で、何とかそう答える
 本当に何を言っているんだ俺は
 見ろ、美人さんクスクス笑ってるじゃねーか

 もっとマシな答え方は無かったのか、俺

「そうね、なら。私は、ホラーマンが、好き、かしら」
「はい、……え? えっ?」

 ホラーマンときた
 ホラーマンって確か、あの、バイキンマンの陣営にいる、あの、骨だよな?
 あいつって、あれはヒーローの括りでいいのか?

「ホラーマンって、ヒーローってよりどっちかってーとヴィラン側っすよね……?」
「でも、彼も、根はヒーロー、なのよ」

 彼女は未だクスクス笑いながらそう答える
 ホラーマンね、実は詳しく知らないんだがあの飄々とした所がいいんだろうか

 中々独特の感性をお持ちの方だ、とりあえずそう思うことにした

 しかし、アンパンマンか
 いきなり口走ってしまったが、ここはよくよく考えてスポーンと答えるべきだったか
 少しの気恥ずかしさを感じて頬を掻いてしまう





 注文したアイスティーを一口飲む
 美人さんの方はココア系の飲み物を口にしていた
 何やら飲んだらめっちゃ元気が出そうな感じのドリンク名、だったはずだ

 怒涛のヒーロー攻勢が引いた為か、心に余裕が――生まれない
 美人さんと二人、喫茶店で話をしているという今の状況に意識が行ってしまう
 どこか愁いを帯びた美人さんは俺みたいなのがそう易々と出会える相手では無いし、こんな機会は二度も無いだろう

 そもそも、あの雨の日に出会ったとき
 俺が咄嗟に口走ったお茶のお誘いに彼女は「また今度」と答えた
 この語の意味するのは女性がよく使うという奥ゆかしい断り文句のはずだ
 事実コンビニで買ったエンタメ雑誌にもそう書いてあった

 そこから本当に誘われるだなんて、完全にアウェーだ
 いや嬉しいんだけども! 気恥ずかしいほど嬉しいんだけども!

 しかもアレだぞ? チェリーボーイをキルするような格好だぞ!?
 美人さんの胸元に目が行ってしまいそうになるのを理性が抑えに掛かる
 彼女は今、店内のテレビの方に視線を向けているから少し見てもバレ――じゃなくてっ!!


 俺の脳みそでは早くも理性と欲望がシーソーがっこんがっこんを始めていた

『いいですか早渡、素直に欲望を開放なさい。そしてこのビューティーをホテルに引っ張り込め! やるべきことをやれ! この童貞野郎!』

 欲望の側に陣取っているのはエンジェル早渡だ、こいつは常に俺をピンクの世界に引きずり込もうとする

『駄目だ脩寿! お前アレだろ! 男を磨くって自分に誓っただろ! 流されるな! 自分の欲望に敗けんじゃねえ!』

 対して理性を司るデビル早渡はかつて俺が心に決めたことを想起させてくれる真の友人なのだが、常に劣勢気味の奴だ

 『いい加減無駄な努力は止めるのです、早渡。お前が望みに望んだ巨乳女子ですよ? 土下座して頼み込んでとっととそのおっぱいに埋もれろ!!』

 負けるなデビル早渡! 負けるな俺! 俺は自分を超えるって決めただろうがッ!!


「あの、いいかしら?」

 美人さんの声に我に返れば、彼女はこちらを見て笑っていた
 先程よりもクスクス笑っている

「え、あー、なんか、おかしかったっすか……?」
「ごめんなさい。あなた今、ものすごい顔していたわ。百面相」

 俺の中の葛藤が顔に出ていた、だと?
 全てを見透かされたかもだ、顔面が燃え上がるように熱い
 恥ずかしい……、どこかに穴があったら真っ先に飛び込みたいくらいだ

「そろそろ、お互いに、自己紹介、しませんか?」

 美人さんは一頻り笑った後でそう提案してきた
 涙が滲むほどおかしかったのか
 ほんとに恥ずかしい

 とにかく自己紹介だ
 こういうのはレディーファーストで無いことくらい俺でも分かるぞ、お先に行こう



「早渡です。早渡脩寿(さわたり しゅうじゅ)。南区の商業高校の一年です
 まあ、制服を見ての通りなんすけど。よろしくお願いします」
「あら、私の、ひとつ下なのね」

