【花房と角田より】
慶次は、携帯を手に連絡を取り始めていた
中学校の前で直斗が声をかけた相手が、「三年前」の事件について聞く事にしたうえ、現場の再現について同意した事
さらに言うと、そこに現れた「繰り返す飛び降り」の少女がその現場に立ち会うという点についても、直斗が一切気にしなかった事
……その結果、慶次が、現場を再現する事が可能な契約者……心から気が合わないと言う契約者を呼び出す事になったからだ
直斗は彼と顔見知りではある(そういえば、中学の先輩後輩と言う仲だ)が、連絡先は交換し合っていなかったのだ
舌打ちしながら慶次は連絡を取り始め、今現在
中学校の前で直斗が声をかけた相手が、「三年前」の事件について聞く事にしたうえ、現場の再現について同意した事
さらに言うと、そこに現れた「繰り返す飛び降り」の少女がその現場に立ち会うという点についても、直斗が一切気にしなかった事
……その結果、慶次が、現場を再現する事が可能な契約者……心から気が合わないと言う契約者を呼び出す事になったからだ
直斗は彼と顔見知りではある(そういえば、中学の先輩後輩と言う仲だ)が、連絡先は交換し合っていなかったのだ
舌打ちしながら慶次は連絡を取り始め、今現在
「少し離れていてもわかるレベルで、電話の向こうの相手と険悪と言うか罵りあっているように見えるんだが」
「そういや、あいつら、絶望的に仲悪かったわ」
「気づくの遅いよな?」
「そういや、あいつら、絶望的に仲悪かったわ」
「気づくの遅いよな?」
かなり機嫌悪そうに電話している慶次の様子を見ての直斗の呟きに、中学校の前で直斗が声をかけた少年………早渡がそうツッコミを入れた
直斗の表情的に、もしかしたら最初から二人が(彼曰く)絶望的に仲が悪い事をわかっていて、わざと慶次に連絡させたのかもしれない
が。実際のところどうなのか。それがわかるのは直斗当人だけだ
そして。直斗当人が楽しげに笑うだけで他の感情を表に出そうとしない以上、直斗以外が知る事はほとんどないのだろう
直斗の表情的に、もしかしたら最初から二人が(彼曰く)絶望的に仲が悪い事をわかっていて、わざと慶次に連絡させたのかもしれない
が。実際のところどうなのか。それがわかるのは直斗当人だけだ
そして。直斗当人が楽しげに笑うだけで他の感情を表に出そうとしない以上、直斗以外が知る事はほとんどないのだろう
一方、彼らによる「三年前」の現場再現に付き合う事になった「繰り返す飛び降り」の少女だが
直斗が供えた花束を見て、何やらむぅ~。と声を上げる
直斗が供えた花束を見て、何やらむぅ~。と声を上げる
「直斗君、花選びのセンスない」
「え。なんで?」
「え。なんで?」
突然、少女に言われてきょとん、とする直斗
だって、と少女は言葉を続ける
だって、と少女は言葉を続ける
「あれ、全部死者に供えるようなお花じゃないよ。直斗君、咲季と仲良かったじゃない」
「えー、そうかな?」
「えー、そうかな?」
少女の言葉に、直斗は納得いっていない様子だった
彼なりに考えて選んだ花のようなので、率直に「センスない」と言われると若干ショックなのだろうか
二人の会話の様子に、首を傾げる早渡
彼なりに考えて選んだ花のようなので、率直に「センスない」と言われると若干ショックなのだろうか
二人の会話の様子に、首を傾げる早渡
「……二人共、知り合い?」
「知り合い、って言うか。名前は知ってるよ。彼ら、有名人だったもの」
「知り合い、って言うか。名前は知ってるよ。彼ら、有名人だったもの」
早渡の問いに、先に答えたのは少女の方だ
有名人、と言うのは確かにその通りだろう
直斗と言うより、主に目立っていたのは遥とか遥とか遥とかなのだろうが、早渡にはそこまでわからないだろうし伝わらない
有名人、と言うのは確かにその通りだろう
直斗と言うより、主に目立っていたのは遥とか遥とか遥とかなのだろうが、早渡にはそこまでわからないだろうし伝わらない
「…………東 一葉(あずま いよ)。「三年前」の事件の九人目の犠牲者。咲季さんはあの野郎の能力の影響で飛び降りた訳じゃないから、実質最後の犠牲者と言っていい」
「繰り返す飛び降り」の少女に関して
直斗は、このように口にした