 お? ということは、この人先輩なのか

「高奈夜(こうなき よる)、と言います。隣町の、私立高校、二年生です」
「私立!? あの私立っすか!?」

 隣町の私立と言えば有名だ
 偏差値だか何だか知らんが進学校らしい
 いや、それ以上に有名なのが美人な女子生徒の多さだ
 美人さん、じゃなくて高奈先輩があの私立在籍というのも納得がいく

「そして」

 俺が一人で合点している所に彼女は言葉を続ける
 高奈先輩は俺の目をじっと見つめていた
 もう笑ってはいなかった

「早渡君は、気づいていると、思うけれど。私は――契約者、です」
「  っ!!」



 緊張が、走った



 すっかり忘れていた
 そうだ、この人は契約者なんだ
 こんな大事なことを今になって思い出すなんて

 俺は何をしているんだ

 完全に舞い上がっていた
 あの美人さんにお茶に誘われたという状況に
 だが思い出せ、あの夜にこの人が契約者であることを
 そして、俺が契約者なのを知っていることを確認したはずだ
 なんで今の今までそんな大事なことを忘れていられたんだ、俺は

「私に、聞きたいことは、ありませんか?」
「えっ、あっ……」

 言葉に詰まった
 訊きたいことは沢山ある
 だがいいのか、本当に訊いてもいいのか?

「早渡君」

 この人は何を知っているんだろう
 俺はこの人に何を訊くべきなんだろう
 訊きたいこと、訊くべきことが分からなくなっていく
 俺は何を知りたいんだ? この人に何を訊けばいい?



「早渡、君」


 先輩の声に我に返った


「私から、いいかしら」
「あ、はい」

 反射的に返事が衝いて出る
 彼女は暫く俺を見つめていたが、短い沈黙の後に目を閉じた


「あなたは、私に、訊きたいことがある。でも、何も言えずにいる。あの雨の日も、そうだった」

 思わず、息を飲んだ

「私から、話を貰う、見返りに、あなたは、与えるものが、何も無いと、そう思っている」

 心の奥底を見透かされている気がした

「受け取る代償として、対価を払わないと、いけない。あなたは、そう考えている」

 この人は、俺の心を読んでいるのだろうか

「だから、訊きたいのに、何も、訊けずにいる。――違ったら、ごめんなさい。でも、どう? 違う?」
「あの、いえ」

 確かに、何かを得るには対価を支払わないといけないとは思っている
 でもなんでこの人は俺の心を手に取るように――!?

「違うわ、早渡君。違うの。私は、あなたの心を、読んでいるわけでは、ないの」

 考えを先読みしたかのようなタイミングで先輩はそう告げてきた

「早渡君、違うわ。私の、――私は、『シャドーピープル』の、契約者なの。私に、人の心を、読む力は、無いの」
「  っ!?」


 彼女は、自分の契約都市伝説を、明かした


 これが何を意味するのかは知っている
 通例、契約者が自分の能力を気軽に明かしたりはしない
 これは相手に自分の弱点を曝け出すことを意味する
 親しい相手ならともかく、俺のような出会ったばかりの奴に明かしていいことじゃない