彼女のことを一方的に知っていた、とでも言うように
直斗から知られていた事が意外だったのか、一葉は「あれ?」と言う表情を浮かべる
直斗は、このように口にした
彼女のことを一方的に知っていた、とでも言うように
直斗から知られていた事が意外だったのか、一葉は「あれ?」と言う表情を浮かべる
「どうして、私の名前を知ってるの?」
「さっき言った通り。「三年前」の事件の犠牲者だからだ。当時、俺達はその事件について調べていたからな。知っているよ。あの野郎が能力を解除して「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」から解放されたら、今度は「繰り返す飛び降り」になったっつー不運さ含めて印象に残ったんだ」
「人をアンラッキーガールみたいに呼ぶのはやめてね?」
「さっき言った通り。「三年前」の事件の犠牲者だからだ。当時、俺達はその事件について調べていたからな。知っているよ。あの野郎が能力を解除して「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」から解放されたら、今度は「繰り返す飛び降り」になったっつー不運さ含めて印象に残ったんだ」
「人をアンラッキーガールみたいに呼ぶのはやめてね?」
むぅうう、と直斗の言葉にむくれる少女……一葉
事実だから、と直斗は悪びれた様子もない
事実だから、と直斗は悪びれた様子もない
……本来、直斗の方が年下であったはずだと言うのに、命を落とし、その瞬間で年をとる事ができなくなった一葉の方が年下に見えてしまう、と言う奇妙で、見ようによっては悲しい光景だ
「それよりー!なんで、あんなお花選んだの。もっと無難に、死者に供えるお花あるでしょ。お花屋さんで供える花ですって言えば作ってくれるでしょ」
「そう言われても。マリーゴールドとラベンダーは咲季さんも好きな花だったし」
「そう言われても。マリーゴールドとラベンダーは咲季さんも好きな花だったし」
一葉の言葉に、直斗はそう答えている
花を選ぶ基準は、一応存在していたらしい
その結果が、一葉曰く「死者に供えるにふさわしくない花束」なのだが
花を選ぶ基準は、一応存在していたらしい
その結果が、一葉曰く「死者に供えるにふさわしくない花束」なのだが
「ホオズキは…………咲季さんは、鬼灯さんの事が好きだったんだと思うから」
ほんの僅か、誰かに対して同情しているような表情で、直斗はそう続けた
二人の会話に耳を傾けていた早渡は、少し考えて問う
二人の会話に耳を傾けていた早渡は、少し考えて問う
「……お前は。そのサクリさん、って人と、仲良かったのか?」
「んー、まぁ、それなりに仲は良かったつもりだよ。俺より、皆の方が仲良かったと思うけど」
「そうか……どんな人だったんだ?」
「どんな人、か」
「んー、まぁ、それなりに仲は良かったつもりだよ。俺より、皆の方が仲良かったと思うけど」
「そうか……どんな人だったんだ?」
「どんな人、か」
まだ話がまとまってないのか、慶次が電話越しに言い合っている声をバックミュージックに、直斗は答え始める
「優しくて、お人好しで、世話焼きで、おせっかいで、哀れで………」
答えている表情は、先程までと同じ通りに笑顔だったが
「ーーーーーー愚かだった」
そう、小さく、小さく
聞こえるか聞こえないか、ギリギリの声量でそう口にした、その瞬間
本当に、瞬間的に………表情と言うものが、完全に消え去っていた
聞こえるか聞こえないか、ギリギリの声量でそう口にした、その瞬間
本当に、瞬間的に………表情と言うものが、完全に消え去っていた
……納得いかない
「なんで、俺が呼んでも来ねぇのに「直斗が力借りたがってる」で来るんだよ」
「あいつには、まだ借り返してねぇし」
「あいつには、まだ借り返してねぇし」
本当、気に食わない
こいつ、栗井戸 星夜(くりいど せいや)とはとにかく、反りが合わない
どうして、こんな餓鬼の力を借りなければいけないのか
こいつ、栗井戸 星夜(くりいど せいや)とはとにかく、反りが合わない
どうして、こんな餓鬼の力を借りなければいけないのか