「先ぱ、あの、俺」
「駄目」

 彼女は俺の言葉を制した

「私は、あなたの力を、話してほしくて、私の力を、教えたわけではないわ」
「でも」
「いいの。私が、あなたに、話したい、だけ、だから」

 心臓が暴れだした
 何故だ、どうして先輩はこんなことを?
 胸の内にまるで暗雲のように不安が広がり始めるのを感じた


   『本当に強い者は自分の能力を殊更隠したりはしないよ』
   『君たちは弱いんだから、もっと隠さなきゃ』


 昔聞いた言葉が脳裏を掠めていった



「その上で、早渡君。言わせて、下さい」

 早鐘を打つような己の鼓動を感じながら、先輩を見た
 高奈先輩が口を開く寸前、彼女は一度ぎゅっと唇を結んだ


「私は、ギブ・アンド・テイク、という、考え方。好きでは、ないの」

 その言葉に、思わず自分の肩が震える

「そうね、大っ嫌い」


 鋭い声色だった
 店内に彼女の声が大きく響いたんじゃないかと思ってしまった程だ


「それは、仕方のない、ことかも、しれない。分かって、いるわ。でも」

 先輩が目を開いた
 視線が真っ直ぐ交錯する

「ギブ・アンド・テイク、で、なくても、いい、方法が、あるの。分かる?」

 ギブ・アンド・テイクでなくてもいい方法?
 対価を支払わずに、ということか? 何故? 何故、先輩はこんな話を


「私と、あなたが、……友達に、なる、こと。そうすれば、身構えなくても、いいでしょう?」


 ――あ
 元より失う言葉など無かった、というより頭に言葉なんて無かった
 だが、このときの俺は先輩の言葉に、文字通り言葉を失っていた

 友達に、なる
 こんなことを、真正面から言われたことは無かった
 これまで生きてきた中で、今までに、一度たりとも無かった

「早渡君。もし、よければ。私と、友達に、なって、くれませんか?」
「えっ、     ……あっ、   是非っ!」

 即答していた
 まさか、こんなことを言われるだなんて思ってなかった

「ありがとう、早渡君」

 先輩は俺から視線を外し、椅子に掛けていた鞄を引き寄せた

「私の、連絡先を、教えるわね。……あら」

 先輩の手が止まる

「携帯を、忘れて、しまったわ。ごめんなさい」
「あっ、いえ、そんな」
「連絡先を、書きますね」

 胸中の不安が、気恥ずかしさと申し訳なさへ変わっていく
 何故そんな感情が湧き上がってきたのか、俺はまだ分からずにいた


「いつでも、いいわ。連絡して」


 便箋にペンを走らせていた先輩は、名前と電話番号が記されたそれを俺に差し出してきた
 意外にも可愛い文字で綴られていた






 日はすっかり暮れている
 店を後にした俺は高奈先輩と別れて帰路についた

 未だに心が震えている
 短い時間に色々あったな、少し冷えた秋の大気を吸いながらそう思った

 高奈先輩も店員さんも美人だった
 厨房にいた男性の方は店長だろうか
 そういえば店を出るとき俺を見ていた気がする

 鞄の方を意識してしまう
 先程、先輩から貰った便箋は中に収めた
 今になって胸の内に恥ずかしい気持ちが渦巻いている理由に気付いた

 あのとき俺は先輩を疑っていたんだ
 話を振ってきた先輩に警戒して身構えていた
 もしかすると先輩は俺に気を遣っていたのかもしれない

 いや、そうだ
 気を遣わせてしまった

 申し訳なさと不甲斐なさが綯い交ぜになっていく
 高奈先輩を疑うことはいくらでもできる。だが、そうじゃないだろ

 振り返れば俺は保身のことしか考えてなかった
 元より守るものなんか何も無いっていうのに馬鹿だな俺は


 夜の帳が下りた天を仰ぐ


 そもそも俺は分かってて敵の根城に乗り込んで来たんだ
 守りに入ってどうする、自分から動かなければ何も得られないんだ


 自分をもう少し開かなければ


 別れる際の高奈先輩を思い出す
 彼女はあの雨の夜と同じように微笑んでいた
 何故先輩が俺に気を遣ってくれるのか実はまだよく分からない
 だけど俺は何故かあの人を疑いたくはなかった、何故なのかは分からない


 だから決めた
 次に会ったとき俺は高奈先輩に自分の話を伝えると







+ 【補足】「ヒーローズカフェ」について
「ヒーローズカフェ」とは「アクマの書き手 ◆MERRY/qJUk」さん連載の
「ゴルディアンの結び目」等に登場する学校町南区にある喫茶店です
気になったあなたは本スレ Part12以降を検索だ



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