「よぉ、悪いな星夜。お前の契約都市伝説の力借りるのが一番手っ取り早いからさ」
「受験生呼び出してんじゃねぇよ、あんたも」
「受験生呼び出してんじゃねぇよ、あんたも」
一方、直斗は気楽な様子で星夜に声をかけて、辛辣な視線を浴びている
その視線をあびても、けろりとして気にしていない様子だが
いくら星夜の契約都市伝説が、情報収集向きであって戦闘向きではないとはいえ、ここまで不用心なのはどうかと思う
その視線をあびても、けろりとして気にしていない様子だが
いくら星夜の契約都市伝説が、情報収集向きであって戦闘向きではないとはいえ、ここまで不用心なのはどうかと思う
とにかく、皆で屋上へと向かう事になった
屋上には今でも鍵がかかっていないらしく、職員室に鍵を借りる事もなく直斗と星夜の先導に従って歩く
屋上には今でも鍵がかかっていないらしく、職員室に鍵を借りる事もなく直斗と星夜の先導に従って歩く
……ちらり、とホモ(?)野郎の様子を警戒する
直斗は完全に不用心にこいつと握手していたが、その瞬間に何かされたらどうする気だったのやら
「繰り返す飛び降り」相手も同様だ。警戒心が足りなすぎる
直斗は完全に不用心にこいつと握手していたが、その瞬間に何かされたらどうする気だったのやら
「繰り返す飛び降り」相手も同様だ。警戒心が足りなすぎる
屋上は、どこにでもある学校の屋上……とは、少し違っていた
それは、恐らく屋上の縁にあるフェンスのせいだ
屋上全体をぐるりと囲むそのフェンスは、通常、学校の屋上に取り付けられているフェンスと比べて、遥かに高いのだ
しかも、フェンスの上の部分はまるでネズミ返しか何かのように内側に向けて斜めになっていた
……それこそ、「フェンスを乗り越えて飛び降りる」と言うことが、できないように
それは、恐らく屋上の縁にあるフェンスのせいだ
屋上全体をぐるりと囲むそのフェンスは、通常、学校の屋上に取り付けられているフェンスと比べて、遥かに高いのだ
しかも、フェンスの上の部分はまるでネズミ返しか何かのように内側に向けて斜めになっていた
……それこそ、「フェンスを乗り越えて飛び降りる」と言うことが、できないように
「私が通ってた頃は、普通のフェンスだったんだけどな」
その異様なフェンスを見て、一葉がそのように口にした
彼女もまた、その「普通のフェンス」を飛び越え、この屋上から飛び降りたのだろう
彼女もまた、その「普通のフェンス」を飛び越え、この屋上から飛び降りたのだろう
直斗は、フェンスを少し見て……が、すぐに興味を失ったように視線をそらした
「再現してから説明した方が、多分早いな。星夜、頼めるか?」
「わかった………疲れるんだからな、これ」
「わかった………疲れるんだからな、これ」
ぶつくさ言いつつも、星夜は集中し始めた
警戒している様子のホモ(?)野郎を、星夜も警戒してはいるようだったが……ちら、と、こちらを見てきた
恐らく、「何かあったら、お前がなんとかしろ」と、そういう事なのだろう
わかっている、と言うように視線を返してやる
警戒している様子のホモ(?)野郎を、星夜も警戒してはいるようだったが……ちら、と、こちらを見てきた
恐らく、「何かあったら、お前がなんとかしろ」と、そういう事なのだろう
わかっている、と言うように視線を返してやる
「……時期指定、「事件関連」のみ……範囲指定、屋上全体………地上までは範囲に含めないからな。範囲広げりゃ広げるほど、疲れるんだし」
そのように口にする星夜の左目が、ちか、ちかっ、と輝き始めた
首元の辺りでくくっている星夜の長い髪が、湧き上がる力の流れによって揺れて
…星夜の契約都市伝説の能力が、発動する
首元の辺りでくくっている星夜の長い髪が、湧き上がる力の流れによって揺れて
…星夜の契約都市伝説の能力が、発動する
刹那、辺りの風景が変わった
屋上である事に変わりはない
しかし、屋上のフェンスが、一般的な高さの物へと変化しており、空は正午ごろの青空。屋上のあちらこちらに、生徒の姿が現れる
屋上である事に変わりはない
しかし、屋上のフェンスが、一般的な高さの物へと変化しており、空は正午ごろの青空。屋上のあちらこちらに、生徒の姿が現れる
「これは……」
「「残留思念」。この場所で、かつて起きた事の再現だ」
「「残留思念」。この場所で、かつて起きた事の再現だ」
そう、星夜の契約都市伝説は「残留思念」……と、そういう事になっている
厳密には違うのかもしれないが、少なくとも星夜自身は「残留思念」であると認識しているし、契約によって行使できるようになった力からもそうであろうと周囲も認識していた
その力は、先程口にした通りだ
起きたことの、再現
今は、この屋上で起きたことを再現しているのだ
姿を現した生徒逹も、あくまで「再現」されたものであり、こちらの存在など気にも留めない
厳密には違うのかもしれないが、少なくとも星夜自身は「残留思念」であると認識しているし、契約によって行使できるようになった力からもそうであろうと周囲も認識していた
その力は、先程口にした通りだ
起きたことの、再現
今は、この屋上で起きたことを再現しているのだ
姿を現した生徒逹も、あくまで「再現」されたものであり、こちらの存在など気にも留めない
やがて、屋上の扉が開き、一人の少女がすたすたと、フェンスへと向かう
特に深刻な表情をしている訳でもなく、ごくごく自然に。まるで「ちょっと遊びに行ってくるね」と言うような、そんな様子で
フェンスに近づいた彼女は、これまた自然にフェンスをよじ登りだした
あまりにも自然に登りだしたものだから、周囲の生徒も異常さに気づかない
誰かが気づいた時には、彼女はすでにフェンスを登り終えており
特に深刻な表情をしている訳でもなく、ごくごく自然に。まるで「ちょっと遊びに行ってくるね」と言うような、そんな様子で
フェンスに近づいた彼女は、これまた自然にフェンスをよじ登りだした
あまりにも自然に登りだしたものだから、周囲の生徒も異常さに気づかない
誰かが気づいた時には、彼女はすでにフェンスを登り終えており
「せぇのっ!」
と
まるで、ハードルでも飛び越えるような気軽な声を出して
そのままあっさり、悲鳴もあげずに、飛び降りた
辺りの生徒逹が、悲鳴を上げ始め…………まるで、録画された映像の早送りのように、一気に周囲の時間が流れ出す
星夜が、事件に関係のない部分を飛ばしているのだろう
まるで、ハードルでも飛び越えるような気軽な声を出して
そのままあっさり、悲鳴もあげずに、飛び降りた
辺りの生徒逹が、悲鳴を上げ始め…………まるで、録画された映像の早送りのように、一気に周囲の時間が流れ出す
星夜が、事件に関係のない部分を飛ばしているのだろう
空の様子の移り変わりから察するに、最初の飛び降りから二日程たった頃
誰もいない夕暮れの屋上に、現れたのは男子生徒だった 口笛を吹きながら、気軽な様子でフェンスによじ登り、そして
誰もいない夕暮れの屋上に、現れたのは男子生徒だった 口笛を吹きながら、気軽な様子でフェンスによじ登り、そして
「よいせ、っと」
これまた、なんとも気楽な声をだして
深刻な様子も、暗い様子も何もなく、ごくごく日常的な表情のまま………飛び降りた
深刻な様子も、暗い様子も何もなく、ごくごく日常的な表情のまま………飛び降りた
また、早送り
飛び降りる、飛び降りる
皆、暗い様子は一切なく、ごく普通に、まるで日常の延長線のように飛び降りていく
飛び降りる、飛び降りる
皆、暗い様子は一切なく、ごく普通に、まるで日常の延長線のように飛び降りていく
……ちらり、ホモ(?)野郎の様子を確認する
仏頂面で、星夜の能力で再現されている現場を見ているようだが、時折、肩がビクッ、と震えているようだった
仏頂面で、星夜の能力で再現されている現場を見ているようだが、時折、肩がビクッ、と震えているようだった
再現が、続く
そのうち、九人目の犠牲者である東 一葉が姿を現し、やはり、彼女も気楽な様子でフェンスをよじ登って、飛び降りた
そのうち、九人目の犠牲者である東 一葉が姿を現し、やはり、彼女も気楽な様子でフェンスをよじ登って、飛び降りた
……そうして
今までとは、雰囲気が、変わる
今までとは、雰囲気が、変わる
屋上に姿を現した十人目の犠牲者は、今までの犠牲者とは違い、決意に満ちた表情だった
その顔を、資料で見たことがある
その顔を、資料で見たことがある
(土川 咲季……!)
「三年前」の事件の犯人の、娘
彼女は、フェンスをよじ登り、乗り越えて、屋上の縁に立った
下を見ることはなく、薄暗い空を見上げて、深呼吸をしている
彼女は、フェンスをよじ登り、乗り越えて、屋上の縁に立った
下を見ることはなく、薄暗い空を見上げて、深呼吸をしている
「……私が、やらないと」
小さく、呟く
悲痛さはない、決意に満ちていた
戦うのだ、と、そんな意思に満ちていた
悲痛さはない、決意に満ちていた
戦うのだ、と、そんな意思に満ちていた
「みんなが、巻き込まれたら大変だもの。みんなが、死んでしまうのは………嫌だもの」
決意に満ちたその表情で、一歩、踏み出す
「………ごめんね、さよなら」
飛び降りる瞬間、そう口にして
その瞬間の表情は、笑顔で
その瞬間の表情は、笑顔で
土川 咲季は、再現されたその光景の中で、飛び降りた
二人分の足音がする
一人は土川 羽鶴。土川 咲季の父親にして、「笑う自殺者」と「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」の多重契約者。「三年前」の事件の犯人
もうひとりは、女だった
長く伸びた稲穂色の髪に金色の瞳の、色気たっぷりの美しい女
その姿を見た瞬間に、ざわり、と悪寒を感じる
本能的に、関わってはいけない相手なのだと理解した
一人は土川 羽鶴。土川 咲季の父親にして、「笑う自殺者」と「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」の多重契約者。「三年前」の事件の犯人
もうひとりは、女だった
長く伸びた稲穂色の髪に金色の瞳の、色気たっぷりの美しい女
その姿を見た瞬間に、ざわり、と悪寒を感じる
本能的に、関わってはいけない相手なのだと理解した
「いいの?娘なんでしょう?」
女が羽鶴に問う
羽鶴の背中にしなだれかかりながら、耳元で囁きかけるように
女の問いかけに、羽鶴はくつくつと笑っていた
羽鶴の背中にしなだれかかりながら、耳元で囁きかけるように
女の問いかけに、羽鶴はくつくつと笑っていた
「いいさ。どうせ、ここから飛び降りたら取り込めるのだしな。せいぜい、役に立ってもらえばいい」
「酷い人」
「酷い人」
くすくすと。女が笑う
その笑い顔は、狐を連想させた
その笑い顔は、狐を連想させた
「でも、あまり一箇所で続けると面倒な連中に感づかれるわよ。そろそろ、移動しましょう?」
「あぁ、そうだな。誰に気づかれようとも、取り込んでしまうだけだが」
「あぁ、そうだな。誰に気づかれようとも、取り込んでしまうだけだが」
くつくつ、くすくすと、不快な笑い声が響く
二人は、重なりあうように歩きながら屋上から姿を消した
二人は、重なりあうように歩きながら屋上から姿を消した
また、辺りの光景が早送りされて
一瞬
フェンスの向こうに、何か、巨大な竜の翼のような……
一瞬
フェンスの向こうに、何か、巨大な竜の翼のような……
「ーーーーーっ。ここまで」
ぶつんっ、と
突然、映像が途切れたような感覚
辺りの風景が元通りになる
星夜を見ると、脂汗をかいて荒く呼吸していた
どの程度の再現でどれだけ体力を消耗するものか把握していなかったのだが、少なくとも今回の再現はかなり疲れたのだろうか
突然、映像が途切れたような感覚
辺りの風景が元通りになる
星夜を見ると、脂汗をかいて荒く呼吸していた
どの程度の再現でどれだけ体力を消耗するものか把握していなかったのだが、少なくとも今回の再現はかなり疲れたのだろうか
「星夜、大丈夫か?」
「……だりぃ。しかも、推定「狐」だろう女の辺り、ヘタしたらもっていかれそうになった」
「うん、今度何か奢るから勘弁な」
「……だりぃ。しかも、推定「狐」だろう女の辺り、ヘタしたらもっていかれそうになった」
「うん、今度何か奢るから勘弁な」
ぐでっ、とその場に座り込んだ星夜に直斗が苦笑した
流石に、悪かったと思っているらしい
流石に、悪かったと思っているらしい
さて、と
直斗はホモ(?)野郎に振り返った
直斗はホモ(?)野郎に振り返った
「………さて、どの辺り、主に説明ほしい?聞きたいあたりを重点的に説明するけど」
と、そのように、問いかけた
to be … ?